落ちこぼれの魔導士は魔王と共に異世界で生きるようです 作:ウィングゼロ
「くたばれ!!!」
そういいながらソニックアローを速射で魔物を掃討すると残った敵は居ないか周囲を見渡し気配を感知する。
こちらに敵意を向けてくるものはいないのを確認すると俺は先を急ごうと走りだした。
何故既に踏破したオルクスの大迷宮のダンジョンを疾走しているのか
実に理由は単純でハジメのためだ。
アーティファクトを作りに当たって鉱石は必須ともいえる素材、屋敷にもストックはあるがそこが尽きればアーティファクトは作れなくなる。
そこで自身の修業兼とある理由で俺は単独でオルクスの深淵を上っている。
既に十日ほど経って、20階層まで戻ってきた。
此処までハイスピードかつ正確に戻って来れたのは攻略際にオリオンに搭載されたマッピングの恩恵が大きいだろう。
行きしは中々時間が掛かったが何処にどのようなものがあるのか把握できている以上階層を上がるスピードも段違いである。
そうこうしていると19階層、周囲に湧く敵を一掃した後、18階層の階段へと最短距離で疾走する。
「……ん?」
しかし此処で少し速度を緩める。後ろから気配を感じたからだ
「気配は一つ?」
何故か俺の後を一定の間隔で付けてきている気配があるしかも全速力ともスピードに付いてこれている時点で普通じゃない。
しかし19階層にそんな魔物がいただろうか…
頭の中で思い出すがいた覚えがない。元々いて遭遇していなかったという線もなくはない。
それ以上に奇妙なのはその気配は何故かこっちに敵意を向けていないということ…
この大迷宮有効的な…というより魔物自体、敵がいたらサーチアンドデストロイみたいに戦闘になるから、一般の生物が迷い込むにしては些かありえないこの場所
ということはイレギュラーか?っと視線気配のする方向に目を向けると……
「……は?」
壁から白いうさ耳が生えていた。
香織SIDE
屋敷の外の特訓に適した場所、私とユエはそこで相対して立っている。
今日はユエとの模擬戦、ここに来て一ヶ月ほど経つから正人くんやハジメくん同様私も強くなった。
「ユエ、いつでも良いよ!」
「ん、わかった……緋槍!」
いつもの掛け合いの後、ユエは直ぐに緋槍を放つ。
燃えさかる魔力の槍が私に向かって迫ってくる中。私は手を突き出して白みのかかる水色の魔法陣を展開する。
ラウンドシールド……正人くん達が使う魔法のシールド
それによって私に迫る緋槍は受け流し何処かへと飛んでいく。
「次!凍雨!」
簡単に防がれてちょっとむっとしているユエは次の手と空中に飛ぶと氷の雨が飛来、広範囲なので避けることもラウンドシールドでずらすこともかなり難しい。
「こういうときは!」
だけど焦らない。焦ると判断が鈍くなると正人くんが口を酸っぱくしながら言ってくれた。
こういうときの対処もできるように教えてくれている。
「聖絶!!」
私の周囲に聖絶のバリアを張りと凍雨を防ぐ。
毎日正人くんに学んだ成果、正確に攻撃を判断しされに見合う防御魔法を展開する。
私は防御と回復に更に磨きをかけ、前に出る正人くんやハジメくんの支援をするそれが私にとっての最良であると思ったからだ。
だからこそ私は防御や支援といった魔法を習得し今もユエの攻撃を防ぎきっている。
「加減する。蒼天!!」
遂に最上級魔法を使ったユエ、力は死なないように加減してるがそれでもかなりの力を帯びた青い炎の塊は私の頭上から振り落とされる。
だけれど打つ手のない昔の私じゃない。
「清浄なる輝き!セイクリッドシールド*1!」
両手を蒼天に向けて突き出し短い詠唱を唱えると先程のラウンドシールドと同じ丸い魔法陣の展開、だけどそれだけじゃない。その魔法陣の四方にそれより小さい同じ丸い魔法陣が展開し蒼天を受け止める。
蒼天と激突したシールドは全く罅が入らず。力もまだ余力がある。蒼天が爆発するけど聖絶と組み合わさっているから火の粉1つ私には通さずに終えると空中にいたユエがむすっとした顔で地面に着地する。
「むう、加減したけど流石にここまで防がれると少し堪える」
「私だって強くなってるんだもん」
着実に強くなっているそういった実感を意識できるぐらいに感じられ嬉しい気分になる。
少しお風呂につかろうかなっと思った矢先、私の頭の中に声が響いた。
(香織)
(あれ?正人くん?どうしたの?)
