落ちこぼれの魔導士は魔王と共に異世界で生きるようです   作:ウィングゼロ

32 / 43
28話

 

ヒュドラの6つの首が全て無くなり、胴体だけが残っている中、最上級魔法を使ったユエは魔力切れでその場に座り込む中、近くにいた正人達もユエに近づいていく。

香織はユエが心配で少しでも魔力を分け与えようと小走りでユエの元へと走っていくが正人はどうも腑に落ちない顔つきで辺りを見渡している。

 

(いくら何でも呆気なさ過ぎる)

 

正人の考えはどうしても腑に落ちなかった。

恐らく最後の階層で明らかにラスボスと言わんばかりのヒュドラを倒したがこれで終わりというのは些か正人には到底思えることではなかった。

正人以外は勝ったと浮かれているが培ってきた経験から何かあるかわからないと未だに緊張は解けない正人はハジメが向かってくる方向を見ると目を細め眉をひそめた。

 

(……今、動かなかったか?)

 

ハジメの後ろに居る胴体だけとなったヒュドラの亡骸、それが今ピクリと微かに動いた気がした正人は疑い深い目で胴体を見つめ、まさかなっと疑いながらオリオンを構え、ソニックアローを胴体に向けて放つ。

放つ音を聞いてユエと香織は首を傾げるがハジメも矢が自身の横を通り過ぎ、自然と後ろを振り返り矢の後を目線で追うと矢は胴体に刺さる。

突き刺さってから数秒ほど、遠目でもわかるほどに胴体がうねりを上げると気が抜けていた3人も直ぐに気を戻し臨戦体制を整える。

すると胴体部分からせり上がってきた七つ目の首が死んだぶりを見破った正人を恨めしく睨みつけて予備動作もなく極光と呼べるほどのブレスを放つ。

 

「っ!!」

 

不味いと正人の勘が囁き、即座にシールドを三重に並べ、ブレスはシールドに直撃

勢いを削がそうするも威力はハジメのシュラーゲンとほぼ同等の威力のあるブレスは即座に展開できる防御魔法では到底耐えきれるものでは無かった。

1つまた1つと砕け散るシールドに焦りを滲ませる正人。

最後の1枚を何としても砕けさせないと正人はオリオンの内蔵されているカートリッジ全弾…3発で更に硬度を補強してブレスを受け止める。

シールドとブレスが拮抗するが徐々に押され始めている正人、突き出している右手がじりじりと熱に焼かれて皮膚が捲れ始め、シールドの端がひび割れ始めると正人の後ろに居る香織達を見て正人は意を決して口を開けた。

 

「南雲、ユエ、香織も直ぐに離れろ…時機にシールドが破られる。南雲とユエと攻撃が撃ち終わった後に直ぐに攻撃できるように準備して」

「……お前はどうするんだ?」

「大丈夫……上手く避けるから」

 

シールドが破られることは直ぐに理解できた正人は後ろにいるハジメ達に指示を出して攻撃直後を狙うように促すと当然、防御で動けない正人はどうするのかとハジメは訪ねると少し間が空いたが大雑把な説明だけする。

正人自身避けきれるとは思っておらず。駄目元で足掻こうと考え、そんな作戦を伝えることはできないとハジメ達には濁して答える。

だが正人の真意を読み取れないほどハジメ達はバカではなかった。

 

「嫌だよ……正人くんだけ犠牲になるなんて…そんなの絶対に認めない」

 

正人の指示に真っ向から反対した香織は決意を決めた顔で正人の隣に立ち両手を前に突き出して目を閉じて意識を集中すると遂に正人のシールドが破れ、正人達の守りがなくなった直後、香織が叫んだ。

 

「聖絶!!」

 

今までより、気迫が満ちた声で展開した聖絶にブレスがぶつかり、ミシミシという嫌な音を響かせ、直ぐに破られると予感をさせながらそれでも香織は諦めなかった。

香織のここまで強固な意志を持つことができたのは正人と共にいるため…

何も出来ない自分が不甲斐ないから、何処か遠くで傷つく正人を見たくないから…これがこの奈落でかつての正人を取り戻した香織の決意…その決意はぶれることなく香織の心の内に刻まれていた。

