IS──暴竜に仕える八首竜の巫女──   作:樹矢

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プロットデータが吹き飛んでしまいましたが私は元気です。バックアップは本当に大事だと改めて身に染みた次第です。

それでは、IS原作開始です。


 私は帰らない。あの地獄へ戻ることは無い。
 たとえ今更家族面されたところで、戻るつもりは那由多に1つもありはしない。
 私の生きる世界は向こうで、この世界がどうなろうと知ったことではないのだから。
 私たちの世界の問題を、私たちが片付ける。それで全て終わり。何も残さず、帰るのみ。

 ───ああ、だけど。その時はせめて、彼女にだけはお別れを言わなきゃ。


青い雫と紅い龍
入学/呆れ


 2022年、春。日本が建造・維持管理を行っている巨大人工島(ギガフロート)であるIS学園の校門に一夏と夜架の姿があった。

 

「広いですわね」

「無駄な金使いだと思いますけど」

「あらあら、随分とつまらなさそうですね」

「アレの顔を見ないで済むならそれでいいです」

 

 一夏は嫌悪を隠さずにそう言う。

 理由は2つ。一夏は入学試験の実技試験で織斑 千冬と戦った。他の受験生達が別の試験官であったのにも関わらず、一夏の時だけ現れたのだ。

 専用機であるインフィニット・ワイバーンを改修する為に置いてきていた一夏は、日本の国産第2世代ISである〈打鉄〉で試験を受けた。結果、打鉄は一夏の操縦についていけずにオーバーヒートし、結果として一夏は負けた。

 しかし一夏は織斑 千冬が、織斑 一夏であるのか確かめようとしているのを見破っていた。

 しかし助けもせず、見捨てた女に今更家族面されても嫌悪しか湧かない。自分の行いの結末だと言うのに、未練がましく自分の手元に戻そうとしているのは見ていて心地の良いものではなかった。

 第2に、一夏を虐めた集団のリーダーでもあった織斑 秋一が入学した事だ。

 唯一の男性IS操縦者と織斑千冬の弟の2つの肩書きを持って秋一は入学した。忘れたくても忘れきれない過去を、心の傷を刻み込んだ主犯と、一体誰が関わりたいと思うだろうか。

 ましてや自分の為なら他人を蹴落とし、弱者に仕立て上げることすら厭わない者であるのだから尚更だ。

 

「さて、友情ごっこを始めに行きましょう」

「もう、一夏ったら………………」

 

 スタスタと先に行く一夏の後ろを夜架がため息と共について行った。

 

 

 一夏が割り振られたクラスは1年1組。その教室に入って早々、一夏は今すぐ機竜世界へトンボ帰りしたくなった。

 

「(よりにもよってこの男(織斑 秋一)がいるとは。まさか担任か副担任が奴ですか? この男は兎も角、私も一緒にしたのは、まさか私情ではないでしょうね?)」

 

 織斑 秋一に一瞥もくれずに自分の席へ座る。クラスメイト達は唯一の男に釘付けになっているが、そんなものは知らんとばかりに外の風景に目を向ける。昔から変わらない気に食わないものを見る視線を無視して、雲の流れを眺め続けた。

 

「織斑 秋一です。特技は運動全般、特に剣道が得意です。たった1人の 男性IS操縦者ですが、皆さんよろしくお願いします」

 

 気づけば自己紹介が始まり、そんな自己紹介を聞き流す。黄色い悲鳴が響き、教室がざわめく。どうせ格好つけて好印象を与えるような顔をしてるのだろうと過去から予測を立てる。

 

「(くだらない)」

 

 そんな感想共に外を眺め続けていると、教室の扉が開く音がした。

 

「すまない、会議が長引いてしまった」

 

 その声に一夏は今すぐにこの場から、否、この世界から消えてしまいたくなった。そんな感情は表に出さずに前を向く。

 そこにはやはり、織斑 千冬がいた。

 

「さて、諸君。私が織斑 千冬だ。

 私の仕事は諸君らをこの一年でIS操縦者として使い物になるまで鍛え上げることだ。私の言う事はよく聞き、良く理解しろ。分からない事は分かるまで教えてやる。出来なければ出来るまで指導してやる。逆らってもいいが私の指示には『はい』か『YES』で答えろ。いいな?」

 

 一夏は直感に従い両耳を塞ぐ。すると窓が揺れるほどの黄色い悲鳴が場を満たした。

 

「千冬様! 本物の千冬様よ!!」

「私、千冬様に会いたくて北九州から来たんです!!」

 

 このクラスに対する一夏の第一印象は『遊び気分』だ。

 ISは兵器であり、このIS学園は士官訓練所のような場所であると一夏は認識している。

 しかしここにはISに乗りたいから。織斑 千冬に会いたいからなどといった理由だけの者が多い。いや、競技としてのISは知っていても、ISの兵器としての実態を一体何人が知っているのだろうか。

 世界が違うとはいえ、一瞬でも油断できない命を懸けた戦いをしてきた一夏にとって、この雰囲気は受け入れられないものであった。

 

「(…………こんな人たちまで守らなきゃいけないんですか? 

