東方黑剣士   作:鋏人

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どうも鋏人です。お待たせしました。

理解者とは誰か、予想しながら読んで下さい。

では、どうぞ!


第四話 新たな理解者

◆side 零

 

 襲撃の翌日、明朝に起きた俺は食堂に「仕事を見つけてくる」と書いた置き手紙を置いて地霊殿を出た早朝なので誰もおらず、地底の出口まで簡単に行けた、のは良いのだが、そこには大穴が空いていて、登れるような箇所もなかった。そういえばポケットに入れた例の物に何か書いてないかな。紙を取り出すと案の定、幻想郷のガイドブック的な物があった。紫さん、ありがとうございます。中を見ると舞空術の手引きが書いてあった。え?ここの人ほとんど空飛べるの?マジで?というわけで舞空術の練習を一時間程すると、簡単に飛べるようになった。やっぱり親族が幻想郷の人だと違うのかな。飛んだ感想を言うと、すごい楽しかったけど俺は地面に足つけていた方が好きだ。さっさと地上に出ると、

 

「ここ、どこだ?」

 

山の中だった。仕方なく少し歩いてみると

 

「あなたは誰です!」

「うおっ」

 

頭に獣耳があり、手に大剣を持った白髪の少女に声をかけられた。

 

「えっと、貴女は?」

「私ほ犬走椛、ここ『妖怪の山』の哨戒をしています。貴方も名乗って下さい。」

 

犬走さんが少し柔らかい口調になった。あのままだと斬りかかられても不思議じゃなかったからな。落ち着いて話が出来るのは大きい。

 

「俺は心義零、外来人で、地底から仕事を探しに来た。」

「えっ?!地底からですか?あそこの妖怪は地上に上がらない約束をして───」

「あー、その件だけど、これ見て貰える?」

 

俺は一つの紙を取り出す。それを見た犬走さんは目を丸くした。

 

「これ、本当ですか?」

「間違いなく。」

「天魔様の下へ案内します。ついて来て下さい。」

 

そう言われてついて行き、案内されたのはなにやらバカでかい広間、大勢の妖怪が左右に控えている。俺が下手な真似をしたら殺る気だな。用心深いよ。そして広間の中心には、

 

「外来人とはお前か。妖怪。」

 

とてつもない雰囲気を醸し出す、一人の妖怪がいた。

 

「初にお目にかかる、外来人、一角獣の妖怪、心義零です。」

「零、敬語を外してくれ。堅苦しいのは嫌いだ。儂は妖怪の山の長、大天狗の天魔だ。」

「ありがとう、敬語は苦手なんだ。それはそうと長とは、結構なお出迎えだな。」

「よう言う──椛。」

「はっ!」

「こいつの持っていた書類を。」

 

 

天魔は椛が俺から取った書類を手に取り読む。最初小馬鹿にした表情だったのが、すぐに真剣な顔になり、読み終えると俺の方を向いた。

 

「これは、事実か?」

 

そう聞くのは当たり前だ。その書類には『心義零において、地底─地上間の不可侵条約を特例で除外し、本人の望む場合に限り仕事を与えよ。八雲紫』とあるのだから。

 

「間違いない。」

「お前、誰かの子孫だな?それも高名だ。」

「よくお分かりで、俺は心義妖理の孫だ。」

「妖理?!あやつか?!」

「どうかしたか?」

「ああ、あやつはの────

 

 

 

 

 

かつての対月戦争にて、数多の妖怪をすくった、外風に言うなら、ヒーローと言うやつだ。」

 

マジか、だからじいさんが紫さんみたいな人を簡単に呼び出せたのか。てか、やな予感がする。

 

「じいさんがそんな人だったとはな、言っておくが、俺はそれを傘に着るつもりは全くない。」

 

これほ間違いない本心だ。そんのものに頼る予定は端からない。それを聞くと天魔は不敵に笑った。

 

「そうか、ククッ、改めて、妖怪の山へようこそ。」

「ありがとう、天魔。」

「天魔様!このような輩───」

「黙れ、零、すまんな。ここは少々排他的なのだ。」

 

口を挟んだ天狗を天魔が一喝し、少し申し訳無さげな顔をする。しょうがない、俺は元々外の奴なんだから。

 

「かまわないよ。文句付ける奴がいたら斬るだけだから。」

「貴様!言わせておけば!」

「大天狗、文句があるのか?」

「大有りです!このような輩を山に入れるなど──」

 

