東方黑剣士   作:鋏人

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どうも、鋏人です。
関係ない話ですが、今作では出せなかった覚醒ニクス君、あれ設定確認したらほんと大概にしろよと思うほどのチートっぷりでした。いつかお見せ出来るといいなぁと思っています。
そして、自分の書きにくい描写があったせいで下手かも、ごめんなさい。
では、どうぞ!


血にまみれた恋物語
第二十三話 超越の欠片 前編


 夜も明けぬ前の早朝、二千の妖怪と人間が各々の武器を手に直立不動の姿勢をとっていた。その視線の先に居るのは、我らがお馴染み心義零である。

 

「朝早くからありがとう。さて皆、前回言った地上再侵攻作戦の決行は、皆の熱い意思の下に、本日付けで開始することとなる。前にも語ったが、これは地上の奪還と同時に、俺達の主を取り戻す作戦でもある」

 

零は言葉を一旦切って、辺りを見渡す。ざわめき一つなく、皆が零を見据え、真剣な眼差しを送っていた。

 

「───本作戦は、前回の内通者の一件を踏まえ、極秘事項として扱う。既に該当する者には連絡が行っている筈だ。それ以外の全員にも、重要な仕事がある。

 

 

裁きの時間だ。目の前に来た敵は心のままに潰せ、そして一人たりとも、死ぬことは許さん。

作戦名は『オペレーション・フォア ワン(ただ一つのために)』。勝利、それだけを信じて、戦え。

 

総員、進軍せよ!」

 

最後、一際大きな声で言い切った零。そしてそれに呼応して、大部隊が進んでゆく。これより先、前線とは彼らの居る場所となるだろう。

 それより遡ること五日。誘拐された古明地さとりは、暗い部屋に繋がれていた。

 

Side さとり

 

私は、混乱の中にいた。零さんに会えると思っていたのに、気付けばこんな所にいる。なんで?、とにかく、早く、逃げないと───って、これは、鎖?

更に混乱した。私が今居るのは、敵の根城。それで、私は誘拐されて、それで───

 

「っつ!嫌ぁ!助けて!」

 

そう声を上げた時、部屋の壁が開いた。多分扉だろう。それよりも私は、自分に起こるかもしれない事態に恐慌状態に陥っていた。

 

「おやまぁ、覚り妖怪の末裔とはこんなにも弱々しいのですねぇ」

 

体の中から、何か抜き取られたような感覚がした。

 

「ほう、これが貴女の能力ですか。使い勝手が悪い部類になりますね」

「あなたは、一体………」

「おっと申し遅れました。私は◆◆◆、ダツとお呼び下さい、古明地さとりさん?」

 

名前が知られている。零さんもよく言ってたけど、本当に私の存在は大きいようだ。零さん風に言うなら、戦略的価値がある、といった感じに。

 

「そう思っているなら、間違いです」

「何を言って……?」

「「そんな風に心は読めない筈」ですか?」

「っ!」

「そうだ、こちらの心もお見せしましょうか?」

 

この男は、私の心を?そう思った途端に、男の心も見えてしまった。

嫌だ、見ないで、見せないで、もう見たくない、嫌、嫌嫌嫌嫌嫌嫌もう

 

「やめて───!」

 

散々に自分と違う思念を送られて、私の意識は途絶えた。

 

───ここは?確か前は、えっと、あの

 

「二日もしてようやくお目覚めですねぇ、さとりさん?」

 

あ、男に、思念を送られて、それで───

 

「ひぃっ!?」

「そんなに嫌がることもないじゃないですかー。ちょっぴり教えてくれたら、酷いことはしないのですがね」

「なぁに簡単なことです。

 

心義零の平日の行動パターンと敵の配置を教えろ」

 

底冷えするような冷たい声。それだけでまた震える。そして、私は行動パターンなんて知らない、配置も、よく分からなかったから地霊殿のことしこ知らない。でも、言えない。言えば零さん達が死んでしまう。

 

「しら、ないです」

「シラを切りますか。ならばこうさせて頂きますよ」

 

男が、後ろに回って何かを取って───

瞬間、凄まじい痛みが身体を走った。

 

「な、に、、?」

「教えないとか言う君には罰を与えまーす!内容は簡単、指を切っていって、後は慰み物行きでーす!」

 

痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛いいたいいたいいたいいたいいたいいたい!!

