Muv-Luv*Vierge 護世界の少女達 血潮染む運命に導かれる 作:空社長
この世界なりのBETA大戦の様子と、BETA大戦までの流れを簡単にまとめたものになります。
詳細の細かい単語は省いたつもりです。
「私がいる限り、ここから先は通さないっ!」
軍服を着た薄緑髪の少女が叫ぶ。
だが、容姿は無事とは言えず、右腹部にある大きく抉れた傷口からはとめどなく血が流れ、足元に垂らし続けていた。
その痛みに耐えながら、身長に程近い武器を両手で握りしめる。
「みんなの為に生き抜くことはっ……もう出来ないっ……けど、撤退した人たちがその意思を継いでくれてるっ……」
「
少女は口の中に残った血を吐き出すと、武器を握りしめる手に力を込める。
「ヘリオスフィア!!」
少女がもう一度叫ぶと、BETAの動きは謎の力によって少しずつ緩慢になっていく。
それを見た少女は痛みに気を取られながらも、常人にはあり得ない高さにジャンプし、いつの間にか朧げな光に纏われた武器で全幅30m近いBETAの大型種、黒く頑強な二対の前腕を持つ
前肢はダイヤモンド以上の硬度を持ち、少女の武器でも貫けないため、上方から顔のように見える尾節に突き刺し、体を切り裂いた。
要撃級の体液を浴びる中で、振り向き際にBETAの中で最も数が多い小型種、強靭な顎を持ち全体が赤黒い
打撃形態と砲撃形態を器用に切り替えつつ、近づくBETAを捌いていく。
だが、腹部の痛みで気が散り、警戒が疎かになっていた。
突然薙ぎ払われる腕節、それを避けることができずにその重い一撃をまともに喰らい、少女は数十メートルも吹っ飛ばされる。
一瞬意識が途絶えるほどの一撃から目覚め、横たわったままの視界で何かを喋ろうとした瞬間、口から大量の血を吐き出した。
骨が数本、いやそれ以上の数十本以上の骨が無惨に折られ、様々な内臓を突き刺していた。
手元に武器があればなんとかなったのかも知れないが、それも数メートル先にあり、激しい痛みも加わり、手足ともに動かせなかった。
「む……り……かな」
肺すらほとんど機能してない状態でなんとか声を絞り出す。
そんな少女に戦車級が近づいていき、手足や他の部位を容赦なく掴んでいく。
必死に善戦していた少女が最後に思った「死にたくない」という恐怖の感情が心を埋め尽くす。
「……マナ……ばく…しゅく」
突然そんな言葉が出た自分に驚いたものの、少女はその言葉に自身の思いを強く込めていく。
食い千切られようとしていた少女の体に眩いばかりの光が現れ、少女の体を覆う。
そして、突然の爆発は周囲のBETAを飲み込み、爆炎でさらにその周りのBETAを吹き飛ばす。
_
ロシア連邦軍政区域旧ベラルーシ共和国ミンスク
近未来の地球。
わずかな緑を残し、荒れた平原と化した大地。
その大地には大量の戦車、二足の機械兵器、軽装な軍服を着た多くの少女の姿があった。
そして、その遠く彼方には異形の化け物の大集団と異形のモニュメントが見えた。
「こ、怖い……みんなを守りたいとは言った……だけどっ、こんな数、生きて帰れるのかな……」
「大丈夫、みんなを信じようよ」
恐怖で怯える少女を、その隣にいた少女が励ます。
そんな姿が各所で見られる中、少女達は身長と同じくらいの武器を軽々と持ち、命令を待った。
「作戦を開始せよ!!」
合同司令部でポーランド陸軍中将の階級章を付けた男が声を上げる。
「各部隊に通達、全無人観測機発進せよ!」
机に座ったオペレーターが机上にある端末を操作しながら、マイクで指示を出す。
各地で遠隔操作された数多くの無人観測機が射出され、前方へと加速して敵情報の観測を開始する。
だが、ある1機を一本の光の筋が貫く。
「A21観測機撃墜!各ポイントに
オペレーターが声を上げ、男は顔をしかめる。
「やはりいるか……いや当然か」
「いかがしますか?」
彼にチェコ軍士官が声をかける。
