これからもスローペースではありますが、投稿していきたいと思っています。
予約投稿はしていたのですが、一部手直しをしていたので本来の予定から遅れました。
それでは新年最初の投稿です。どうぞ。
当日、模擬戦を行う各人はそれぞれ違うピットに入っていた。また、公平性を保つ為に模擬戦の様子は見れないようにされた。これには一夏は仕方ないと頷き、セシリアは揺るがない自信をもって、秋一は余裕と言いたげな顔で同意した。
そして一夏のピットには夜架もいた。
「初めは貴族と例外でしたわね」
「そうですね。もう始まってもいいと思うのですが……」
まだかと思いながら待機していると、千冬が入って来た。
「御祓、入るぞ……切姫、何故お前がいる?」
「可愛い同僚兼妹分の応援ですわ。織斑先生は何故此処へ?」
「御禊、たった今織斑の専用機が届いた。予定を変更してお前が先にやれ」
「たった今って……大丈夫なんですか?」
「さてな、なるようになるだろうさ」
どこか信頼と不安を混ぜたような顔で千冬は言う。その光景に一夏の心に影がさした。
「………………随分と大事なのですね」
「………………ああ。私の弟だからな」
「………………
思わず一夏はそう呟く。自分を見限った家族なんて最早どうでもいいが、千冬にだけは少しでも気にかけていて欲しかった。
千冬がどれだけ自分達の為に頑張っているのかを知っていたから。
だから頑張って追いつこうとした。千冬の足でまといになりたくなかったから。だから無理をしてまでバイトを重ね、無能、失敗作、欠陥品と蔑まれようとも、勉強も運動も努力を続けた。
だが、どれだけ頑張っても追いつかなかった。追いつく機会は天才の兄とその取り巻きに奪われ続けた。千冬に助けを求めた所で、千冬は結局助けてくれず、攫われても助けに来てくれなかった。
千冬が一つでも認めてくれれば、それだけでどんなに辛くても耐えられたのに。
だが、その心残りも、この瞬間消え去った。
「何か言ったか?」
「何のことで?」
しらを切る一夏は機攻殻剣に手を掛け、抜剣する。
「──来たれ、力の象徴たる紋章の翼竜。我が剣に従い、無限の空を飛翔せよ、〈インフィニット・ワイバーン〉」
柄のボタンを押し、詠唱符を唱える。そして奏が
「
インフィニット・ワイバーンを纏った一夏はカタパルトに接続し、出撃体勢をとる。
「それでは夜架さん、行ってきます」
「頑張ってくださいな」
アリーナに飛び出した一夏は滞空し、
「あら、そんな機体で戦おうと言うのですか?」
「ええ、これが専用機なもので」
「見た目も鈍重、武器もブレード一本、これはどちらが勝つかわかったものですわね」
「おや、随分と舌が回るんですね、とても良い油が載ってるみたいです。火を着けたらさぞかし愉しい光景が見られそうですね」
「…………そちらこそ、随分と吠えるのですね、はじまる前から負け犬の遠吠えですか?」
「まさか。実力差のわからぬ愚か者に負ける程落ちぶれていませんが?」
試合開始のブザーと共にセシリアはスナイパーライフル《スターライトMk-III》のレーザーを放つ。
「そうですか、なら、お別れですわね!」
しかし……
「おっと」
一夏はそれを軽々と、体を少しずらすだけで回避する。
「そんな……」
「ふむ、確かに狙撃の腕は良いですが…………」
そして一言。
「
思い浮かべたのはリーズシャルテとクルルシファーの2人。どちらも動きながら遠距離兵器を扱い、己の技量の他、それを当てる為にもう一手加えていた。
リーシャならばティアマトの
鍛錬を怠らず、個人の技量も高く、更にもうひと手間加えての確実な攻撃。
それを見て、時に機竜の模擬戦や稽古で味わってきた一夏にとって、その場で滞空したまま狙撃してくるセシリアはわざわざ当たってやる価値もない。
