IS──暴竜に仕える八首竜の巫女──   作:樹矢

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この辺はどの作品を見ても似たり寄ったりですね。私もですが。
まあ完結目指して頑張ります。


金銀来訪
転校生


 先に学園に戻った簪とは対照に、一夏と夜架は寮の門限ギリギリで戻ることとなった。というのも、コスモゲイザー計画での護衛任務に向けた訓練の一部と補修をした自分の専用機を実際に動かしての調整などを行っていたからだ。

 それはさておき。ようやく学校が再開した月曜日、クラスメイト達はISスーツについて盛り上がっていた。というのも、この日からISの練習機を使った実技が行われるからだ。

 

「私はやっぱハヅキ社製かなぁ」

「そう? あれって性能表見るとデザインだけじゃない?」

「そのデザインが良いんでしょうが!」

「私としては性能的にミューレイのかなー」

「あれねー、だけどあれ高いじゃん」

「そう言えば織斑君と御祓さんのISスーツはどこのやつなの?」

「僕のはイングリット社のストレートアームモデルの改造型だよ」

「私のは所属企業のオーダーメイドです」

 

 2人は問いかけに簡潔に答える。ドラグーンでは装衣を模したISスーツを、表向きには独自開発していることになっている。

 実際は一夏達が機竜に乗る時に着用する装衣をISスーツと言っているだけであり、その装衣は機竜と共に発掘された物なのだが。しかしそれでも装衣自体の解析も奏の所属する開発部署とは別のチームによって行われており、現在は解析したデータを元に最新の装衣の開発をしようとしている。

 

「諸君、おはよう」

「「「おはようございます!」」」

 

 千冬と真耶が入ってくると、一斉に生徒達は席に着く。千冬の教育はしっかりと行き届いていた。

 

「今日からISの実機を使った訓練に入る。事故を起こそうものなら病院行きだ。全員心して行うように。

 それと個人用のISスーツは今日から申し込みが始まる。一部の者以外は必ず申し込みを忘れるな。それが届くまでは学校指定の物を使うように。いいな?」

「はい!」

 

 私からは以上だと締めくくり真耶にその他の連絡をさせる。

 実機訓練という単語を聞いて、一夏はこのクラス、いや、この学園のどれ程の人間がその本当の意味を知っているのだろうかと疑問を持った。

 一夏達にとって機竜は兵器だ。10年以上前に『遺跡(ルイン)』から発掘され、それを戦争に投入しただけで、それまでの数百年間培ってきた戦争概念を覆した古代人の兵器。

 IS世界からしてみれば、機竜世界は中世レベルの文明までしか発達していない。それを加味しても機竜という兵器はその力を文字通り竜の如く振るい、今では機竜世界にとっての軍事力に直結している。その性能はIS世界でも十分通用する程だ。

 そのため、新王国の王立士官学園(アカデミー)をはじめとした訓練学校では『装甲機竜(ドラグナイト)は兵器である』と認識し、それを前提として授業が行われ、訓練が行われる。それこそ耳にできたタコで料理の一つや二つは作れそうな程に。

 しかし『ISはスポーツ競技』と認識されているこの世界ではファッションと勘違いする者も少なくない。

 何より各国政府はISを兵器として扱い、しかしスポーツ競技であるという認識を改めようとしていない。

 

「(いざスポーツではなく、戦場に立たされればどうなることやら)」

 

 それに元は宇宙進出の為の道具として発明されたものだが、ISは簡単に人を殺せる。加減1つ間違えるだけで、生身の人間を潰れたトマトか挽肉のペーストに変えられる。

 普段はISをスポーツとして結果を出し、戦場では世界最強の兵器としてその圧倒敵な戦闘能力で蹂躙し、殲滅すればいいと考えているのだろう。

 奪い、奪われる命のやり取りを知っている一夏はこの世界の事には関わらないと決めながらも、鈴音とセシリアはどうするのかと不安を抱いた。

 そんな不安を他所に、副担任の真耶は1つの連絡を告げる。

 

