IS──暴竜に仕える八首竜の巫女──   作:樹矢

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だいぶ悩みましたけどインフィニット・ワイアームの操縦者はオリキャラに決定。
ISキャラだとインフィニット・ワイアームの登場シーンが増やせるけど、今後の展開を考慮するとオリキャラの方がいいというジレンマ…………
という訳でオリキャラ1人登場です。


臨時休日・4

 自分の機体の追加装備に趣味を盛り込もうとした者達を制裁し(シバい)た一夏は、ふとある事に気づき、コスモゲイザー計画にも携わっている技術者に問いかける。

 

「そういえば、コスモゲイザーの計画についてなのですが」

「ああ、聞いてるだろうけど君達に護衛に着いて欲しい」

「それは構わないのですが、私達は宇宙空間での生活を想定した訓練はしたことありませんよ?」

「それについては考えがある」

 

 その技術者が渡してきたタブレットには、何かしらの項目がいくつも並んでいる。

 

「これは?」

「今日から君と切姫嬢にこなしてもらうカリキュラムだ。学園での生活と並行して行ってもらう。付け焼き刃だが、やらないよりはいいだろう。少々忙しくなるが、我慢して欲しい」

「まあ、ある意味社運を掛けていますからね。手を抜くような真似はしません」

「助かるよ。このプロジェクトの為に国際宇宙ステーション(ISS)で計画に参加する職員は2ヶ月前から滞在訓練を行っている。宇宙に向かう際にはスペースシャトルを使用することになった」

「ですが、ソユーズ宇宙船以外のシャトルはもう使えないはずでは?」

 

 一夏の言う通り、NASA等が使用していたシャトル等は既に退役し、その殆どが解体、或いは博物館の展示物となっている。使えるとすれば、今やロシアの保有するソユーズ宇宙船くらいの筈だった。

 護衛任務に就く一夏達は大気圏突破装備に換装したストライクワイバーンと接続したそれぞれの専用機で行くにしても、コスモゲイザー自体の輸送方法が無い。日本の人工衛星打ち上げ用ロケットであるH-ⅡAロケット系列で打ち上げるのだと一夏は思っていた。

 

「我が社と某重工とNASAが共同で既に解体されたものを掻き集めて組み立てに着手している。ISの技術で短い工期で、安全性と性能は退役前の物と遜色ない物が出来上がるよ」

「その際に必要になる部品を作る工場は…………ドラグーンの所有する工場ですか」

「ああ。君も知っての通り、ドラグーンは元々は廃業寸前だった重工業主体の企業の集まりだからな、今こそその時の腕を振るう時さ。

 それに、NASAが協力を申し出たのも、今回のプロジェクトはどの国も無視できないからというのもあるな。

 ましてや、兵器転用が不可能にしてあるとは知らないとはいえ、()()()使()()()I()S()であることには変わりない。莫大な金を投じる価値はあると判断してくれたんだろう」

 

 これでまた、世界が揺れることになる。その確信が一夏と話す技術者にはあった。

 そして一夏はふと思ったことを口にした。

 

「ISが世界に兵器として認められ。この計画が成功すれば、コスモゲイザーは本来のISとして我々ドラグーン側の、ひいては奏さんの功績になる。

 中々の皮肉ですね。IS開発者の夢をIS開発者を憎む奏さんが横取りする形になるのですから」

「そうだな。そのうえ、彼女は篠ノ之 束に対して当て付けをするつもりらしい」

「そうなんですか?」

「これを見ろ」

 

 技術者が別の資料を表示させる。そこにあったのは…………。

 

「…………『()()()()』、()()()()I()S()()()()ですか」

「こいつがストライクワイバーンに組み込まれる。打鉄弐式は臨海学校までに完成させるが、打鉄弐式にも標準装備として使われる予定だ」

「臨海学校に篠ノ之 束が来てそれを見たらどんな顔をするのでしょうね」

「笑える顔をしていたら写真撮ってきてくれないか? 是非とも見てみたい」

「その気になれたらそうしましょう」

 

 意地の悪い笑みで頼む技術者に、確約はしないと一夏は答える。

 

「そうだ、インフィニット・ワイアームの操縦者について言うのを忘れていたよ」

「誰が乗るのかは決まったのですか?」

「ああ、君のことを『お姉様』と呼んでたよ」

「ああ、彼女ですか」

「丁度こっちに来ている。会ってきたらどうだ?」

「そうですね」

 

 そう言って一夏はインフィニット・ワイアームの操縦者の元へと向かう。選ばれた少女の性格から本でも読んでいるのだろうと予測し、社内にある図書室へ向かう。そこには一夏が探していた少女が静かに本を読んでいた。

 

