落ちこぼれの魔導士は魔王と共に異世界で生きるようです   作:ウィングゼロ

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2話

 

教室全体が眩い光に包まれ転移の浮遊感を感じて数秒といったところだろうか、確りとした地面に足がつく感覚を感じ直ぐ横にいるへたり込んで唖然としている香織を庇うように辺りを見渡す。

地面は大理石でできていて、この部屋の空間も広い、燭台等も見受けられ此処は何処かの教会…いやこの大きさからかなり規模のでかい聖堂と見て間違いは無い

極めつけに、俺達を囲うようにいる中世の僧侶を放物とさせる神父が何十人もいて、深々祈りを捧げている。全員俺達が転移することをわかって…いや彼らが此処に召喚した可能性が高い。

だがこれらの様子を見ていきなり襲われて何かの儀式の生け贄…ということはなさそうだ。

しかし警戒は緩めない、これは明らかな拉致でわざわざ呼び寄せた俺達に何をさせようとするのか、それをまず見極めなければならない。

「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」

この中で一際目立っていた老人…教皇イシュタルは微笑みを混乱する俺達に向けるのであった。

 

 

香織SIDE

これは一体どうなってるの?さっきまで教室にいて、光輝くんの足元に光り輝いていた紋様が教室中に広がったと思ったら見知らない場所で知らない人達に囲まれている。

みんな頭の処理が追いつかず唖然としている中、近くにいる正人くんが強ばった顔で姿勢を低くして周囲を見渡している。

教室でも私の名前を呼びながら私の元に駆けつけてきた。

今の正人くんは少し前の無気力で私を遠ざけようとする彼じゃない…昔の明るくて元気だった正人くんなんだとそう感じられた。

 

正人SIDE

 

イシュタルという老人に連れられやってきたのはこれまた広い広場。未だ混乱が収まらないが正気に戻った天之河のカリスマ性でクラスを纏め、何とか移動できるぐらいに落ち着いた。

余談だが同じく巻き込まれた畑山先生が教師なのにっと涙目になってた

そして俺達は用意された椅子に腰を掛け、隅々まで観察するとこれは一流の者達が施したとわかる長いテーブルや食器などの置物…作りから置き方まで全て一流だ。 

教皇イシュタルの言ったとおり、俺達は最大限の持てなしで迎えられているということだろう。

 

全員の着席を見計らうように美少女メイド達がカートで押しながら部屋には行ってくる。

少なからず落ち着きを取り戻していることからアニメやマンガなどに登場するようなメイドが現れたことにより多くの男子がそのメイド達を凝視する。

そんな男達を女子が冷たい視線で見ているようだ。

メイド達が俺達に飲み物を給仕してくれて男性なんかは美少女メイドが間近に来ることからやはり凝視する人が多い。

かくいう俺は給仕されてどうもと軽く会釈をしただけで終わらせている。

美少女メイドなど言ってしまえばすずかのところで見慣れている。別に凝視するほどのことでもない。

メイドが給仕しているときに何やら疑っている視線を感じ目を向けると上段近くの席に座る香織がこっちを疑い深く見ていたが俺が軽く流していたことになにやらほっとした表情で視線を正面に戻していた。

 

そして生徒全員に給仕が行き渡ると漸く、教皇イシュタルは詳しい事情を俺達に話してくれた。

簡潔的に要約すると…

この世界の種族は大きく別れて人間族、魔人族、亜人族の3つに分かれている。

そして人間族と魔人族は100年以上も前から戦い続けているらしい。

だがしかし近年魔人族は魔物を使役し拮抗していた戦力バランスが瓦解、人族が滅亡する危機に陥った。

そこで人間族の崇める神エヒトは魔人族の根絶やしにするために地球から俺達を召喚した…っと

こんな話を聞いて俺が思ったのはエヒトという神がどうしようもない身勝手な神だということ

勝手に召喚したのもそうだがそれならば戦える人間を召喚すればいいはずだ。

何故平和な時代、しかも無関係な世界の平和な国の日本の戦いのたも知らない高校生を戦場に立たせようとは明らかに馬鹿げている。

 