「皆さん、このクラスに転校生がやってきます!」

 

 その言葉にざわつくクラスメイト達。真耶の合図と共に入ってくる2人の人物。その片方は、

 

「皆さんはじめまして、シャルル・デュノアと言います。よろしくお願いします」

 

 プラチナブロンドの髪で秋一と同じ()()()()()を着た人物だった。

 

「男…………の子?」

「はい、こちらに僕と同じ境遇の人がいると……」

 

 そこまで言ったところで、一夏は自分の耳を塞ぎ、秋一が初めて自己紹介した時のような黄色い悲鳴があがる。

 

「二人目の男の子!」

「1組で独り占めよ!」

「お前ら、黙れ」

 

 しかし千冬の一言で先程の騒がしさが消え去る。それを見た千冬はもう1人に告げる。

 

「ボーデヴィッヒ、自己紹介をしろ」

「はっ。了解しました、教官」

 

 そしてもう1人、銀色の髪と赤い瞳と左目につけた黒い眼帯が特徴の少女が、軍隊式の敬礼と共に自己紹介をする。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

「…………あの、他には?」

「以上だ」

 

 もう少し自己紹介させようとした真耶の健闘むなしく、自己紹介は終了した。ほんのり涙目になった真耶に対し、いつも親しみを持って愛称呼びをする真耶にクラスメイト達は同情した。

 

「貴様が織斑 秋一か?」

「そうだけど?」

 

 凍てついた刃を突きつけるような目でラウラは秋一を睨む。そして興味を失くしたと言わんばかりに割り振られた席に着いた。秋一は生意気な転校生とラウラをタグ付けし、その驕ったプライドで内心で嗤う。

 一夏はそんなラウラよりもシャルル・デュノアと名乗った()()に警戒を向けていた。

 

「(杜撰な変装ですね)」

 

 一夏はその少女の変装をそう評価する。第1に男性にしては線が細い。時折そんな男性もいるが、それよりも細い女性のもの。

 第2に仕草に女性のものが多く見れる。男性と偽って入ってくるならもう少しその辺を男性のものに仕立てるものだと判断する。

 最後に同じ事をしている人物(ヴァンハイム公国の七竜騎聖補佐官)を知っているからだ。そちらは自分自身の変装だけでなく、ある方法で相手の意識を誤認させて性別を偽らせていたのだから、比較対象にするのはあまりにも酷ではあるが。

 

 

 その頃、ヴァンハイム公国、七竜騎聖執務室。

 

「くしゅんっ!」

 

 国民への混乱の伝播を防ぐ為に、今でも『聖域(アヴァロン)』の機能で()()()()()()()()がくしゃみをした。

 

「どうした? 風邪でもひいたのか? 俺にはうつさないで欲しいぜ」

「大丈夫、多分誰かが噂しているだけだから。それとも仕事が多すぎるからかな? 

(…………いっそのこと、こっそり抜け出してルクスに甘えても許されるよね?)」

 

 色は違うが形状はルクスとアイリの2人と同じである、咎人としての首輪を撫でながら少女はそんなことを考えた。

 

「(サボろうとしてそうだぜ、あの顔は)」

 

 なお、そんな考えは自分が補佐官を務める人物にモロバレではあったが。

 

 

 視点は再びIS学園。

 1時限目の2組との実機訓練の為に制服からグラウンド近くの更衣室で装衣に着替える。最近また合わなくなってきた(どこがとは言わないが)と思いながら古傷を見られないように注意する。

 本来であればもう少し集合場所に近い場所で着替えたいが、秋一の着替えるスペースに割り振られているため使えない。

 そして着替え終わった一夏は先程から視線を向ける、鈴音をはじめとした者達に目を向ける。どこがとは言わないが、走れば一夏よりは軽い代わりに空気抵抗を受けやすい者達だった。

 