わざと回避に専念し、わざと観察する。
「お行きなさい、《ブルー・ティアーズ》!」
「(アレがあの機体の第三世代兵器ですか)」
「さあ踊りなさい、わたくしのティアーズが奏でる
セシリアがBT兵器、《ブルー・ティアーズ》を展開する。4機のそれは一夏に殺到し、レーザーを放つ。1度放てば別の場所に移動し、また放つ。
だが、一夏はこの手の武器はリーシャのティアマトの空挺要塞で慣れている。余裕を持って回避し、回避し続けている時に、ある事に気づいた。
「この程度ですか? 織斑先生に認められていたからどうかと思えば、とんだ虚仮威しでしたのね」
「(動いていない? まさかBT兵器の操作で動けない?)」
セシリアの挑発を風に流し、試しに一夏は回避行動を取りつつ
咄嗟にセシリアは回避行動をとる。
「くっ!」
するとBT兵器達はその場で滞空し、動かなくなる。そして再びセシリアがBT兵器に指示を出すと、セシリアが動かなくなった。
「(成程)弱点はわかりました」
「何を言って……!」
「なのでさっさと終わらせましょう」
一夏は回避行動を取りつつ、セシリアにBT兵器を、一夏の望んだ場所へと誘導させる。
横一文字の円にBT兵器が並んだタイミングで機竜息銃を格納、機竜牙剣を構える。
「───
そして神速の一振りによる回転斬りで、4機全てのBT兵器を切り裂いた。
「…………は?」
セシリアは唖然とした。神速の一撃で、第三世代兵器が同時に全て破壊された。
それは致命的なまでの攻撃力の低下であり、遠距離主体のブルー・ティアーズを纏うセシリアにとって、首元に剣を突きつけられたも同然だ。
「随分と余裕があるのですね」
「っ!?」
セシリアが気がつけば至近距離に一夏が迫っていた。
振るわれた機竜牙剣に対し、スターライトMk-IIIを盾にし、防ぐ。しかし一夏は怯むことなく爆煙を突破、2連続の蹴りを入れ、機竜牙剣で突いてアリーナのシールドに叩きつける。
「ティアーズは6機ありましてよ!」
腰パーツの一部が外れ、弾頭が2つ発射される。しかし一夏は上下を反転させて回避し、セシリアの背中に蹴りを入れる。
「───神速制御」
そして機竜牙剣の威力を1番効果的に与えられる間合いを作り、切りつける。そしてすぐさま体勢を立て直し、もう一度。
2度、3度、4度と切りつけられ、その一つ一つが絶対防御を発動させる箇所に当たり、ブルー・ティアーズのSEは虫の息となる。
止めの一撃を放とうとする一夏に対し、セシリアは最後の足掻きをする。
「…………っ! 《インター・セプター》!」
実体ブレードを展開し、防ごうとする。
「残念ですね」
一夏の攻撃を防ぐ為に握られたインター・セプターは砕かれ、一夏の攻撃はブルー・ティアーズに直撃。アリーナの地面に叩きつけられ、土煙が上がる。
土煙が晴れれば、そこには辛うじてブルー・ティアーズを纏うセシリアの姿があった。
『ブルー・ティアーズ、SEエンプティ。勝者、御祓 一夏』
無慈悲に告げられる結果。それはセシリアの心を大きく揺さぶった。
「何故……わたくしは…………」
「何故、ですか。それはわかりきったことでしょう?」
セシリアの零す呟きに、一夏は答えた。
「あなたは自分を信じていた。否、自分しか信じていなかった。自分の努力と結果と自身だけを信じて、
淡々と告げられる言葉を、セシリアはただ聞くだけだ。
「他人を信じられない。その気持ちはわかりますよ。私もかつてそうでしたから。
ですが今は違います。理解して、認めて、仲間になってくれる、頼れる人達ができました。
あなたはどうなのですか?
頼れる人はいないのですか?
あなたを理解しようとしてくれた人はいないのですか?
認めてくれた人はいないのですか?
