いい加減に動かさないと話が進まず、延々とあそこで小競り合いされて敵わんのでやっていきます。
では、どうぞ!
要塞に戻った零達は、ニクスの死を悼みながら戦闘結果を纏めていった。要塞は全体の30%が損失した。対して人的損失は、全地底軍1568人中、364人と、無視出来ない大きさながらも、敵の膨大さを鑑みれば凄まじいキルレシオである。
事後書類、特に戦死者の情報と照らし合わせて遺族への補償やニクスの仕出かしたことについて纏める文書を作成して、更に要塞の応急処置と修復についても頭を回す。
「指令、破壊された部位はどうします?」
「修復が前提だけど、無理な所は潰して建て直しか破棄して別の区画に回す。人形でも立てておけば囮にはなるだろ」
「なら、最前線のAは───」
「囮人形立てて、爆弾でも詰め込んでおいて」
そうしている間に、ふと地霊殿の方から連絡があると、一人の妖怪がやってきた。地霊殿側からの連絡はなかったので、気にしていた零はすぐに妖怪を通し、話を聞くことにした。しかし、入って来た妖怪は、息を切らして酷く慌てた様子だった。
「緊急連絡です司令官!あの人が、あの人が!」
「落ち着け、一息ついてから───」
「それ所ではありません!
古明地さとり様が、連れ去られました!」
指令室に激震が走る。誰もが一瞬の驚きの後に怒りを露にする。自分達の主であり、一部の者にとってはこの戦争で自らを生き残らせてくれた零の恩人。当の零はと言えば無言で椅子に座り、目を閉じていた。しかし額には青筋が浮かび、頭の中では犯人の目星をつけ、制裁の方法を考え、報復手段を構築していた。
「(そんな手段とは思わなかったが、足が出たな。この時点で相手はこちらに姿を晒している筈。地霊殿の巡回メンバーは固定。そこから探れば───)巡回メンバーが持ち場を離れた時間はあったか?」
「交代で睡眠をとっていたので、交代から仮眠室までは完全に監視無しでした」
「じゃ、その中の天狗で今呼び出せるのは?」
「連絡前に確認しましたが、一名のみ呼び出せず、捜索した所、持ち場以外の場所で月軍と接触していましたので、身柄を確保しました」
「お手柄、そいつはさっさとふん縛って房に叩き込め」
最後辺りは零の口が悪くなる。それにも関わらず顔は小さく笑っていた。
「それで、処罰は如何しましょうか?」
「俺に任せておけ、地獄は見ない筈だ。それと明日の朝全員集めろ。状況を説明する」
思ったよりも温情のありそうな処罰となりそうである。それはそれで軍としては問題であるのだが。なおこの時零の思考は考えないものとする。
「全幹部クラス以上を召集しろ、対策を協議する」
そして全幹部クラスが集合した所で、全員へ向けて事実確認が行われた。まず古明地さとりが誘拐された事、理由は不明。次に下手人は捕らえられて、独房へ放り込んである事。追加情報、尋問の結果人質としての機能があると見られている事。以上の事から、古明地さとりの早期奪還についての是非が問われた。結果は否。当然である。重要人物である事は事実ながら、再編も終わらぬ内には返り討ちが良い所。そして着地点としては二週間後の侵攻に際して奪還を行う事が確定した。
「それと、下手人については地獄を見せるような真似はしない」
その言葉で会議場が揺れた。重要人物の誘拐の補助となれば重罪も良い所である。これが許されてなるものか。と全員からの非難の嵐であったが
「だから」
零は背中から剣を抜き、床に突き立てる。
「奴が
意味を幾人かが理解し、それを隣に教えていくことで収束した。
翌日、朝早くから召集された事情を知らぬ全員は、眠い目を擦り、あくびしながら零が話し始めるのを待っていた。点呼報告を受け、零は話し出した。
「さて、皆眠い中ありがとう。早速だが、本題といこう。
古明地さとりが、誘拐された。」
何度言っても、心が軋む。誰よりも内通者を警戒していたというのに、まるで意味がなかった。その事実が零を責める。
「下手人はこいつだ。こいつはさとりの護衛要員の立場を利用し、さとりを人質にした。幸いにも有能な妖怪達により、捕縛されて、ここにいる。
昨日、俺は幹部の前でこう言った。『地獄を見ることはない』とな。この言葉が意味するのは、俺がこいつを許すということ」
激震。そして非難の声。これは零の想定していたことだった。声を上げぬ者達も、心の中で零を罵倒した。対し下手人の天狗は目を輝かせる。
「───ではない。
ここは旧地獄。この地獄とは、この地そのもののことだ。つまり───」
抜剣、首に剣を当てる。
「さぁ、弁明はあるか?」
「糞が!お前らなんか絶対に負ける!あの方が居る限り、幻想郷に勝ち目なんざねぇ!なら、勝てる方に打つのは当たり前だろ!!」
極々普通の答え。零として予想はついていたが、本人から聞くとなると尚のこと心にくるものがある。
「これはある種の見せしめだ。さぁ、まだ居るだろう?お前に言っているんだ。出てこい、さもなくばこうなるぞ?」
「この、悪魔!化物!零、貴様も大概人を殺して回って、何も変わらないだろ!」
「お前と俺を同列に語るか。そして答えよう、俺は悪魔だ、化物だ、敵を殺す死神だ。
だが、それならば一人逃げたお前は何だ?」
最後の最後まで罵倒を続けた天狗だったが、零の使用したV字を描くソードスキル『バーチカル・アーク』により、両の腕を切り離され、上下に両断された。
「諸君、問おう。俺達はどうするべきだ?このような卑劣な輩に対し、どのような制裁を加えるべきだ?」
『殲滅だ!徹底的な殲滅だ!』
大衆を煽る。憎しみを増幅させる。そしてその矛先を他へ向ける。そうして、大衆は止められない勢いを持つ。かつてより扇動者が使った常套手段。
声に反して、彼の心内は静かだった。自身の心を整理していたのだ。何故、ここまで自分がさとりに執着するのかを。そして自覚した、自分が古明地さとりという少女を好いていたことを。
「ならば、今は身体を休めろ。そして
可憐な少女を誘拐した糞共に、刃を振りかざせ。以上だ」
そして、それを奪い、あまつさえあの男のように汚そうというのなら、修羅に落ちても、取り戻す覚悟を決めていた。
「(イレ、気付いたぜ)」
「(待たせ過ぎだ。あの娘は自分の気持ちにとっくに気付いて、地霊殿の何人かにはバレてるぞ?)」
「(自分の心ほど分からん物はないな)」
イレと会話しながら、拳を振り上げる部下達に向かって手を振る。これでいいのだ、誰もが怒り、それを気付けなかった自身や護衛要員から反らし、企んだ者へ向ける。それが軍を『率いる』上での要素の一つ、モチベーションの維持になる。そう、零は思った。
はい、終了です!
うん、気付いた上に決めたかぁ。展開が早いのは許してください。今シリーズ化するのは決めてるのですが、それが終わり次第書き直す予定でいるので。
物語は壮大なサーガの序章、スターウォーズで言うならエピソード1にようやく入り出した所、お楽しみに。
今回から次回予告は無しにして、サブタイトル予告だけにしますね、ネタバレ酷いので。
次回第二十二話「非情の覚悟」