戦姫絶唱シンフォギア ~奇跡の歌姫と戦士の物語~   作:イキスギコージー

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自粛ムードの中huluでウルトラマンばっかり見てました。ごめんなさい...
劇場版のコスモスは再び見ると涙が『で、出ますよ~』

では23話始まります!。


ep23.偽善

黒いガングニールを纏った、マリア・カデンツァヴナ・イヴ。

そしてその隣には地上に立たず浮遊する、プロヴィデンス。

その存在は、その場にいる翼や戦兎だけでなく、二課の面子全員を驚かせた。

『我ら武装組織『フィーネ』は、各国政府に対して要求する』

マリアが、全世界へ向けて報道される中継に向けて告げる。

「そうだな・・・差し当たっては、国土の割譲を求めようか?」

「馬鹿な・・・・」

その行動に、翼は呆然と立ちすくむ。

「何考えてやがんだ・・・」

『もしも二十四時間以内に、こちらの要求が果たされない場合は、各国の首都機能がノイズによって不全となるだろう』

マリアの言葉に、ガイマスクの下からではあるが訝し気に睨みつける。

「あぁ・・・人質がいるためにこっちは下手には動けないんだ・・・わかった・・・状況の変化次第、即時対応する!頼むぜ、旦那!」

二課本部との連絡をする奏。

「どうであった?奏?」

「こちらの状況判断で動くようにとのことらしい...中継については、緒川さんがなんとかするそうだ。中継が終わるまで私達装者は動けない...だから」

「分かった、僕も動くとしよう」

勉はポケットからウォズミライドウォッチを取り出した。

後は向こうのタイミング次第...

「一体どこまでが本気なのか...歌姫よ...」

『私が王道を敷き、私たちが住まうための楽土だ。素晴らしいとは思わないか?』

舞台に近づくにつれ聞こえてくるマリアの声。ある程度の所まで来たら会話が聞こえてきた。

(だが...なんで国土の割譲とは?いくらなんでも現実的ではなさすぎる。一体彼女をそこまで強く動かす理由とは...)

 

「奏さん...苛立ってます?」

「ああ、こんなふざけた状況で何もできないという事に苛立ってるよ...くそったれ!!」

未来の言葉に、奏は苦虫を嚙み潰したようにそう答える。

 

「何を意図しての騙りか知らぬが・・・」

翼がその手のマイクを握り締める。

「私が騙りだと?」

その言葉にマリアはマイクを使わずに応じる。

「そうだ!ガングニールのシンフォギアは、貴様のような輩に纏えるものではないと覚えろ!」

そう叫び、翼は、聖詠を唄い出す。

 

「な!?ちょっ!!」

それを聞いてガイは慌てて翼に辞めさようとする。

 

「―――Imyuteus amenohaba―――っ!?」

 

しかし、その聖詠が唐突に途切れる。

「ん?・・・緒川か!?」

おそらく緒川が連絡を入れて止めたのだろう。

確かに、今の状況で天羽々斬を纏えば、全世界に彼女がシンフォギア装者だとバレてしまう。

その状況は芳しくない。それにガイ自身ある人物との約束もある。

 

「さっきの国土の割譲の件、お前たちはどこまで本気なんだ!」

「全てさ、何もかも...」

「なに!!」

プロヴィデンスの言葉にガイはさらに驚く。そして...

 

「確かめたらどう?私の言った事が騙りなのかどうか」

マリアが挑発的に尋ねる。

しかし、翼達はまだ様子を伺っている。動くにしてもまだ材料が足りない。

それに対してマリアは不敵に笑って見せる。

「なら、手筈通りに」

「了解した...」

そうして彼女たちの次の行動はこれだった。

自ら呼び出したノイズの一部をプロヴィデンスのドラグーン・システムで殲滅し始めた。特に一般市民の近くを狙った。

「これは一体...自ら呼んだノイズを...」

 

『会場にいるオーディエンスたちを開放する!ノイズたちに手出しはさせない・・・速やかにお引き取り願おうか!』

「ハア!?」

これには流石の奏も驚く。

「一体何が・・・」

「まあ、どちらにしろこちらにとっては都合がいい。アタシ達はこれに乗じて会場から出るんだ」

「ガイさんたちは?」

「なに、あいつ等は大丈夫さ。前回の事を知ってるだろ?」

奏は不敵に笑って見せる。

それに未来とセレナは頷く。

「そうですよね。今の二人ならきっと...」

 

そのまま三人は、板場たち三人を連れて会場を出る。

すると奏の端末に通信が入る。内容はこうだった。

 

『指定されたポイントに向かわれたし。ポイントで装備受け取り後、X1と応戦を...』

 

 

その一方で―――

『何が狙いですか?』

マリアの通信機に、一人の女性の声が入る。

『こちらの優位を放棄するなど、筋書には無かったはずです。説明してもらえますか?』

その厳しい口調に、マリアは答える。

「このステージの主役は私・・・人質なんて、私の趣味じゃないわ」

『死に汚れる事を恐れないで』

強い口調で、相手が言う。そして...

