はい。(適当)
「───ジェラール」
選択肢に抗えなかったウェンディは、結局ジェラールを復活させてしまった。
仕方の無い事だろう、ウェンディの恩人である彼を復活させない訳にはいかなかったのだから。
ユウトにとっては見ず知らずの彼だが、彼によって与えられたエルザ達の苦しみを知っているユウトは、直ぐに身構える。
「俺はお前を見ず知らずだが、お前によって与えられたエルザ達の苦しみを知っている。」
「………。」
「申し訳無いが、お前をここで討たせて貰うっ!」
ジェラールに向かって飛びかかるユウト。
打撃しようと拳を強く握るが、突如上げられる雄叫びによってそれは緩む事となる。
「ジェラアアアアル!!!」
「!?…ナツ!?」
ナツが炎を纏う拳を握り、ジェラールに向かって飛びかかり打撃を試みるが、ジェラールから放たれる魔力によって吹き飛ばされ、同時に爆風によってユウトも吹き飛ばされる。
「うあああっ!!」
「くっ!」
「ナツっ!!ユウト!」
2人は壁に激突し、ユウトは爆風で吹き飛ばされた為か被害は背中を打撃しただけで済んだが、ナツは天井から崩れる瓦礫に埋まってしまう。
「相変わらず凄まじい魔力だな、ジェラール」
ブレインがジェラールに話し掛けるが、ジェラールによって開いた足元の大穴に落ちてしまう。
「何!?ぐぉあああっ!!」
ジェラールの凄まじい力に力尽きて気絶したウェンディを抱えながらハッピーは号泣。
それに対して無反応で無言のままつかつかと洞窟を後にする。
「ジェラール!!何処だ!!」
「…彼奴なら行ったよ」
瓦礫からジェラールの名前を呼びながら起き上がるナツに、ユウトは彼は既に洞窟を後にしたと伝えると、ナツは悔しそうに歯噛みする。
「あんにゃろォー!!」
「彼奴が何者かは知らないけどね、今はウェンディを連れて帰る事の方が重要でしょ?」
しかし出口を睨み続けるナツにシャルルは一喝する。
「エルザを助けたいんでしょ!?」
エルザを助けたい。
「分かってんよ!!行くぞハッピー!!」
「あいさ!!」
ジェラールよりもエルザの治療を最優先する事を第一に、ナツはウェンディ達を連れて脱出する。
「…俺は走って行けと」
エーラを持つ猫が居ないユウトは、彼等をここで待つ訳にも行かないので地面を凍らせてスケートのようにスイスイと着いて行った。
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一方、取り残されたブレインはブツブツと呟いていた。
「計算外だ…いや、拘束具を外した私のミスか…。…しかし、以前の彼は私にここまでの敵対心は持っていなかった筈だ…。眠っている状態でニルヴァーナの話を聞いていたとでも言うのか?」
ブレインはハッと思い至る。
「ジェラールめ、まさかニルヴァーナを独占する気か!?……させぬ、あれは我々の物だ!誰にも渡すものか!!」
彼は急がねばと言わんばかりにコブラに指令する。
「コブラ!聞こえるか!!ジェラールを追え!!奴の行く先に……ニルヴァーナがある!!」
通常、その声が聞こえる筈が無いが、コブラは特別耳が良いので遠く離れた声も聴こえるのだ。
「ok、聴こえた。ついでにジェラールの足音もな。」
その声を聴き、コブラは直ぐにジェラールを追いかけて行った。
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一方、グレイは…
「なんて速さだ、野郎…」
「オレのコードネームは“レーサー”。誰よりも速く、何よりも速く、ただ走る。」
レーサーがグレイを音速で翻弄している間、頭上に飛んでいるナツ達の姿が見えると、グレイ達はそれぞれ反応する。
「助け出したか!!」
「バ、バカな!中にはブレインがいた筈だろ!?どうやって!?」