「…………そっちの()があるならお断りですよ?」

「違うわよ!」

 

 見てくる者達を代表して鈴音が叫ぶ。彼女の特徴的なツインテールが猫のように逆立った。

 

「あんたどうやったらそんな風になるのよ」

 

 鈴音をはじめとした一同は一夏の体(特に胸)に視線を注ぐ。一夏としては同性とはいえ、あまり見られたくないし、主にしか見せたくない。触っていいのは自分以外では主とその世継ぎか自分の子、それ以外では良くても赤子から幼稚園児までの幼子だけである。

 そんなことは欠片も見せずたった一言。

 

「とりあえず天然物としか」

「「「くっ…………!」」」

 

 見ていた殆ど(十割)が血涙を流しかねないような悔しさに苛まれ、自分の胸に手を当てて現実に打ちひしがれる。そして聞き耳を立てていた者はさめざめと静かに涙を流した。

 肩が凝って寧ろ邪魔と思っている一夏は心に思えど口にはしない。言ってしまえば最後、この手の者達は修羅になると身をもって知っているからだ。

 うっかり口を滑らせ、メルとクルルシファーの前でそれを言ってしまった時のことなど思い出したくもない。口は災いの元という先人の言葉を一夏は身をもって体験していた。

 そして文字通り血の涙による濁流が起きそうだったため、上には上(フィルフィという上位互換)がいるという事実は言わないことにした。一夏としてはその上位互換の同格(山田先生という身近な存在)に聞いて欲しいところである。

 

「早くしないと出席簿が落ちますよ」

 

 インフィニット・ワイバーンの機攻殻剣を持って集合場所へ向かう際に一夏の発した一言で、全員が急いで着替える。

 最後に集まったのは他のクラスの女子達に追いかけ回された秋一とシャルルであった。

 

「これよりISの実機を使った訓練を行う。授業開始前に模擬戦をしてもらう。凰、オルコットは前に出ろ」

 

 セシリアと鈴音がブルー・ティアーズと甲龍を纏う。

 

「模擬戦は私たちですればいいんですか?」

「いや、お前達の相手は……」

 

 刹那、空から空気を切り裂く音が聞こえてくる。

 

「ど、どいてください──────────!!」

 

 それは半分泣き目になったラファール・リヴァイブを纏っている真耶であった。

 それに対し一夏は早口で詠唱符を唱え、飛翔。真耶を減速させ、空中で大勢を立て直して降りる。

 

「あ、ありがとうございます……」

「教師なんですからしっかりしてください」

 

「あはは……」と真耶は申し訳なさそうにする。

 

「あのもしかして私達の相手って……」

「そうだ。安心しろ、お前達ならすぐに負ける」

 

 その一言でセシリアと鈴音の心に火がつく。そして3人は空へ飛翔。戦闘を開始した。

 

「そうだな、丁度いい。デュノア、山田先生の機体の説明をしてみろ」

「はい」

 

 シャルルはラファール・リヴァイブについての説明を始める。ラファール・リヴァイブはフランスのデュノア社、つまりはシャルルの家が作っている機体だ。その為ラファール・リヴァイブについてはIS学園の誰よりも知っていた。千冬も満足する模範解答をし、上空では決着がつく。2対1という不利を覆し、真耶が勝利した。

 

「くぅ…………聞いてないわよこんなの…………」

「強すぎですわ…………」

「いえ、2人とも強かったですよ? 最後らへんの連携はちょっと本気になっちゃいましたし」

 

 セシリアと鈴音ははじめは真耶に翻弄されていた。しかし中盤以降からそれぞれの機体の特性を活かし、連携を始めた。だがそれでも真耶の実力は2人の上。結局2人は負けることとなった。

 真耶も元は代表候補生。その実力と操縦テクニックは千冬には及ないものの高いことに変わりはない。

 

「これで教員の実力はわかってもらえただろう。これからは敬意を持って接するように」

「「「はい!」」」

 