「いや、変更は無い。艦隊に通達、支援攻撃を開始せよと」
バルト海 作戦連合艦隊旗艦「アレクサンドル・べリンスキー」
「受諾した、予定通り支援攻撃を開始する。各艦に伝達!」
アメリカ海軍第6艦隊、欧州合同軍事機構海軍バルト方面隊、ロシア連邦海軍北方・バルト海艦隊で構成される作戦連合艦隊がバルト海に集結していた。
旗艦はロシア海軍の大型艦であり北方艦隊構成艦で、ペテルブルグ運河を介して北極海からバルト海へと渡った1176型重ミサイル巡洋艦「アレクサンドル・べリンスキー」であり、その艦は今まさに甲板上のVLS及び発射機より大量のミサイルを発射し、他の艦艇もそれに続く。
彼女らが発射してるのは、ロシアが開発し国際標準規格となった戦域対地誘導弾『べネスト』であり、ある程度精密誘導能力をオミットし、より低価格での量産に実現した対BETA兵器であった。
作戦域にべネストが降り注ぎ、一部が撃墜されるものの、その多くが着弾して葬り去る。
だが、それでも余りある数のBETAがそこにはいた。
「第二射用意。いつまでかかるか……発射」
再び大量のミサイルが作戦連合艦隊より発射される。
ミンスク・光線級出現予想ポイント
「邪魔だ邪魔だ、どけぇ!」
「ラフェスタ4!急ぎ過ぎるな!」
そこには欧州合同軍のEF-30"ユニコーン"戦術歩行戦闘機12機が低空を疾走しており、戦車級を120㎜砲と36㎜砲の連打で蹂躙していた。
しかし、霧の中で突然現れる全高66mの最大級BETAである
これはロシア軍のSu-64"アスィール"で構成される戦術機部隊も同様であり、中規模集団の光線級に対し比較的低空で飛ぶものの、撃墜が相次いでいた。
これにアメリカ海軍のF-44N"ヴァルティー"を含む戦術機航空団が援護していくが、こちらは低空を飛び過ぎて戦車級に取りつかれる機体もおり、さらには重
『ぐぁぁぁぁ!!……』
「ビーク04!!くそっ、やはり背部に付けた火砲が重すぎる!これが標準装備とかふざけんな!」
ミンスク正面集団連合機甲部隊
戦車の火砲が轟き、発砲音が響き渡る。
ポーランド陸軍のK2戦車は接近してきた戦車級を急旋回させて磨り潰し、120㎜砲で要撃級を粉砕し、ロシア連邦陸軍のT-14"アルマータ"は戦車級へ向けて砲塔上部より2発の対戦車ミサイルを放ち、これを死骸に変えると共に、自身も120㎜砲を放つ。
2S19ムスタ-S自走榴弾砲を含んだ支援砲撃部隊も機甲部隊の前進に合わせて砲撃を行い、戦線を支援する。
ある程度優勢に見える反面、戦車が要撃級の前腕が振り下ろされることによって叩き潰され、要塞級の触手で十数両が薙ぎ払われ、光線級の直接照射で穴を穿たれる等、激しい損害を強いられる。
さらに戦線の変化に追いつけず、後方支援部隊が文字通り
「おい!ミサイルの着弾率が下がっているぞ!?」
「まさか、無人観測機が全部やられたんじゃ……」
「……その通りだよっ、……くそったれがぁ!!」
無人観測機が全て撃墜されたことは光線級の標的がミサイル等の支援砲撃へと向けられることを意味しており、機甲部隊は強引に進んでいくしかなかった。
既に虎の子としての戦術機部隊が光線級の掃討を行っているが、運用戦術の未熟さは損耗率の増加を意味していた。
「幾つかの光線級集団をつぶしていますが、損耗率は高いままです。通常の機甲戦力よりは成功率は高いとしてもこれでは……」
「仕方あるまい、我々は敵の多くを知らないし、戦術もまだまだ確立してないのが多い、むしろ善戦してる方だ」
そして、進軍していた少女達もまた苦戦を強いられていた。
砲撃形態へと変えた武器を構え、エネルギー弾を連射して戦車級や要撃級を掃討していくが、数の多さに翻弄され続けていた。
「敵BETA、別の来るよ!!」
「嘘っ!?弾かれる!?」
前面に頑強な装甲殻を持ち、最高時速170kmに到達する前進速度を誇る