 

「もう一本行きまーす!」

「ひぎゃぁぁっ!」

 

また、今度は左の中指。次に薬指、小指に親指。左手が丸くなった。そして、右手も

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ──────!!!」

「良いねぇ。それと、僕は気の短い質だから、同じ質問はしないよ。さっさと落としちゃおうか!」

「やめて、やだ、やだ、や───いぎぃぃぃ!?」

 

右の人差し指と中指が切り飛ばされる。ああ、これで零さんと料理出来なくなっちゃった。

 

「そうだ、君のスペカを真似してみたよ。

『侵食 未来の傷』」

 

頭の中で声がした。

 

───結局、さとりも野蛮な妖怪だったか

 

言わないで

 

───司令官、どうされますか?

───大広間に出せ

 

場面が切り替わる。私の傍には零さんが居て、そして大勢の人が取り囲んでいて、何故か私だけが正座していた。

 

───皆、聞いてくれ。こいつ、古明地さとりは俺達が戦っていた時間を、一人地霊殿でぬくぬくと過ごしていた。俺達が死にかけながら敵を殺していた時、こいつは何もしなかった。

 

なんで………

 

───問おう。こいつにふさわしい最期はなんだ?

 

止めて………

 

───皆の意見を尊重しよう。さぁ跪け、最期に言い残したことはあるか?皆も、言いたいことがあれば言ってくれ、処刑を止めて話を聞こう。……こいし、どうした?

 

こいし、止めて

 

───お姉ちゃん、邪魔。死んじゃって

 

嫌、嫌、

 

───さて、お前はどうだ?

 

この声音は、相手を近い人としてではなく他人として見ている声。もう、見捨てられちゃったんだ。じゃあ、最期に、、、

 

『大好きです、零さん』

 

そう、精一杯の笑顔で伝えた。

 

───ふん、執行する

 

愛剣の片方が首に迫って、視界が転がる。地面がすぐそこにある。沈む、沈む、沈む。意識が、もう戻れない所まで───

 

Side change Side 零

 

凄まじい進行速度で地底軍は妖怪の山付近の一帯を確保した。一旦本陣はここで待機させて、作戦第一段階、捕虜の解放を開始する。距離をとってハンドサインだけで来るように指示した。

 

「我々の目的は捕虜の解放だ。敵に見つかるな、万一見つかった場合は連絡される前に無力化しろ」

『了解』

 

そうして始まる潜入作戦。これが、誰にも気付かれる可能性の低い作戦だった。大規模な攻撃は内通者が居たらおじゃん。となれば内通者の可能性が限りなく低い者だけでの潜入ミッションをこなす方が安全は保証しないが被発見率は低下する。

 

『こちらアルファ、檻の前に着いた』

 

アルファ隊はここの内部構造をよく知る者に任せて、俺の率いるブラボー隊は司令官を探す。ゆっくりと、静かに、動くのは一瞬、不審な動きを関知した敵は

 

「動くな」

 

一人が口を押さえ、隊の内三人で四肢を固める。そして正面からは俺が剣を突き付ける。

 

「お前らを連れてきた艦隊はどこだ?」

 

首に切先を当て、殺さない程度に皮を切る。

 

「なぁ?」

「むぐっ?!むんんんぐぐ!」

「離してやれ、余計なことは言うなよ?」

「か、帰った!艦隊は帰っ」

「殺れ」

 

頭を押さえていたやつが首に手を回して一回転。ポキッと軽い音がして、敵兵は崩れ落ちた。そしてラッキー、どういう事情かは知らんが艦隊は帰ってくれたらしい。それではもう一人くらい捕まえてもう一つの聞きたいことを吐かせよう。通路を一人で巡回している兵の首を捕まえ、剣を当てながら質問する。

 

「静かに質問に答えろ。前の奴は声が大きくてな、死んで貰った」

「分かった……!何が知りたい……!?」

「綿月依姫はどこだ?」

「依姫なら流転様の艦隊と一緒に月に帰ったっ!」

「おい、黙らせろ」

 

聞きたいことはこれで全部。後ろで待機していた部下に殺すのではなく気絶させることを指示。静かに話せるやつはまだ捕虜として尋問する価値がある。命が惜しいと思ってこっちに従ったんだから。うるさかった奴が動転していて可能性は否定しないが、その声が味方へ報せるためのブラフとも限らないわけで、そういうのは処理するのに越したことはない。

