落ちこぼれの魔導士は魔王と共に異世界で生きるようです   作:ウィングゼロ

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29話

 

正人SIDE

 

「はぁ…はぁ…」

 

眼前のヒュドラを完全に倒して息を荒くしながら終わったことに安堵して肩の力を抜く。

周囲にヒュドラ以外に敵はいない。

漸く一息付けると後ろに倒れている香織が無事だったことに少し頬緩めて笑みを浮かべる。

 

「ハジメ!?」

「っ!?」

 

香織の容体を安堵していたのも束の間、ユエの悲鳴を聞いてハジメ達の方向を向くと倒れ伏せるハジメにそれに駆け寄り涙ぐんで叫ぶユエ。

何事かと急いで駆け寄るとハジメの意識がまだあることに気付く。

 

「もう…無理」

 

そういってハジメは気を失い、力を絞って出したハジメの言葉に俺は少し張り詰めた気を緩めた。つまりは体を今まで以上に酷使していた反動が今に来て緊張が解けたことにより一気に来たということか。

そういった経験は俺にもあるから限界まで戦った人間が避けては通れない道だろうっと苦笑いの笑みを浮かべる。

隣のユエも疲れからうとうととしているし…休ませたいのも山々だが流石に3人担いで、なおかつ俺とハジメの荷物も持っていくとなると安全圏まで移動するのは困難すぎる。だから、ユエにはあと少しだけ頑張って貰いたい。

 

「ユエ…頼むからお前まで倒れないでくれ、流石に全部担ぐのは無理だから…」

「……ん、頑張る」

 

少し弱々しいけど、頑張ってくれるユエにハジメの持つ神水を渡し少し休んでいてくれと言った後、門前に置いてきた荷物を2つとも背負い。ユエ達がいる場所に戻ると魔力が戻ったユエがハジメを担ぎ、俺は香織を抱き抱えると奥の扉へと向かった。

 

奥の扉を恐る恐る開けその先に待っていた物に俺とユエは驚愕する。

 

「なんだよ……これ」

「此処が……反逆者の住処?」

 

ヒュドラの待ち構える大理石の大広間の先は緑の草原生い茂り、川や木々があってなおかつ奥の方に見える。大きい屋敷が佇んでいる。

此処がユエのいっていた反逆者の住処……当のユエもこんな所だとは想像していなかったことから唖然としている。

何より俺を現実離れだと思いたい1つはこのじりじりとくる暖かい日の暑さだ。

上を見上げればそこには太陽がある。

普通ならそんなの当然だと言えるが此処は奈落の底であることを前提にすればありえないと言える。

 

「こんな奈落の底に太陽があるなんて……あれはまさか人工太陽?」

 

そんなことを口走るがそんなものミッドチルダでも作ることができない芸当だ。

反逆者……俺の想像を遥かに越える者達だったのかもしれない。

そんなことを思いながら移動を再開した俺達は途中で見つけた庭園に設置されたベッドでハジメを抱えるユエと別れ、少し離れた屋敷の近くで見つけたベンチに座り膝の上に香織の頭を置く。

少し手荒に運んできたというのに香織は目を覚ます兆候が見られない。

 

「よく……寝てるな」

 

思わずそんなことを呟きながら香織の前髪を撫でるとヒュドラのブレスを防ぎきったときのことを思い浮かべる。

香織は俺が無理だと判断していた攻撃を見事防ぎきり、俺達の反撃のチャンスを見事に繋げた。

奈落に落ちて間もないときもそう。何もかも諦め無気力になった俺を奮い立たせもう一度立ち上がる勇気貰った。

一途で……頑固で……自分の信念を曲げない。はやて達にも似た信念を持つ香織に俺はとても微笑ましく思えた。

 

「今は確り眠れ」

 

そういいながら気持ちの良い風に俺も眠気を誘われ直ぐに眠りに落ちた。

 

 

香織SIDE

 

……私……何しているんだろう。

意識を取り戻したけど体が動かない。というより体が浮いている感覚がある。

それに周囲は真っ黒で何も見えない……

私……もしかして死んじゃったのかな?

結局私……正人くんの足手まといだったのかな……

そんなことを思い浮かべていると暗闇の中に何かが光った気がした。

何だろうと手を必死に伸ばすと光は一気に輝きだし眩しくて私は目を瞑る。

目を瞑って数秒程でまた目を開けると……

 

「ここは……」

 

何処か見覚えのある山……私はこの場所知っている。

 

「海鳴……市?」

 

私の生まれた場所…海鳴…山と海があってとても居心地のいい土地

それに此処は正人くんの家が所有している山でこの山に八坂神社が佇んでいる。

 

どうしてこんな所に…まさか帰ってきてしまったの!?私だけ……

 

「戻らなくちゃ!」

 

何としてでも戻らないと海鳴に帰るときはみんな一緒じゃないと駄目だ。

 

先ずはクロノさん達に連絡しないと。そう私は駆け出しそうになったけど直ぐに足を止めた……

私の直ぐ近くに木の近くに蹲る。女の子……それはとても私には見知った子だったから。

 

「……お父さん……お母さん……」

「わ、私?」

目の前にいるのは私だ。厳密に言えば幼い頃の……この頃は小学校にもまだ入学していない頃の私。

昔の私を見て思い出した。

これは過去の思い出だ。

実際今おきているわけでも無く。昔に起きたこと

もう十年も前の……正人くんとの始めて出会った時の記憶。

こんな昔のことこんな形で見ることになるなんて……

確か、お父さんとお母さんの知り合い……正人くんの両親に会いに八坂神社まで来て、私はお父さん達が話し合っている中、興味本位で山の中に……それで帰れなくなってこうやって泣いていたっけ

そんな泣いている私に声を掛けたのは……

 

「ねえ、大丈夫?」

「ふえ?」

 

そう優しく昔の私に手を差し伸べたのは小さい私と同じぐらいの年齢の男の子…正人くんだ。

その後ろについている小さい狐…久遠ちゃんもいる。

 

これが私と正人くんの2人の初めて出会った瞬間だった。

 

「こんな所で何してるの?」

「………お母さんとお父さん、お友達に会いに来て……それで」

「……それって……お父さんも友達が来るって言ってた……一緒に行こう。多分大丈夫だから」

 

そう無邪気に微笑む小さい正人くん。そんな正人くんに私は疑うことなく差し伸べていた手を掴んだ。

 

「あ、名前……ボクはやさかまさと…君は?」

「しらさきかおり!」

 

お互いに名前を教えてはぐれないようにそのまま手を繋ぎながら久遠ちゃんを先導で山道を歩いて行く2人。

その光景を黙ってみていた私の見える光景が歪む。

 

「……そっか、これは夢なんだね」

 

夢だから目を覚ます……これはもうすぐ目を覚ます兆候何だろう。

だったら怯えることもない……私は目を閉じて現実へと意識を覚醒していくのだった。

 

 

蹴り兎、イナバについて

  • 正人の使い魔化
  • 原作通り、鈴の一時的な雇用
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