IS──暴竜に仕える八首竜の巫女──   作:樹矢

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ISと神装機竜のクロスで一夏TSが無かったので書いてみた。


プロローグ
プロローグ──2つの邂逅──


 何で……

 

 それが少女の思考を埋め尽くす。

 

 どうして……

 

 いつも私ばかりが。

 

 少女は、織斑一夏は常に悪意をぶつけられる日々を送っていた。

 優秀な姉と兄と比較され。

 兄に取り巻き達と虐められ。

 姉に兄の所業を言って救いを求めても、兄の嘘を真に受けて助けてくれない。

 上履きを捨てられ、ノートは落書きをされて刻まれた。

 教科書は習字の墨汁で読めなくされ、机か椅子が校舎裏に放り捨てられ、拾いに行けば上から雑巾を絞った水をかけられるような日々。

 テストで100点を取れなければ恥さらしと罵られ、100点を取ればカンニングしたと兄の取り巻きによって成績を無かったことにされる。

 先生達も、近所の人間達も、彼女の姉と兄ばかり贔屓し、彼女の居場所はどこにも無かった。

 

「何でアンタみたいなのがあの人の妹なの?」

「欠陥品風情が。立場を弁えろよ」

 

 そして一夏の姉がある大会で優勝すると、居場所はどこにも無くなった。

 小4まで行かされていた近所の神社の道場で、剣道をやりたくも無いのにやらされ、弱い少女を鍛えると言いながら、道場の人達はリンチをするように叩きのめす。皆が休憩しているのに、少女だけは許されなかった。

 誰かが言っていた。

 

「お前の姉はそんな弱音を吐かなかったぞ」

「織斑の出来損ないめ」

「それでもあの二人の妹か」

 

 その神社の一家が引っ越すことになって、無理矢理連れ出されて見送りをさせられたところで、一夏にとっては虐めていた奴らが少し減る程度の出来事でしか無かった。

 だが、小5になって転校してきた中国人の女子は優しくしていた。一夏にとっては気紛れでしか無かったが、虐められているその子が自分と重なったのは紛れも無い事実で、偽善者気取りの出来損ないと言われても助けた。

 結局一夏が虐められるのは変わりなかったが、その女子は一夏にとって、初めて出来た友人だった。

 中学に上がっても周りは変わらず、知らぬ間に勝手に入部させられた剣道部で、ここでも稽古という名のリンチで虐められながらも、新人戦の女子個人の部で全国大会で優勝出来た。

 けれども、それを姉に報告すれば、欲しくもない最低な褒め言葉が帰ってきた。

 

「お前は私の妹だからな。当然だろう」

 

 姉に失望し、落ち込んでいた少女に、友達は小さな祝勝会を開いてくれた。

 けれど、どこかから一夏の優勝は体を売って手に入れたものなんて噂が立って、兄の取り巻き達に調査と言われて強姦されかけた。必死に抵抗して逃げることに成功するも、少女には男というイキモノが、とても怖く、汚らわしく思えた。

 

 だけどそれらを思い返すのも一瞬の出来事。知らない人達に誘拐されて、パイプ椅子に縛り付けられた一夏に未来はない。

 一夏の目の前にあるのは第2回モンド・グロッソの決勝戦の生中継を映す携帯。

 そこには2人の選手が映っていて、その片方は前回優勝者の姉だった。

 

「おい! こりゃどういう事だ!」

「本当に日本政府に通告したんだろうな!?」

「したに決まってんだろ!」

「だったら何で織斑千冬が決勝に出てやがる!!」

 

 少女を攫った男達が喚き出す。少女はわかった。わかってしまった。姉は自分を助けに来てくれないのだと、こうなる瞬間まで、僅かにも姉を信じていた自分が愚かであったと。

 

「残念だけど、あなた捨てられたわね。ご愁傷様」

 

 嘲嗤うように、ISを纏った女性が優しく少女に現実を突きつける。

 

「あ…………あは、ははは…………ああああ…………ああああああああああああああああ!!!!」

 

 そして少女はないた。泣いた。哭いた。

 

 結局、最期まで、私を助けてくれることは無かった。姉は私を見捨て、結局は兄達と同類だった。

 

「仕事は終わりよ。後は好きになさい」

「了解。おいお前ら! 撤収の準備だ! 急げ!」

「ハイハイ、…………なあ、その前に少し、コイツで遊ばねぇか?」

「……ああ、確かにガキにしてはイイ身体してるしな」

「悪く思うなよ? 運が無かったのが悪ぃんだからよ」

 