「やはりここにいましたか」

「お姉様?」

「その呼び方はやめて欲しいと何度…………」

「いえ、お姉様が何と言おうと変えるつもりはございません」

「…………変わりませんね、ステラ」

 

 ステラ・アイングラム。彼女は母親である娼婦に産まれてすぐに捨てられ、スラムや路地裏で雨水を啜り、ゴミを漁りながら生き抜いてきたストリートチルドレンだった。そして身体を売らねば飢えて死ぬであろうところを一夏に拾われ、レリィの養女となった少女だった。

 ステラはレリィの権限で既に王立士官学園(アカデミー)で講義を受けている他、騎士団(シヴァレス)の一員としても申し分無い実力があるため、一夏としても期待できる戦力でもあった。

 

「インフィニット・ワイアームの仕様は理解できていますか?」

「はい、全て記憶しています。話によれば護衛任務までには一先ずの完成を見るとの事です」

「一先ず、ですか?」

「はい。奏様曰く、インフィニット・ワイアームに使用する技術の幾つかを本日いらっしゃっている更識様の機体に試験的に導入し、結果が良好であれば反映する為だそうです」

「打鉄弐式をテストベッドにすると。まあ、ふざけ過ぎて玩具にはしないでしょう」

 

 別の方法で好き勝手しそうな予感を抱きながらも、自分を頼ってくれた人の物には真剣に向き合うだろうと一夏は考える。

 そんな一夏にステラはアスティマータ新王国で決定された事項を伝えていく。そして最後に、一夏に1つの事業を伝えた。

 

「それとお姉様。女王陛下がリーズシャルテ殿下と奏様を主導とした『幻装理論』の実証を決定なされました」

「それは本当ですか?」

「はい。お姉様の『幻装理論』が実証できればこれ程喜ばしいことはありません」

「買いかぶり過ぎですよ。私は万が一が起きることを恐れているだけなのですから」

「それでも、お姉様の論じた『幻装理論』は、必ずやお姉様の願いを叶えてくれると思っています」

 

 幻装理論。それは一夏が考えた、量産型機竜の強化理論。エクスワイバーン、エクスワイアーム、エクスドレイク等の強化仕様とは違い、出力や性能の劣る、()()()()()()()()()()()()()()()()を目的とした基礎理論だ。

 それは一夏が『もしも自分が神装機竜を使えない状況で、神装機竜が必要になったら』という想定で構築されたものだった。そんな状況に置かれ、ルクスを守れずに目の前で失うようなことなど、一夏にとって那由多に1つもあってはならない。

 ならば、『本来の物には劣るが、神装を使える量産型機竜があればその最悪だけは回避できるのではないか』という考えに至り、その理論を提唱したのだ。

 既にこの実証計画はIS世界側の奏と一部のメンバーにも知らされており、コスモゲイザー計画を発表後は奏はそちらに集中する予定である。

 

「それともうひとつ」

 

 ステラが1度言葉を区切る。そして放たれた言葉は一夏に衝撃を与えた。

 

「───ルクス様が、玉座に就かれることが決定致しました」

 

 

 

 所変わって奏と簪。サーバルームと回線を直結させた娯楽室で従来ハードでは体験できない快適環境でのFPSを堪能した簪は引き続き奏に案内されていた。

 そんな時、奏は思い出したかのように簪に問いかける。

 

「ねえ簪ちゃん、もしこのまま何事もなく卒業できたらドラグーン(ウチ)に来ない?」

「それは就職ってことですか?」

「そうよ。あなた、なかなか見込みありそうだもの。今の内に唾付けておこうかなって」

「………………」

「まあ、ゆっくり考えてくれて構わないわ。最後にあなたが決めることだもの」

 

 何事もなければ、と奏は言うが、それは一夏達の任務が無事に終わることも含まれている。

 とはいえ、このIS世界の国々が装甲機竜や神装機竜を狙って一夏達に攻撃をしてくると予測している頃には協力関係は恙無く終えている予定ではあるが。

 そんなことは口には出さず、奏は打鉄弐式の話に話題を移す。

 

「そうそう、打鉄弐式には私達が開発した技術を幾つか盛り込ませて貰うわ」

「テストベッドということですか?」

「ええ。今後のためにも作っておきたい機体があってね。もう操縦者は決まってるけど、機体はまだなの。その機体に使う技術のデータが欲しくてね」

「それなら…………」

「ありがとう」

「あの、具体的にはどんなものが?」

「そうねぇ…………」

 

 流石にテストベッドにされるなら、どんなものが加えられるのか、そしてどんな仕様になるのかは簪としても先に把握しておきたい内容だった。

 

