落ちこぼれの魔導士は魔王と共に異世界で生きるようです   作:ウィングゼロ

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幕間『悪夢再び』

 

時間は正人達がユエと出会う前に遡る。

オルクス大迷宮の上層では天之河率いる勇者パーティが以前より更に力を付け順調に階層を下りていた。

因みにメンバーは参戦派を筆頭に中立派の戦えるメンバーが主で否定派の優花達は王国に残り、正人と同じように帰還の方法を模索していた。

勇者パーティが二分したことに王国も教会もいい顔をせず。あの手この手と使って駆り立たせようとしたが優花達、否定派の結束は凄まじく。その上愛子の説得もあって無理強いはさせないという結論で事なきを得た。

因みにこの一件でも天之河と優花は言い争いをして雫の苦労で頭を抱えたのは言うまでもない。

 

そしてオルクス大迷宮の探索に入って六日目、ついに彼らは60階層まで辿り着いていた。

しかしそこから彼らの足取りは重くなっており。理由は1ヶ月程前になる。あの現場65階層がもうすぐそこまで来ていたからだ。

 

「…香織…」

そう奈落を見て呟くのは雫だ。彼女の脳裏には嘗ての苦い記憶が再生されている。自分には退路を切り開くことしか出来ず。離れていた香織達が落ちていくのを見ることしか出来なかった。

あの時何も出来なかった自分がそこが見えない奈落をみているとどうしてもそう思えてしまった。

「シズシズ、元気出して!鈴達はあの時の鈴達じゃないんだし!」

「そうだよ、雫ちゃん。きっと香織ちゃん達なら大丈夫だよ」

そんな落ち込む雫に声を掛けるのは雫の親しい友達である。鈴と恵里、2人とも同じく親友の香織の心配や相次ぐ参戦派と否定派のいざこざで頭を悩ませる雫を気遣うように励まし、それを見て雫は少し晴れたのか微笑みを零した。

「鈴も恵里もありがとう。私が確りしてないと駄目なのに」

「そうだよ!シズシズはそうでなきゃ、流石オカン!」

「鈴?誰がオカンですって?」

「鈴、流石に雫ちゃんに失礼だよ」

そんな仲睦まじい、光景に周りのメンバーも和んで、周りの空気を支配していたあの時の苦い記憶が和らぐと意を決して天之河がみんなに向かって話しかけた。

「みんな!俺達は遂に此処までやってきた。この1ヶ月俺達は必死に努力してきた結果だ。今ならあの悪夢やあいつにだって越えられる!」

俺達であの敵の過去を越えよう!っと生徒を鼓舞するがそれで頷けるのは檜山達一部の生徒とメルド団長を除く騎士団の騎士達しか通用しなかった。

過去を恐れているからではない。天之河が出したあいつという言葉。それは誰を示していたのかは明白に理解できるからだ。

中立であってもいい顔をできないのはしかたがないことで内心で雫は此処に優花達がいなくて本当に良かったと溜め息を溢しながらそう思った。

 

天之河と優花、いまや水と油のように相容れない関係になってしまったその2つに当然、先程の言葉を耳にしていれば優花は黙っていない。

その反論にまた独自論を述べる天之河、それは間違いだと反論する優花にそれに呼応してヒートアップする周囲の生徒達、そして胃を痛めるのは当然として雫なのだ。

どこか先が思いやられる光景に頭を悩ましながら、ふと檜山達の方に雫は顔を向けた。

いまや、天之河の傘下となった檜山達小悪党パーティは天之河の勇者パーティや中立派同様に力を付けてきた。

だが雫は知っていた。彼こそがあの時の惨劇を引き起こした起因の人物であることを。しかしそれはあの鉱石に不用意に手を伸ばし転移させられたという意味合いではなく。あの誤爆に見せかけた歴とした殺人の方のことであった。

あの時の一部始終は全員膠着して息をのんでいたが、ただ一人檜山のしてやったりという不適な顔を見たものがいた。

永山パーティの斥候役。暗殺者の遠藤浩介だ。

遠藤は偶然にもその光景を目撃し相当迷ったのか雫に打ち明けたのは分裂してから10日は経った日のことだった。

そんな遠藤から仕入れた真実にあれがなければ香織達は逃げ切れたかもしれないっと檜山を敵視し今にも仇討ちと切って捨てたい気分に何度も手に持つ剣に怒りで力が入ったか、雫はそんなことを思いながらもその感情を胸の内に押し殺していた。

クールビューティに見え内心ではかなり乙女チックである雫。そういった感情を押し殺すことになれていた雫の胸の内は誰にも悟られず。個の感情で事態を一変させるわけには行かないと本心より他の全員のことを考えて行動していた。

そして階層は進んでいき対に65階層まで到達する。

あの場所まであと少し、あれだけ鼓舞したが生徒達にも緊張は走っている。

「気を引き締めろ!ここのマップは不完全だ。何が起こるかわからんからな!」

いまや率いるのではなく付き添いと化してしまったメルドは持ち前の貫禄で天之河達に檄を飛ばすとより気を引き締めた一行は対にあの苦い思い出のあるあの場所へと辿り着くのであった。

「此処は…」

一ヶ月前、3人の同級生が奈落に落ち、何も出来なかった屈辱を感じさせた65階層の広間。

橋が治っているのを不思議がり。まるであの時の再現と言わんばかりに見慣れた魔法陣が展開した。

「ま、まさか……アイツなのか!?」

「マジかよ、アイツは香織達が倒したんじゃなかったのかよ!」

「迷宮の魔物の発生原因は解明されていない。一度倒した魔物と何度も遭遇することも普通にある。気を引き締めろ!退路の確保を忘れるな!」

まるであの日の焼き回しの如く、見慣れた光景に今から出てくる魔物が容易に想像できた天之河は驚愕し、龍太郎も奴は香織達によって倒されたと驚く中、迷宮がそういう仕組みであることを知っていたメルドは的確に指示を飛ばし今回は挟撃されずなおかつ直ぐに撤退できるように騎士達を動かすが撤退という二文字がない天之河は不服な顔を浮かべていた。

 

「メルドさん。俺達はもうあの時の俺達じゃありません。何倍も強くなったんだ! もう負けはしない! 必ず勝ってみせます!」

「へっ、その通りだぜ。何時までも負けっぱなしは性に合わねぇ。ここらでリベンジマッチだ!」

龍太郎も不敵な笑みを浮かべて呼応する。メルド団長はやれやれと肩を竦め、確かに今の光輝達の実力なら大丈夫だろうと、同じく不敵な笑みを浮かべた。

 

そして魔法陣から遂に嘗て正人達が倒したベヒモスが雄叫びを上げて現れる。

全員が気を引き締め臨戦態勢を整える中、雫は持っている剣先をベヒモスに向け呟いた。

「香織…私に力を貸して」

それを聞いたものは誰もいない。そして遂に天之河達はベヒモスとの戦いの火蓋を切っておとされた。

「面白いことになったわね。さあ、この1ヶ月あまりでどれだけ成長したか拝見させて貰おうかしら」

この時、観察者がその場の近くに潜み天之河達を観察していたことを彼らはまだ知らない。

 

ヴォルゲンリッターの先行加入を誰にするか(最終的には全員来ます)

  • シグナム
  • ヴィータ
  • シャマル
  • ザフィーラ
  • 誰も来ない
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