『レイ、アナタがついていながらなぜ...』

「大丈夫です、自分は負けませんで...」

しばしの沈黙――――

『・・・ふう、調と切歌、そしてタクマを向かわせています。作戦目的をはき違えない範囲でおやりなさい』

「了解、マム。ありがとう」

「感謝します」

その言葉を最後に、マムと呼んだ女との通信を終える。

 

そしてプロヴィデンスがX1に向かって言った。

「人質は解放した。これで戦えるだろう、クロスボーンガンダム!」

「お前ら、初めからなんなんだ!国を割譲を宣言したり人質を解放したり!!」

「これ自体は作戦だ。だが...俺自身、オリジナルの()()を纏う貴様がそんななぁなぁな覚悟で戦うのが許せない!!だから倒す!!」

その後、プロヴィデンスは再度無線兵器をX1目掛けて攻撃してきた。

X1はドラグーンを回避しながら一気にプロヴィデンスまで近づき、ビームザンバーで切り込む。だがプロヴィデンスの複合シールドを構え、そこからビームザンバーより大きいビームサーベルを展開した。そして二人のビームがつば競り合い、両者一歩も引かない。

「オリジナル?なんのことだ!!」

「このプロヴィデンスは...X1の戦闘データとお前たちの近くにいた科学者がその機体の改修時に欠片を回収、横流しした、

『対クロスボーンガンダム用ガンダム』なんだ!!」

その言葉を聞いたときガイは一瞬ひるみ、プロヴィデンスに押し出された。

 

(そんな...フィーネが...了子さんが...俺の倒すためのガンダムをつくって...)

一瞬の怯みがプロヴィデンスに好機を与えてしまった。

「貴様の力もこの程度か...ならこれで、終わりだ」

 

プロヴィデンスがX1に切りかかろうとした瞬間...

 

我に返ったX1は宙返りしヒートダガーでサーベルを捌いた。

 

その一方で、

(今はガイさんと勉さんが足止めしてくれているとはいえ、翼さんは未だ世界中の視線に曝されている。その視線の檻から、翼さんを解き放つには・・・)

「二人とも、眼鏡をかけた大人が来てるよ!」

「こっちデス!」

ふと、どこからともなく声が聞こえてきた。見上げてみれば、階段の上から三人の人影が見えた。

(まだ人が・・・?)

そう思い、緒川はそちらに向かって走り出す。

その一方で、その人影三人の方では。

「やっべえアイツこっちに来るデスよ!」

小声で他の二人にそう耳打ちするのは金髪の少女の『暁切歌』。

「さて...どうしたものか。ここで計画がおじゃんになったら母さんに怒られるだけじゃすまないな...」

その一方でやたら落ち着いていて彼女たちより少しだけ年上の男『佐藤タクマ』。

「大丈夫だよ切ちゃん、たっくん。いざとなったら・・・」

そして、胸のペンダントを取り出して見せる黒髪ツインテールの少女は『月読調』。

この三人が物陰に隠れていた。

「それでいこう!!」

「穏やかに考えられないタイプデスか二人とも!?」

 

調が取り出したものを慌てて仕舞わせる。

「どうしたんですか!?」

「うぇえ!?」

が、そうこうしている間に緒川に見つかる。

「早く避難を!」

「あーえっとデスね~」

切歌がどう言い訳しようかと考えていると、タクマがにこやかな顔でで緒川に言う。

「じ、実は彼女がトイレ行きたいって言ってまして、それでトイレ探してたんですけど色々と迷っちゃって・・・」

と、緒川をじーっと見つめながら、調の前に立ちタクマはそう言い訳をする。

「そ、そうですか・・・では、用事を済ませたら、非常口までお連れしましょう」

「ああいえお構いなく!ここらでぱぱっと済ませるので・・・」

「分かりました。でも気を付けてくださいね」

緒川も緒川で急ぐ理由があったために深くは追及せず、さっさと行ってしまう。あと彼のしゃべり方も含めて。

「は~い、そっちも・・・」

そうして緒川が完全にどこかに行った事を確認すると、タクマと切歌はそろって安堵の息を吐いた。

「どうにかなった・・・」

「デス・・・」

「じ~~・・・」

「ん?どうした調?」

「私、こんな所で済ませたりしない」

「ああ・・・」

調の言い分に苦笑いを浮かべる。

「確かに、そうだね・・・」

調の言い分にタクマは苦笑いを浮かべる。

「あれが一番最善だと思った」

「わかったから、少しその発想止めようね」

「全く、調を守るのはアタシの役目とは言え、いつもこんなんじゃ体がもたないデスよ?」

「ふふ、いつもありがとう。切ちゃん、たっくん」

そうお礼を言う調。

「さて、こっちも行くとしますデスかね」

「うん」

そうして、三人は動き出す。

 

 

「クソ、このままだと・・・!!」

プロヴィデンスというガンダムは重装甲ボディの割に細かい斬撃と、恐ろしいまでの小回りの利く高機動、そしてどの射程からも撃てるドラグーン。

「だったら・・・!」

ついにX1は封印していた機能を発動させる。

「ヘルモード、起動!」

ついにX1の顔のフェイスカバーが露出し始め光りだす。そして背中のスラスターを一気に吹かしてプロヴィデンスに近づく。

再び戦い始めたガイに安心する勉。だけど彼なりに疑問になることが出来た。

(あのプロヴィデンス...見た目はいくらかX1とは違うが外見はそれなりに近いものを感じる。)

 

