落ちこぼれの魔導士は魔王と共に異世界で生きるようです 作:ウィングゼロ
「っで…大体のことは聞いたが…」
カリカリカリカリカリ
「ここからは正人くんじゃないとわからないし、そろそろ説明してくれないかな~」
モキュモキュモキュモキュ
「そうだな…まず俺が何をしたかそれを話すとする…焦らなくてもまだあるから落ち着いて食べろよ」
「キュッ!カリカリカリカリカリ」
「おい、正人なに普通に蹴り兎に人参スティック与えてんだよ!」
屋敷に戻ってきた私達、ハジメくんも集めて広い一室の椅子に座ってるんだけど、目線は蹴り兎に向いてしまう。
通常の蹴り兎と違って脈打つ血管も見えないし瞳の色も紅眼、1階層にいる他の蹴り兎にはない愛らしさもこの子にはあった。
そんな蹴り兎が人参スティックを前足で摑みカリカリカリと口の中に頬張っていき頰が膨れていてまるでハムスターみたい。
「なんか可愛い」
ハジメの膝の上に乗るユエが長いテーブルに肘をおいて前のめりな体勢で蹴り兎をじっと見つめ愛らしさに笑みを浮かべている。
そのユエの感想には私も同意と思う中、正人くんが話し始める。
「まあ、単刀直入とこの蹴り兎を俺の使い魔にした。」
「使い魔?」
正人くんの言葉にハジメくんが首を傾げその意味を訪ねる。
使い魔、つまり蹴り兎は正人くんの従者になったってことかな?
今思い返せばそういった言葉も詠唱内に含ませていたし、あれが使い魔の使役する魔法なのだろう。
「あのまま死なせるのも惜しかったし何より友好的だったというのも使役しようとする理由の1つ」
「…普通、魔物は友好的じゃない」
友好的な魔物にユエは見知りと否定するが正人くんはこれ見てそれ言うか?とジェスチャーで人参スティックを頬張る蹴り兎を見てくっ!とユエは認めるしかない現実に苦悩している。
「それで契約する方法があんな見てハラハラする方法しかなかったの?」
あんな血を垂れ流す方法しかなかったのか私は気になって仕方が無かった。それを聞いた正人は嫌な顔をして少し悩んだ後、ここで拗らせるのは得策ではないと踏むと重そうな口を開けた。
「いや…他にも方法はあったよ」
「ふーんそうなんだ…」
「ひっ!?」
あれ?なんでそんなに怯えるのかな…かな?
「いや…その何と言いますか…その…なにあれ?香織の背後にいるあの般若…疲れて変なの見えてるのか?」
「そんなあやふやでどうしたんだよ。やべえ、あれはスタンドかなんかだ。今の香織を刺激するのは絶対得策じゃねえな」
「正人はハッキリ言うべきステータスには確認していないスキル、隠しスキルの類いかもしれない」
よくよく見てみればハジメくんもユエも顔を引きつっている。
そんな中、未だ恐怖で顔を引きつる正人くんが話し始めた。
「あれは本当に緊急で使い魔の使役する方法の中で1番手っ取り早いのがあれだっただけ……あんな方法そんな使う人が皆無だし」
「……そっか……もう本当に心配したんだよ?」
確かに大急ぎで確実性の欠ける方法は使えないのだから仕方が無いといえば仕方ないかな?
そんなことを考えている私を他所に正人くんは何かの危機を乗り越えほっとしていて私は何故そんなほっとしているのか首を傾げた。
「それで、話の内容は戻るがなんで蹴り兎が19階層なんかにいたんだ?話を聞く限り、普通の魔物でもないだろう」
「ああそれな……一応本人から直接聞くべきなんだが……」
話が脱線したのを戻し本来階層を下りない魔物が階層を下りたイレギュラーな正人くんの蹴り兎。そこまで生き残っているのも充分イレギュラーなのだが、正人は難しい顔をして視線を蹴り兎に向けた。
「モキュッ?」
「おい、正人こいつ喋れねえから何言ってるかわかんねえ、何とかしろ」
可愛い鳴き声に私は癒されるけど何を意図しているのか不明で頭を抱えているハジメくんは正人くんに丸投げで正人くんはそれじゃあと蹴り兎と見つめ合った。
見つめ合うことしばらく、なるほどなっと、何処か蹴り兎の苦労を労っているように見え、今の間に何があったんだとハジメくんは無言の問いかけを目線だけで正人くんに向けていた。
「そんな顔するな……えっとな、念話で聞いた限り原因は俺達だということがわかった。」
それから語られたのは蹴り兎の冒険譚……
まずこの蹴り兎がいたのは私達が落ちて辿り着いた1階層の蹴り兎で間違いはなかった。
その頃は他の蹴り兎とも変わらず。行動していたがある日を境に蹴り兎の行動は変わった。
その日とは私達とハジメくんが再会した日…
この子は正人くんが1階層のボス、爪熊をハジメくんが倒したところをそして、ハジメくんを正人くんが倒したところをしっかりと見ていたようだ。
その後こっそりと後を付けてハジメくんの仮の拠点であった洞穴を突き止めて、私達を恐れていた…みたいだけど数日後、私達がその洞穴から出た後、いなくなった洞穴に住み着き、そこであるものを口にした。
残っていた微かな神水…それがこの子の思考を格段に上げ、他の魔物達とは一線を越えることになった。
そのことで浮かれていて、また生まれた別個体の爪熊に見つかってしまったとのこと。
既に逃走不可能な状況、決死の覚悟で爪熊と挑み。戦いの末、爪熊を倒したという。
そしてその時蹴り兎は悟ったのだ。誰でもやれば強くなれると
それから知性が逸脱した蹴り兎はその機会を恵んでくれた私達を追いかけるために成長した自分を見てもらうために階層を下りてきたという。
そして追いかけている途上で偶然、短剣の配置で階層上がっていた正人くんを見つけて追いかけていた……ということ。
話を一通り全部聞いて正人くんの初めに行っていた私達が原因という理由も納得することができてそっかと蹴り兎に大変だったんだねっと心から労う。
「それじゃあ、名前付けてあげないと!正人くんが付けてあげてね。」
「…まあ仕方ないよな…そうだな…」
名前がないのは不便だと私は正人くんに名前を付けるように呼びかけ正人くんは頭の中で考えると直ぐに名前が思い浮かんだのか、名前を口ずさむ。
「ミッ○ー」
「うん、色々と駄目だと思う。別の名前にしてね」
「そ、それじゃあ…ティ○ー」
「…ぴょんぴょんするんじゃ-?」
「なんかこれも違う気がする…うーん…あっ!戦う兎だからセ○ト!」
「上手いこと言ってるけどベストマッチはしないからな」
「…………」
完全に尽きたといわんばかりに机に突っぱねる正人くん。
流石に色々と駄目な気がする名前ばかりで私達は反対したけど……名前付けるのって結構難しいのかも
「○ントは良いと思ったんだけど……もう率直にイナバでいいか」
「かなりシンプルにいったな…別に良いんじゃねえか?」
どこかやけくそに見えるそれに私はもう一ひねりいるんじゃないのかと思ったけど蹴り兎がその名前気に入ったのかテーブルの上で喜びの舞を舞っている。
これは確定かな
「正人、どうやらイナバで決定らしい」
「…みたいだな、それじゃあこれからよろしくな。イナバ」
「キュッキュウ!」
正人くんの言葉に力強く返事をするイナバちゃん。
こうして私達に新しい仲間蹴り兎のイナバちゃんが加わったのだ。