「ブレインの目を盗んで脱出したんだよ」
地面を凍らせ、スイスイと歩きながらそう答えるユウトも合流する。
「クソ、行かせるかぁ!!」
「させるかよ、“
ユウトは造形魔法でスコープが取り付けられた銃を造り出し、レーサーに向けて発射する。
氷弾はレーサーの足に命中し、貫通までとは行かなかったが激痛でレーサーの攻撃は当たる事は無く、ナツ達が墜とされる事は無かった。
「サンキュー、ユウト!」
「気を付けて行けよぉ!!」
ユウトに礼を行ってから、ナツ達はエルザ達の元へ一直線に飛び続ける。
ユウトも地面を凍らせてナツ達に着いて行くが、レーサーがユウトに近付いて攻撃を仕掛けるが、レーサーの先にグレイが立ちはだかる。
「アイスメイク…“
「ぐほっ!!」
氷で造られた城壁にレーサーは激突し、ユウトに近付けなくなる。
「グレイ…」
「ここは任せろ、ユウト。」
「だけど、今ので魔力を使ったんじゃ…」
「いいから行きやがれ」
グレイは氷壁越しに両手でユウトを庇う。
「ここは死んでも通さねぇ!!行け!!エルザの所に!!」
「あぁ、すまねぇ…あんがと」
その言葉にユウトは礼を言いつつその場所から離れる。
止められたレーサーは怒りに染まりながらグレイに話し掛ける。
「貴様、2度もオレの動きを止やがって…」
「何度でも止めてやんよ、氷は命の“時”だって止められる。」
そして、と彼は続ける。
「お前は永久に追いつけねぇ。妖精の尻尾でも眺めてな。」
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一方、ナツ達は空から地上に降り、ユウトと共にエルザ達がいる場所を探していた。
「エルザの所、分かるか?」
「分かんねぇ」
「まぁ仕方ねぇよなぁ」
エルザ達のいる場所に行けと言われたが、彼女等の場所が分からなければ辿り着けない。
このままさまよい続けていると、エルザの毒が全身に回ってしまうと言う事があるので時間があまり無いのだ。
「せめて、地図か何かあれば良いのに」
「そう簡単に見つかる訳…」
途方に暮れたハッピーの言葉にシャルルがそう答えた直後…
『ナツ君、ユウト君、聞こえるかい?』
「!?」
「この声…」
「僕だ、ブルーペガサスのヒビキだ。…良かった、誰にも“繋がらない”から焦っていたんだ。」
ユウトとナツの脳内にヒビキの声が響く。
どうやら“念話”と言う魔法を使っているようだ。
「何処だ!?」
『静かに!敵の中に恐ろしく耳の良い奴がいるんだ。』
「コブラか…」
『そうだ。僕達の会話は筒抜けている可能性があるから、君達の頭に直接語りかけているんだ。』
「成る程」
あまり大きい声を出すと彼等の会話がコブラに聞かれ、ユウト達の行動、作戦全てを知ってしまうと言う厄介な事になってしまう。
『ウェンディちゃんは?』
「ここにいるよ」
『良かった!流石だよ』
ヒビキはウェンディを取り戻せた事に安堵する。
ならば話は早い。
「これから、この場所までの地図を君達の頭にアップロードするから、急いで戻ってくれ。」
「何言って…」
《インストール100%。ダウンロード完了、地図を表示します。》
と言うアナウンスが流れた後、ナツ達の脳裏に地図が表示される。
これはヒビキの“
「お、分かる分かる!」
「つーか元から知ってたみてぇだ!…よし、今度こそ行くぞ!」
「あいさー!!」
「おー!!」
「もう、落ち着きが無いんだから…」
『急いで、みんな…』
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数分後…
「到☆着」
「着いたー!!」
「ナツ!ユウト!みんな!」
到着を歓喜するルーシィの脇を通り過ぎ、ナツはヒビキの元へ向かう。