 そう言って少女に近づいてくる男達。1人は既にベルトを緩めており、何をしようとしているのかは一目瞭然だ。

 

「(怖い。怖い。今すぐに逃げ出したい。

 

 だけど縛られた椅子から逃げ出せない。

 嫌だ。何で。どうしていつも私ばかり。

 友達に──鈴にもう会えないんだ。

 

 私はここで、こいつらに犯されて死ぬんだ。

 

 やりたい事も沢山あった。

 やってみたいこともあった。

 女の子らしい夢も見てた。

 それも今日、ここで終わりなんだ…………)」

 

 そんな諦観を抱いたその時、何かが現れた。

 突然音もなく現れた黒い孔。そこから現れた、ヒト型にも見える異形の化け物。

 

 ISを纏った女性が悲鳴を上げる。男達が銃を乱射する。

 けれどそれらは全て効かず、男達が1人、また1人と潰され、刻まれ、死んでいく。

 錯乱したらしい女性が逃げようとする。けれどもブレードのような物で女性はISと武装ごと3枚におろされた。

 そしてISのエネルギーの流れに異常が起こり、爆発。その爆風で折れた剣が、一夏の拘束を解くと同時に脇腹を切り裂いた。

 

 血が流れ出ていくのを感じる。

 だんだん体が寒くなる。

 これまでの人生嫌な事だらけ。

 

「(せめて、最後に、鈴とどこかに遊びに行きたかったな)」

 

 生き残っていた男が、錯乱したのか持ち込んでいたグレネードを全て抱えて化け物に特攻する。

 それが弱点に当たったのか、或いは奇跡的に倒せる程のダメージが出たのか、化け物は倒れ、爆発を起こす。

 一夏はその爆風に飛ばされ、化け物の出てきた孔に放り込まれた。

 

 浮遊感と落下感。それらを感じた直後に硬い物に叩き付けられる。どうやらそれは石畳の道らしい。時間は夜、天気は雨で、雨水は少女の体を打ち付ける。

 

 ───ああ、せめて、許されるなら、誰か私を救ってくれないだろうか。

 ───もはや誰であろうと構わない。たとえ悪魔でも構わない。

 

 ───もし、助けてくれたなら、私はどんなことでもしよう。

 ───たとえそれが罪であろうと、構わない。

 ───劣情の捌け口にだってなってやる。

 ───金目当ての売り物にされてもいい。

 ───もう、織斑一夏は死んだのだ。私に名前は無いのだ。

 ───私は死に損ないの、死にかけの、ボロボロになったガラクタだ。

 

 ───好きなだけ使い潰してくれて構わない。

 ───だから私にとって理由をください。

 ───私がそこに居ていい理由を。

 ただ、それだけで充分だから──────

 

 石畳を流れる水に濡れ、雨水に打たれながら雨を降らせる曇天を見る。昼間と違い、とても黒く、暗い、夜の空。

 雲の隙間から覗いた銀色の満月に、手を伸ばす。

 届きもしない月へと手を伸ばし、だけど力が入らなくなる。

 目から温かい何かが流れ出す。それが涙なのか、少女で温まった雨なのかは本人にもわからない。

 死ぬのが近いのか目を閉じる。

 閉じ切る寸前に力の抜けた手が誰かに掴まれる。

 月とは違うもう1つの銀色が視界に入り、一夏の意識は途絶えた。

 

 数日後、一夏は目を覚ました。介抱していた少女の言葉はわからなかったが、身振り手振りで一夏の置かれた現状を教える。

 どうやら一夏のいる場所は学校(後に一夏は必死に言葉を覚えて女子校と知った)のような所らしく、近くで倒れていた所をある人物が運び込んでくれたとこのと。その人物は男であったが今の一夏には何も感じることは無い。一夏の心は完膚なきまでに壊れていたからだ。

 一夏は言語を学び、教えてくれる相手のやり方も良かったのか、約3ヶ月で習得した。少女には才能が無いのではなく、周りの悪意と環境の所為で、目立つ才能を開花させることができなかったのだ。

 一夏が治療をしてくれた医師に聞けば、脇腹の傷は塞がったが、古傷の跡になって一生消えないかもしれないと宣告される。そして、傷と出血の具合から、命が助かったこと自体が奇跡だったとも。

 名前を問われた一夏は名前だけ名乗ることにした。苗字は最早名乗ることすらしたくもなかった。

 

 ───私にはもう、帰る場所など無い。

 

 一夏は目を瞑り、自分を救ってくれた少年の言葉を思い出す。

 

 だから───

 

