落ちこぼれの魔導士は魔王と共に異世界で生きるようです 作:ウィングゼロ
正人が目を覚ました同時期、ハイリヒ王国の訓練所では八重樫雫が剣を振るっていた。
しかしその剣にはいつものような洗礼さはなく。何処か心が淀んでいるのか雫の表情も心身に打ち込めていないのがわかる。
それもそのはず、オルクス大迷宮で親友である香織を失い、自らの浅はかさが招いてしまった結果だと考えれば剣の太刀筋も鈍るのもしかたがないことだった。
「香織、私はどうすれば良いの?」
この場にいない親友の名前を呟いて、今の現状に頭を悩ませる。
今雫達、勇者メンバーは2つの勢力に別れていた。何故そうなったかそれは昨日のことである。
「本当にすまなかった!」
王国の訓練所にて残っている生徒達が何とか集まると檜山が土下座して謝り始める。
何に対しての謝りなのかは全員が直ぐに理解することになる。
オルクス大迷宮での転移トラップ。それを軽率にも発動させたのは紛れもなく檜山だった。
自分の軽率で起きてしまった危機、それは結果として3人の同級生を失うという悲痛な思いをすることになってしまった。
だからこそ、檜山は全員の前で謝罪する必要があったのだ。
「…ひとつ…聞きたいことがある。南雲に降り掛かった魔法なんだが…あれについて何か知らないか?」
「し、知らない!?あれだけ入り乱れていたんだ。誰のかなんてわかるはずないだろ?」
そんな檜山に天之河は訪ねる。それは南雲に向かっていった魔法攻撃について、天之河の頭はあれもまた2人を死なせてしまった要因の1つだと考えていた。勿論檜山はそれを否認、天之河はその後、深く考えた後、強ばった顔で脳裏に思い浮かんだのはあろうことか正人の姿だった。
「やっぱり、犯人は八坂なのか…」
「は?」
突拍子もない発言に檜山は勿論生徒達全員が凍ったように固まる。
天之河から出てきた人物は今はこの場にいない正人で、周りは正気か?っと疑い始める中、雫が慌てて天之河に問い詰める。
「光輝!?あんたいきなり何言ってるのよ!?」
「雫だって聞いていただろ!?八坂は俺達にステータスを隠し、魔力操作なんてものを使えたことを!」
雫が問い詰めたが天之河は止まらない。彼は八坂の隠していた技能やステータスのことをこの場にいる全員に洗いざらい話すと当然、生徒達の反応は驚きだった。
「なんだよ…それ」
「魔物と同じ力が使えるなんて可笑しくない?」
「というか、なんで俺達にも隠してたんだよ、仲間じゃないのかよ」
八坂のことで不穏な空気になる一方、天之河は更にありもしない憶測を述べ始めた。
「それはきっと、八坂は魔人族と手を結んでいたからじゃないのか?」
「光輝!?そんなことあるはず…」
「雫…君が八坂を庇いたいのはわかる、だが、これは事実なんだ、思い出してくれ八坂が警戒することなく魔人族に寄っていくのを俺達は目にしたはずだ。きっと事前に話が付いていたんだ!」
並べられる憶測と見ていた一部始終に檜山やその取り巻きは確かにっとあり得ることだと此処にいない正人のことを怨み始め、他も檜山ほどではないが確かにあり得ると半信半疑であるが天之河の言葉ならっと正人の裏切り説の信憑性を信じ込ませ始める。
その天之河もイシュタルやハイリヒ王のありもしない正人の批判と魔人族に何かしらあったような正人の言葉、そしてその性で香織を失ったことへの怒りが交差しいつものご都合主義が全回で導き出した結果であり確実性は薄い。
イシュタル達としてはそれで仲間を失った恨みが魔人族に向けられるのが本当の目的だったりする。
そしてイシュタル達の目論見通り、正人は魔人族の仲間になり、そのせいでハジメと香織は失ったんだと生徒たちの大半は信じ込みそうになったとき、正人のこれまでのちょっとした行動が報われることになる
「そんなはずない!」
そう声を上げたのはオルクス大迷宮で正人に命を助けられた少女、園部優花だった。
「園部君がクラスメイトを庇いたいのはわかる。だけどこれが現実なんだ!現実から目を背けても…」