加速したX1のビームザンバーの攻撃を受け止めるプロヴィデンス。

しばしの鍔迫り合い。しかし、すぐさま互いに弾き飛ばし、そこから二人の高速戦闘が展開される。

ステージの上で、いくつもの火花の散る音が鳴り渡る。

「ガイ・・・」

「随分と余裕ね」

「!」

マリアが話しかけてくる。

「観客は皆退去した。もう被害者が出る事はない。それでも私と戦えないというのであれば、それは貴方の保身の為ってこと・・・」

「くっ」

「貴方は、その程度の覚悟しか出来てないのかしら?」

マリアに指摘されて、翼はただ歯噛みする事しか出来ない。

ふと、マリアが剣型のマイクを構える。

そして次の瞬間、剣型のマイクを翼に向かって突き立てる。

それを翼はどうにか逸らす。やはりシンフォギアの身体強化が効いている。

「翼・・・!勉!!」

「行きたいのは山々だが...コレを単機で相手はできまい!!」

「余所見をしている場合か!」

「ぐぅ!?」

ガイと勉は手助けに行くことが出来ない。

翼はマリアの放つ連撃を防ぎ続けるも、突如としてマリアがマントを翻す。

そのまま回転し、そのマントの裾を、一陣の刃の如く振るう。

それを剣で受け止めるも、予想以上の切れ味に翼は思わず体を反らして躱す。

(マントが武器になるのか・・・!?)

どうにか距離を取るも、その手の剣は折れて使えない。

それを見て、翼はそれを投げ捨て、徒手空拳のように構える。

「翼!」

そこでガイは回し蹴りの要領で脚部ににあるヒート・ダガーを投げる。

「すまない!」

それを受け取り、翼はその刃をマリアに向ける。

それでもなお、マリアは自分の優位は覆らないとでもいうかのように、その刃を振るう。

 

「中継されている限り、翼さんはギアを纏えない・・・!」

ヘリから見れる中継を見ながら、響はそう声を挙げる。

「おい!もっとスピードあがらないのか!?」

「あと十分もあれば到着よ!」

未だ何も出来ない事に、彼らはただ戦いを見る事しか出来ない。

 

 

 

 

二つの剣戟が繰り広げられる。

X1とプロヴィデンス、ウォズが繰り広げる高速戦闘。ステージ全体を駆け抜けるような戦いは、まさしく苛烈の一言に尽きる。

その一方で、翼とマリアは、ギアの装着と非装着という決定的アドバンテージの差故に、押されている一方的な展開を見せていた。

(せめて、ギアを纏えれば・・・!)

マリアの猛攻を防ぎつつ、翼は思考する。

そして、下がりながら戦っていたからか、ステージの端に辿り着き、その視界にステージの裏側へ続く通路を見つける。

(カメラの眼の外に出てしまえば!)

それを認識し、翼は左肩のマントを目隠しのように脱ぎ捨てマリアに向かって投げる。

そして、マリアの視界が遮られると同時に、翼はステージ裏に向かって走り出す。

マントを振り払い、それを見たマリアは翼に向かってその手のマイクを投げる。

それを翼は飛んで躱し、そのままステージ裏に駆け込もうとした所で、踏み出した足の靴のヒールが折れた...

「な・・・」

「貴方はまだ、ステージを降りる事を許されない」

一瞬の動揺。それによって許してしまった、マリアの接近。

マリアの足が迫る。

「くっ・・・」

ギリギリの所でダガーで防ぐも、その脚力によって、大きく蹴り飛ばされ、ステージから出てしまう。

そこには、ノイズが待ち構えていた。まるで翼に群がるようにだ。

「ッ!?勝手なことを!」

それを見て、マリアは驚き、翼はそのまま落ちていく。

(決別だ・・・歌女であった私に・・・)

その状況を見て、翼は、諦めた。

そして、落ちる中、翼は叫ぶ。

「聴くが良い!防人の、双翼の歌を!!」

 

そして、翼が落ちていく最中――――突如として映像が切れ『NO SIGNAL』と表示される。

 

「ええ!?なんで消えちゃうんだよぉ!」

その瞬間を、響たちは見ていた。響は驚いてテレビの故障かなんかとテレビに齧りつく。

「現場からの中継が切断された?」

友里が、携帯端末を見て、そう呟いた。

「って事はつまり・・・?」

「ええ」

「え?え?」

響だけは唯一分かっておらず、他の者たちは、不敵な笑みを浮かべていた。

 

『そうさ!やっとアタシ達の出番だ!!』

 

 

 

 

そして、翼と『もう一人』が―――歌を唄う

 

 

「―――Imyuteus amenohabakiri tron―――」(羽撃きは鋭く、風切る如く)

 

「―――Croitzal ronzell Gungnir zizzl―――」(人と死しても、戦士と生きる)

 

 

 

光が迸り、その身に蒼き装甲と茜の装甲を纏われる。

 

シンフォギア『天羽々斬』と『ガングニールverX2』の起動である。

 

シンフォギアを纏い、非装着という弱点を克服した今、風鳴翼に恐れるものは何もない。

自らノイズの集団を駆け巡り、その一陣の刃を振るう。

会場を埋め尽くしていたノイズの集団を、その手の刃で駆逐し尽くしていく。

「中継が遮断された・・・!?」

そして、マリアは今起きている事態に驚いていた。

翼がシンフォギアを纏うためには世間の視線を断つ必要がある。

だからこそ、その優位性のままに、翼を追い詰めようとしていたが、それが遮断された事によって、翼は身軽に刃を振るう事が出来る。

加え、上空からマリアに向かって『槍』をなげつけてくる人型が来た。当たらなかったが一瞬だけひるませることに成功する。

「これは!!」

「随分好き勝手に暴れてくれたな。こっちもこの瞬間を待ってたんだよ!」

 

 

そして、映像を管理している施設に、緒川はいた。

「シンフォギア装者だと、世界中に知られて、アーティスト活動が出来なくなってしまうなんて、風鳴翼のマネージャーとして、許せる筈がありません・・・!それに!!」

息を挙げて、緒川はそう言った。

 