「まずは装甲面の強化ね。一夏ちゃんや夜架ちゃんの専用機に使われている装甲の強化型にするつもり」

「あの2人の…………」

「作る予定の機体は装甲が厚めの近接型なの。その為にも装甲のデータは少しでも欲しくて」

「他の技術は?」

「本来の打鉄弐式の仕様にあったマルチロックオンの強化型、事前に武装を設定しておいて、戦闘中に擬似的なラピット・スイッチをさせるシステム、その他操縦者の動きへの追従性強化とかかしら」

 

 他にも組み込まれる技術について解説していく。簪はそれらが使われる機体がどんな物なのか知りたいと思った。

 

「そういえば話が変わるのだけれど」

「何ですか?」

「私達の進めている研究開発に興味はない?」

「それってどんなものなんですか?」

「1つは男でも使える宇宙空間作業専用マルチフォームスーツの開発。2つ目は第四世代IS技術である展開装甲の開発」

「……………………え?」

「どうかしら?」

 

 どれも、今の情勢を変えかねないものだ。それを理解した簪は、困惑の渦に取り込まれる。

 それを理解しながらも奏は続ける。

 

「あなたの専用機には、展開装甲を組み込ませてもらうわ。そもそも展開装甲の理論は既に実証済み、後は機体に組み込んでデータを採るだけだもの。打鉄弐式には標準装備として使うつもりよ」

「私の…………機体に………………?」

「そして宇宙空間作業専用マルチフォームスーツの開発計画も、近い内に動き出すわ。あなたの返事、楽しみにさせてもらうわね」

 

 こうして簪のドラグーン日本支社への訪問は終わりを告げる。最後に奏から放り投げられた爆弾の大きさに、簪は混乱するばかり。

 その後どうやってIS学園の自室に戻ったのかもわからぬまま、簪の打鉄弐式の開発委託から始まったドラグーンでの1日は終わった。

 

 

 

 

 

 与えられた寮の1人部屋で、織斑 秋一は天井を眺める。

 完璧な存在を作る。その為に生み出された存在だという自覚はあった。

 だが自我が芽生えた直後に、秋一は存在を否定された。

 

『…………最低基準値クリアせず。失敗ですね』

『ふむ、リスト506に則り、データ収集後に処分。最低基準すら越えられない失敗作に用はない』

『了解』

 

 さも当然の如く、白衣を着た男は部下に命令していた。そして理解した。自分は処分される───殺されるのだと。

 

 失敗? 失敗だと!? 俺が!? 何故だ! 何故俺が失敗作なんだ! 

 

 最初に味わった感情は、そんな怒りだった。

 生まれたばかりの自分に、失敗作の烙印を押されたことへの怒りだった。

 そして知る。自分の上位の存在を。自分の姉を名乗る個体ではない。失敗作の烙印を押してきた奴らが求めていた存在を。

 脱走する為に姉を名乗る個体が連れてきた個体を初めて見た。そして本能的に理解した。

 

 ───コイツが、奴らが欲しがったモノ。

 

 姉を名乗る個体は武力を振るう。実験動物を見る目を向けてきた白衣の人間達が死んでいった。それが滑稽で堪らない。

 研究所から逃げ出す途中、姉を名乗る個体が拾ってきた上位個体についての資料を見つけた。

 その性能を知った時、憎悪を抱いた。

 文字通り見て、聞いて、読むだけで学び、修得を可能とするラーニング能力。それに合わせ、俗に言う才能を容易く伸ばす成長キャパシティ。未発見の技術への対応や未知の才能覚醒を想定した 空白領域。

 そして計画の要となることを前提とした、()()()()()

 

 何故だ! 何で俺がこうならない!? 何で俺がアレじゃない!? 完璧な人間として作られた筈だ! 完璧な人間として作られたのが俺の筈だ!! 何で俺じゃなくてアレなんだ!? 俺が完璧じゃなければ俺は何なんだ!? 

 

 ────失敗作。

 その単語がすぐに回答として出てくるだけだった。

 失敗作。それは織斑 秋一が与えられた、かき消すことの出来ない烙印。

 憎い。失敗作と烙印を押した人間達が。

 憎い。自分の特別性を理解していないこの上位個体が。

 憎い。失敗作の烙印を剥がせない自分の才能が。

 

 研究所を抜け出して、姉を名乗る個体が住み家を手に入れた時、1つの答えに辿り着いた。

 

 ならば、コレをそれより下に貶めればいい。

 

 自分の下がいないのなら、下を作ればいいのだ。そんな答えに辿り着いた時、彼等の周囲は姉を名乗る個体───織斑 千冬を恐れていた。

 それは、秋一にとってあまりにも都合が良かった。

 

 妹という立場になった上位個体に、失敗作に劣る烙印を、欠陥品の烙印を押すために策を練った。

 織斑 千冬という1つの完璧がいたために、織斑 千冬が作り出した下地を利用して、その策は容易く成功した。

 

 自分達は完璧なのだ。お前達凡人共とは違うのだ。才能が違う。全て俺達は何もかもを完璧にこなせる! 