───あなたには、本当に仲間になってくれる人はいなかったのですか?」
一夏の問いかけに、セシリアは思い出した。
メイドのチェルシーは自分が幼くしてオルコット家を継いで大変だった時も支えてくれた。
ブルー・ティアーズを渡した英国のIS委員会の男性は「君がいなければ完成しなかった」と言って認めてくれた。
オルコット財閥に所属する者達は、オルコット家を守ろうと必死になるセシリアの味方となって、必要な人員と物を用意してくれた。
「仲間はそう簡単にできるものではありませんよ。得るには難く、失うには容易いもの。
本当に仲間がいるのなら、少しは頼ってはどうですか?」
過去を思い返すように、それだけ言って一夏はピットに戻る。セシリアはフラフラと飛び、一夏同様ピットに戻って行った。
「お疲れさまです」
「ありがとうございます」
夜架が一夏を出迎え、それに返す。念の為インフィニット・ワイバーンの状態を確認するが、異常は見られなかったために接続を解除して待機する。
しばらくして、再びアリーナから歓声が上がった。
セシリアは思考の海に沈んでいた。負けた理由。これまでの自分。支えてくれた人達。それらがごちゃまぜとなり、更に深く沈んでいく。
「(機体を信じていない……ですか…………)」
ISは兵器であり、それ以前に宇宙進出の為のマルチフォームスーツという道具だ。
況してやコアに人格があるとされるISは意思を持つ。人間同様、誰かを信じられないならば本来の力を出さないし、信じてもらえなければ出せない。一夏の言葉は真実を的確に突いていた。
「(私は……どうすれば……)」
そのままエネルギーを補給し、アリーナへと飛び立つ。絶対防御のみを発動させられたため、機体の損傷はすぐに修復した。破壊されたスターライトMk-IIIとブルー・ディアーズは予備を載せ、エネルギー補給だけで済んだが、一夏に言われたことが頭の中で残響する。泡のように沸き上がる疑問を、一夏の言葉が答えとなってはじける。
そんな時に織斑 秋一が現れる。与えられた専用機である白式を纏い、唯一の武装《雪片弍型》を展開し、余裕の表情でセシリアを見る。
「おやおや、僕の相手は君なんだ」
「…………」
「何も言わないのかい? もしかして無様に負けて恥ずかしいのかい?」
家を継いだばかりの頃に擦り寄ってきた親戚達と同じ嫌悪感を感じさせる秋一に、セシリアは敵意を向ける。
「折角だ。今のうちに降参したら? 天才の僕に勝てる訳が無いんだからさ」
「…………何を言うかと黙っていれば、随分と好き勝手言ってくれるのですね」
「当然のことを言っただけなんだけどねえ。もしかして怒っちゃった? あまりにも図星でさ」
「怒りを感じる必要もありませんわ」
カウントダウンが3つを切る。
3
「(ブルー・ティアーズ。今更かもしれないけれど、あなたが許してくれるなら、あなたを信じさせて下さい)」
2
1
「(だから……)何故なら……」
0となると同時に、弾頭型を発射。4機のブルー・ティアーズで逃げ場を無くすようにレーザーを放ち、弾頭の間を狙ってスターライトMk-IIIで頭を狙い、怯ませる。その間に弾頭型が直撃し、白式のSEを大きく削った。
「先程までとは違いますから。(力を貸して!)」
「っ! よくも!」
爆煙を切り払い、秋一は光を纏って真っ直ぐ突撃して切りかかろうとする。《雪片弍型》はその刀身を割り、レーザーブレードを発生させ、さらに一部のISが持つ特殊能力である単一仕様能力の一つ、《零落白夜》を発動させている。
そんな秋一を見ながら、セシリアは一夏との戦闘を振り返り、当てはめていく。
先程の先制攻撃は避けられないようにして強力な一撃を。そして最初から出し惜しみはしない事を学んだ。
そしてこの接近とブレードの対処をセシリアは考える。
「(近接武器での防御は不利。スターライトMk-Ⅲは攻撃力の低下を招くため防御には使わない。
ならば……)」