そうして、全てのノイズを殲滅、再びステージの上に立つ。

刀の切っ先を向け、翼はマリアと対峙する。

その翼と奏をマリアは笑いながら見つめる。

「まさか、ガングニールと相対するなんてね...でも」

「いざ、推して参る!」

そう叫んだ直後、一際すさまじい衝撃が鳴り響き、二つの影が二人の側に降り立つ。

「ハア・・・ハア・・・」

一方は息を挙げて呼吸をするクロスボーンガンダム。

「・・・・」

もう一方は何気に平然としているプロヴィデンス。

「大丈夫か?」

「ああ・・・くっそ、意外に強いぞアイツ」

翼の言葉に、X1はそう答える。

「レイ、どう?」

「意外に粘ってくれる。双方のレベルにそれ程差はない筈だが・・・」

一方のマリアとレイは若干の優位を感じてもいない。

「やはり、マリアが楽屋に来た時にはいなかったが、こうしてみると明らかに手練れだという事が分かる・・・」

「お前から見てもそう思うか・・・」

並び立ち、四人は武器を構える。

「どうにかしてアイツの方を抑えてくれ。そうすればこの剣をもって奴を仕留める」

「分かった。頼んだぞ」

互いに頷き合う。

「作戦会議は終わったかしら?」

ふとマリアが挑発的に話しかけてくる。

「心配するな。今終わった所だ!」

翼が飛び出す。

その翼の前にプロヴィデンスがビームサーベルを展開し立ちはだかる。しかし、そこへX1がプロヴィデンスを横から押し出す。

「ぐっ!?」

「お前の相手は俺だ!」

X1がプロヴィデンスを抑える。その間に、翼と奏はマリアを仕留めにかかる。

翼の振るう剣の連撃を躱すマリア。そして、攻撃の瞬間に生まれた隙にマントの一撃を叩き込んで下がらせる。

随分と使い勝手がいい。何より、翼の刃に叩きつけられた一撃に、翼と奏は思い知る。

「おいおい...このガングニールは、本物かよ!?」

「ようやくお墨をつけてもらった。そう、これが私のガングニール!なにものをも貫き通す、無双の一振り!!」

マリアのマントから繰り出される一撃一撃を、翼はその技量をもって凌ぐ。

「だからとて、私が引き下がる道理など、ありはしない!!」

その一方で、X1とプロヴィデンスの戦いも熾烈を極めていた。

プロヴィデンスの放つ射撃、それをX1はヘルモードによる最大稼働で躱していた。

そして、一気にプロヴィデンスの間合いから離れ、バスターガンとビームガンを放つ。

それをプロヴィデンスは複合シールドを構えながら正面から叩き伏せる。

「なんだよお前のこのタフな装甲は!?」

「言っただろう!オリジナル機を超える性能を持っていると!!」

状況的に、X1が不利なのは変わりがなかった。

(くそ!ヘルモードでなんとか渡り合えているが、こいつたぶん素でかなり強い・・・おそらくこのプロヴィデンスは確かに性能は上なのかもしれない...だがそれ以上に...コイツ自体センスが常人をはるかに超えてやがる!)

振りかざされる刃、それを両手の武器で防ぎ、さらに距離を取って撃ちまくる。

それでもプロヴィデンスは止まらない。

「なに?!」

「遅い!」

プロヴィデンスの斬撃がX1の右側から迫る。

「ハァ!」

それに対して、X1は右足の隠し兵装『ヒートダガー』を射出して一瞬だがプロヴィデンスをひるませる。

その後体制を立て直しスラスターを吹かしていく。そこでもう一度フェイスオープンしプロヴィデンスに接近する。

その両手にはすでにビームサーベルを持っていた。

そのまま剣戟に持ち込む。

プロヴィデンスの放つドラグーンの雨に対して、X1はビームサーベルの刃をビームに当てるように使い、間合いを詰めて攻撃を仕掛けるような戦法を取る。

激しい打ち合いが繰り広げられる。

その最中だった。

『マリア、レイ、お聞きなさい』

マムからの通信である。

『フォニックゲインは、現在二二パーセント付近をマークしてします』

「何・・・」

その言葉にプロヴィデンスは思わず動揺する。

「ッ!ウラァ!!」

そこへすかさずX1が斬り込み、また、同様に隙を見せたマリアに翼と奏が仕掛ける。

「私達を相手に気を取られるとは!」

取り出した二対の剣、その柄を連結させて双身刀にするや、掌の上で高速回転。その切っ先に炎を燃え上がらせ、まるで輪入道のように振るう。

「決めろ!翼ァ!!」

奏の後押しで足のブースターによって床を滑り、一気にマリアに突っ込み、その回転と炎を纏ったまま、マリアを一刀の下斬り伏せる。

 

『風輪火斬』

 

それと同時に、X1の蹴りの連撃がプロヴィデンスに叩き込まれる。

「オォォオオ!!」

右足、左足、左の斬撃、右の斬撃、そして、交差させる二刀同時の振り下ろし。

「ぐぅあ・・・!?」

吹き飛ばされ、床を転がるプロヴィデンス。

「話はベッドで聞かせてもらう!」

そしてその間に、翼は止めを刺すべくマリアに二撃目を叩き込もうとする。

だが、そこでX1は気付く。

「翼、後ろだ!」

「ッ!?」

背後から、無数の円盤。それらが翼に向かって襲い掛かる。

翼は思わず立ち止まり、その円盤を双身刀をもって防ぐ。

 