「僕なんかで良ければ、一緒にいるよ。

 僕が知っている事を、君に教えてあげる。だから君の知っている事を教えて欲しい。

 もし、間違ったことや悪いことをしたら、僕が君を怒る。誰よりも叱る。

 だから、君の味方に、なってもいいかな」

 

 ───だから、私はあなたに従おう。

 あなたの剣に、盾になろう。

 だから捨てないで。

 いらない子なんて言わないで。

 あなたの言うことは何でも聞くから(もう居場所を無くしたくないから)

 あなたの言う事は何でもするから(もう虐められなくないから)

 

 だから、この命が尽きるまで、この身が朽ち果てるまで、この魂が燃え尽きるまで、あなたの側に…………

────あなたの道具でいさせてください。

 

 

 

 

 

 体が回復すると、一夏は救ってくれた恩人の1人であるレリィ・アイングラムの許可を貰い、王立士官学園(アカデミー)で機竜の操縦を学んでいた。そして興味本位で見に来た者達を圧倒させる結果を見せる。

 初めは拙い動きではあったものの、10分もすれば並の操縦者と同等に。そして気づけば騎士団(シヴァレス)と同等の動きにまでなっていた。

 それを見ていたアスティマータ新王国第1王女のリーズシャルテ・アスティマータが模擬戦を提案し、一夏はそれを了承する。

 結果、一夏は敗北したものの、ワイバーンでリーズシャルテの神装機竜であるティアマトの空挺要塞(レギオン)全機破壊、一夏のトドメに使った七つの竜頭(セブンス・ヘッズ)をほぼ全壊させ、ティアマトの神装である『天声(スプレッシャー)』すらも使用させるという結果になった。

「ティアマトでなければどうなっていたことか」というのは戦った王女本人の談である。

 

 そんな一夏は旧アーカディア帝国の残党達と闇商人ヘイズが操る第5遺跡(ルイン)『巨兵』の中で、一夏は瓦礫に埋もれ、落ちてきた穴から空を見ていた。

 アスティマータ新王国の建国祭と重なった全竜祭で、一夏はレリィの護衛の名目で共に出店を回っていた。全竜祭の間、国の代表が負傷させられたとルクスに戦闘を仕掛けてきた神装機竜持ちの少年を、キレた一夏がワイバーンで神装を使われる前に蹴散らした挙句捕縛し、そのまま機竜の記録映像と共に警備隊に突き出すということはあったものの、平穏に時間は過ぎていた。

 しかし全竜祭最終日にアスティマータ新王国への攻撃が開始され、避難誘導と防衛行動を行っていた一夏はヘイズの操る神装機竜『ニーズヘッグ』により攻撃され、今に至る。

 ワイバーンは大破し、飛ぶことは不可能。武装も全て失い、自分の体も満身創痍。機竜の一切の機能も使用出来なくなり、戦闘を続行するには絶望的だった。

 

「…………」

 

 ここで死ぬのか。何も出来ず、何も恩を返すことも出来ず、何の望みも叶えられずに。

 

「…………いやだ」

 

 だがそれは許せなかった。

 

「…………嫌だ」

 

 ようやく理解してくれる人を得た。

 

「…………嫌だ……!」

 

 自分を見てくれる人を得た。

 

「…………まだ、私は………………!」

 

 自分の仲間になってくれる人達を得た。

 ならば、今の自分に、出来ることを。

 ただ奥へ進んで行く。これだけの大きさの物を動かすには、動かす場所と人が必要だ。ならばその動かす場所を破壊し、操る人間を最悪殺してでも何も出来なくすればいい。そう考えての行動だった。

 だがどこまで進んでもそれらしき場所に出ることはできない。すると突然、開けた場所に出た。

 

「……ここは?」

 

 よく見ればその手の者達に売れば高価で買い取ってくれそうな、価値のありそうな物と機竜の残骸があちこちに散らばっている。

 そして一夏は一つの物を見つけた。

 それは生まれた世界において、刀と呼ばれる物。それが機竜の残骸に突き刺さっている。その柄をよく見れば、ボタンの様な物があり、機竜の待機形態〈機攻殻剣(ソードデバイス)〉であることがわかった。

 ワイバーンを解除し、機攻殻剣を引き抜く。

 

「…………ねえ、私は、まだ生きたい。ルクスさん達に恩を返したい。やりたい事も沢山ある。

 だから、力を貸して」

 

 祈るように呟いたそれに答えるように、機攻殻剣から厳かな声が響く。

 