「どうなってんだ!?急に頭の中に地図が浮かんだり、声が聞こえたりしたぞ!?」
(アナウンスはミントだぞ多分)
ユウトは心の中でナツにそう突っ込む。
しかし、今はそれどころでは無い。
「それより早くウェンディちゃんを…」
「そうだ!!起きろウェンディ!!エルザを助けてやってくれー!!」
「落ち着いてナツー!」
ルーシィの突っ込みを挟みながら、ナツがウェンディを起こしている間、ユウトはエルザに視線を向ける。
彼女は全身とまでは行かないが既に大半の毒が体に回っていて、死んでも可笑しくない状態と言っても過言では無いだろう。
しかしもう少し遅れていたら、エルザの命は無くなっていた所だろう。
「ひっ…!」
甲高い悲鳴が聞こえ、ユウトは声が聞こえた方に視線を向ける。
そこには気絶から目を覚まし、必死に謝るウェンディの姿が。
「ごめんなさい…私…」
「今はそんな事どうでも良いんだ!!毒蛇にやられたエルザを助けてくれ!!頼む!!」
土下座でウェンディにそう頼み込むナツ。
他の者達もウェンディにエルザの治療を頼み込む。
「オラシオンセイスと戦うにはエルザさんの力が必要なんだ。」
「お願い、エルザを助けて…!」
「お願い、ウェンディ」
「ウェンディ、頼む」
此処まで言われて拒否する訳が無いと、ウェンディは承諾する。
「も、勿論です!はい!やります!」
「よし!」
ウェンディは早速エルザの解毒治療に取り掛かる。
(ジェラールがエルザさんに酷い事をしたなんて…)
そう思いながら、彼女は治療に専念する。
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(それにしてもこいつ、心の声が全く聴こえねぇ…心の声さえ聴こえれば後をつける必要もねぇのに……止まったぞ)
岩裏に隠れながらコブラはジェラールを監視していた。
彼が止まった先には、鎖に繋がれ、他の木とは違って光を放っている樹木が。
(まさかブレインの言った通り、ここにニルヴァーナが…)
ジェラールは樹木に手を翳すと、樹木は爆発し、ビーコンのように上空にむかって光を放つ。
(ついに見つけた…オレ達の未来…!!)
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「終わりました、エルザさんの体から毒は消えました。」
「お疲れ!」
毒が完全に消滅し、エルザの顔色が良くなっていくのを見て、全員、歓喜の声をあげる。
「おっしゃぁ!!」
エルザの回復を喜び、ナツ達はそれぞれ互いに手を合わせる。
「ルーシィ、ハイタッチだ!」
「良かったぁ!」
「ユウトもハイタッチだ!」
「おう!」
「シャルル~!」
「1回だけよ」
「ウェンディ!俺とハイタッチだ!」
「オレも!」
パンッ!と、乾いた音が響く。
「ありがとな!」
「…暫くは目を覚まさないかもですけど、もう大丈夫ですよ。」
「凄いね、本当に顔色が良くなってる。これが天空魔法…」
「顔!顔!」
「…良いこと?これ以上、天空魔法をウェンディに使わせないで頂戴。」
シャルルは全員に注意する。
ウェンディの魔力をこれ以上使わせて欲しく無いからだろう。
「私の事は良いの。それより私…」
「ジェラールを助けてしまった」と言おうとしたが、その前にヒビキが口を開く。
「後はエルザさんが目覚めたら反撃の時だね」
「だな」
「うん!打倒オラシオンセイス!」
「おー!!ニルヴァーナは渡さないぞぉ!!」
全員が気合いを入れている中、樹海から光の柱が上がる。
「何!?」
「黒い光の柱…」
「まさか!?」
「あれは…」
───ニルヴァーナ。
ニルヴァーナ編は遂に、中盤戦へと突入するのであった。
To Be Continued...
中途半端な終わり方になりましたね…
因みに、ユウトがアイスメイクした“