 

「―――首を傾げて 指からするり 落ちてく愛をみたの」

 

 

『α式 百輪廻』

 

 

歌が、響き渡る。

それは静謐にして過激な歌。

薄紅と黒のシンフォギアを纏った少女の頭部に取り付けられたギアから放たれる無限軌道の鋸。

その少女の背後から、今度はダークグリーンと黒のシンフォギアを纏った少女が鎌を携えて飛び上がる。

そしてその刃を複数に分けて、構える。

「行くデス」

そして、その刃を鎌を振るうのと同時に放つ。

 

『切・呪リeッTぉ』

 

放たれる二の刃。それが弧を描いて鋸の乱射を防いでいる翼に迫る。

その刃が翼に直撃する、その寸前、X1はビーム・シールドを展開するが刃の反動でバランスを崩す。

「くっ!?どういうことだ?こんな子供までがシンフォギアを!?」

「私が知るか!?」

そして、二人の装者がマリアと翼、奏、X1の間に立つ。

「危機一髪」

「まさに間一髪だったデスよ!」

装者が、三人。

「面倒くさい事になったな・・・」

「装者が三人・・・!?」

X1と翼達は武器を構えつつそう呟く。

「調と切歌に救われなくても、貴方程度に遅れをとる私ではないんだけどね」

「人の事は言えないが、十分に遅れを取っていただろう」

「う、うるさい!貴方は黙ってて!」

「はいはい、夫婦喧嘩はそこまでにして」

「夫婦じゃない!」

「まだって付け加えてればさらに弄れたのに・・・」

「殴るわよ流石に!」

「ご、ゴメンナサイデース!」

何やら目の前でショートコント染みた会話が繰り広げられているが、状況が芳しくないのは事実。

 

―――の、ように見える。

「4人対3人か。普通の戦況ならこちらは人数的に不利。だが...」

「貴様のような奴はそうやって・・・」

X1が言った後、翼が言い放つ。

「見下ろしてばかりだから勝機を見落とす!」

「・・・ッ!?上か!」

見上げれば、既に二人の装者がヘリから飛び降りていた。響とクリスである。

「土砂降りな!十億連発!」

 

『BILLION MAIDEN』

 

クリスから放たれるガトリング砲の嵐。

それを調と切歌は左右に避け、マリアはマントを硬質化させて弾丸の雨を防ぐ。そしてプロヴィデンスは、なんと雨にむかって直撃しにいった。

だがプロヴィデンスは無傷だった。弾丸を、実弾の全て当たりながら大型ビームサーベルを構えて突っ込んできた。

そのまま、落下してくるクリスに斬撃を叩き込もうとした途端、クリスが不敵に笑い、響と同時に押し合い、空中で避けると、その背後からX1が小型グレネード弾付ザンバスターの銃口を向けていた。

「X1!?貴様いつの間に!!」

放たれる弾丸、予想外な死角からの攻撃。それをプロヴィデンスは咄嗟にシールドを出し防ぐも、威力故か勢いを削がれる。

 

そして叩きつけられる光刃。

「こいつらには、手を出させない!」

「くっ・・・」

そのまま空中で2機は殴り合いに入る。

その間に響が足のガジェットを炸裂させて地面に向かって加速、その拳をマリアに向かって叩きつける。

それをギリギリの所で躱されるも、すぐさま翼と奏を掻っ攫って距離を取る。

X1の二刀の斬撃がプロヴィデンスを下にしたまま斬撃を重ねる。

しかし、ここでプロヴィデンス左手のシールドをバージする。

それと同時に、何故か2機の横に()()()のような物がすれ違う。

X1がプロヴィデンスに接近しようとした瞬間―――

 

戦闘機が変形しX1を地面に向かって叩き落とした。

 

「ぐおあ!?」

そのまま翼たちの所へ落下する。

「ガイ!」

「空で何があったんだよ!」

「いってて・・・俺は大丈夫だ。だが戦闘機みたいなのが変形して...」

ガイがそう言うと上空にいたプロヴィデンスと変形した戦闘機がゆっくり降りてくる。

「一体どこで道草をしていた、ゼータプラス」

「この作戦での僕の役割は撤退支援、兄さんがてこずってたんでしょ?」

 

どうにかX1が起き上がった所で、彼らは対峙する。

フィーネと名乗った武装組織の装者と武装兵士。

特機部二の保有する武装兵士と装者。

その二勢力がここに集結した。

「やめようよこんな戦い!」

そこで響が説得を始めた。

「今日出会った私たちが争う理由なんてないよ!」

しかし、その言葉が、調の琴線に触れる。

「ッ・・・そんな綺麗事を・・・」

「え・・・」

響にはどういう事か分からない。

「綺麗事で戦う奴の言う事なんか、信じられるものかデス!」

切歌が、刃を向けてそう叫ぶ。

「そんな、話せば分かり合えるよ!戦う必要なんて―――」

「―――偽善者」

調の怒りの籠った言葉が響く。

「この世には、貴方のような偽善者が多すぎる・・・!!」

敵が、動く。

「・・・・偽善、か」

ふと、X1が呟く。

 

「―――だからそんな世界は伐り刻んであげましょう!!」

 

調の歌が鳴り渡り、放たれた無限軌道の鋸の機関銃弾が放たれる。

茫然と立ち尽くす響に向かって放たれたそれを、X1がザンバスターとビームガンをもって迎え撃つ。

 