 それに予想通りあの女が担任…………。私情優先でこのクラスに入れたと言われても否定できませんね)」

 

 千冬が呆れ、三度叫びが教室を満たす。一夏は千冬が自分に向ける困惑の視線に気づかなかったことにした。

 

 

 

 入学初日から始まった授業の途中、織斑千冬は唐突に思い出す。

 

「ああ、そういえばクラス代表を決めなければな。クラス代表はクラス対抗戦への出場の他、生徒会への出席、学園の行事でのまとめ役を担う。わかりやすく言うならばクラス委員長だ。

 自薦でも推薦でも構わん。誰かいるか?」

 

 直後、女子達が一斉に挙手をした。

 

「はい! 織斑君を推薦します!」

「私も!」

「私も!」

 

 小さく溜め息をする一夏。さも当然と受け入れる秋一だが、イギリスの代表候補生、セシリア・オルコットが反対。女尊男卑に染まった日本人差別とも取れる言葉を交えた演説を始める。一夏は奏に見せられた資料で、彼女が英国貴族の1人であることを思い出す。

 

「(本当に貴族なんですかね。セリスさんやクルルシファーさん達のほうがよっぽど…………

 いえ、比較対象が間違ってますね。こんな人と比べては皆さんに失礼です)」

 

 一夏はセシリアに一つの評価を下し、どうでもいいと無視を貫く。もし、ルクスがこの教室に居て対象となっていれば、一夏は黙っていなかっただろう。

 気がつけば織斑秋一との決闘ということになっていた。

 

「…………そうだな、御祓、私はお前を推薦したいが、やる気は無いか?」

「ありません。何故私を?」

「どういう事だよ千冬姉……」

 

 スパァン!! と爽快な音が秋一の頭から響く。

 

「織斑先生だ。推薦する理由だが、入試の実技試験の時に私と引き分けたからだ」

「私の負けのはずでは?」

「あれは機体のオーバーヒートによるものだろう。オーバーヒートしなければお互いにエネルギー切れで引き分け、あの時専用機がお前の手元にあれば……どうなっていただろうな」

 

 織斑千冬の思わぬ評価にクラスメイト達はざわめきだし、一夏に視線が向けられる。一夏は「やってくれる」と内心呟き、それでも反論する。

 

「それはもしもの話であって、結果として私は先生に負けています。過分な評価はやめてください」

「機体をオーバーヒートさせても、私に掠らせもしなかった癖によく言う」

「何より、既に所属企業を優先する為、役員になることはできないと伝えてある筈です。なので私は代表にはなれません。

 それに一個人の生徒に肩入れするのはするべきではないと思いますが?」

「才能ある生徒の才能を伸ばそうとするのは当然だ。たとえ実技試験だとしても、この私にかすり傷すら付けさせなかったお前をこのまま埋もれさせる訳にはいかないだろう。企業に関してはそちらを優先して構わない」

 

 とことん逃げ道を塞いでくる千冬に、辟易する一夏。ならば、と可能な限りの譲歩と要求を突きつける。

 

「ならば織斑さんとオルコットさんの戦いに参加しましょう。誰が代表になるのかで結局は戦うことになるのでしょうし、その結果で代表を決めればいいと思います。

 ただし、勝者は代表就任を辞退できるというのが条件です。

 それが認められないならば決闘の参加も代表就任もしません。所属企業の都合上、私が可能な限り譲歩できるのはここまでです。これ以上は企業と直接協議してください」

 

「…………いいだろう。一週間後の月曜、放課後に模擬戦を行う。織斑、オルコット、御祓は各自準備を怠るなよ」

 

 千冬はそう締めくくり、授業を再開させる。一夏は窓の外を眺めながら、早速巻き込まれることになった面倒事に溜め息をついた。

 

 そして放課後、一夏は夜架と話をしながら寮へ向かっていた。

 

「…………成程。それはまた」

「帰っていいですよね?」

「いけませんよ」

「………………」

「そんな捨てられた子犬のように見つめられても困りますわ」

 