 専用機持ちがリーダーとなって生徒達が分けられる。はじめは秋一とシャルルの場所に集まったが、千冬の一喝で均等にバラけた。

 

「少し目線が高いですがそれだけです。いつも歩くのと同じだど思ってください。それだけで動きますし、いざと言う時は支えますので」

「う、うん……」

 

 一夏は訓練機を纏う生徒の手を取りながら1歩ずつ歩く。そのお陰か、的確なアドバイスも合わさり安心して1人、また1人と進み、一夏のグループは他のグループよりも一番進みが速かった。

 

「それでは最後にゆっくりと両膝を着いてください」

「ええっと……」

 

 最後に膝を着き、一夏のグループの生徒が降りる。その後簡単なアドバイスを自分のグループのメンバーに教え、

 ふと周りを見渡すと、セシリアのグループはセシリアの説明が細すぎてなかなか進まず、鈴音のグループは時々感覚だよりの説明が混じるもののどうにか進み、秋一のグループは1人がISを立たせたまま降りてしまい、所謂お姫様抱っこで秋一が1人1人運んでいたが、千冬の制裁によって指示された通りに進まされていた。

 ラウラのグループと言えば、ラウラが無言を貫き、なんの指示も出さないため、一切進んでいなかった。

 

「織斑先生、終わりました」

「そうか。ならばボーデヴィッヒのグループを手伝え」

「………………先生が注意すれば良いのでは?」

「手が空いているのだろう?」

「……わかりました」

 

 ラウラのグループが遅々と進んでいないことを知りながらも注意しない千冬に呆れる感情を表に出さず、一夏は指示に従う。

 

「早く進めたらどうですか?」

「何故私がコイツらに教えなければならん」

「あなたが織斑先生を教官と呼ぶのなら、あなたが織斑先生の指示に従うのは当然でしょう。

 それにあなたが従わないというのなら、織斑先生は教え子に簡単に舐められる人間と見られることになりますよ。他でもない、あなたが今しているその行動で。

 あなたは自分が教官と呼ぶ人の顔に、自分で泥を塗っている自覚がありますか?」

「………………チッ」

 

 敢えてラウラの神経を逆撫でする言い方を選び、ラウラにグループの指示を出させる。自分の発言が正論かどうかはさておき、ラウラにはこの言い方が正解だと判断した結果だった。

 ラウラが一夏を睨んで舌打ちし、不承不承という感情を隠しもせずに指示を出す。一夏がそのサポートに入り、ラウラの指示に補足を入れる。そうして無事に全員が終了した。

 

「………………面倒事が増えた気がしますね」

「なにか仰りましたか?」

「いいえ、なんでも」

 

 一夏の呟きに気がついたセシリアを適当に誤魔化す。一夏は自分の感じた予感に、何やら確信めいたものを感じずにはいられなかった。




課題が………!やらなきゃいけない課題が多い……………っ!これだから勉強は嫌いなんだッ!!!


因みにヴァンハイム公国七竜騎聖補佐官は彼女のまま変わりません。
違いは神皇国の皇女としての仕事と自国の七竜騎聖としての仕事、アスティマータ新王国やヴァンハイム公国などの監視の元で行われる『遺跡』関連の業務が追加されていることくらい。うーん、過労。
『遺跡』の技術解析は奏のお陰でだいぶ楽ができている。やったね。
後はルクスとは色違いの首輪(赤色)をつけている事くらい。
仮に仕事を投げ出してルクスに甘えようものなら、一夏が光の無い目でその首輪にリードを着けます。

以下仮にそれが行われた場合。
一夏「飼い犬の気分でも味わいますか?」(ハイライトオフ)
補佐官皇女「イチカコワイ((((;゚Д゚))))」
ルクス「一夏!ストップ!ストーップ!!女の子がしちゃいけない顔してるからストップーーー!!」
ヴァンハイム七竜騎聖「(俺は助けないぜ。死にたくないからな)」
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