落ちこぼれの魔導士は魔王と共に異世界で生きるようです 作:ウィングゼロ
あの日からまた数日経ち、ユエも加わった。俺達は今日も半分に差し掛かっていた階層を下り始めた。
ユエも加わって更に快調に進めるようになった。今日も俺達は順調……順調に…
「だあぁぁっ!!何なんだよあいつらは!!」
隣で密林を並走する南雲が叫ぶ。
その背中にはバックパックとその上にユエが乗っかりファイトと必死に走る南雲に声援をかけている。
かくいう俺も香織を背負って疾走中…
速度は緩めない…というか緩めたら危ない状況…
ふと後ろを見る。
後ろには200頭以上いるティラノサウルスのような魔物に追いかけられているからだ。
何故か頭に花が咲いているのがシュールではあるが。
元々はこんな追われていたわけじゃない。
始めは普通に探索できていた。だけど頭に花が咲いている同個体が一体だけいたのだ。
そいつはユエが瞬殺したのだが…その後何故かあの大軍がやってきて何度か迎撃はしてるものの…減るどころか増えているしまつだ。
「ユエ、できれば此処は数を減らすために魔法を放つべきじゃないかな!?」
そう言いながら俺の背中におんぶされている香織がユエに対して大声を上げる。
香織もユエのことを呼び捨てにしているのはこの数日で物凄く仲良くなったから、香織は種族を越えようが打ち解けるのはいつも通りらしい。
この場にいる俺達の中で多数を相手取れるのは俺かユエだけ…俺は香織を背負って、オリオンで迎撃出来る状況ではなくこの場合ユエしかいないのだ。
「ん、凍獄」
そういうと追撃してくるティラノサウルスの殆どがユエの放った凍獄により氷漬けになりその氷の中で命を落とす。
といっても数が数だ。
数は減ったといってもまだまだ追いかける魔物は多く。味方など気にするものかと俺達を追いかける。魔物に流石に不思議に思えた。
「なあ、いくら何でもここまで来てまだ特攻ってのは可笑しくないか?」
「それは俺も思った。あれじゃあまるで捨て駒だ…」
「ねえ、今思いだしたけど、追いかける前に南雲くんが撃った花を踏みつけてた魔物覚えてる?」
南雲もこの不自然さに勘づき、俺は奴らの動きがまるで捨て身の行動だと指摘すると香織が追いかけられる前に倒した魔物の奇妙な行動を思い出すと俺の頭の中で1つの可能性が浮かぶ。
「寄生か」
「ん。多分そう」
「じゃあ大元を叩かないと俺達はこの階層の魔物全部と相手しなくちゃならねえわけか」
寄生ならあの花が本体の指示や出来事を送受信するアンテナと言ったところか。
もしこの追撃を逃れたいなら追ってきてる魔物を全て撃破した後、気付かれることなくこの場から去る。それしかないがとても現実的に難しすぎるためにその方法はとらない。
「それじゃあその本体が居そうな場所に行こうか!」
「八坂、わかるのか?」
「ああ、この階層に来るときにエリアサーチを飛ばした。それで本体が居そうな場所はかなり絞れた。此処から西に少し離れてる洞窟に居ると思う。」
「じゃあ行くとするか!」
走りながら目的地を決めた俺達は走るスピード早め、魔物達との距離を離そうとするも魔物達も意地を見せている…ようだが実際は使い捨てで使い潰れるのも視野に入れているのであろう
中々離せない距離に舌打ちして咄嗟に生成した4つ魔力スフィアをその場で固定して俺達が過ぎ去って言った後、魔物達がその場に辿り着いた瞬間スフィアは破裂するように爆発する。
いま放ったスフィアは空中設置型の地雷だ。識別外のものが過ぎると自動で爆発する仕組みだが威力はあまり望めない。
しかし足止めすることには役に立つ。
現に爆発して前列の魔物は怯むと後続の魔物に衝突し玉突き事故のように大量の魔物は魔物同士で衝突を繰り返す。
「使うのは惜しいが…くれてやる!」
南雲も懐から自作したトータス性の手榴弾を取り出し口でピンを外し後ろの群れ目掛けて投擲、直ぐに凄まじい爆発音と共に何十体以上の魔物が爆発と共に吹き飛んだ。
あの手榴弾も南雲特製で威力は地球の手榴弾とは桁違いに強い。そこは異世界産だからだろう。
そう思いながら前方の傾斜を滑りながら下りていき、目星を付けた洞窟を視認する。
「あそこだ!」
南雲達にわかるように声を上げ、全員があそこが目星のところとわかると滑りきると直ぐさまに駆け出す。