だからこそ、正人が窮地の今、自分が奮い立たなければどうする!っと恐怖で体が竦みそうな光景でも香織は一歩も退かず。正人達を守ろうとする。

 

「負けない…絶対に…みんなで元の世界に帰るために!!!」

気迫に満ちた願い、そして香織の体にも異変が現れる。

香織の体から湧き出ている白寄りの水色の靄…香織自身は防御に集中しすぎていて異変にも気付いていないがそれは他の3人には直ぐにわかった。

 

「はあぁぁぁぁぁっ!!」

 

発した掛け声とともにミシミシと壊れそうだった聖絶のバリアがどんどん膨張していきヒュドラのブレスを押し切る形でバリアが弾け飛ぶとバリアとブレスの拮抗部分が近かったヒュドラはその弾け飛んだ衝撃波で体を吹き飛ばされる。

 

「はぁ……はぁ……」

荒く息づかいでかなり疲弊している香織…先程の靄は消え、限界を達したのか意識を失いその場に倒れ伏せた。

 

「香織!?……まさか限界まで力を使ったのか」

「白崎、あの攻撃を押し返しやがった。火事場のくそ力っていうのはこういうことなんだろうな」

 

倒れ込んだ香織の容態を確認する正人……香織の顔色から使い果たしての気絶しているため少しほっとするが、状況は以前と変わらない。

倒さなければならないヒュドラは健在、もうすぐ立て直して再びブレスを吐くだろう。

そんな予想をしながらも正人はこの機会を無駄にしないと香織に小声でありがとうと囁いた後決意した目で目先のヒュドラを見る。

時機に体制を立て直し、襲いかかってくるのは明白、だがそんなことをさせないと正人の隣にハジメとユエも並び立つ。

 

「白崎が頑張ったんだ…後のことは俺達で何とかするしかねえよな。」

「ん、香織のお陰で救われた……香織の分も……倍返しで倒す」

 

やることはいつもと変わらないと平然と……香織の頑張りに鼓舞されてやる気のハジメとユエ、そんな2人を見て自分もと正人も何かを決めた目でヒュドラを見据える。

 

「南雲……ユエ……少しだけ時間を稼いでくれ」

「……なんか策があるのか?」

「俺の最大火力でヒュドラを倒す」

「八坂の最大火力か……今まで見せたこともない技か……見物だな………溜めるのに時間が掛かるのか」

「カートリッジフルロードで大体30秒……溜めに時間が掛かる分は期待して貰って構わない。」

 

端的な言葉で意思疎通を図る正人とハジメ。

仲良くなったのも一ヶ月以上前だというのにお互いに信頼し合っているその姿は長年パートナーで組んでいるようなものを放物とさせる。

 

「死ぬなよ…南雲、いやハジメ」

「…っ!へっ!そっちこそしくじるなよ。正人」

 

その直後、体制の立て直したヒュドラの怒りの雄叫びが上がる。そしてハジメとユエが前に出て、その場に残った正人はオリオンに使い切ったカートリッジの替えを装填するといつもより巨大な魔法陣を展開し術に集中する。

 

そんな無防備な正人を守るためにハジメはクイックリローダーで弾丸を片手装填を完了させておいた。ドンナーを纏雷で加速させながら間隔を開けずに弾丸を放つ。だが今のヒュドラにはドンナーの火力では力不足であまりダメージを与えられず思わず舌打ち、そのまま同じくヒュドラの陽動をしているユエに視線を向けるハジメは上手く回避しつつ緋槍などの中級魔法を連射して決定打にかけるがヒュドラの気を引きつけるがユエの死角にあるヒュドラの尻尾がユエに迫っていることに気付かない。

 

「ユエ!後ろだ!」

「はっ!うっ!」

 

ユエを見ていたハジメがユエの後ろから迫る尻尾のことを警告して叫ぶが一足遅かったユエは尻尾に背中を強打されて前のめりに倒れ込み立ち上がろうと腕に力を入れたときヒュドラの顔がこちらに向いていてユエはブレスが放たれるのだと悟り、顔を青くする。

