落ちこぼれの魔導士は魔王と共に異世界で生きるようです 作:ウィングゼロ
一言、ハジメ、マジで躊躇いねえー
香織SIDE
後ろにいるベヒモスを正人くんに任せて、私達は階段へと急いでいる。
目の前は正人くんが指摘しているように乱戦そのものだ。光輝くんがいないときっと突破できない。そう思い正人くんは光輝くんの元にやってきたんだ。南雲くんきっとそう。これじゃあどっちが守ってるのかわからないな…
そう思いながら私は後ろを向いて正人くんを確認したときに足を止めてしまった。
正人くんがいるのはまだ良い…でも南雲くんもどうして残ってるの?
正人くんが張っているシールドはまだ破られていないため、遠くから見える限りだと頷いたりして何か話しているみたいで、正人くんが南雲くんを下がらせようとする素振りは見えない。
もしかして一緒に足止めをしようとしているのだろうか。
そう思うと私は何をしているのだろうか。昨晩の誓いを思い浮かべる。私は正人くんと南雲くんを守るといった。けど今私は正人くんと南雲くんに守られている。……こんなんじゃ駄目だよね。
「――天翔閃!」
後の方から光輝くんの声と大きな音が聞こえる。メルド団長達が到着したのだろう。多分、光輝くん達がいれば階段の方は大丈夫、だから少しぐらいわがまま言ってもいいよね?
そう思ったより前に私は正人くん達の方に走っていた。後ろから雫ちゃんの声が聞こえたけど、追いかけてくる様子はない。道中に阻むものも無かったために私は直ぐに正人くん達の元へ戻ってきた。
「正人くん!南雲くん!」
「白崎さん!?」
「私も足止め手伝うよ!足手まといにはならないから!」
「えっと…その…」
南雲くんが何故か言葉が詰まっている。そんな南雲くんを他所に正人くんは少し笑みを浮かべながら私に話しかけた。
「まあ、来てしまったのは仕方ない。香織手伝って貰うぞ…俺達で…ベヒモスを倒す」
「ふえ?」
足止めじゃなくて倒すの?
そんなことを思っていると正人くんがシールドが破れるっと叫び遂に守っていた魔法陣が砕け散った。
正人SIDE
防ぎきっていたシールドは遂に砕け散り。ベヒモスは攻撃を防いでいた俺に怒り心頭なのか雄叫びを上げてベヒモスの被る兜がマグマのように燃えたぎる。
それを叩きつけるように地面に落下しようとしているのを見て直ぐに次の手を打った。
「っ!ドラグルバインド!」
突き出した手の先から魔法陣が展開されそこから紺色の鎖が複数飛び出しベヒモスの前足と頭などに絡みついて動きを封じる。封じたが暴れ回り直ぐに1本が砕け散っている。恐らく展開するときの魔力消費を抑えすぎたのだ
やはりデバイスがないために調整がままならない。そんなことを思い浮かべながら。
俺は身体強化で上がった身体能力で跳躍、その間にベヒモスは俺のドラグルバインドの鎖を全て引きちぎられている。そして空中で前回転しながら兜に目掛けて踵落としを炸裂。だがマグマのように燃えたぎっている兜を蹴っているのでこっちにも被害が無いわけではない。履いているブーツが焦げ、踵の皮膚がじりじりと焦げていくのがわかる。
ずーんっと重い音が鳴り響く中ベヒモスの四股の足元は掛かった重さでひび割れている。
「うぐっ!南雲!」
「錬成!!!」
炎症で痛む足に耐えながら南雲に指示。南雲は打ち合わせていた通り、ベヒモスの右前足の前で錬成を発動し右前足の足元の岩を落とし穴に変える。
そうすると確りと支えていたベヒモスの体は右前にのめり込む。そして俺も攻撃を仕掛けるために熱している兜にもう片方の足も付けて跳躍、ベヒモスの真上を舞いながら弓を構え矢を引き照準を落とし穴で態勢を崩している方のベヒモスの後ろ足に合わせ、矢を放つ音には思えない轟音共に矢が放たれ狙い通りベヒモスの後ろ足を貫通して射貫いた。勿論この攻撃の種は弓と矢を出来うる限り魔力で強化したそれだけのこと。しかしこの攻撃には魔力消費以上に不味いことがある。それは弓が攻撃の反動に耐えきれるかどうか、1発撃っただけで弓からはみしみしっと軋む音が響いているから後数発同じ要領で撃てば弓がへし折れてしまう。
右側の前後ろ足に踏ん張る力を無くさせると態勢は完全に右が支えられなくなり体は右に傾いていく
「錬成!!!!!」
その転倒する予測地点には南雲が錬成で作り上げた石の尖った柱。角度も確りと計算に入れているためにベヒモスの横腹を石の尖った柱が突き刺さる。取りあえずダメージを与えられて俺は一旦距離を取ると直ぐに香織が俺の元にやってきた。
「正人くん!無茶しないで!天の息吹、満ち満ちて、聖浄と癒しをもたらさん――天恵」
香織は直ぐに詠唱を始め天恵を発動すると炎症で痛む足や消費している魔力までも回復していく。
「といっても純粋なアタッカーが俺しかいないから…多少は無茶…香織危ない!」