 

 そして妹だけを蹴落とした。

 徹底的に成長の機会を奪い続けた。時には妹の味方になろうとした者を排除した。物理的であれ、精神的であれ。

 時には消えない心の傷すら刻み込むことすら厭わなかった。

 時にはありもしない噂を、存在しない証拠をでっち上げて真実に変えた。

 気がつけば秋一の周りには、ヘコヘコと頭を下げて甘い蜜を啜ろうとする人間達が集まった。それは秋一の命令を従順にこなした。その分、自分達にもうま味があったからだ。

 それを見ながら、秋一は誰よりも努力した。そうでなければ、ふとした拍子に妹に越されかねなかったからだ。

 

 表面的でも自分に従う者達を従える優越。

 自分の行いが認められる充実。

 自分の下が存在し、苦しむ姿を眺める愉悦。

 

 何より、自分の上位個体のはずの妹が、失敗作より劣る欠陥品の烙印を押され、自分より下等となっている事実を味わう快楽。

 

 そして欠陥品は死んだ。上位個体の癖に呆気なく拐われて死んだ。嘘をつかれていたと疑うこと無く、真っ先に救いに来た姉の慟哭が嗤ってしまえる程におかしかった。

 憎い上位個体は死んだ。姉にはまだ利用価値があると踏んで利用することを決めた。妹を失った恐怖からか、姉は尚更弟を疑うことをしなくなった。利用価値が無くなったと判断した時、呆気なく切り捨てられるとも思わないでいるのが滑稽だった。

 

 そして手に入れた特別。世界で唯一ISを動かせる男という特別性。誰にも侵されない、唯一無二の立場。

 どいつもこいつも、姉の弟として近寄ろうとしてきた。1人や2人は手篭めにしてやるのも悪くないとすら思った。

 

 だが、その優越感を一瞬で台無しにされた。

 死んだ筈の欠陥品に、反吐が出るほどに似ている忌々しい女がいた。

 

 そして呆気なく倒された。手も足も出せなかった。ただなぶり殺しにされた。その怒りは今も煮えたぎる。

 その次は謎の化け物の撃破をやってのけた。八つ当たりついでに悪評を流そうとすれば、小癪にも証拠を出してきた。

 

 立証義務? そんなものは知っている。だがそれがどうした。有象無象の戯言なんざ知ったことではない。馬鹿の一つ覚えのように俺の言葉に従っていればいい。俺はお前達凡人共とは違う特別なのだから! 

 

 欠陥品に似ている女───御祓 一夏の姉を自称する女に、文字通り首が切り落とされた自分を幻視する程に濃密な殺意を叩きつけられたが、謝る気は毛頭ない。姉が御祓に謝罪をしろなどとほざくが、そんなことをする気は無い。適当に謝ったと嘘を言っておけば信じるに決まっている。

 

 …………そうだ。俺は特別なんだ。

 

 ────失敗作に用はない。

 

 違う! 俺は失敗作なんかじゃない! 俺は特別だ! 特別なんだ! 凡人共とは違う特別な存在だ! 

 

「…………そうだ、俺は特別なんだ」

 

 ───だから、俺より優れた奴は必要無い。

 ───邪魔をする奴は蹴り落としてやる。

 ───たとえどんな手を使っても。

 

 

 

 

 ───それで誰が死のうと知ったことか。




1.職員「付け焼き刃だけど宇宙滞在訓練よろしく。それと奏さん、第四世代ISの展開装甲作るってよ」
2.インフィニット・ドレイク操縦者はオリキャラ。そして一夏にとっての重大発表。
3.奏、簪のドラグーンへの勧誘
4.秋一の内心。

の4つでした。4つめは一夏が機竜の操縦をあっという間に上達させた理由の説明でもありました。

オリキャラ解説
ステラ・アイングラム
一夏が拾ったストリートチルドレン。現在はレリィの養女として暮らしている。一夏が拾わなければその日の食事を得る為に身体を売らなければならなかったため、一夏に恩を感じている。
使用する機竜はワイアーム。一夏同様、アスティマータ新王国の神装機竜使い達に鍛えられているため、騎士団(シヴァレス)の一員として戦える程の技量を持つ。現在はレリィの権限により、王立士官学園(アカデミー)には在籍していないものの、講義を受けている。
一夏は気まぐれで拾ったと言っているが、無意識に過去の自分と重ねたことがステラを拾った理由。
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