と、ここでアルファから通信が入った。

 

「こちらブラボーリーダー」

『アルファリーダーよりブラボーへ。古明地さとりを発見。ただ、少し言いづらいんだが……』

「ブラボーの質問にはい、いいえで答えろ。それは女性の尊厳を貶める行為か?」

『………イエス、だ』

「そっちに行く。捕虜はどうなった?」

『ほぼ解放済み。最奥がここだ』

「場所は?」

『地下一階の────』

 

瞬間、爆発音。そして通信途絶。音から察するに通信機は床に転がったようだ。

 

『どーも!地底の心義零君!僕はダツ───』

「っ!」

 

最悪のパターンだ。おそらくアルファ隊全滅。通信機は奪取され、すぐに基地全体へ指示がいくだろう。通信機のマイクをオフに、そして最速で指示を飛ばす。

 

「ブラボーリーダーより総員、緊急退却!」

 

手近な窓を蹴破り飛翔。そして通信機の周波数を変え即断。

 

「総員!地点A2-A8へスペルカード『連府 散弾迫撃』を使用せよ!」

 

新たな戦術、統一スペルカード。何も同じスペルが使えないわけではないことは、かなり前の異変の時にさとりが証明してくれている。軍として同一規格の弾幕が一つもないというのは致命的、無いなら作ればいいの理論で取り敢えず作ったのが、この『連府』シリーズだ。

千以上の弾幕が斜方へ投射され、それが空中で分かれる。三式弾の応用、榴弾が面で到達する。これで半分くらいは消せた。ついでにあいつも傷は負ったに違いない────

 

「この程度かい?」

 

前言撤回。これは下手打てばあっという間に詰むな。

 

No Side

 

 飛来した榴弾の雨を味方を盾にして回避した男、ダツ。それに対し、零は精鋭による足止めを取る。

 

「第2、3分隊は俺に続け!残りは捕虜の保護!綿月依姫及び敵艦隊司令は帰還した!終わったら好きにしてろ!」

 

言うが早いか二振りの剣を抜き放ち、挨拶をする。

 

片手剣ソードスキル『ヴォーパルストライク』

 

ジェット機を思わせる重低音と共に、心臓を狙う。それをダツは片手で弾くと、その太刀筋を見て笑った。

 

「ふふふ、それ、外の世界の小説のじゃん」

「よく知ってるな」

 

図星であることを驚くも気にしない素振りを見せる零だが、直後に理性に穴が穿たれた。

 

「関係ないけど、君の主は真っ白になったよ?」

「───ふぅっ。決めた、首を落として司令部に飾ってやる。題名は……『愚か者の末路』ってとこか!!」

 

同時に弾幕を展開。大型のものに気を取られた隙に太陽の方向へ飛翔。視界の外から強襲する。しかしダツはそれを読んでいたけのように剣を受け止め、更に弾き返す。

 

「(届かねぇか。なら!)」

 

自身の義妹の模倣。明確な動きも技も知らぬが

 

 スペルカード 獄界剣『二百由旬の一閃』

 

───誰より「模倣」に長けるのは疑いようもない。今ですら、模倣者なのだから。

 巨大な玉を発射してそれを切り、その切れ目から多数の子弾を投射する。当たらなくてもいい、ただ動きが制限された所で

 

 ソードスキル『スネークバイト』

 ソードスキル『ソニックリープ』

 

跳躍。上段から襲い掛かる剣をダツが弾くと同時に左から右、右から左へと高速の連撃が狙い確かに切り捨てる。

 

「残念、」

「うっそだろお前──」

「──貰った」

 

ということもなく、零の中から何か光ったものを取り出したダツは、妖力刀を生成して切りつける。しかも、その剣は刀身の紫色と別に輝いていた。

 

 ソードスキル『ホリゾンタル』

 

呆気なく切られた零は、地上へ落下しながらも、口元を歪めて

 

「撃て」

 

隙を窺っていた部下達へ攻撃を指示する。その半瞬前に零を見据えたダツは、その僅かな思考を読み取った。

 

「もう効かないのに、なんで分からないかな?」

 

 ソードスキル『サイクロン』

 

緑光を纏った剣が、一回転の後に四方を囲んだ零の部下達を上下に両断し、その命を絶った。

 

