IS──暴竜に仕える八首竜の巫女──   作:樹矢

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今回は少し短いかめです。


動き出す歯車

 3月、一夏達が任務を開始し、既に5つのコロニーを殲滅した頃。一夏と夜架はある調査から帰ってくると同時に奏に呼び出されていた。

 

「奏さん、何かご用で?」

「ええ、まずこれを見てちょうだい」

 

 奏がコンピュータを操作すると、壁のスクリーンに映像が出る。先に判明していた13個のコロニーの内、既に破壊し、駆逐した5つには×印がついている。しかし残るは8つ。先は長い。

 そしてその8つのコロニーから、矢印が伸びている。

 

「これは幻神獣の移動先の予測よ。一定数を超えた幻神獣が移動して更にコロニーを作るのは想定の内。なんだけど…………」

「…………何かあるんですね?」

 

 一夏の質問に奏は真剣な表情で頷く。

 

「…………この世界中に存在する幻神獣のコロニー。ここから出た奴らの移動先が問題なの。もしかしたら勘違いかもしれない。でも、このまま移動先が変わらなければ、ここに至るわ」

 

 その矢印は別のコロニーと合流し、更にある方向へ伸びていく。世界中のコロニーから伸びた矢印が1箇所に集まり、そこから伸びた矢印の行き着く先、それは………………

 

「───IS学園。日本政府が建造、運営資金を提供し、日本領海内に存在しながらも、建前上はどの組織、国家にも属さないIS専門の教育機関。

 ここには世界中のIS保有国から留学生も来ているわ。それも国家代表としての素質があるとされた、国家代表候補生がね。

 何故か知らないけど、このまま見過ごしていれば幻神獣達が行き着く先はここ。

 もしここを攻撃されれば、自国の代表候補生に危険が及んだとして、軍隊が動く。そうなればあなた達の任務遂行の難易度は上がるし、機竜を奪われるリスクも大きくなる」

「…………つまり、我々は幻神獣を倒しながら、このIS学園も守らなければならない、と?」

「ええ。正直、罠の可能性も捨てきれない。まるでお膳立てされているようにすら思えるわ。

『舞台は整えた。ここに入って幻神獣を倒せ。さもなくばお前達の目的は果たせないぞ』と言われてる気分ね」

 

 奏の言葉に一夏と夜架は同意を示す。寧ろ2人はそれが的を得ているという確信すら持っていた。

 

「…………つまり先程の調査で見つけた巣らしきものは」

「既に一匹残らず移動を済ませたコロニーの跡地ね。早速私は資料の作成に入るわ。この様子だと、増援も呼ぶべきだしね。あなた達はどうする?」

「増援を待って殲滅していく…………と言いたいところですが、流石に無理がありますね」

「ええ。その間にまた移動されて、増援呼んで…………結局IS学園行きね」

 

 ただでさえ多種多様な姿や能力を持った幻神獣が群れで襲いかかってくる。それだけでも熟練の機竜操縦者でも油断できないというのに、明らかにコロニーの発見当初よりも数の増えた幻神獣が群れとなる。

 このままいけば終焉神獣(ラグナレク)規模の被害が出かねない。場合によっては七竜騎聖の出撃も有り得る。そんな予感が3人にはあった。

 

「そこで提案なんだけど。このお膳立て、わざと食いついてみない?」

「…………と、言いますと?」

「向こうは私たちの目的を理解している。そして相手にしている脅威も。目的はなんにせよ、この状況は私たちにとっても都合がいいわ。何せ、殲滅すべき目標が1箇所に集まってくれるのだから」

「ですがそれは…………」

「ええ。あなた達という存在、機竜、そして機竜世界。何より、この世界のありとあらゆる組織、国家が手荒な真似をしてでも手に入れようとするであろう神装機竜の存在が知られることとなる。

 事を間違えれば、機竜世界とIS世界の、異世界間戦争の幕開けね」

 

 そのトリガーとなるのは、神装機竜という強大な力。それを求めるのが個人であれ、組織であれ、国家であれ。神装機竜が鍵だと奏は言う。

 

「本当ならIS学園には行かせたくないのよね。さっきの理由もそうだけど、行動が確実に制限されるわ。いくら所属組織からの命令だと言い続けても、いずれは限界が来るわ。

 何より、あの『兎』が黙っているはずが無い。確実に余計な真似をしでかしてくるわよ」

 

『兎』という単語に一夏の表情は険しくなる。一夏にとっても、奏にとっても、それが指す人物は1人しかいない。

 

「…………あの篠ノ之束は確実にあなた達を狙ってくる。神装機竜を手に入れるためならば、殺すことすら厭わないでしょうね。

 …………アレは、まともな人間が理解出来る存在じゃないわ。中身が小娘のままの人でなしよ」

 

 そう言うと奏は拳を握った。その恨みは、憎しみは、永遠に晴れることは無く、奪われた存在はあまりにも大き過ぎたから。

 重くなった空気を切り替えるために、一夏は話を戻す。

 

「…………リスクも大きいですが、七竜騎聖を援軍に呼んで一網打尽にできるかもしれないのは大きいですね。正確な規模も割り出せますし、被害も所詮は人工施設の島1つ。死人が出るよりは安上がりです。防衛に出てくる日本の戦力がどうなるかは知りませんが」

「その代わり日本は大打撃ね。管理も運営も日本だけがやってるもの。維持と運営だけでも莫大な税金を注ぎ込んでるのに、再建も必要となれば偉い人達が泣いて喜ぶわ。任務が終わった後は増税のバーゲンセールも覚悟しなくちゃね」

 

 一夏の意図を察し、自分を切り替えた奏は、ありがとうと内心呟く。

そしてただでさえ日本の負担が大きいのに、そこへ追い討ちをかける幻神獣とはなんとも哀れだと政治家達の毛根へ冥福をお祈りする。そんな政治の話は一夏にとっては知ったことではないのだが。

 

「それはともかく。私たちはIS学園への被害の最小化、及び幻神獣の規模の把握の為に行けばいいんですね?」

「ええ。恐らくは散発的とはいえ幻神獣が襲撃してくる可能性もあるでしょうし、最終的には七竜騎聖も出てこなければいけなくなるでしょうから、規模の把握は正確にお願いね。

 それと、いきなり神装機竜を出すのもマズいし、あなた達のISも対幻神獣用に改修しなきゃね。一夏ちゃんの機体にはこのワイバーンを使って強化するとして、夜架ちゃんの機体はどうしようかしら…………」

「まずは一夏の機体を強化してくださいな。私はサポートに回ります」

「いいんですか?」

「今できないことを悩んでいても仕方ありませんわ。ならば今可能なことから進め、やれることを増やすべきですわ」

「…………ですね」

 

 夜架に一夏が同意すると、奏はどこからともなく分厚い本を2冊2人の目の前に置いた。六法全書よりも薄い紙が綴じられたそれはIS学園への入学参考書だ。

 

「なら話は早いわね。今月末にIS学園への最後の入試があるわ。残り3週間、みっちり教えてあげるから覚悟してね?」

 

 やる気を見せる奏を他所に、一夏な参考書の厚さから目を背けた先、そこには厚さとページ1枚の薄さに冷や汗を流しながら引いている夜架がいた。

 そして2人の目が合う。

 

 ───正気ですの? 

 ───諦めましょう。

 

 そんなやり取りが声もなく行われる。そして2人同時に溜め息をついた。

 

 

 

 そして2人は無事に試験に合格し、IS学園への入学を果たした。




以上、一夏達のIS学園への入学経緯でした。
次はキャラ設定を投稿する予定です。
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