だからこそ当然反発する人も現れる、上段近くの先に座る畑山先生だ。

「ふざけないで下さい!結局、この子達に戦争させようってことでしょ!そんなの許しません!ええ、先生は絶対に許しませんよ!私達を早く帰して下さい!きっと、ご家族も心配しているはずです!あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」

中学生?と思われるほどの小柄な体格で大人のように背伸びしている畑山先生は怒っているのはわかるがどうしても怒っているというより愛らしいという言葉が先に出てしまう気がした。

 

そんな畑山先生の反発の言葉だがイシュタルの次の言葉でこの場にいる召喚された者全員が凍りつくことになる。

「お気持ちはお察しします。しかし……あなた方の帰還は現状では不可能です」

「ふ、不可能って……ど、どういうことですか!? 喚べたのなら帰せるでしょう!?」

「先ほど言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意思次第ということですな」

残酷な真実を教えられ畑山先生も顔を青くして椅子に座り込み、帰れないという事実に生徒達もまた動揺の声を上げる。

そんな中で南雲は何処か冷静だった。ラノベとかの展開でありきたりなものだからいち早く想像できたのかも知れない。

かくいう俺も想定はした、少し外してしまったが概ね辺りだ。

俺はイシュタル達が呼び寄せたと考えたが呼び寄せた本人が神と謳われるエヒト

しかも帰れるのも神の気まぐれと来た、確証は無い。

これは管理局の力が必要かもしれない。

俺達の高校の範囲も魔力サーチャーが存在していた。

当然、転移による魔力をキャッチしているはずだ。

そのうえ休業中とはいえ優秀なオペレーターのエイミィさんがいるから転移先も割り出せているかもしれない。

だがそれでも、不自然なことが1つ。

常備している緊急用の端末から通信が来ないことだ。

管理局の特注品で電波などを必要としていないため通信はできるはず。

つまりそんな端末でもできない状況…何らかの妨害が起きているのかもしれない

 

そして事態は最悪の状況へと発展していく。

みんなが混乱する中それを止めるように机を叩き立ち上がったのは天之河だった

「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放っておくなんて俺にはできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん?どうですか?」

「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」

「俺達には大きな力があるんですよね? ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」

「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」

「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」

そう断言する天之河のカリスマ性を発揮し先程の混乱など嘘のようにクラスのほぼ全員が戦争に賛成する事態となる。

畑山先生はあたふたして止めようとしたけど流れを変えられない。

だが、天之河…全てを救う…それがどれほど難しいのかわからないのか?

何もかもハッピーエンドそんなのはアニメや小説などの話。現実はそう上手くいかない。俺が関わった2つの事件でもそうだったのだから

 

「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前一人じゃ心配だからな。……俺もやるぜ?」

「龍太郎……」

「今のところ、それしかないわよね。……気に食わないけど……私もやるわ」

「雫……」

「え、えっと、雫ちゃんがやるなら私も頑張るよ!」

「香織……」

不味い、この流れを変えなければ…!

「天之河…俺は戦争に反対だ」

途轍もない嫌な予感それが俺の全身で感じて直ぐさま椅子から立ち上がる。

「なっ!?八坂…君はイシュタルさんからの事情を聞いて何も感じないっていうのか!?」

「彼らが悲痛なのはわかるが

、それを俺達に頼ること自体が間違っている。召喚するならもっと戦闘のプロを連れてくればいい一介の学生の俺達が介入していい事態じゃない!それに転移に関しても使えないと言っていたが、もしかしたら転移について書かれてる書物だって確率的には捨てきれない」

何としてでも戦争に参加を回避する。

そう意気込みで周りに戦争の反対を促したが殆どの生徒は俺の言葉を受け入れてくれなかった。

俺に向ける視線は殆ど好意的なものでは無い。よく考えてみればそうだ、無気力な俺とカリスマ性溢れ完璧超人の天之河、人望の差は明らかだ。

恐らく何を言っても無駄なのは明らかだと踏むと俺は自分の発言力のなさを悔いながら椅子に座る。

こうして俺の言葉も届かず、クラスは戦争に参加する方針に決まった。

 

 

主人公の武装

  • 双剣、弓
  • 騎士剣

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