落ちこぼれの魔導士は魔王と共に異世界で生きるようです   作:ウィングゼロ

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21話

 

封印部屋で金髪の少女を助けた俺達、かなり魔力を持っていかれたことでその場に座り込んでいると解放された少女が南雲の手を握りしめて訪ねた。

「……名前、なに?」

そういえばお互いに名前を言ってなかったかそう思い俺達は名前を名乗る。

「俺は八坂正人、こっちは白崎香織、それで君が握っている男は…」

「ハジメだ。南雲ハジメ。お前は?」

自己紹介ぐらい自分ですると言いたげな視線を俺に向け南雲は少女の名前を聞く。

その少女もハジメ…ハジメっと絶対に忘れないように連呼していたあと。南雲に向かって予想外な言葉を振りかける。

「……名前、付けて」

「は?付けるってなんだ。まさか忘れたとか?」

「もう、前の名前はいらない。……ハジメの付けた名前がいい」

「……はぁ、そうは言ってもなぁ」

これはまた責任重大なのを訪ねられたものだ。

そういえばはやても良くリィンフォースなんて名前を思いついたものだと今更ながら思い出していると南雲も名前がふと思いついたのか少女に思いついた名前を口にする。

「ユエなんてどうだ? ネーミングセンスないから気に入らないなら別のを考えるが……」

「ユエ?……ユエ……ユエ……」

「ああ、ユエって言うのはな、俺の故郷で月を表すんだよ。最初、この部屋に入ったとき、お前のその金色の髪とか紅い眼が夜に浮かぶ月みたいに見えたんでな……どうだ?」

厳密に言えばユエという言葉は日本ではなく中国での言葉なんだが…まあそんな些細なことは置いておこう。

どうやらユエの名前は気に入ったのか無表情だけど瞳は嬉しそうな感じがした。

「……んっ。今日からユエ。ありがとう」

「おう、取り敢えずだ……」

「?」

少女…ユエの呼び名も決まり一段落したのだがその前にやっておくべきものがあった。それはその…ユエは先程まで封印されていたのだ。しかも何も身につけず。

「これ着とけ。いつまでも素っ裸じゃあなぁ」

「……」

爪熊の毛皮でできた外套を渡すとユエも今の状態を改めて確りと意識したことで顔を真っ赤にして外套で体を隠す。

「ハジメのエッチ」

「……」

 

「ま、正人くん!?」

「安心しろ見てないから…」

正直に目をそらしていて良かった。後で香織が怖いし

そんな少し和むような掛け合いがあった後。俺は直ぐさま気配感知で直上に敵が現れたことを察する。

「和むのはそれぐらいにして…どうやら邪魔者の登場らしい!」

来るぞっと叫ぶと俺は香織を同じく気配感知で気付いた南雲がユエを抱えて、不意打ちの攻撃を回避すると襲撃者は地面へと降り立った。

体長はおよそ五メートル4本の長い腕に巨大なハサミ。そして8本の足をわしゃわしゃと動かし、2本のある尻尾の先には鋭い針が付いている。

「見たところ蠍と蟹が融合した生物だな」

「さっきまでは気配も感じられなかった。つまりこいつはユエを逃がさないための守護者みたいなものか」

やっぱりサイクロプスみたいな魔物がいたわけで警戒していて正解だったと正直に思う。

「っ!来るぞ!」

仕掛けてくるとわかり全員に聞こえるように叫ぶと2本の尻尾から針が射出し俺達がいた場所に突き刺さる。

「これでもくらえ!」

回避に成功した後、直ぐさまにソニックアローで迎撃するが放った紺色の魔力矢はいとも簡単に弾かれる。

「弾かれた!?なら…!南雲!一点集中攻撃するぞ!」

「ああ!こいつを殺して食ってやる!」

生半可な攻撃では通用しないとわかったために南雲のドンナーから放たれるレールガンと俺の貫通性能に長けたデネブストライクが蠍もどきの1箇所に集中攻撃。これなら貫けると信じていたが現実はそうならなかった。