尚も文句を付ける大天狗、このままだと確執を残しそうだな。

 

「ならさ───」

「なんだ?」

「俺と天魔さんで決闘しましょう、俺が勝てばこのまま、天魔さんが勝てば俺が出て行く。ここにとって悪い事はないでしょう。」

「む?良いのか?」

「力を示すにゃちょうど良い。」

「分かった、勝利条件は相手を行動不能にする、で良いな?」

「勿論。」

 

俺の一言でいきなりながら始まることになった決闘、広間でやろうと言われ、周りの天狗達が下がり、天魔が剣を抜く、かなりの妖力を感じる。妖刀か。俺もエリュシデータとレスキュラーを抜き放つ。妖力が広間に充満していく。誰かが硬貨を投げ、それが落ちた瞬間、俺は駆け出した。

 

◆no side

 

「行くぜ!『ソニックリープ』!」

 

零はレスキュラーを前に突き出し、高速で突進した。天魔はその切っ先を刀で逸らす。零はその体勢のままエリュシデータを振りかぶる。

単発ソードスキル『スラント』

振り上げられたエリュシデータは光と共に天魔に向かって行く。天魔は宙を舞い、回避する。

 

「かぁ!」

 

天魔が気合いと共に上段から斬りかかる。零はソードスキル『クロスブロック』で防ぐ。

 

「スペルカード『天符 螺旋』」

「っ?!」

 

スペルカードを知らない零は天魔の放った弾幕にあえなく被弾する。

 

「おい!それなんだ!」

 

聞かれて天魔は手を止める。

 

「妖力弾だ、知らんのか?」

「知らんさ勿論!まだ来て二週間弱なんだから!」

「単純だ、妖力を圧縮して放つ、スペルカードは『弾幕ごっこ』と言う決闘法で使う技のことだ。」

「ご丁寧にどうも!お返しだ!『カトラブル・ペイン』!」

「ぬっ!?」

 

レスキュラーでの四連突き、天魔は弾幕を張るが───

 

「何?!」

「やっぱりか!」

 

零は弾幕の実体部分を正確に貫き、破壊した。動揺する天魔、一瞬にも満たない時間だが、零には十分だった。

 

「喰らえ!片手剣最上位ソードスキル、『ノヴァ・アセンション』!!」

 

エリュシデータによる十連撃。天魔は刀でほとんどを弾く。そしてソードスキル唯一の弱点、『技後硬直』が発生した。止まる零に天魔は風を纏った一撃を放つ。

 

「がぁ──ぐっ!」

 

動けない。はは、こんだけかよ。

 

「その程度か。」

「っつ───!」

 

天魔の言葉が零の心に刺さる。

 

 

 

 

「零、お主が地霊殿から来たのは分かっておる。そして仕事を求めたのが()()()()のためだということも。お主の想いは、その程度か?」

 

零の中を何かが駆け抜ける。

 

 

 

俺は……そんな程度じゃ…ない!みんなに、笑っていて欲しい!あの笑顔が見たい!だから──俺は───

 

 

 

 

 

「──ざけんな、俺は、地霊殿の──みんなの、為に───今──

 

 

 

 

 

 

此処に立っているんだ───!!」

「よく言った、零。」

「ありがとう、天魔。お陰で──まだやれそうだ。」

「そのようだな、ただ──」

「どうした?」

「見れば分かる、お主、限界だろう?」

 

零は顔をしかめる。仕方がない、天狗の長の風を使った一撃をもろに喰らったのだ。立っている事自体そもそもおかしい。しかし、零は天魔の問いに答えず、剣で返した。

 

OSS (オリジナルソードスキル)、スターリィ・ティアー。」

 

五芒星の頂点を突く五連撃。細剣の正確無比な突きは、天魔を捉える。しかし天魔も風で切っ先を逸らす。

 

「精々十連か、この程度。」

「もっと強いのをご所望で?」

「あるなら、な。」

「言ったな!OSS、『マザーズ・ロザリオ』!!」

レスキュラーを引き絞り右上段から左下にかけて五発、左上段から右下にかけ五発、天魔はマザーズ・ロザリオと同時にスペルカードを使う。

 

「スペルカード!『五陣の突風』!」

 

