東方黑剣士   作:鋏人

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はいどうも、鋏人です。
コロナのせいで私の学校は今期ずっとオンラインです、なので時間が有り余っている!という訳で投稿です。

では、どうぞ!


第十七話 要塞戦線 前

No Side

 

「くそ!兵力の二割を東に!」

「今やってます!っ!敵の支援砲撃!」

「弾着まで十秒!」

「ダメコン班を予想区域に!」

「駄目です!どこも手一杯で!!」

 

その様子は、如何な言葉を以てしても形容するのは容易ではなかっただろう。

血は毎秒その量を増し、屍は原型を留めず、色とりどりの光が端から端まで駆け抜け、その度に悲鳴が上がる。

 

 そう、月軍の第二陣、それが既に地底まで迫っていたのだ。なぜこのような状況になったかは、ほんの二週間前の事だった。

 

 

 避難と称した内通者探しの指示から僅かに一週間、地底の要塞が完成し、機能面に問題のないことを確認した零は、第二種警戒態勢を指示した。その指示を不審に思いつつも、部下たちが警備に就いたその日の夜、突如として月軍は妖怪の山を強襲した。

突然のことだったため、人里の避難率は36%止まりであり、それ以上は包囲の危険性も鑑みて撤退せざるを得なかった。

そもそも妖怪とは人間が記憶しているが故に存在しているのであり、人間が誰も居ないとなると即座に消えてしまう。これは信仰を無くした神が消えるのと同じである。従って零はその可能性を出来る限り低くしようとしていたのだが、この強襲は想定外のものだった。

 強襲により妖怪の山は占拠され、紅魔館、守矢、地底、冥界、人里と分断された。そして零直属の第十八中隊はあまりの戦闘続きから休暇を出されており、各人の家へ戻っていた。

 分断された中で月軍の目下最大の目標は心義 零率いる地底軍であり、ここが殲滅出来れば後は個々の能力が多少高い程度であり、物量には敵わないというのが見立てであり、また実際それは正しかった。

だからこそ、このような地獄が展開されているのである。

 

 

「おい!お前ら目ぇついてんのか!」

「うるっさいな!そっちこそ当たってねぇぞ!」

「当てるんじゃねぇ!バラまいて当たればラッキーと思え!」

 

地底の天井に置かれた無数の個人トーチカから罵詈雑言が飛び交いながらも、その下には小さな丘程度は形成出来るほどの死体が積み重なっていた。しかしその上を走る兵の数が、少し前から増え出していた。

戦闘開始から約三日戦い続け、指揮する頭の零は休みなくともまだ立っていられるが、指示を伝える兵らは交代で休んでもその情報量に疲弊していた。戦闘ならこの程度なんのそのだが、どうやら頭脳労働は別であるらしい。

 

『トーチカ3は目標地点6-9に斉射!』

『第二曲射隊!俯角40度、妖力4割5分!』

『ダメコン班A!東部の穴を埋めろ!』

『白兵5から7、ダメコンAの護衛!』

 

それでも、中央の零の回転は異常だった。

 

「トーチカ4と5を地点7-8、6は同じ所に、7、8は奥の本陣の入り口に、9は白兵12を支援、10は広範囲モードに変換」

「待機中の曲射隊、弾種変更。炸裂から徹甲に、そして目標13-6に斉射」

「ダメコンは終わったら即時待避、そして今度は区画6-Eと14-Wに、残りは白兵隊を支援せよ」

 

思考から指示まで十秒なし。頭に妖力を回して無理矢理速度を上昇させる。出来る限り被害を軽減しつつ死の光を炸裂させる。しかし、零も立っているだけで十分無理をしており、少しずつボロが出始めていた。

 

「っ、と」

「おい」

 

視界が半瞬暗転する。狼鬼がそれに気づいて声を掛ける。

 

「少し不味いか?」

 

ようやく自身の状態を理解し出した零は、

 

「一回仮眠してこい、そろそろ交代で仮眠させた奴が戻ってくる。少しくらいは問題ないぞ」

「……どれだけ取れる?」

「二、三時間ってとこだが───」

「じゃあ二時間以内に戻る」

 

そうとだけ告げて指令室を去った。この部屋で指揮権を引き継いだのは副指令たる狼鬼である。

 

「潰されるなよ、被害の大きい東に火力を集中させろ!肉片も残すな!」

「了解!」

 

この要塞は、零が居ないだけで立ち行かなくなるほど柔ではないのだ。そう心の中で言った狼鬼は、彼なりの立ち回りを見せることにした。威勢付く前に、徹底的に潰して精神面で有利をとる。今までの戦いは全てこの戦法で生き残ってきた。その経験を信じているのだ。

 

「全トーチカに通達!照射モード起動!」

「了解、全トーチカ照射モード!」

 

弾幕ではなく、一本の光の線として網を張る。逃れる道はあるが、自由自在に動く砲塔の前ではそれを見いだすのは困難を極めるだろう。

 

「白兵戦用意だ、一時的にもやつらを退かせるぞ」

 

次の一手は、零の躊躇した手だった。白兵戦となれば死者の数は図り知れない。そして命を捨てさせるような行動を躊躇う零に対して、狼鬼は良くも悪くも淡白だった。そして躊躇わないが故に事態を客観的に見ていた。

 

「(白兵戦で被害が大きくなれば、流石に退くだろう。そろそろまともな休息がないと兵が敵の攻撃以外で倒れかねん。ここだけ踏ん張れと言えば少々は持つだろ)」

 

中々に冷たいが、客観的に見ることが出来ているからこそとも言え、また長くこの地で生きていた勘とも言える選択だった。

 

「上から借りた陸戦隊を出す準備だ。開始は零の戻ったとき、目標は敵右翼に設定しろ」

 

───いい加減に教えてやらないと、調子に乗るなぁこれ

その目は、静かに燃えていた。

 

 

「───戻った、状況は?」

 

一時間半後、幾分か顔色の良くなった零が、指令室に戻った。

 

「五分ってところ、白兵戦で一時的に敵を退かせる作戦だ。」

「そうだな、それが打開の手になる。感情的な頭を冷やしておいた。少しはましだ」

「分かった、白兵戦の用意は完了している」

「仕事が早いな、ついでに、俺も出る」

 

その言葉に指令室が騒然とする。最高司令官自ら戦闘に参加するのは、一般的には悪手であることが多いにも関わらず、自分も出ると言い出したのだから当然だろう。しかし、その騒がしさは動揺ではなかった。

 

「おし!それでこそ零だ、行くぞ!」

「ちょっと待て!総員に告ぐ、とにかく奥に弾を叩き込め。連絡網を少しでも妨害するんだ!」

「聞いたな?さぁかかれ!」

 

そう、感心の騒がしさだった。やはり根は生粋の暴れん坊、このような状況で戦線に出るのは誉れと感じる者たちだからこそ、許された行動だった。

出陣の準備が出来た零は、その黒いロングコートを翻して言う。

 

「総員、目標は敵右翼。一切合切消し飛ばせ!!」

 

そして自身は誰よりも速く、要塞を抜け出していた。手近な敵を切り裂くと、

 

「生成」

 

もう一人の零が現れた。

 

「さぁ、反撃開始だ!」

「そうだな、イレ!」

 




はい、終了です!

さて、ようやくイレが再登場。そしてここからは楽しい楽しい虐殺イベントです。さぁ、暖気は十分か?

次回の「東方黑剣士」は~?

零とイレ、誰よりもお互いを知るコンビの実力は?そして要塞より更に後ろで事件の予感?

次回第十八話「要塞戦線 後」
お楽しみに!また次回の前書きにてお会いしましょう!
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