『汝、何故剣を振るう』

『汝、何故力を求む』

『汝、何故生きる』

「…………たとえ私のエゴだとしても、今ある幸せを壊そうとするモノを、闇を、切り払う為に。だから私は剣を振るう。

 …………今ある幸せを、守りたい人を守りたいから。だから私は力が欲しい。

 …………私には理解してくれる人はいなかった。認めてくれるなんていなかった。味方になってくれる人なんていなかった。

 だけど、理解してくれる人ができた。認めてくれる人ができた。私の仲間に、味方になってくれる人達ができた。

 その人達に何も返せていない。恩を一つも返せていない。そんなままじゃ嫌。せめて一つだけでも多く、あの人達に恩を返したい。

 それが今の、私の生きる理由」

 

 そう一夏は言い切った。広い空間に沈黙が満ちる。それを破ったのは機攻殻剣の声であった。

 

『…………いいだろう。汝を我の主と認める。これより我は汝の剣であり、盾である。

 我が主よ、我を使いこなして見せよ。

 

 我の名は──────』

 

 

 その頃、リーズシャルテはヘイズとニーズヘッグに苦戦を強いられていた。最大3つの空間断層を作り出し、あらゆる物を切断するニーズヘッグの神装『切断者(アストラルライン)』によって動きを制限された挙句、ヘイズの操縦によってより凶悪的になった攻撃によって損傷が増えるばかり。しかもいつ『巨兵』の砲撃が城下町を攻撃するか分からないのが拍車をかける。

 

「オラオラどうした! その程度かよ新王国のお姫サマよお!!」

「この程度!!」

 

 空挺要塞を突撃させ、それによって作られた死角に機竜息銃(ブレスガン)の攻撃を隠し、二重の攻撃を仕掛ける。しかしヘイズは切断者によって空挺要塞を破壊し、まるで分かっていたかのように機竜息銃の攻撃を避ける。

 その回避先に七つの竜頭による砲撃が放たれるも、ヘイズはいとも容易くそれを避けた。

 

「見え透いてんだよ下賎女!」

「ならば!」

 

 リーズシャルテはその砲撃をそのままに、ヘイズへ向けて薙ぎ払う。そしてそれを再び避けようとしたヘイズの動きに合わせて動かした結果、ニーズヘッグの左脚部に損傷を負わせる。

 

「…………やりやがったな」

 

 それが癪に障ったのか、切断者で切り刻もうとするヘイズに、爆発音と共に青白い砲撃が迫る。それを避けたヘイズの視線の先。それは胴の一部を破壊され、煙をあげる『巨兵』の姿だった。

 

「クソっ! 今度はなんだ!!」

 

 叫ぶヘイズに再び同じ砲撃が迫る。それを切断者で切り裂いたヘイズに、迷彩を使った上で砲撃を目くらましにした一夏が大剣を振るう。咄嗟の防御でニーズヘッグへのダメージを軽減させたヘイズは、一夏の纏う機竜を見た。

 月を彷彿とさせる蒼銀の装甲。右腕に握られた大剣は三本に分離し、1本は刀の形状のまま握られ、残りの二本は自律して背中に背負う背輪に柄から接続される。そこには今の二本を合わせた、計七本の剣が同様に接続されていた。

 何より、その機竜は陸戦型(ワイアーム)をベースにしながら、飛翔型(ワイバーン)の特徴も兼ね備えた上に宙を飛んでいる。そしてヘイズに斬りかかった時に使用した特装型(ドレイク)の『迷彩』。

 この機竜にのみ与えられた特殊型式『特式飛翔陸戦型機竜』。

 たった一機で旧アーカディア帝国軍レベルの物量を相手にすることを前提にされた、この機竜を祀っていた国を守護する為の過剰とも言える力を持った機竜。

 ──―神装機竜『ヤマタノオロチ』。それが一夏の新たな機竜だった。

 

「テメェ…………タダで楽に死ねると思うんじゃねぇぞ!!」

 

 ヘイズが切断者を3つ同時に放つ。それを一夏は避けようともしない。避けろ、とリーズシャルテが叫ぶ前に、一夏が動く。

 右腕に握られた刀『天羽々斬』に青白い光が集まり、一閃する。すると切断者によって作られた空間断層は消滅した。

 

「「…………は?」」

 

 それはその光景を見ていた2人の声。それをした一夏は静かに告げる。

 

「成程、今の攻撃はエネルギーを使った空間断層の生成による攻撃ですか。ならばこの機竜の敵ではありませんね」

 

 一夏の頭にあらゆる情報が流れ込む。ヤマタノオロチの特性。機能、そして武装とその能力。

 そして、神装『天叢雲剣』の能力。それはあらゆるエネルギーの消滅能力。ニーズヘッグの切断者を消滅させた種がこれだった。

 

