落ちこぼれの魔導士は魔王と共に異世界で生きるようです   作:ウィングゼロ

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34話

 

 

 ヒュドラとの激闘を制し正人達がオルクス真大迷宮のオスカーの隠れ家へと辿り着いたその日、天之河勇者パーティー一行はオルクス大迷宮の攻略を一時中断し王都への帰路の馬車に乗っていた。

嘗て誰も倒せなかったベヒモスを倒し遂に未踏の階層へと挑む天之河達も先に何があるかわからないことから慎重にならざる終えず攻略のスピードは一気に低下した。

その上何度も迷宮に潜り疲労もかなり貯まっていることからメルドはこれを気に一時王都に戻り療養することを決め、力を付けることに焦る天之河達を宥めて王都へと戻らせた。

ただ帰還する目的はメルドの提案だけではなく。近日帝国からの使者がやってくることから顔合わせのためということが多い。

そんな王都に戻る馬車の1台……天之河主力メンバーとメルドが乗るその馬車はピリピリとした空気に満ちあふれていた。

 

「………………」

 

 本来なら談笑などの話に花を咲かせるのだが、不服ですっと言わんばかりの顔つきをする雫がそんな空気を見事にぶち壊していた。

雫はプレシアとの戦いの後、今までにも増して攻略や訓練などに精を出していた。

休憩もホルアドでなら充分取れるし王都まで戻る必要はない。

そんなことを思う雫だが休養日でも今の雫がやることと言えば近隣の魔物相手に一人訓練とやっていることは迷宮内とほぼ変わらない。

 

「雫、そう苛立っても何も変わらないだろう?あの人に勝てなくて悔しかったのはわかる。俺も悔しいさ……だからもっと強くなって必ず倒そう。俺達ならきっと出来る!」

 

 そんなイライラする雫に話しかけたのは天之河だ。雫の苛立ちがプレシアの敗戦から来ているものだと考え自分の意見を述べ強くなろうと言い切るが、実際のところ雫の苛立っている本当の理由はそれではない。

 

プレシアから雫だけに与えられた。香織達の生存の情報、それが香織の手掛かりを見つけるという憶測から香織達の元へ行くという確信に変わり。今まで以上に攻略に躍起になっていた。

そんな絶対攻略ウーマンになった雫に突如として王都に帰る指示が出ればどうなるか……それは見ての通りと言えるだろう。

 

「雫、焦る気持ちも判るが体調管理を怠るといざという時、危険にさらされるのは自分だけではないかもしれん。休むときは休めいいな」

「……はい……」

 

天之河とは違い、メルドは今の雫には明確な目的があるのだろうと理解しそれが何かとは聞かずに仲間のことをいうと顔色を沈めながら短く言葉を返した。

 

少し馬車内の空気が軽くなった後、しばらくして王都へと辿り着き馬車から出た一行、王城内へと入っていき、謁見の間で帰還の報告を述べた後、一度自室に戻ろうとした雫は一人廊下を歩いていると後ろから声を掛けられる。

 

「雫、お久しぶりですわ」

「リリィ……」

 

 この国の王女リリアーナは迷宮から帰ってきた雫を心の底から微笑み雫の元へ駆け寄る。

リリアーナ、雫や香織はリリィと愛称で呼んでいるがこの3人の仲はとても良好で短い間の香織の凶報にも心の底から悲しんでいた。

 

そんなリリィは先程の微笑みを隠し、少し暗く俯いて雫に語りかける。

 

「雫……その…異端の魔女の件は私も聞きました。光輝さん達含め何も出来ずに負けてしまったと……ですが誰も死なずに帰ってきてくれたこと私は本当に良かったと思っています」

「リリィ…ありがとう心配してくれて」

 

 この世界で出来た親友に張り詰めていた気持ちが和らいだ雫は笑みを浮かべ、その気持ちにお礼を言うが、だけどと真剣な表情を浮かべて言葉を続けその表情の変化にリリィは首を傾げた。