後続も傾斜で何体か転げ落ちて大惨事なことに鳴りながらもやはり後先考えず俺達に特攻…いや何故か先程より特攻が苛烈になっている。
俺達にこれ以上先に行かせたくないのだろう。
つまりはこの先に待つのは俺の推測通りということだろう。
「八坂、あいつらの動きが更に必死になってるぞ。つまりは」
「この先はビンゴってことだろう」
この逃走劇にも終止符が打てるとニヤリと笑みを浮かべ南雲の後に続き洞窟へと入る。
洞窟はとてもティラノサウルスのような魔物が入れる入口ではないために入口で魔物達が衝突、しかしそれに紛れで中型…某狩りゲーの青いトサカを持つ竜に似た魔物が一匹ずつだが侵入してくる。
それを見て俺は舌打ちし走っていた足を止めて体をUターン、オリオンを前方に構える。その際背負っている香織にも軽く可愛い悲鳴を上げるが反動で落ちないようにしがみつき、それを気にせずに俺は砲撃をチャージする。
「ここまで追ってきた報酬だ。遠慮なく受け取れ!」
そういってベガバスターを放ち砲撃は通路ギリギリの幅で避けることなど不可能。よって魔物達は砲撃に飲み込まれ、外につっかえているティラノサウルスの魔物をボーリングのピンのように吹き飛ばす。
今回は通路に被害を出さないように威力も幅も調節している。崩落する可能性はないだろう。
当分は追いかけてこないと思い南雲が先に進んだ方向へと走り通路を抜けると直ぐさま南雲が錬成で通路を塞ぐ。これであいつらは侵入することは不可能だろう。取りあえず香織を下ろしてオリオンを構えながら中央へと進む。
「さて、此処に本体が居るはずだが…八坂、気をつけろよ」
「そっちこそ、あれだけの数を操れるんだ。相当の手練れだろう」
俺と南雲お互いの相棒を手を持ち何時でも放てるように構えながら周囲に気を配る。
すると広間の中央辺りに辿り着くと全方位に緑の球体が100を超える数で現れる。直ぐさま南雲はユエと俺は香織と背中合わせで周囲を気を配り、プロテクションで全方位にバリアを張り球体を寄せ付けさせない
「本体の攻撃だな、香織気をつけろ」
「ま、さと…くん」
「香織?どうした…っ!?」
香織の様子が可笑しい。そう思い後ろを振り返ると護身用の短剣を俺に突き刺そうと悲痛な顔をする香織の姿だ。
「香織!?」
予想外なことに驚く中、香織の手首を咄嗟に摑み。短剣が刺さることはなかったが明らかに様子がおかしい香織の異変に気付く。
何かというと頭のてっぺんにこの階層に来てから見慣れてしまった。花…それがそびえ立つことで大体の原因はわかった。
「ごめんね、正人くん…」
「くそ!さっきの胞子か!南雲!気を「八坂!避けろ!」っ!!」
あの緑の球体が元凶の寄生させている攻撃だとわかると南雲にそのことを伝えて気をつけさせようと口を開けたが言い切る前に南雲の警告と迫ってきている風の刃に咄嗟に香織を押し倒し俺も地面を蹴って回避する。
今の攻撃でユエもまた寄生してしまったのだろう。ユエの方を見ると香織と同じく頭に赤い薔薇が生えている。
取りあえず香織も操られているとはいえ無事なため距離をとり南雲の元へやってくる。
「よお、南雲これは迂闊だったな…」
「ああ、ところで何で八坂は無事なんだ?俺みたいに耐性があるわけじゃないはずだ。」
「それに関しては騎士甲冑のおかげだ。これは身に纏う防御魔法だから、胞子を弾いてくれているんだろう」
「何でもありだな。お前の魔法は」
そんな万能ではないと言葉を返し俺はオリオンを香織の頭上の花に構える。
あれの解放の仕方は既に知っている。だが本体も確りとわかっているのか上下飛び跳ねて正確な狙い撃ちをさせてはくれない。
「厄介な…南雲、ユエは任せるぞ。俺はなんとか香織を助ける。」
「ああ、そっちも上手くやれよ」
お互い、止める相手を決めて香織と一定の距離を保ちながら相対する。
射撃は上下運動で危険だし、接近すれば持っている短剣で香織は喉元を掻き切ろうとするだろう。
接近も駄目、遠距離も難しい。高速移動で接近するのもリスクが高すぎる。
なんとも攻めにくい相手にどうすればと考えているとあっちではユエの近くに元凶であるだろう植物人間の魔物が現れている。
「何とかあいつを…」
仕留められるかと横目で元凶を見るも正面に居る香織が短剣を首元近くに構えられていて恐らく、元凶に危害が加われば喉元を切るつもりだ。