無数に放たれる光の弾丸。

それらが狙い違わず調の放った刃を叩き落す。

「ぼさっとするな!」

「え・・・あ・・・」

クリスと奏が両側に出て、彼女たちに向かって銃撃を放つ。

他の者たちもそれぞれの相手に応戦する。

その最中、調が響を集中的に攻撃してきていた。その頭のアームドギアを展開し、巨大な無限軌道の鋸を高速回転させて響を切り刻むべく振るう。

「わ、私は、困ってる皆を助けたいだけで、だから―――」

「それこそが偽善・・・!」

調の、なおも厳しい言葉が響に突き付けられる。

「痛みをしらない貴方に、誰かの為になんて言ってほしくない!!」

 

『γ式 卍火車』

 

今度放たれたのは巨大な円盤鋸。

「あ・・・」

それが、響に向かって迫る。

その円盤鋸が、響に叩きつけられようとした、その瞬間―――

 

『ファイティングバースト!ヘルモード!!ブランドマーカー!!!

 

X1の放った殴りが、その二つの円盤鋸砕く。

「「ッ!?」」

それに、二人は驚き、すかさずX1がフェイス・オープンし、調に迫る。

「くぅ!」

叩きつけられた拳の重さに、調は顔を歪める。

そのまま大きく後退させられるも、X1は追撃しない。

代わりに、彼女に問いかけた。

「・・・偽善って言ったな」

「・・・?」

「確かに、お前らから見たら俺たちのやってる事は偽善かもしれない・・・だけど、俺は本気でこの力を誰かの為に使おうって思ってる。その想いに嘘はない」

「ッ・・・人の痛みも知らないで・・・!」

「そうかもしれない・・・」

調の言葉を遮って、X1は言う。

「だけど!!誰かを失う痛みも、誰かに裏切られる痛みも、誰かを救えなかった痛みも、誰かを死なせてしまった痛みも、全部分かる・・・」

自分の手を握りしめて、X1は調に語り掛ける。

「貴方は・・・」

その言葉に、調は、思わずたじろぐ。

「お前は、一体なんの為に戦ってるんだ」

「え・・・」

「俺は、皆が笑顔で、暮らせる『明日』がほしい。そんなもの、叶う訳がないというかもしれないけど、俺は本気でそれを貫き通すつもりだ。俺は、その為だけにクロスボーンガンダムを纏ったんだ」

X1は、調に歩み寄る。

「もし、出来る事なら―――俺にお前たちを、救う事は出来ないのか?」

X1は、調の間合いで、そう語り掛ける。

「・・・・」

調は、そのX1の言葉にしばし茫然とする。そのうち俯いて、体を震わせる。

「・・・・う」

そして――――

「うるさい!!」

調が鋸を展開してX1を攻撃する。それをX1は距離を取って躱す。

「貴方に・・・私たちの何が分かるというの!!」

頭のギアから、再び円盤型鋸を無数に放つ。

だがX1は、それを防がず直撃をもらいながら調べに向かっていく。

「え・・・」

 

「きゃぁあぁああ!?」

一瞬ではあるが調は恐怖が怒りを勝り目をつぶった。

そしておそるおそる目を開けると視界の先に、右手を突き出すX1がいた。

「だから―――」

X1は、調に向かって言い放つ。

「信じるんだ。善に導けるのは、人の心だから...」

「・・・ッ」

X1の、真っ直ぐな言葉に、調は言葉を失っていた。

 

次の瞬間、ステージ中央で、光が迸った。

そして、見るも大きなノイズが出現する。

「わぁぁあ・・・・何あのでっかいイボイボぉ!?しかも2体!!」

「なんか醜いなアレ!?」

「・・・増殖分裂タイプ・・・」

「こんなの使うなんて、聞いてないデスよ!」

「上も痺れを切らせたみたいだよ、みんな」

「でも逆に都合がいい。目的の一部は達成している」

そこでプロヴィデンスらフィーネ側に連絡が入る。

『五人とも引きなさい。当初の目的の半分は達成しているのです。今はこれで良しとしましょう』

「・・・分かったわ」

マリアが動く。その手のアームドパーツを変形させ、それを一振りの槍へと変形させる。

「アームドギアを温存していただと!?」

すかさず、マリアが槍を出現した巨大ノイズに向ける。

その槍の穂先から粒子の砲撃が放たれ、ノイズを穿った。

 

『HORIZON♰SPEAR』

 

 

 

貫かれたノイズは、そのまま爆発四散する。

そしてプロヴィデンスの隣にいたZ プラスも高く飛び急速変形した。そしてプロヴィデンス達をアンカーで引っかけ乗せ、高速で離脱した。

「おいおい、自分らで出したノイズだろ!?」

何故そのような行動を取るのか。

四散したノイズは、その体を無数にばら撒く。そして、その最中で彼らは逃げていく。

「ここで撤退だと!?」

「してやられた...だが!!」

X1が彼らを追いかけようとした時、X1は気付く。

散らばったノイズが、いきなり増殖してきたのだ。

「ノイズが・・・」

「なんだこれ!?増えてんのか!?」

どんどん大きくなっていくノイズ。

まるで急速な細胞分裂をしているかのような。

「ハア!!」

翼が斬撃をそのノイズに叩きつけるも、炭化したものより増殖したものの方が明らかに多かった。

「コイツの特性は、増殖分裂・・・!」

「つまりどんだけ倒しても増えちまうって事か!?どうすんだよ!?」

「このままじゃそのうちここから溢れだすぞ!」

「くっ・・・!」

X1が歯噛みする中、緒川から連絡が入る。

『皆さん聞こえますか!?会場のすぐ外には、避難したばかりの観客たちがいます!そのノイズをここから出す訳には・・・・』

「アイツらを追いかけられないってことか・・・くそっ!」

思わず悪態を吐く奏。

「外には避難できてもこれでは・・・!」

「観客・・・皆が・・・!」

ガイは現状の状態を再確認し、響はこのライブに来ていた友達の事を思う。

「迂闊な攻撃では、いたずらに増殖と分裂を促進させるだけ」

「どうすりゃいいんだよ!」

「アレを使うしかないのか・・・!」

 