 二人揃って呆れの溜め息をつく。いつもであれば珍しく一夏が駄々を捏ねているのだと揶揄うのだが、今回は相手が相手な上に事情が事情だ。夜架にとって、大事な妹の心の傷を抉るような趣味は欠片も持ち合わせていない。

 

「取り敢えず、何かあればわたくしに言いなさいな。少しは楽になりますわよ?」

「…………はい。そうさせてもらいます」

 

 そう言う一夏だが、夜架には既に一夏の心が締め付けられているのは一目瞭然であった。

 

「(帰ったら一夏の多少のわがままは覚悟していただきますわ、主様)」

 

 きっと甘え倒すのだろうと確信した夜架はこの場にいない主に念を送る。

 

「そういえば、部屋はわたくしと同じですか?」

「私の部屋はコレです」

 

 一夏が部屋番号の刻まれたスティックのついた鍵を見せる。夜架の取り出した鍵の番号を見比べると、番号は違う。

 

「…………違いますね」

「違いますね」

 

 そんなこともあるだろうと済ませようとした時、一夏は奏の言葉を思い出した。

 

『あなた達の経歴は偽造だけど作っておいたわ。そう簡単に見破れるものでは無いことは保証してあげる。

 でも気をつけて。IS学園には更識がいるわ』

『更識?』

『ええ。日本の持つ、対暗部用暗部。言うなればスパイに対するカウンターね。その若い当主がIS学園にいるの』

『つまり怪しまれないように動けと?』

『いえ、IS学園に入学した時点で、全校生徒は監視対象になってると思っていいかもね。国家代表、或いは国家代表候補生は、その子達の所属国家につつかれない程度でしょうけれど。

 でもあなた達に気をつけて欲しいのは、必要以上に探られないようにすること。

 敵と認識されたら、あなた達の任務遂行の邪魔になるのは確実よ。最悪、実力行使に来る。そうなれば機竜世界の存在が露呈するわ。

 幻神獣の存在で露呈するのはわかっていても、それは最後の最後まで秘匿するべきよ』

『わかりました。

 

 

 ───ところで、その秘匿されているであろう存在を知っているのは何でですか?』

『こういう大事な事は紙媒体だけに記録しなきゃダメよ? 悪い人に漁られちゃうから』

『(ああ、クラッキングか………………)』

『それに世の中の暗い所じゃ有名人みたいだし?』

『暗部の肩書きは何処へ…………?』

 

「…………更識、ですか」

「…………ああ、いましたね、そんな人が」

「忘れてたんですか?」

「それっぽい人を見つけただけですわ。()()()()()()()()()()()()()()()くらいには実力はあるようですわね」

「…………なんで早く言ってくれなかったんですか」

「聞かれてないので」

「…………」

 

 一夏が批難の視線を向ければクスクスと笑われ、受け流される。溜息1つつくと、寮の入口に着いていた。

 

「それではまた明日」

「ええ、また明日」

 

 そう言って夜架と別れた一夏は、自分に割り当てられた部屋に着く。

 

「(たしか他の人との相部屋でしたね)」

 

 取り敢えずノックし、特に反応が無かったので鍵を開こうとすると、施錠されていない事に気づく。

 

「…………開いている?」

 

 少し警戒しながらドアを開く。

 そこには珍妙なナニカ(着ぐるみのキツネ)がいた。

 

 モゾモゾと蠢くソレは一夏と目が合い、

 

「…………………………」

「…………………………」

 

 微妙な空気が、部屋を満たした。




はい、という訳で一夏も代表決定戦参加です。
2022年はアーキタイプ・ブレイカーの設定より。IS原作開始時にはISが登場して約10年は経っている。2012年には白騎士が出来ていたってことで…………。
こう見るとISって出てくる時代ホント間違えてるな。もう少し未来なら受け入れられたかも?

以下、一夏と夜架による評価。

一夏→夜架:大好きな頼れる姉であり、頼れる同僚。従者としての師であり、機竜の師匠の1人。IS学園での心の拠り所。姉と呼びたいが恥ずかしいのでできない。

一夏→千冬:自称姉、裏切り者。それ以外は無関心。ルクス達に言いがかりを付けたら抹殺対象。それが無ければ手にかける労力すら無駄。

夜架→一夏:偶に意地悪したくなるくらいに可愛い大切な妹であり、可愛がりのある同僚。IS学園にいる内は、少しでも一夏の心が安らげる場所でありたい。一夏に姉と呼んで欲しい時が偶にある。

夜架→千冬:一夏の救いを求める手を払い、一夏を捨てた女。自分のしたことを理解していないのならば失笑モノ。その時は抹殺する事も辞さない。くらいにキレる。

千冬が2人にどう思っているかはその時に。
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