 

「誰も死なずにっていうのは不適切よ、全員生かされて帰ってきたって言う方がしっくりくるわ」

 

あの現場にいた一部を除く誰もが当初のことを思い浮かべ思うことだった。

自分達はプレシア・テスタロッサの気まぐれで生かされた。そう思わずにはいられず。負けた当初は全員の顔は暗かった。

しかし直ぐに雫は明確な目的を得たために剣の腕に研きをかけるために特訓を再開、それを見て天之河も「雫を見ろ、あれだけ何も出来なかったのに今も強くなろうとプレシアさんに勝とうと努力している。こんな所で挫けてちゃ駄目だ」っと持ち前のご都合主義とカリスマを全力にして落ち込んでいるメンバーを奮い立たせた。

それを後々聞かされた雫はため息をもらしたのは言うまでもない。

 

「そうですか…私達の世界の問題だというのに本当にごめんなさい。」

「もう、リリィが謝らなくて良いわよ。それに私達にとっても帰れる兆しがあるってわかったことだけでも救いだったから……それじゃあリリィ、一度部屋に戻るから。時間が空いたらまた一緒にお茶でもしましょう」

「はい!」

 

元々、天之河達を無理矢理召喚されたことに深い負い目を感じていたリリィ、自分達の世界のことは自分達でと心の底からそう思う彼女だが雫はやんわりと受け答えをしてまた笑って談笑しようと約束すると笑みを浮かべてリリィは言葉を返した。

 

リリィと別れ部屋に戻った雫は久しぶりの親友との再会に心に少し余裕が生まれて備え付けられていた椅子に座り。一息つくとこれからのことを考える。

 

「さて、何しようかしら……疲れたから寝る……って言うのも少し違う気がするし……訓練所で素振りでもしてこようかしら?」

 

悩んだ末……結局は鍛錬という結論。幼少の頃から剣の道を押しつけられてきていた雫にとって暇なときは剣を振るおうという女の子らしくない発想が1番に浮かんでしまったのだ。

早速訓練所へ、そう思い扉に手をかけたときに扉の向こうから怒鳴る女の声が響く。

それは雫の耳にも聞こえてきて、雫はまさかっと嫌な予感を思わせながら溜め息をつき短い安らぎの時間は終わり騒ぎの場所へと向かっていく。

 

雫がその場所に行くと案の定、クラスメイトが揉めていた。

集団と集団が対立しあいどちらも仲悪いようにギクシャクした雰囲気を出している。

その二つの集団の先頭で言い争っていた人物を見て、雫はまたかと溜め息を零していつまの仲裁に入る。

 

「檜山くん、優花も落ち着きなさい」

 

先頭で言い争っていた二人とは檜山と優花、もう見慣れてしまった参戦派と反対派のいざこざだった。

 

「八重樫か…何しにきたんだよ!?」

「何しにって大声が聞こえれば誰だって来るわよ。それでどうしてこんな事になってるのかしら?」

 

イライラしている檜山の言葉に冷静に事実を述べる雫。その言葉には当たり前のことしかいっておらず。檜山は何も反論することはできない。

そして事の発端を聞こうとする雫は檜山に訪ねるがそれを答えたのは優花だった。

 

「私達が訓練所に行く途中に雫達が帰ってきたって聞いたから、流石に会いに行こうと思ってね。会いに来たんだけど…檜山の奴が居残り組が訓練なんてしても何も意味がないだろうなんてほざいたのよ!」

「…ぐっ、そ、そりゃあそうだろう!?おまえら戦争には反対なんだろ!?だったら強くなっても意味なんてねえじゃねえか!」

 