「じゃあなんで!八坂は私を助けたの!?本当にそうなら、私を見殺しにするのが正しいはずよ!」
優花はあの時、間違いなく死んでいた。自分の死期を悟り、恐怖で体が動かなかった優花を助けたのは紛れもない正人であった。
その光景はパニックになっていながらも何人か見ていたために天之河の言葉に惑わされていた生徒達も確かにと頷く。
「だがそれは俺達を騙す…」
「そんな確証も無いことを言わないで!こんなことなら八坂の言うとおり戦争に参加しなければ良かった!」
優花のその発言に呼応して何人もの生徒がそうだと、同じように声を上げ始める。元々殆どの生徒は天之河がいれば大丈夫と過信したのがきっかけで彼らは戦争などあまり理解できておらず、強い力を宿しているという優越感に浸っていた。
しかし蓋を開けてみれば軽率な行動で窮地に陥り、混乱する始末、果てには自分達は助かったが3人も死人が出てきてしまった。
これが天之河の言うとおりに付き従った結果で自分達はなんて軽率だったんだろうと実感するものがあった。
その後も天之河と優花お互いに一歩も退かない討論になりそれに助長するように周りの生徒もヒートアップ、一触即発になりかけたがまとめ役の雫や騒ぎに駆けつけた愛子の二人が仲裁して大事にはならなかった。
だが一丸となっていたクラスは確実にひび割れて、魔人族との戦争に賛成する天之河や坂上何故かやけにやる気になっている檜山達小悪党パーティーを始めとした参戦派、先の戦いを機に戦争をすることに心が折れ亡き正人の意志を継ごうとする優花や同じく戦争に反対の意志を持つ生徒達(後の愛ちゃん親衛隊)が集う。否定派
そのどちらにも傾かず何とか2つの派閥の衝突を防ごうとする中立派の3つに別れていた。
因みに中立派のリーダーは雫だ。他にも鈴や恵理、柔道部に入っていた永山という男が率いるパーティーで地味に中立が一番多かったりする。
恐らく今日もまたいざこざは起こりうると頭を悩ませる雫、しかしふと思い出す。
「そういえば、園部さん…どうしてあそこまで八坂を庇ったんだろう」
あの時の優花の表情は誰の目から見ても必死であるとわかっていた。しかしただ命を助けられただけで自らの立場を危うくするリスクを冒すまで正人の名誉を守ろうとした。
それだけの何かが優花にはあったのだろうか、雫はそう思って仕方がなかった。
そしてその優花は先日の口論もあり寝付けてはおらず。ただ割り振られた自室で昨日の出来事について考えていた。
「これでいい、良かったのよ」
何処かまだ迷いがあるように呟く優花。
体を起こし、もう何度目になるのか、彼女は備え付けられている机の引き出しに手をかける。
引き出しを開けるとそこにあるのは彼女から見慣れているが着ることはない男性の制服とその上に置かれている手紙と何かしらの端末。
そして手紙は元々折りたたんでいたのか開いた手紙にはこう書かれていた。
,,この手紙を見ているのが南雲…もしくは香織であることを願う。これを見ているということは俺は帰らぬ人になったということだろう。王宮に戻ったら直ぐに俺の部屋の備え付けられている本棚の二段目の本の裏を調べてくれ、そこに俺が知る限りの情報を託す ,,
それは正人が書いたと思われる手紙で優花はそれを見てこれで良かったと唇を噛み締めそう自分に言い聞かせた。
ヴォルゲンリッターの先行加入を誰にするか(最終的には全員来ます)
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シグナム
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ヴィータ
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シャマル
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ザフィーラ
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誰も来ない