弾幕と刀と風とが同時に襲うが、マザーズ・ロザリオの始めの五発の前にあえなく消え、次の五発が天魔を捉える。そこで一旦零は剣を下ろす。安心した天魔だが、異変に気づく、剣が輝きを失っていない。と、いうことは───

 

「ハァ!」

 

先ほどのクロスした突きの交点に向けた、最後の一突きは天魔を吹き飛ばす。零は天魔に話し掛ける。

 

「天魔、次で、終わりにしよう。」

「奇遇だな、儂もそう思ったところよ。」

「全力で行くぞ───!」

「来い───!」

 

天魔は正眼に刀を構え、風を纏わせる。

零はレスキュラーとエリュシデータを前を出して交差させる。

先に天魔が動いた。

 

「『空斬千風刃』!!」

 

風のアシストを受けた連撃と無数の風の刃が四方八方から零に襲いかかる。

零の交差させた剣は青い光を放ち───

 

「星屑のように、舞い、襲え!

『スターバースト・ストリーム』!!」

 

空間を灼くがごとく飛び散る白光はさながら星屑。最早目で追うことすら難しい剣閃は、天魔の剣と交錯し、さらに火花を散らす。しかし天魔の連撃が終わり───

 

「ハァァァァアア!!」

 

────零の剣は止まらない。その場で回転して二刀で切り払う。そこから袈裟懸けのオンパレード。

スターバースト・ストリームの十六撃目、全身の力を込めて突きを放つ。天魔はそれと同時に刀を凪ぎ────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「負け、か───」

 

 

 

 

天魔の剣が、一瞬、速かった。零は行動不能。つまり、零の負けだった。

 

◆side 零

 

 俺は天魔に負けた。大敗だ。さて、敗者は長居せず消えるとしよう。俺は立って広間を出ようとする。

 

「待ってくれ!零殿!」

 

声をかけたのは驚いたことに俺が山に来るのを反対した天狗だった。

 

「なんだ?」

「私の間違いだった。貴方だけです。天魔様に太刀を入れたのは。先ほどは謝ります。どうか、山にて働いて頂けないでしょうか?」

「良いのか?俺でも。」

 

嬉しい話だが自分から決闘を持ち掛けて負けて、おまけに約束を破るなんてとんでもない。

 

「零殿、いや、零さん。居てください。」

「俺は覚り妖怪の所に暮らしている、あんた達まで標的になるぞ。」

「零、そんな程度、どうともないわ。」

「天魔………」

「その通り、覚りは何も悪さはしていない。地底と人里の馬鹿が下らんことを宣っているだけ。」

「不可侵条約がなんぼのもんだ。差別を受けし覚り妖怪を助けよう。零、貴方の家族なのだから。」

「零さんみたいな人は得難い。」

「本当に、先ほどは悪いと思うよ。」

「皆さん………」

 

みんな口々に覚り妖怪を擁護する発言をし、俺に「此処に居てくれ」と言ってくれる。

さとり達を肯定する妖怪がまだ地上にいた。それが嬉しかった。まだやり直せる。そう思って決心を固める。

 

「皆さん、ありがとうございます。では、心義零、本日今を持って、妖怪の山で任務に着きます。」

『よろしくな!零!』

 

天狗達と思いを繋げた時、空間が歪んだ。

 

「紫さん、なんの真似ですか?」

 

歪んだ空間を睨み付け、エリュシデータを抜く。他の天狗達も刀を抜き、臨戦態勢を整える。割れた空間から紫さんが出てくると、妖力を強めた。しかし紫さんは涼しい顔でスキマの縁に座って俺の方を見る。

 

「零、やってくれたわね。」

「何がです?」

 

俺はソードスキル、『ヴォーパル・ストライク』の構えを取り、何時でも放てるよう切っ先を紫さんに向ける。しかし紫さんの言った言葉は予想外のものだった。

 

「よくやったわ。」

「は?」

「紫様、どういうことです?」

「紫ぃ、脅かすんじゃねぇよ。」

「あらごめんなさい。いやね、まさか天狗達が覚り妖怪に対して肯定的なことにびっくりしたのと、さとり達の守りが固くなりそうだから。」

 

絡まる頭を強引に回す。つまり俺の行動は間違いではなかった、と。良かった、紫さんに勝てる見込みとかゼロ通り越してマイナスだ。待て、まさか守りの話するってことはだぞ。

 

「えっと、守りが固くなるって──」

「言葉通りよ、これからも覚りへの攻撃はあるでしょうから、人数が多いのは良いことよ。」

「なぁ紫、」

「何?天魔。」

「今度地底で宴会していいか?」

 

天魔の一言でその場の全員がスベった。あのさぁ、この雰囲気で宴会の話する?普通。もうちょいまともな話しようぜ?