選んだ方法は振り下ろされ始めると同時に後方への急加速する。ISの高等テクニックである
秋一が爆煙に包まれている間にセシリアは自分とブルー・ティアーズの位置を変えながらレーザーを撃ち込み続ける。そして先程の一夏との戦いよりも、自分の機体の動きが良くなっている気がした。
そんな時にセシリアは一つの事に気づく。
「(与えたダメージと比べてSEの減りが早い? あの武装の名称は……《雪片二型》? 織斑先生の専用機の武装と同じ名前ですわね。それに、あの光は織斑先生の専用機である《暮椿》の零落白夜と同じもの…………? 恐らく
いえ、それよりも仮に零落白夜であるなら当たる訳にはいきませんわね)」
セシリアは千冬が現役時代に使っていた専用機の零落白夜とその特性を思い出す。
零落白夜はエネルギー無効化能力を持ち、直撃すれば絶対防御を発動させる。代償として発動中は自分のSEを消費し続ける諸刃の剣。
「(ならば相手の機動力を落としてこちらの当たる確率を下げる……!)」
爆煙が晴れ、近づこうとする秋一の後ろ、白式のウイングスラスターをブルー・ティアーズで撃ち抜く。それにより加速の為に溜めていたエネルギーが暴発し、使い物にならなくなった。
「ぐあっ!?」
「チェックメイトですわね」
そしてブルー・ティアーズ全機とスターライトMk-IIIから放たれた光の矢の雨によって、白式のSEは0となる。
「(ありがとう。ブルー・ティアーズ)」
地面に墜ちていく秋一を背に、セシリアはピットに戻って一夏との戦闘を再び振り返りはじめた。
「終わったみたいですわね」
「ですね。オルコットさんの勝ちでしょう」
「男性の方が勝つとは思わないのですね」
「アレは才能に胡座をかいて何もしないですからね。
オルコットさんの敗因は自分しか信じない、他者への不信感から生まれた自分自身への慢心。それが無ければ少しは私程度にもう少しは善戦したでしょう」
それを証明するかのように、一夏達のいるピットのモニターに対戦結果が表示された。一夏の予想通りセシリアの勝利である。
一夏は先程の戦闘で、セシリアは『この世界』においては高い実力を持っていると判断した。もしもリーズシャルテとクルルシファーに教授されれば、更に化けるだろうとも。
「ですが私に負けて慢心を取り払ったオルコットさんがアレに負ける要素はありません。
その日の為に何かをしてきた人とそうでない人では違う物がありますから」
「名前で呼ばない辺り、相当嫌っているのですね」
「嫌うな、など無理な話です。アレがいなければ、私はあの苦痛の日々を味わうことなどなかったのですから」
再びインフィニット・ワイバーンを纏い、機竜牙剣を召喚してカタパルトに接続する。
管制室から千冬が通信を入れる。
『織斑の準備が整った。お前も出ろ』
「了解」
あっさりと一夏が返答する。千冬はそれに躊躇いを覚えたが、そのまま通信を切った。
「…………本当によろしいのですね」
「…………あの日、あの時、織斑 一夏は死にました。愚かな兄を持ってしまったが故に迫害され、唯一信じていた姉に見捨てられ、異世界の異形に殺されました。
ここにいるのは御祓 一夏。ルクス・アーカディアに仕え、主様の障害を祓う従者です。それ以上でも、それ以下でもありません」
カタパルトから射出され、蹂躙する相手を見据える。
一夏にとっては変わらず悪意に満ちた笑みを浮かべている秋一を、1秒でも早くぶちのめしたい衝動に駆られた。
勝利が当然ように減らず口を叩く秋一の言葉を一切合切無視する。
「さて、千冬姉さんの弟であるこの僕が、どの程度なのか見定めてあげるから感謝しなよ?」
「下らない」
「はあ?」
「あなた如きに感謝するぐらいなら、悪魔に感謝した方がよっぽどマシですね。
何より……天才だからと言って何もしない凡人未満にわざわざ負ける必要がどこにあるのですか?」
「言わせておけば…………!」