 二人の言い分はこうだ。

幾ら戦争は反対とは言えこの世界は日本のように平和というわけではない。いつまた自分のみに危険が降り掛かるかもしれない。そのため自衛出来るように鍛えておくという優花

対して、戦争にも参加せず。帰還の方法を模索する優花達が強くなっても無意味と視聴する檜山

その二つの言い分で完全に対立している檜山達と優花達……そんな二つの言い分に雫は頭を抱えていつものように仲裁しようとするが火がついてしまった優花はそれより先に言葉が出た。

 

「それに聞いたけど異端の魔女に何も出来ずに惨敗したんでしょ!?そんなんで戦争に勝てるわけ無いじゃない!?命が大事なら戦争なんて止めて帰れる道を探す方が良いに決まってる!」

「なん…だとこの女が…!」

「止めなさい!優花も…言い過ぎよ」 

「だってそうじゃない…八坂だって、自分でそんな経験があったから…」

「優花っち?」

 

 優花の追撃に怒りを募らせ手を出そうとする檜山を雫は直ぐさま抑え、言い過ぎている優花に注意すると優花も少し言いすぎたっと俯く中小声で傍いて何か呟き微かに何か言ったのを聞こえた宮崎奈々が首を傾げて訪ねたが気付いてないのか優花の返事はない。

 

「二つの言い分は分かったわ。檜山くん、この世界は日本とは違うわ。いつここが戦場になるか分からないの、弱かったら何も出来ずに淘汰されることだってあり得る。だから今回は優花の言い分が正しいわ」

 

 二つの言い分を纏め、そして考えた結果優花の言い分こそ正論であることを導き出し檜山にいうと檜山は納得できないのか奥歯をくいしばり、格上の雫の前にしてはこれ以上何も言えなかった。

これで一件落着…っと心の中でほっとする雫だが大声で呼び寄せられたのは雫だけではないということを失念していた。

 

「みんな不安なのはわかる。だけどもう大丈夫だ!俺達は元の世界に帰れる手掛かりを見つけたんだ」

 

 勇者(愚者)…降臨

その言葉につきた。天之河の自室の方からずかずかとお馴染みのハンサムフェイスでいざこざを起こしている檜山達と優花達の間に割って入ってくる。

後から他の龍太郎達もやってきたが中立派の全員心の中は一つに纏まっていた。

 

(何やってるの、バカ光輝!!!!)

 

 今にも消えそうな火にどこから持ってきた油を問答無用にぶちまけたが如く。これにより潜めた参戦派の檜山達は黙っているわけがない。

 

「そ、そうだぜ!俺達はなお前が必死に書物と睨めっこしてる間に帰れる手立てを見つけたんだ!」

「それって俺ら有能じゃね?ギャハハッ!!」

 

 再び反論の炎が燃え上がった檜山達、帰還の方法が見つかったことに反対派は呆然とするが一瞬だけ呆気に取られた優花が冷静に反論した。

 

「……その方法ってどんなの?」 

「異端の魔女は別の星から来たんだってよ!だったら世界を飛び越える方法だって知ってるっわけだ」

「……なるほどね…ねえそれって現実味があるの?」

「そ、それは……」

 

 ついこの前異端の魔女に惨敗した勇者パーティー……その帰還の方法はプレシアの協力を得られなければ到底実現できない方法であり。それを冷静に指摘された檜山は図星のために口を詰まらせる。

だがそんな時に代わりに話したのは天之河だ。

 

「心配するな、あの時は負けたが今度こそ強くなって勝つ!みんなと力を合わせれば必ず出来る!」

 

 迷いなどないハッキリとした天之河の一声に参戦派の生徒が頷いたがそれでも優花は納得することは出来なかった。

 

「そう……天之河…これだけは覚えておいて……どれだけ努力しても自分達では敵わない相手もいるかもしれないってことを」

 

そう言って、行こっと奈々達に言い訓練所へと向かっていく優花達。

そんな言葉を天之河はあまり間に受け止めず。俺達なら大丈夫!っとお馴染みの言葉で不安を掻き消していたのは言うまでもなかった。

 

 

 

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