いくら再生能力を持つユエだといえ破格なブレスをその身に浴びれば死に至るだろうと理解できたからだ。

体が動くよりブレスが放たれる。心の中でハジメや正人達に先に行くことへの謝罪をして自身の最後を待とうとしたとき…一陣の風が吹いた。

 

「えっ?」

 

唖然とするユエ。いつの間にか彼女は抱き抱えられ、放たれたブレスも無事に避けていた。

 

「こんな所で死ぬなんて許さない。ユエ、おまえは俺のもんだ」

「ハジメ!」

 

ユエは感極まったようにハジメに抱きつく。本来なら咄嗟の判断でユエを助けることは困難を極めた。

しかし、ハジメは何かの限界を越えたかのようにユエを助けることができた。

天歩の最終派生技能 瞬光 知覚機能を拡大し、合わせて天歩の各技能を格段に上昇させる。この土壇場でハジメは限界を超えたのだ。

 

怒り狂うヒュドラは光弾を雨霰のようにハジメに向けて振り落とすが瞬光で知覚機能が引き上がっている。ハジメにはスローモーションで見えて簡単に避けられた。

正人がそのことを知れば、高町家の神速に近いなと呟き、ハジメは唖然としユエは地球…人外魔境? っと勘違いしたのは余談である。

 

「おい、俺に構ってて良いのか?お前が一番怒ってた奴が野放しだぞ?」

 

瞬光で避けながら、不適な笑みを浮かべてそんなことを言うハジメ。

ハジメとユエはあくまで時間稼ぎ。そしてその時間は充分というぐらいに稼いだ。

 

ヒュドラはそういえばと直ぐに正人のいる方向を向くと…

そこには7つの輝きがあった。

 

「待たせたな…ハジメ…もう良いぞ」

 

6つの巨大な紺色の魔力の軛が正人の周囲で発動者の指示を待つように切っ先をヒュドラに向け待機し正人の目の前には周囲の軛を越える3メートルを越えの巨大な魔力スフィアが生成されていてオリオンの弦を弾き砲撃準備整っていた。

 

「すげえじゃねえか…本当によ」

「ん、こんな凄い力、初めて」 

 

ハジメはそれを見てこれが正人の全力なんだと確信しながらついでてしまった歓喜に笑みを浮かべ、静かながらハジメに抱き寄せられているユエも同じことで頷く。

そんな2人は巻き添えを食らわないためにヒュドラから後退。ヒュドラも正人の危険性を改めて再認識してブレスを放とうとするが準備が出来ている正人が先手を取る。

 

「集え!七星(しちせい)!7つの星に裁かれよ!!」

 

詠唱を唱える正人、その直後周囲の軛が放たれたヒュドラに襲いかかり、ヒュドラの動きを封じる。

突き刺さる軛に悲鳴を上げるヒュドラ。しかし、まだ正人の真打ちである砲撃が残っている。

正人は意を決して放たれる技名を叫んだ。

 

「グランシャリオ!!!!」*1

 

右手の指で摑んでいた弦を離すと溜め込んでいた魔力スフィアが解き放たれ、ヒュドラに向けて砲撃がは放たれる。

それをなすがままにその身に受けるヒュドラは悲鳴の断末魔も掻き消える魔力の砲撃に飲まれ、室内処か上層にも届きそうな振動と吹き飛ばされそうな爆風に離れていたハジメとユエは地面にしがみつき吹き飛ばされないように踏ん張る。

 

爆風も振動も治まり。息を荒くしてヒュドラが居た方向に目を向ける正人。煙が晴れてそこにあったのは正人の砲撃によりえぐれた地面と壁…木っ端微塵は免れたが完全に息絶えたヒュドラの肉片しか残されていなかった。

 

 

*1
グランシャリオ

正人の保有する最強砲撃魔法、北斗七星をモデルにし6つの星を軛、最後の1つを砲撃として放つ。

正人の切り札として正人自身が闇の書事件当時に考案し、ものにしていたが…なのはの切り札と同等に掛かるチャージと闇の書事件当時は中々使う機会なかったためにお蔵入り状態。ヒュドラ戦で初発動した。

蹴り兎、イナバについて

  • 正人の使い魔化
  • 原作通り、鈴の一時的な雇用
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。