無茶は承知してくれと苦笑いで香織に訪ねる中横転し横腹を南雲の錬成で出来た石の尖った柱で悶えていると思ったがそんな痛みも俺達と言わんばかりに残っている左前足を振り上げて俺と香織目掛けて振り落としてくる。咄嗟に気付いた俺は香織を抱え回避し、油断禁物だったと反省しつつ、矢を2本取りだし1本目を弓で引く。
「目を狙う!」
視力を失えば暴れ回るだけで何も出来ないようになる。そう思いまず第一射でベヒモスの左目を潰す。めきめきっと嫌な音がする中、次は右目を潰そうと2本目を弓にセットし弦を引き放った瞬間弓はバキッという音と共に折れてしまう。
仕方ないと俺は折れた弓と邪魔な矢筒を捨てると右手を魔力を集中させ確実に倒すことが出来るまで魔力を貯め、術式を組み込む。
「八坂くん!もうもたない!」
南雲の悲痛な声が響くと突き刺さっていた岩の柱が砕け散り、残っている3本の足で態勢を立て直そうとしていたがそれより速く、右手の魔力が貯まりきった。
「これで終わりだ」
すかさずベヒモスの顔面に飛び上がり近づき右手でおいっきりベヒモスの顔面を殴ると貯まっていた魔力は直射型の射撃魔法と同じように顔面から直進して尻の方まで貫通。立て直そうとしていたベヒモスはまたゆっくりと倒れ込み今度は立ち上がることは出来なくなっていた。完全な勝利、俺達は経った3人でベヒモスを撃破したということだ。
「やったの僕たち…本当にベヒモスを」
「ああ、完全勝利だ」
未だに信じられない南雲はベヒモスの亡骸を見ながら俺に訪ねるとトドメを刺した俺は間違いないと答えると南雲も勝ったのだとそう実感する。
「やったね!正人くん!南雲くん!2人とも凄いよ!私なんて何も出来なかったのに」
「香織もお疲れ、いや、あの時回復してくれなかったらもう少し掛かってた気がする。ナイスサポートだ」
2人が死地で戦っているのを心配で涙目になっていた香織は本当に自分のことのように喜び、俺と南雲の賞賛を労い。俺もまた天恵で回復してくれたことをお礼を言う。
取りあえずはこれで危機は脱した。階段側ももう既に制圧が終わったようで、俺達がベヒモスを倒したことに唖然として動いていないようだ。
「それじゃあメルド団長達の元に行こう。」
内心、足止めだけといっておいてベヒモスを倒すとは何事だ!っと怒鳴られそうだなっと思いつつ、メルド団長の元へと一歩降り出そうとした。
「まさか、ベヒモスを倒してしまうとは…どうやら貴様達の実力を見誤っていたようだ」
その時だった、近くにいる香織とは違う第三者の女性の声、何処か聞き覚えのあるその声に俺も近くにいた南雲や香織も歩くことを止めて直ぐに声がした背後に体を向ける。そしてその人物を視界に捉えたとき俺の思考は完全に固まった。
ベヒモスの陰から現れたのは長い銀髪に赤い瞳の俺達より年上を感じさせる女性。美しいといえる美貌を持っていて、ローブなどで体型はいまいちわからないがきっとスタイルも良いのだろう。
だが、今の俺にはそんなことどうでも良かった。
「どういう…ことだよ…」
「八坂くん?」
聞き覚えのある声だと思った…だってこの人物は俺は知っているから
「どうしてこんな所に…いるんだよ…!」
「正人…くん?」
あの日、俺は…いや俺達はクリスマスの日あいつの消えるその瞬間を目撃したはずだ。
忘れるはずが無い…あの記憶が嘘なわけがない。
俺に力があれば変われたかもと自身の劣等感を大きく感じ努力しても何も変わらないと決めつけ無気力になった。起因でもある
いや、今はそんなこと考えるのはどうでも良いことだ。今目の前にいるのは間違いなくあの日失ったものなのだから
俺は一歩、また一歩と彼女に近づく。後の二人の声が何かを言っているようだがなにをいっているのかわからない。
「生きていてくれたんだな…!俺達がどれだけお前のことを…!俺達と一緒に行こう!お前が生きているって知ればみんな喜ぶ」
今の俺の顔は一体どんな風になっているのだろう。きっと涙目で顔も赤くなっているのだろう。
「一緒に帰ろう…!リィンフォー」
彼女の名前を呼ぼうとしたときガチャリという重い音と俺のお腹の辺りに当たる何かを感じる。
そして彼女は俺のことなど興味を示していないように口を開け…呟いた。
「撃ち貫け」
その言葉と共に俺の体を黒い閃光が…走った。
勇者パーティーから香織が離脱する時期
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原作通り
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ベヒモス戦、ハジメが奈落へ
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ベヒモス再戦後
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香織が目覚め、決意後