正人くんからだ。
正人くんが教えてくれた念話で連絡を取ってきた正人くんは何処か落ち着いていないようで少し首を傾げるとかなり早口で正人くんの声が響く。
(悪いがこっちに来てくれ!瞬身の短剣は近くに刺してあるから直ぐに来れるはずだ)
(う、うん、わかった)
何やら不穏な気配、正人くんの身に何があったのっと不安に駆られる中横にいたユエが私の顔を覗いてくる。
「正人に何かあった?」
「うん、直ぐに来て欲しいって…私行って来るね」
「一人じゃ不安だから私も行く」
ユエもついてくることが決まり、私達は屋敷の一室へと向かう。
そこは元保管庫で正人くん達が整理して空き部屋になっている部屋の中央には変わった刀身の短剣が地面に突き刺さっている。
この短剣こそ正人くんが念話で出てきた瞬身の短剣、ハジメくんと正人くんの合作したアーティファクトだ。
空気中の魔力素を取り込む鉱石に生成魔法で魔力感知を付与。更に正人くんが転移の術式を生成魔法で付与することで限定的に転移することができる代物なのだ。
仕組みは簡単、鉱石の特製である魔力素を蓄えるこの鉱石の魔力を魔力感知で探知し、組み込まれた転移術式でその場所に飛ぶといったもの。
ただし連続では使えない上、距離もそこまで遠くには転移できない。
それでもこの100階層のオルクスの奈落に5階層区切りで正人くんが設置しているから色々と移動の手間が省けるからこれからの素材の採取にまさに打って付けのアーティファクトなのだ。
因みにデザインはハジメくんが考案、実物が完成して正人くんがもろに四代目のあれじゃんかっとハジメくんにツッコミを入れていた。
「行くよ、ユエ」
「ん、行こう」
私は短剣に手を当てて、付き添うユエも私の袖を持つ。
同行者がいる場合は発動者に接触していないと駄目みたいでハジメくん曰くロマンらしい。
上にある同素体の短剣の蓄積された魔力を感知して上へ上へと転移を繰り返しものの3分ぐらいで正人くんがいる上層の階層に到達した。
到着すると私もユエも驚いた。
辺りはワーム型の魔物の死体が十体ほど転がり、生きているのは正人くんしかいない。
正人くんは特に怪我を負っているようには見えないが小さい魔物を介抱しているように見えた。
「ま、正人くん!?これってどういう…」
「来たか!突然混乱してると思うがこの兎の毒を取り除いてくれ!」
「魔物を…助けるの?」
正人くんの突然の言葉に取り乱す私、ユエも信じられない言葉に正人に聞き返した。
「正直頭が狂ってるのかって言われそうだが…この蹴り兎、妙に人懐っこいし友好的だった。その気の緩みを突かれてこの階層の魔物に奇襲されてこいつとは共闘して倒したが毒に犯されたみたいで痙攣してやがる。」
「……わかった。直せば良いんだね」
「香織、そんなことして大丈夫?」
「うん、正人くんがそう信じてるなら私も信じたいから」
そういって正人くんの意見に同調しユエもそれならと納得すると私は蹴り兎に近づいて解毒の魔法をかける。
「万天」
魔法名を呟いただけで蹴り兎からは毒素がみるみると無くなっていく。
しかし治すのが遅かったのかぴくりとも動かない。
「毒は無くなったけど…」
「遅すぎた…かも」
助けたいと正人くんが嘆いた蹴り兎はもう手遅れ、その事実に顔を俯かせたが正人くんには何か手があるのか苦虫をかみつぶしたような顔つきで考え吹っ切れたのかあーもうっと声を出した後、下がっててと私達に促した後ベルカ式の魔法陣を展開、意を決した正人くんはあろうことかオリオンで自分の手首を肉薄して蹴り兎に切り口から流れる自身の血を流す。
「ま、正人くん!?何を!?」
直ぐに回復しようとしたが正人くんに止められる。痛そうな顔を浮かべる正人くんは詠唱を行った。
「我は求める…汝は我が敵を倒す矛、汝は我が守る盾、血の盟約の元、汝と我の従者の契約を結ぶ!」
そう詠唱を終えると魔法陣が光り輝き、光が収まるとそこには先程と変わらない蹴り兎の姿。
だけど先程の痙攣している様子はない安定している様子が見られる。
「………成功か」
切り口を抑えながらほっとする正人くん。私はすかさず治療に入ると正人くんの切り口は治っていく。
「もう!正人くん、いきなりすぎるよ!」
流石にいきなり自分を切りつけるなんて見過ごせないために正人くんに怒る。
その正人くんも申し訳なさそうに私に顔を向ける。
「悪かったって、一刻を争うもんだから……ついな…それより俺が何をしたか気になるんだろ?一度拠点に戻って落ち着いて説明するから」
そう宥められて私は頷き、短剣の魔力が戻ってから私達は屋敷へと戻っていった。
香織が考案して編み出した。ミッドとトータスの複合魔法ラウンドシールドと聖絶を組み合わせ、あらゆる攻撃を弾き防ぐ