「精々抗って下さいね。多少の抵抗が無ければ、蹂躙してもつまらないので」
激昂した秋一は零落白夜を発動して接近、切りかかろうとするが、一夏は避けもせずに一閃。手元を狙われ、それにより雪片弍型が宙を舞う。
驚愕に目を見開く秋一の顔に蹴りを入れて突き飛ばし、落下してきた雪片二型をキャッチする。
「やはり他のISとは違いますね。《零落白夜》の有効な使い方は切ると言うより相手に押し付ける、と言ったところですか」
「それは僕の物だ! さっさと返せ!」
「おや? 《雪片》 は織斑先生の物ですよ? コレも《雪片》なのですからあなたの物では無いと思いますが?」
武装を奪われ叫ぶ秋一に当然のように言う一夏。
「まあ、あなたには過ぎた玩具にも程がありますが」
3、4回振ると、一夏は空中に放り投げ、
「───
細切れに切り刻んだ。
使ったのは一夏が編み出した神速制御の連撃。神速制御に近い速度で放つ、一夏のオリジナルの技だ。
それはかつて神速制御の訓練時に、その感覚を得る為に偶発的に使えるようになった、神速制御のまがい物。
肉体操作と精神操作の同調を一瞬だけ意図的にずらし、その一瞬で敵の斬撃の向きを変え、敵の行動に対応し、再び同調させる。それは今では一つの技となっているうえに、
「なっ…………!?」
「さて、行きますよ?」
雪片二型が破壊されるという異常事態に会場中が唖然とし、秋一は思ってもみなかった出来事に驚愕する。
ISの
「よっと」
そこから秋一の死角に潜り込み、背後に回り込んで蹴撃。そのままスラスターの出力を上げ、観客席の防護シールドに叩きつける。
「あがっ!?」
「邪魔ですね、コレ」
そして白式のウィングスラスターを掴み、その両翼を無理矢理引きちぎった。
秋一の視界に警告が幾つも表示される。咄嗟に拡張領域を開いて次の武装を取り出そうとすれば、そこには何も入っておらず、絶望する。
一夏は引きちぎったウィングスラスターを秋一に叩きつけ、機竜息銃で撃ち抜き、爆発させる。
ISの機能である
瞬時加速で秋一の鳩尾に蹴りを入れ、アリーナの地面に叩きつけ、勢いをそのままに引きずっていく。
そこから蹂躙が始まった。
所変わり、管制室ではアリーナで行われている蹂躙に1組を担当する教師2人は絶句していた。
「…………御祓さん、容赦が無いですね」
「…………あの弟にはいい薬になる筈だ」
絞り出すような副担任の言葉に千冬は返す。しかし思考は全く別のことを考えていた。
「(何故だ一夏…………、何故お前の兄にそんな真似ができる?
まるで兄を家族とも思わない一夏に千冬は混乱する。
千冬は一夏が、自分の妹である織斑 一夏と確信していた。しかし姓を変え、他人として接してくるうえに、家族である自分の下に帰ってこない一夏に千冬は言い様のない不安を抱いていた。
だからクラス代表に推薦し、家族である自分と秋一と関わらせ、本音を問おうとした。
だが、その目論みは叶わず、目の前の光景の通り。それが千冬の不安を加速させる。
そんな時、千冬の携帯に連絡が入る。相手の名前を見ては面倒臭げに顔を顰め、副担任である真耶に断りを入れて管制室を出ると通話ボタンを押した。
『もすもすひねもす?』
「切るぞ」
『あーん、ちーちゃんてばい・け・ず♡ちょっとした束さんからのスキンシップなのに〜』
「………………」
『あ、待って待って! 切っちゃらめぇぇぇえ!』
煩わしさから通話を切ろうとする千冬を、どこで見ているのか束は懇願する。
「喧しいさっさと要件を言え」
『もう、ちーちゃんてばせっかちなんだから。
…………今あっくんと戦ってる…………誰だっけ?』
「…………御祓のことか」
『そうそうそいつ! …………そいつの機体、ちょっと調べさせて欲しいんだよね』
唐突に真面目なトーンになった束の雰囲気に、千冬は警戒を抱く。そして。
「くだらない理由なら断る」
『………………あの機体、インフィニット・ワイバーンだっけ。アレのISコア、私が作った物じゃないんだよね』