 

「・・・絶唱」

響が、そう呟く。

「絶唱です!」

「まさか、アレを使う気か?」

「あのコンビネーションは未完成なんだぞ!?」

クリスの言葉に、響は頷く。

「確かに、アイツの増殖を上回る一撃を放てるあれならどうにかなるかもしれないが、それでもお前への負荷はすさまじいぞ?」

「それでも、今やらなくて、いつやるんですか!?」

X1の言葉に、響はそう言い返す。

それに、X1は黙り込み、鼻で笑い、折れた。

「いいだろう。万が一の際はこちらで何とかしよう、任せたぞ」

「ありがとうございます!」

 

X1の行動を理解し、避難誘導が終わった勉がウォズに変身し合流する。

「では私は散らばった奴を片端から片付けていくとしよう」

「絶唱が終わるまで邪魔をさせなければいい。だから無理して倒そうとしなくていいからな」

「了解!わが友よ」

そう言ってウォズはシノビミライドウォッチで『フューチャーリンクシノビ』になり分身し増殖していくノイズに掲げる。

そして、その間に、装者3人が、響を中心にして手を繋いだ。その隣にガイと奏が手つなぎビーム・ザンバーと槍を上で重ねる。

「行きます!」

「『S2CA・トライバースト』!」

そして、彼女たちは、歌う。

 

 

「「「―――Gatrandis babel ziggurat edenal―――」」」

 

S2CA―――正式名称『Superb Song Combination Arts』―――『超絶合唱技』。

 

「「「―――Emustolronzen fine el baral zizzl―――」」」

 

『トライバースト』装者三人の絶唱を重ね合わせ、協奏曲として調律・制御するS2CAの最大の大技。

 

「「「―――Gatrandis babel ziggurat edenal―――」」」

 

『手を繋ぐこと』を己がアームドギアとし、力を束ねる事に特化した響にしか出来ない必殺技。

 

 

「「「―――Emustolronzen fine el zizzl―――」」」

 

 

しかし、その『トライバースト』には、一つ、欠点があった――――

 

 

 

「――――セット!ハーモニクス!」

 

 

 

ハーモニクス―――弦楽器の弦を正しく、絶妙な位置にて軽く押さえる事で発生する、超高音の名を冠し、その絶大な力を発動する。

三人の周囲を、絶唱の三段重ねによって引き起こされた虹色の光を纏った衝撃波が吹き荒れ、増殖しようとしていた増殖型ノイズを一気に吹き飛ばす。

その強大なエネルギーは、響一人だけから放たれている。

 

そう、S2CAの欠点は、その負荷が全て、立花響に掛けられるという事。

 

「ぐ・・ぅ・・・あぁぁあああぁぁあああぁぁあぁぁああああ!!!!」

 

体中を苛む痛み。それに、響は絶叫を挙げて悶え苦しむ。

「耐えろ、立花!」

「もう少しだ!」

翼とクリスが響に呼びかける。

「・・・ん、おい!あれ!」

奏が指差す先。そこには、分裂増殖型のノイズがいた場所に、おそらくその核と思われるノイズが佇んでいた。

その体は・・・やっぱり醜い。

Ⅹ1は、それを見て叫ぶ。

「今だ!タイミングは任せる。」

「はい!...レディ!」

響のギアに変化が生じ、まるでエネルギーを放出するための準備とでもいうように割れる。

そして、両手のギアを合体させて、巨大なガントレットとして形成する。その瞬間、虹色の光が響に収束していく。

全ての光が響に収束した瞬間、響は飛ぶ。

「ぶちかませ!」

クリスの叫びを背中に受け、響は飛ぶ。

「これが私たちの―――」

「俺たちの―――」

 

 

 

「――――絶唱だぁぁぁぁぁぁあああ!!」

 

X1の双星ノ一撃-〈DIASTER ATTACK〉-と響の拳がノイズに叩きつけると次の瞬間、ノイズは炸裂する。

 

 

そして、超速回転してエネルギーを増幅させた一撃が、ノイズに叩き込まれ、そして、天に虹色の竜巻となって吹き荒れた。

その虹色の光は、星の輝く夜空に天高く昇って行った。

 

 

 

 

そして、その様子を、『フィーネ』の装者たちは見ていた。

「なんデスか、あのトンデモは・・・!?」

「綺麗・・・」

「あんなものがあるなんて・・・」

「こんな化け物もまた、私たちの戦う相手・・・」

「・・・」

隣で歯噛みするマリアを見やり、プロヴィデンスは、もう一度光の竜巻が吹き荒れるステージの方を見た。

「・・・クロスボーンガンダムX1・・・」

 

『皆が笑顔で暮らせる明日がほしい。俺は、その為にクロスボーンガンダムになったんだ』

 