「なっ!?」

「弾かれた!?」

一点集中攻撃でも蠍もどきの殻を破れず。流石に動揺を隠せないが蠍もどきの攻撃がくるので止まることは出来なかった。

 

接近すれば4本のハサミを距離を取ったら尻尾の針が飛んでくるためかなり厄介だった。

しかも俺達の最大火力も通じない装甲持ちとなれば打つ手がない。

打つ手はないかと焦りを滲ませながらも俺に目掛けてくる鋏を飛び越えて回避し蠍もどきの横腹に双剣モードで一撃を入れるとミシッと砕ける音が響く。

「っ!?」

砕ける音が聞こえるとは思っていなかったために完全に音がした方向に気が行き蠍もどきの動きを警戒するのを怠った。

「正人くん!前!」

そんな香織の声で怠っていた警戒を戻し前を向くと尻尾から放たれた溶解液が迫っていた。

咄嗟に回避するが避けきれず。右肩に溶解液が掛かり物凄い酸で騎士甲冑を溶かし皮膚を溶かし始めていた。

「ぐっ!ジャケットパージ!」

このままでは肩を溶け落とされると判断し羽織っている騎士甲冑のコートを溶解液と共に弾き飛ばし、ダメージを最小限にとどめるとバックステップで南雲達の元へ着地する。

着地の揺れで右肩に激痛が走るが今は気にしてはいられないため我慢すると、痛々しい俺を見て香織が直ぐさまに天恵をかける。

 

香織のお陰で痛みが和らいでいき、俺は南雲にあることを教える。

「南雲、1つだけ弱点を見つけた。俺が物理攻撃で攻撃した場所を見ろ。あいつの装甲に罅が入っているだろ?」

「っ!どうなってやがる。俺とお前の最大火力でも傷1つ付かなかったはずだ」 

「あくまで俺の見立てなんだが…あいつの殻、魔法攻撃に強いだけで物理攻撃ならまだ手立てがあるのかもしれない。それに…」

今更ながら気付いた点としてそれを南雲達に教える。

「あの殻…鉱石で出来てるのかもしれない」

「…なるほど、つまりはそういうことか…だがどうやってあいつの足止めする?」

「それはもちろん俺が注意を…「正人くんは安静にしてないと駄目だよ!」…」

「白崎の言うとおりだ、これまでもお前がいて助かる場面が多かったが、今は回復に専念しろ。」

2人に妙にきつく威圧されると俺は押し黙ることしか出来ず頷くと南雲はドンナーを確りと持ち、1人で立ち向かおうとしたがそれを止めたのはユエだった。

「ハジメ、待って」

短く、ハジメを呼び止めたユエはてくてくと歩いてハジメの首元に口を当ててかぷりと噛み付いた。

「ちょ、ちょっと!?」

「香織、早く聖絶を敵を抑える人間がいないから」

「ふぇ?あっ!ここは聖域なりて神敵を通さず。聖絶!!」

噛み付いて…いや吸血行為に驚く香織、しかしそれを他所に蠍もどきはこちらに鋏を振り落とそうとしていたために、大慌てで聖絶を貼り一撃目を防ぐ。

だけど後二撃ぐらいしか持たなそう…

それまでに吸血が終われば…

「…ごちそうさま」

二回目の攻撃が振り落とされ聖絶のバリアが防ぎきった直後、ユエの吸血も完了したがどことなくうっとりしているような…まあ仕方ないか久しぶりの吸血なんだから。

そんなことを思っているとユエは片手を上げ、直後高まる魔力と溢れ出る黄金色の魔力光。

そしてユエは一言呟いた。

「蒼天」

その直後直径六メートル以上はある青い炎の塊が形成されユエが手を振り落とす共にそれは蠍もどきの頭上へと落下し、蠍もどきはその魔力ではなく炎属性の炎熱によって苦しんでいるようだ。