「零!お前大丈夫か!」

 

あっという間に分隊が全滅したのを目の当たりにした地底軍は、主力級の妖怪を零の支援に差し向けた。星熊勇義ら鬼、十七中隊の計34人である。

 

「あいつ、何者だ?」

「分からん、だがやり手なのは認める」

 

受けた傷は腹部の斬撃と落下による打撲。この程度ならばと妖力で最低限の応急処置を施すと、ダツを見上げ、

 

 ソードスキル──

 

「使えない?」

 

そして、零は相手の名乗りをふと思い出した。

 

「ダツ、だつ、脱?いや違う、だ、だ、だ……奪?」

 

早くも能力に気付いた零は、ダツを最上位の排除対象に認定した。しかしこれでは心が閉じていない妖怪ないし人間しか戦えない。また自身もさとり達と一緒に居たことで心が開き出している。

 

「総員待避、俺一人でやらざるを得ないらしい」

「どういうことだい?」

「あいつはおそらく触れた相手の能力を奪う力がある。さとりもその餌食になったと推測できる」

「触られたら終わり、か。しかも相手は覚りの力もある。詰んでね?」

「いやを俺はさとり本人すら心がおぼろげにしか見えないくらい閉じてるから、冷静になっていれば見られはしない」

「いやでも」

「でももだってもない。こう伝えろ。『敵の司令官に攻撃を行え、俺への誤射は気にするな』と」

「当たらないんじゃ?」

「当たらなくても、回避に力を使わせろ」

 

返事を聞く時間すらも惜しい零は、落ちた剣を拾い再度飛翔した。

 

「まだ生きてた?」

「勝手に殺すな」

 

そして剣を振り上げた瞬間

 

「予想してたが───」

 

剣が砂のように崩れ落ちた。当然である。零の能力に合わせて作ってあった剣は、能力があるからこそ使用出来る。つまり能力を奪われた彼は、ソードスキルという絶対の技と同時に武器すらも失ったことになる。

 

「終わりじゃない?」

「終わらせない」

 

ダツは司令官である零を殺せば昇進間違いなしと判断し、また軍全体での指揮能力で彼に次ぐ者がいないことを理解していたため、降り注ぐ榴弾の雨よりも零の排除を優先した。

 

「死ね!」

 

ソードスキルの乱舞。デメリットを補って剰りある素手への攻撃力は、着実に零を追い込んでいく。零は記憶と知識というアドバンテージを利用して限界まで引き付けて回避をし、その隙間へ弾幕を差し込む。極限まで思考を読まれないようにした回避は、覚りへの対処として最も有効ながら、そちらにリソースを割くために反応速度は落ちる。その中で、七連撃ソードスキル『デットリー・シンズ』が零を捉えた。

 

「がぁぁっ!」

 

両腕で間一髪の防御をしたが、左腕はすでに切断三秒前といった様子。それを見たダツは勝利を確信してほくそ笑んだ。しかし万一を考えて煽りをいれた。

 

「そういえば、君の11歳の誕生日プレゼントは貰えたかな?」

「貴様らは知ってるだろ!あの時、俺の両親が死んだことくらい!」

「それはそうさ。何て言ったって

 

 

 

 

あれの計画者は僕だ」

 

零の頭には、怒りすら浮かばなかった。ただ無性に、力が欲しくなった。「黒の剣士」の模倣であること、それは一種の彼の足枷であった。「自分は黒になれない」と彼は言った。しかしそこには「黒になりたいと思わない」という意思はなかった。無意味にも主人公に憧れた。キリトというキャラクターの存在に憧憬の念を持った。だから、死なせない、死なないに持てる力を注いだ。けれど今だけは、

 

「従え、率い、統べる者が命じる。

 

 

理を超越する欠片を、俺に寄越せ」

 

彼は、殺意のままに力を振るう。

 

『ルールブレイカー

 

始動(アクティベーション)!』

 

零の両手から、『黑』が広がった。

 

 

 




はい、終了。最早話すこともなくなったので、汚い催促だけ(もっと酷くなった)
面白かったらお気に入り登録、感想などお願いします。来るだけで嬉しくてニヤニヤします(危ない奴)。
さて、次回のサブタイトルは~?
第二十四話「超越の欠片 後編」

お楽しみに!また次回の前書きにてお会いしましょう!
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