東方黑剣士   作:鋏人

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どうも、鋏人です。
戦争編開始から二話目、頑張っていきます!
とは言えどサブタイトルは次回以降になると思われます。


第十四話 芽吹いた感情を◆◆と知り

No Side

 

 煌めく閃光

 木霊する爆音

 それらを避けながら飛ぶ(バトルシップ)達。

 艦隊旗艦、ペルセウスの艦橋で、心義零は指揮を続けていた。

 一切の休息なく、一切の支援なく。

 当然のことである、何故なら────彼らに、この艦隊以外の味方がいないのだから。

 

 

 事が起こったのは迎撃戦翌日。第一次攻撃隊を防ぎ止めた幻想郷軍だが、月軍は翌月にそれに数倍する戦力を以て再来した。

 それの迎撃方法で意見が二分した。

 

「だから!何度言えば解るのですか!」

「貴公こそ解っておらん!今ペルセウスを旗艦として艦隊を出撃させ撃滅すれば───」

「それは自殺行為に等しい!俺が死ぬのは構わんが、部下を犬死させるつもりは毛頭ない!」

 

 ペルセウスを旗艦として艦隊を組み、艦隊決戦にて撃滅すべし

 否、ペルセウス擁する艦隊は我々の最強戦力である。無駄な出撃は控え、反撃の時を待つべし

 貴重な戦力を隠すべきに非ず

 貴重なればこそ、敵戦力は強大であり、戦力と人命の浪費にしかならず

議論百出といった様相を呈した会議は、零や天魔、紫などの反対はあったものの、好戦派の意見に押し切られる形で、艦隊決戦が決まった。場所は零の提案により、紫が敵味方全てを纏めて異空間に飛ばし、そこで戦うことになった。

 なぜたったの一月で幻想郷が艦隊を持つに至ったか。それは、鹵獲したペルセウスに理由があった。

 旗艦たるペルセウスには、麾下の船のデータが一切合切記録されていた。それを八雲紫の境界の能力で製造し、河童達の技術力も相まって、合計九十八隻の大艦隊を保有するに至ったのである。

 内訳は、

 

戦艦(バトルシップ) 八隻

重巡洋艦(ヘビークルーザー) 十二隻

軽巡洋艦(ライトクルーザー) 二十二隻

高速巡洋艦(ハイスピードクルーザー)十一隻

砲艦(ガンシップ)十九隻

駆逐艦(デストロイヤー)二十六隻

 

である。

 空母がいないのは、ペルセウスの麾下にいなかったこと、艦載機に相当するものが造れなかったなどの原因があるが、それでも大部隊に変わりはない。

 そして負けた際の対処だが、紫のスキマ境界の中で再戦まで保存、修理することで決まった。────それそのものが、敗北を暗示するようであったとは、後世の歴史家が()()()として言う通りである。

 

 零は、ペルセウスのドックで最終確認を済ませ、出撃までの僅かな時間を友人と過ごしていた。谷島翔弥、魂魄妖夢、犬走椛など、彼の麾下の者達や対等たる友人と。

 そこにひょっこりと地霊殿で帰りを待っている筈の古明地さとりが訪れた。本来地上へ出ることすら禁じられている立場のさとりだが、今回ばかりは紫が許可したのである。

 零はさとりに背を向けていたので気付かなかったが、談笑していた友人達はすぐに存在を察知し、それぞれの尤もらしい理由で場を離れた。

 気付かなかった気配が、周りが静かになったことで明確になり、零は温かい気持ちで後ろを向く。

 

「さとり…………」

「零さん…………」

 

無言の内に、二人は見つめ合う。

 片方は、およそ1ヶ月の間、家族と会えず過ごした寂寥感から。

 もう片方は、初めて理解してくれた者が、無事な姿を見せた嬉しさから。

 

「1ヶ月ぶりだね。」

「ですね…………」

「この1ヶ月、生きた心地がしなかった。今日来るか、明日来るかって、怯えてた。」

「わたしも、怖かったです────あなたが、わたしの見えないところで消えてしまいそうで。」

 

身を震わせるさとりを見て、零は静かに両腕を広げ、受け入れる体勢を取る。その直後

 

「零さんっ!」

 

涙を流しながら、さとりは零の腕の中へ飛び込んだ。

 

「もうっ!怖かったんですよ!あの日、いきなり置き手紙だけして居なくなって!通信機からは零さんの声がして!無茶ばっかりして!もう、もう止めてください…………」

 

弱々しくなる声を、零は全て受け止めながら、優しく言葉を紡ぐ。

 

「大丈夫だよ、俺は死なない、生き残る。これまで、そうだったんだから。」

「これからの戦いも、ですか?」

 

悲しげな声と、その言葉の指すところを察して、零は抱く格好から半歩下がって肩に手を置く。

 この無謀な作戦ですら、あなたは帰って来てくれますか?

 また、笑顔を見せてくれますか?

さとりの言葉が指すのは、それだった。彼の無事、それは地霊殿のみならず、地底で待機している全ての者が想う所であり、さとりはその代表格だった。────尤も、それだけが理由ではないが。

 

「ああ、勿論。」

 

それが、零の精一杯の返答だった。その時、ドック全体に指示が出る。

 

『総員、乗艦せよ!』

「もうか、さとり、行ってくるよ。」

「はい、行ってらっしゃい。頑張ってください。」

 

シュンとしたさとりを少しでも元気付けよう、と、零は強引な手に出る。

 さとりの顎を軽く持って、顔を上向かせると

 

チュッ

 

頬に、軽いキスをした。

 

「え?零、さん?」

「精一杯のお返しだよ。さとり。」

 

そうとだけ言って、ペルセウスに乗艦してしまう。轟音を上げて飛び上がり、空で待つ幾多の光点と共に戦場(地獄)へと進んで往く。

 そうして一人残ったさとりは、零がキスした頬を撫でていた。

 零さんが、わたしにキスしてくれた。お返しだって、言ってくれた。

 やっぱり、わたし────零さんが、好きだ。

 一人の女として、零さんが、好きなんだ。

 わたしの種族を知って尚、隣に居ようとしてくれて、最初は離れようとしたけど、あれはわたし達が嫌いになったからじゃない、殺しの事実が、わたし達の邪魔になるって考えたからなんだ。異変の時だって、助けてくれた。勝てないなんて思わず、守ろうとしてくれた。だから、好きになれたんだ。

 さとりは己の芽吹いた感情を『恋』と知った。

 そして恋した者のために祈った。

 空の遥か上、漆黒に染まる世界の中で、最前線で勇猛に戦うこの場にあった船を想像しながら。

 わたしの大好きな人よ、無事で居て

 

と。




いかがでしたでしょうか。
本来なら艦隊決戦も書く予定でしたが、ここで切った方が良いので切らせて頂きました。

さて、次回の「東方黑剣士」は~?
撃て(Fire)!」
「くそ!敵の増援です!」
「なんとしても、半数は削るぞ!」

異空間での初の宇宙戦闘、何を見、何を感じ、何を取るか────
次回第十五話「漆黒の闇を貫いて」
お楽しみに!
また次回の前書きにてお会いしましょう!
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