「…凄い…」

「これだけの威力を無詠唱で…これは中々だな」

蒼天が振り落とされた光景に驚きを隠せない香織に同感して俺も感想を述べる。

 

だけどお膳立て位はやるべきか…そう思い俺は蒼天が消えた後、軽くでバインドで奴の鋏を封じ込めると駆け出していた南雲が蒼天のダメージで動くのもままならない蠍もどきの頭上を取った。

 

「よお、随分手こずらせてくれたな…先ずはお礼するために下拵えしないとな!」

ドンナーを口でくわえ錬成で殻に穴を開けようとしたがそれを邪魔するように尻尾から針が飛んでくる。

「ちぃっ!邪魔するじゃねえ!」

 

技能の空力を使った蹴りで針を吹き飛ばすと着地した同時に錬成を発動。俺の見立て通り、あれは鉱石で殻に穴を開けることに成功する。

「はっ!漸くこじ開けられたな。じゃあ、遠慮なく受け取れ」

もう南雲を妨げるものは無い。ドンナーの銃口を蠍もどきに向け躊躇いも無く雷撃を帯びた銃弾を2発撃ち込むと魔物の血飛沫が飛び交いと断末魔が響き。倒すことに成功した。

南雲はぴくりともに動かなくなった蠍もどきの殻の上から下りて、こっちに戻ってくる。

その表情はもちろん達成感に満ちている。

「…お疲れ」

「ああ、八坂もナイスアドバイスだ。あれが鉱石だって見抜けなかったらもう少し苦戦してたろうしな…白崎も時間稼ぎありがとよ。ユエもお疲れ、へたり込んでるが大丈夫か?」

「んっ、最上級魔法は疲れる」

やっぱりあれほどの魔法を放つのだから殆ど魔力を消費してしまったのだろう。南雲の言うとおりへたり込んでる。

「それに、ハジメは私のこと、信じてくれた。」

そうユエは赤らめて嬉しそうな眼差しで南雲を見る。

そんなユエの眼差しに微笑みを浮かべる南雲、この奈落で再会したあと見たこともない笑みだ。

どうやら香織が俺を呼び起こしたように、ユエが南雲の心を少し取り戻してくれたようだ。

そんな、光景を見て俺達も微笑みを浮かべる中、ちょっと茶化したくなったので、仲睦まじい2人に一言言った。

デキてる(どぅぇきてるぅー)

「おい、何故此処でそのネタを引っ張ってくる」

「…んっ!」

呆れた目で南雲がツッコミを入れ、ネタはわからないが何となくそんな気がしたのかユエも南雲と同感と短い返答とともに頷いた。

 

取りあえず、何とかなった訳だからこれで一休憩…っ!?

「なっ!」

「っ!!!?」

「正人くん!?2人もどうしたの!?」

突然だった。かなり上の方ではあるがここまでハッキリと届くぐらいのバカ魔力が放たれたのを俺は感知した。

いや、俺だけではなく魔力感知の技能を手に入れていた南雲やユエもまたこの魔力を感じたのか先程の和みはなく。完全に取り乱していて唯一、それがわからない香織は豹変した顔つきに取り乱していた。

「なんだこの、馬鹿馬鹿しい感じは」

「凄い魔力、上から感じた。これは一体…」

「多分、奈落じゃなくてもっと上の上層からだった。…あっちで何かあったのか?」

 

三者三様の意見を述べる俺達、しかしその中で俺はどことなく別のものも感じていた。

この魔力…何処かで感じたことがあると…それも闇の書事件より前に

そこまで考えつくと脳裏に浮かんだのは、かつて俺が魔法に関わった事件を引き起こした首謀者の女性の姿。

しかしあり得るのかと否定したかったが、前例があるためにそれを完全に決めつけることは出来なかった。

ただわかることは

上で何かがおきた。それだけだった

ヴォルゲンリッターの先行加入を誰にするか(最終的には全員来ます)

  • シグナム
  • ヴィータ
  • シャマル
  • ザフィーラ
  • 誰も来ない
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