X1の言葉に、プロヴィデンスは今一度考える。

(このガンダムと俺の技術をもってすれば、計算上はX1を圧倒出来る筈だった。だが、実際はこちらがやや優勢だったとは言え、ほぼ互角・・・)

受けた刃の一撃を思い出し、プロヴィデンスは―――レイは自分とガイとの差を考えた。

(考えられるとすれば、度々見せた廃熱による時限強化・・・か・・・)

だがそれにどのくらい差があるのか。その時のレイには、思いもよらなかった。

 

 

 

そしてまた、『COMPLETE』という文字を前に、マムと呼ばれた女性はほくそ笑んだ。

「夜明けの光ね」

「いかがでしたかな...彼に合わせて開発を急がせた、プロヴィデンスの調子は?」

車いすの隣に男が歩いてきた。その男は金髪で眼鏡より大きいアイマスクで素顔を見えなくしていた。

「えぇ、十分オリジナル機を押さえつけていました。回収後、メンテナンスの方よろしくお願いします...」

「了解しました」

「だけど...敵ながらなかなかできるじゃない~。もしかしたら私も行かないとだめかしらねぇン」

「追ってそのことも考えましょう。確かに今回の状況は私が思った以上にでしたので...」

やたらオネェような仕草をする男が初老と二人で戦闘状況をモニタリングしていた。

 

 

一方で、隣の男は顎に手を当てて考えていた。

(何故圧倒出来なかった・・・当時のX1の出力は多めに見積もっても『3000』の筈・・・こちらは限界の8000前後...なのに何故、プロヴィデンスで圧倒出来なかった・・・?)

レイの戦闘力は申し分ない。クロスボーンガンダムを超える機体を作った。全てにおいて上回る性能、しかしそれを埋める程の何かの要素が、予想していた結果と違う結果を生み出した。

(まだまだ改良が必要という事か・・・だがいずれは・・・)

しかし男は、取り乱すようなことはしなかった。ただ、改良の余地あり、と改めて認識しただけだった。

 

 

 

 

 

 

 

そして、ノイズが全て消し飛んだライブ会場にて――――

「・・・」

ガイは、敵が消えていった空を見上げていた。

 

『このプロヴィデンスは貴様を倒すために作られた、対ガンダム兵器だ!全てを守るだと...それは傲慢だ!!貴様の思い出は何も守れはしない!!!』

 

戦闘が終わったのに装備を解除しないX1のガイ。そして隣にはその場で膝をついて空を仰ぎ見ている響。

「無事か!?立花!」

「わが友よ、問題はないか...」

そんな響に、翼たちが駆け寄る。

振り返った響は、笑っていても、その双眸からは涙を流していた。

「へいき・・へっちゃらです・・・」

涙を拭い、響はなんでもないとでも言うように言った。

だけど、その様子から見ても明らかに大丈夫じゃない。

「へっちゃらなもんか!?痛むのか?まさか、絶唱の負荷を中和しきれなくて・・・」

そんなクリスの憶測を、響は大きく、何かを振り払うかのように横に振った。

「・・・私のしてる事って、偽善なのかな・・・?」

そして、胸の中にある想いを吐露する。今にも張り裂けそうな程苦しい、その胸の内を。

「胸が痛くなることだって・・・知ってるのに・・・・う・・ひっぐ・・・」

響の小さな嗚咽が、鳴り渡る。

「お前・・・」

そんな響に、ガイが前に立って屈みこんで話しかける。

「お前は、誰かを助ける時、何をしてほしいかなんて考えるのか?」

ガイは、真っ直ぐに、涙に濡れた響の瞳を見つめた。

「ちが・・います・・・・」

その問いかけに、響は迷いなく答えた。

「だったら、それでいいじゃないか」

響の頭を撫でて、ガイは笑って言う。

「お前のその想いはお前だけのものだ。他の誰でもない『立花響』って奴の想いだ。その想いに、嘘なんてないだろ?」

「・・・・」

ガイが、自分の信念である『皆の明日を守る』を貫き通すように。

「お前の手は、誰かと手を繋ぎ、そして想いを届かせるものだろ?だったら、お前の胸の内の想いを届かせて見せろ。それが、立花響の『手』だろ?」

元気づけるように、ガイは、そう響に言った。

「・・・隼人さん」

響は、俯いて、ガイに尋ねる。

「・・・私の願いは、この拳は、この想いは・・・あの子に届くでしょうか・・・?」

少女のものにしては、随分と硬くなってしまった掌を見て、響をそう尋ねる。

その質問に、ガイはしようがないとでもいうように息を吐いて、言う。

「届くかどうかじゃない。届かせるだろ?」

「・・・・そう、ですよね」

顔を挙げた響の顔は、いつも通りの笑顔になっていた。

「この想いは、届かせるものですよね」

「ああ」

どうやら元気を取り戻したようだ。そう、クリス、翼、奏、勉は思った。

「ああ、それともう一つ」

だが、ガイは指を一本立てて響の前に出す。

「辛いと思うときは思いっきり吐き出せ。俺は、ため込みまくって後悔したからさ・・・」

「―――っ」

そう言って、響の額を小突く。

その小突きが、意外な決定打となって、響の顔を歪め―――

 

 

 

 

 

 

ガイの胸の中で泣く響の頭を、そっと撫でるガイを、遠巻きに眺める、一人の男がいた。

その手には、奇抜な形をした杖。

 

その男の口が、嘲笑うかのような笑みに歪んだ。

 

 




プロヴィデンスを纏うレイとX1を纏うガイ。二人はただいがみ合うことしかできないだろうか...
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