「ごめんね…正人くん…」
操られている香織が涙を浮かべて己の不甲斐なさに謝る。意識があるために本当に質が悪い。
「ハジメ…私はいいから…!撃って!」
ユエの傍には元凶がいる。南雲もドンナーを向けているがユエが人質で撃つことができない。
そしてユエは覚悟を決めたのは自分に構わず撃てと南雲に叫ぶ。
俺もどうにかして隙を突ければと焦りを滲ませていると状況が動く。他でもない南雲によって。
「いいのか?助かるわ」
「は?」
それはまさに一瞬だった。
ユエの悲痛の願いを南雲は聞き入れた。まさにキャッチボールのボールを直ぐさま投げ返すように引き金を引く指はまるで躊躇いも無いように軽く。
放たれた銃弾はユエの頭部ギリギリを通過、てっぺんの花が散る中。後ろの元凶に直撃、後退る元凶、だが間を詰めた南雲がいて、思うことがあるのか非難の目で南雲を見ていた。
「いや、お前がそんな目をするなよ」
そのツッコミとともに二発目が発射、元凶は断末魔の悲鳴を上げて絶命した。
その間俺達は何も動かなかった。いや寧ろ唖然として動けなかった。
もう少し躊躇うだろうと思っていたのにまさかあそこまであっさりトリガーを引くか普通!?
「ユエ、無事か?違和感とかないか?」
そして何事もなかったかのようにユエの心配をする南雲だがユエは恐る恐る南雲に呟いた
「……撃った」
「そりゃあ撃っていいって言うから」
「……ためらわなかった……」
「そりゃあ、最終的には撃つ気だったし。狙い撃つ自信はあったんだけどな、流石に問答無用で撃ったらユエがヘソ曲げそうだし、今後のためにならんだろうと配慮したんだぞ?」
「……ちょっと頭皮、削れた……かも……」
「まぁ、それくらいすぐ再生するだろ? 問題なし」
「うぅ~……」
嫌そういう問題じゃないから!俺はそう心の中で叫ぶ。南雲は人として色々と失っているのは知っている。だけどここまで…ユエに対する配慮すら遠慮することなくドンナーをぶっ放すのは流石に不味いだろ。
「ま、正人くん…」
そう話すのは元凶が死んだことで、解放された香織だ。確りと南雲の行いを見ていたために彼女らしからぬ眉をピクピクと動かしながら怒ってますと言わんばかりの表情に俺は溜め息を溢す。
安心しろ。俺もだ。
となればやることは1つだった。
俺はユエによってポカポカと殴られている南雲へと笑顔を崩さず。そして空いている右手にこれでもかと魔力を溜めていく。
「ユエ、南雲から離れておけ」
「ユエ、こっちにおいで、後は正人くんがしてくれるから」
「正人か…1つ聞きたいことがあるんだが…その溢れんばかりの魔力を帯びた右手はなんだ?」
取りあえず、ポカポカと殴っていたユエに離れるように促し、ユエは涙目でこくりと頷き、こっちに来るように香織がユエを呼ぶと駆け足で香織の元へ、そして香織~と相当乙女心を傷つけられたのか香織の胸に顔を埋めて、香織はそんなユエをあやすように頭を撫でて三者からはまるで親子のように見える。
そして南雲も顔を引きつりながら俺の右手を凝視、薄々これから何が起きるのかはわかったようだ。
「まあ、うだうだと長話をするつもりはないから…俺達3人分…遠慮なく受け取れ」
そうニッコリと笑みを浮かべるが南雲からはそれが恐怖にしか感じなかった。
言葉を一区切りして深呼吸そして意を決して3人の総意を南雲に向けて叫んだ。
「少しはユエの心気遣え、このバカァッ!!!!」
その掛け声と共に俺の溢れんばかりの魔力パンチが南雲の腹に吸い込まれ、南雲はうめきを上げながら吹き飛ばされるのであった。
ヴォルゲンリッターの先行加入を誰にするか(最終的には全員来ます)
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シグナム
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ヴィータ
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シャマル
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ザフィーラ
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誰も来ない