「………………何だと?」
告げられた言葉に、千冬は目を見開く。
ISコアは束以外には製造できないとされる完全なブラックボックスというのが万人共通の認識だ。それは千冬も例外では無い。そしてISの開発とその試作機である《白騎士》と縁の深い千冬だからこそ、その驚愕は誰よりも大きかった。
『私以外に作れない筈のISコアが、私じゃない誰かの手で作られた。流石にコレは黙ってられないかな。しかもあとあと2つ作られてるし、その内1つはちーちゃんのいる所にあるよ。誰が、どうやって、何が目的で作ったのかはまだわからない。でも最悪、
それにあのインフィニット・ワイバーン。いや、あの機体を造った『ドラグーン』と、あの機体の規格の『ドラグナイト』にはそれ以外にも
「…………それ程の物だとでも言うつもりか?」
『…………この束さんを諦めさせた、と言えばわかってくれる?』
「なっ………………!?」
千冬はその発言に言葉を失う。千冬にとって篠ノ之 束には不可能は無い。そう言える程の天才であり、『天災』だ。その束が諦めた。いや、束に
それは束と同レベルの存在がいることの証明であり、新たな混乱を世界に招きかねない。千冬の中でドラグーンへの不信感が高まっていく。
『だからこっちに渡して欲しいんだよね。できないかな?』
「………………考えてはおこう」
『さっすがちーちゃん! 話がわかる! それじゃあお願いね!
あくまで束さんは機体が欲しいだけだから、操縦者はどうでもいいや。そっちはちーちゃんの好きにしていいよ。それじゃバイバイ!』
思わぬ明かされた真実に千冬は言葉が出なくなる。抱いていた不安と突きつけられた新たな現実に、千冬は立ち尽くすしか無かった。
「ほら、どうしたんですか? 自称天才さん。少しは抗ってはどうです?」
「ガッ!? てめ……グッ、この……カハッ!」
拳を振り上げようとすれば、腕を切られて弾かれる。蹴りを入れようとすれば無理やり動きを変えられる。
わざと小さいダメージをじわじわと与えていく。
舐められている。そんな考えが秋一の頭を過ぎり、高いプライドから怒りを覚える。そして何も手出しできない現状が、更に拍車をかけていた。
観客達も誰も彼もが異様な空気に呑まれ、目の前の光景がただの蹂躙だと理解し、戦慄していた。
文字通り手も足も出せないようにダメージを与え、自分は受けないように攻撃していく。ただ一方的にボロボロにされていく様を見られる秋一には耐え難い苦痛だ。そしてそれは、まるで自分が蹴落として来た誰かからの身の程をわきまえない報復のように感じていた。
そしてついに迎える終わり。一夏はシールドエネルギーが僅かとなった白式にロックオンをする。機竜息銃を構え、改修と共に増設されたミサイルポッドのミサイルを全て叩き込む。
アリーナの中央に大穴が穿たれ、土煙が晴れたそこには白式が解除された秋一が気絶していた。
『白式、SEエンプティ。勝者、御祓 一夏』
勝者を告げる放送に観客が沸き立つ。一夏は気絶した敵に目もくれず、自分のピットに帰って行った。
「おかえりなさい、一夏」
「ただいまです、夜架さん」
インフィニット・ワイバーンを降り、展開を解除する。制服を纏って攻殻機剣を帯剣すると同時にピットへの入口が開き、織斑千冬が入ってくる。
そして開口一番に告げる。
「御禊一夏、お前のISを渡せ」
龍夜さんよりいただいたアイデアを早速ですが使わせていただきました。その他のアイデアはまた後の話で出していきます。
なんだか戦闘があっさりとした描写になった気がします。戦闘を書くって本当に難しいですね。上手くかける人が本当に羨ましいです。
それにしても上手く蹂躙を表現できなかった気がする。いい感じの表現が思いついたら書き直すかも。
……………飼い犬でも、大事な家族と新年を迎えられなかったのは寂しいですね。大晦日が命日なんて、永遠に忘れることなんてできそうにないです。