「て、めぇ…………!!」

 

 怒髪天を衝くように怒りに染まったヘイズはリーズシャルテを捨ておいて一夏へ切りかかる。一夏は背輪に接続されている剣を展開する。その背輪と剣は特殊武装『八尾(ヤツビ)』。それはまるで絵に描かれる後光のように背輪に沿って広がった剣は射出され、ヘイズへ刃を剥く。

 それを切り落とそうと使用された切断者。しかし八尾は天羽々斬同様に天叢雲剣の能力を受け、切断者の断層も、そしてニーズヘッグをも切り裂く。八尾の内四本は切り裂き、残りの三本がその刀身を中央から分かれ、レーザーを浴びせかける。

 周りの剣ではなく繰り手を潰せばいい。そう考えたヘイズは一夏に向こうとして、その背後から切りつけられる。そこに居たのは八尾を操りながら移動していた一夏。そして左腕にはもう一本の剣『十拳剣』が握られている。

 

「はぁあああああああああっ!!」

 

 まるで踊るように。舞うように。切りつけ切り裂き切り刻む。その上、八尾が武装を破壊し、抵抗する前に起こりを潰し、まるで蹂躙の様相を呈していた。

 そこへ旧帝国軍の残党の邪魔が入る。1人で蹂躙していたヘイズをリーズシャルテに向けて蹴り飛ばす。視線で任せると伝えると、リーズシャルテはそれを理解したかのように頷き、一夏の八尾の動きを真似るように空挺要塞でヘイズを封じ込める。

 一夏は十拳剣と交換するように機竜息銃を取り出し、天羽々斬の石突に銃口を接続する。すると八尾が呼び寄せられたように集まり、小さな変形を重ねて天羽々斬と合体、カノン砲のような形状となる。

 天羽々斬・砲撃形態。ヘイズへ浴びせた二発の砲撃がこれによるものだ。ヤマタノオロチのバイザーが一夏の目を覆う。次々と旧帝国軍の残党がロックオンされていく。

 

「………………………………」

 

 それを静かに見つめ、今度こそ敵を殺す覚悟を決める。全ての敵がロックオンされる。

 

「………………発射」

 

 静かに引き金が引かれる。スラスターを全開にして反動を殺し、放たれた光は迫る残党を飲み込み、避けようとした者達すらも逃がさない。迫っていた残党は、例外なく地に墜ちていった。

 それを確認した一夏は天羽々斬をそのままに、十拳剣を持ってヘイズへ切りかかる。

 

「クソが! 下賎の分際で歯向かうんじゃねえ!」

「知ったことではありません」

 

 全ての武装を破壊されたニーズヘッグは最早敵ではなく。一夏とリーズシャルテの即席の連携によって更に破壊されていき…………。

 

「これで」

「トドメです」

 

 空挺要塞によって拘束されたヘイズに七つの竜頭と天羽々斬・砲撃形態の砲門が向く。全く同時に放たれた紅と青の奔流がヘイズを飲み込んだ。

 

「はぁ…………はぁ…………」

 

 慣れない神装機竜をぶっつけ本番で使用した初戦闘により、一夏は本人が思っていた以上に疲弊していた。リーズシャルテが近づいて礼を言おうとする前に、一夏はふらりと倒れるように落ちていく。

 しかしそれを何者かが受け止める。それは黒き暴竜(バハムート)を纏ったルクス。いつかの月夜のようだと思いながら、一夏は安堵を抱いて意識を手放した。

 

 

 

 

 その後動乱とも呼べる事件や暗躍が幾つも起こり、その発端となった帝国軍残党達による『帝都奪還計画』から2年が経った。事件の後、一夏の事情を知るレリィ、フィルフィ、アイリを除き、ルクスに想いを寄せている少女達からルクスは迫られた。そしてルクスの知る限りの事情を話したことでどうにか無罪を勝ち取ることに成功する。

 そしてその一夏は今────。

 

「一夏、忘れ物はない?」

「はい。必要な物は全て。移動の足は既に用意しています。夜架さんは先に向かわれました」

「相変わらずだね。じゃあ行こっか」

「はい。主様」

 

 王立士官学園の生徒となる傍ら、ルクスの従者として過ごしていた。

 自らの主と、同じく従者として仕える切姫夜架に与えられた()を名乗って。

 (主君)の敵を祓う者、御祓 一夏として。




少し後になるだろうけどいちかわいいな展開もそのうち書いてみたい。
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