 

「貴方ねぇ、良いけど、地霊殿でささやかにね。」

「分かってるさ、羽目は外し過ぎない。」

「おい待て!そもそも羽目外すな!」

「止めて下さい天魔様!貴方様が羽目外したらまずいですから!」

 

重たかった雰囲気が晴れ、笑い声が聞こえる。紫さんが去った後、俺と天魔で雇用条件について話し合った。その結果、週4日、朝から日暮れ一時間後まで山の哨戒をすることになった。天魔達はそこまでしなくて良いと言ったが、俺は雇って貰ったのだからしっかり働きたいとごり押した。

そして宴会の件だが、三日後に天狗上層部が来ることに決まり、下位の天狗達も緊急事態でなければ休みとする措置を取ることで合意。さいごに「また宴会で」と言い残して地霊殿に帰った。

 

 

 地霊殿に着くとさとりが出迎えてくれた。

 

「おかえりなさい、零さん。」

「ただいま、さとり。」

 

まだ一週間ちょっとなのに聞き慣れた感じのする声がして、帰ってきたことを実感した。

 

「さとり、ちょっといい?」

「なんですか?」

「えっとね、三日後に地霊殿で宴会することになった。」

「えっ?!誰が来るんですか?」

 

そこからは今日地上であったことを細かく話し、妖怪の山で働くことも伝えたら、

 

「無理しないでくださいね。」

 

と言われた。少し涙目になったのは可愛かった。

 

「で、天狗達は覚り妖怪に対して肯定的なんだ。その証しと言うか、そんな感じで宴会を開こうと。」

「嬉しいです、そう…ううっ…思っている妖怪が…くすっ……居るなんて。」

 

そうだろう、今まで迫害の連続だったんだから。嬉し泣きしたさとりの頭を撫でる。

 

「大丈夫だよ、何にもない。みんな良い人達だ。」

「でも、ちょっと怖いです。」

「何かあれば俺がどうかするよ。」

 

さとりを宥めて部屋に戻り、ベットに腰掛けると、ドアがノックされた。

 

「どうぞ……えっ?」

「お邪魔、します。」

 

ドアの向こうには寝間着姿のさとり──ファ?!

 

「ど、どうした?」

「また、怖いので、

 

 

一緒に寝て貰えますか?」

「いいよ、ベットに来て、俺は床にね──」

「ベットで一緒に寝て下さい。」

 

さらに混乱。いや嬉しいけどさ、俺も高校生なんですよ、色々あるんですよ、そんなことされたら(どことは言わない)元気になっちゃうじゃないですか。

 

「でも、」

「ダメです。ほら!」

「うおっ!」

 

さとりに手を引かれ二人でベットに倒れ込む。これ、かなーり不味いんじゃあないでしょうか。手を引かれたせいで俺がさとりを押し倒したみたいに見える。慌ててどき、さとりの隣に横たわる。

 

「我が儘聞いてくれて、ありがとうございます。」

「いいよこれくらい。」

「あと、」

「何?」

「その、ギュってしてくれますか?」

 

これ以上は精神衛生上悪い気もするけど、いいや、さとりの頼みだしな。俺がさとりを抱き締めると、さとりは安心した声を出した。

 

「ふぁぁ、温かいです。こんなこと、してもらったことないですから。」

 

少しやるせない気分になる。そうか、さとり達、親いないもんな。

 

 

 

こんな俺で、いいのか?」

「いいですよ。」

「声、出てた?」

「ええ、気にしないで下さい。私達は零さんが居るだけで幸せですから。」

 

さとりの言葉で満たされた感じを享受していると、さとりが安らかな寝息を立て始めた。その音を枕に俺の意識も落ちていった。

 

 

 

 




はい!終了です!
ということで理解者とは妖怪の山の天狗達でした!彼らならさとり達の地上にいた頃のことを知っていると考えたのでこうしました。
さーて、
次回の「東方黑剣士」は?

宴会で騒がしくなった地霊殿!しかしその裏では?!

次回 第五話「宴会の裏での異変」

次回の前書きにてお会いしましょう!
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