この時期、BETAの各種に関しての情報は完全とは言えず、情報共有もしっかりとはできておらず、知らない者もいた。
時速100km近いスピードで二人の少女が跳ね飛ばされて即死するが、別の二人の少女を機転を利かせて突撃級の側面へと跳躍して回り込む。
空中からエネルギー弾を連射して相当数叩きこみ、突撃級を撃破する。
だが、空中から自由落下に入った一人の少女に戦車級が跳躍し、その少女の体を掴む。
「……え?」
反応する暇も無くわずかな言葉を遺し、空中での制御が効かないまま戦車級の自重で地面へと叩きつけられた挙句、首を引きちぎられる。
衝撃の光景を目にしたが、一人の少女によってその戦車級は体液を吐き出して死滅する。
「各部隊、損害報告を」
『こちら、第4機甲大隊。損耗率50%を超えました』
『第16自走砲連隊、損耗はありませんが、弾薬が残りわずかで心配です』
『第10プログレス中……隊、「アルテミス」……え、エーミが、エーミがぁぁっ……!』
少女の悲壮な声が司令部に重い空気をもたらした。
「……くそっ」
「どうしますか?」
総司令官であるポーランド陸軍中将に、ドイツ陸軍少将が声をかける。
彼は先ほどの彼女の部隊らの統括指揮官であり、その目は聞かずとも意を決している目であった。
「決まっている、死んだ者の犠牲を無駄にしないため、我々は攻略作戦を継続する!!」
多くの被害、犠牲を出しながらも前進に成功し、目の前に見える攻略目標であるミンスクハイヴが目視で視認できる位置に到達する。
この時、世界、いや人類は
この世界は世界大戦の原因を幾つも育んでいる。
事実、第二次大戦が終わった後も多くの国家間戦争が勃発し、それらはほとんど成果を得ないまま終結することがたびたびあった。
だが、それでも史実と同じような道を歩んでいる。
西暦2021年、世界が大きく変わる瞬間を迎える。
日本では平和の祭典である東京オリンピックが行われて1年が経過しようしていて、その盛況さは既に失われたもののGDP成長率2%台を堅持していた。
国会議員の汚職が数ヶ月経つ度に報道に出るが国家を揺るがすほどでもなく、先進国でテロ事件が発生している中、唯一テロ行為を総て未然に防ぎ、外国人労働者の移民政策は廃案にされ、失業対策と国家安全保障、労働問題に全力を注いでいた。
世界に目を向けると超大国アメリカ合衆国とロシア連邦の二大国の対立が冷戦として顕在化し、その最中の中東ではイスラム武装組織は一掃されたが、今まで表向きは協力していた国々の対立が表面化して新たな中東戦争の火種が燻り、かつてヨーロッパの火薬庫と呼ばれたバルカン半島はイタリアの弱腰政権に乗じ、バルカン諸国同士の民族対立が再燃していた。
それでも人々は変わらない生活を過ごす。
人々が変わりない日常を謳歌していたある日の事。
_西暦2021年1月20日_
この日、雲一つない青空が一瞬薄鈍色に輝き、
日本国東京都小笠原村青蘭島
イギリス連合王国スコットランド国グラスゴー
シンガポール共和国べドク地区
ロシア連邦北西連邦管区カレリア共和国ペトロザボーツク
この4つの都市に、祈りと神々が守護する赤の世界【テラ・ルビリ・アウロラ】、夜と魔法が支配する黒の世界【ダークネス・エンブレイス】、科学と電脳が管理する白の世界【システム=ホワイト=エグマ】、武器と軍隊が統治する緑の世界【グリューネシルト】に繋がる
時を同じくして世界中の10代の少女達の一部に【エクシード】と呼ばれる特殊能力を持つ者が現れる。
【エクシード】は元々ある力を底上げすることができる力であり、その力に含まれる【魔法】は現実に対し存在しない新たな力を行使することができるものであり、その【魔法】を使うのに必要な【マナ】というエネルギーが【エクシード】を持つ少女の体内で宿された。
これらの現象は後に【
世界接続の直後、国際連合安全保障理事会は総会を緊急招集する。
空が一瞬薄鈍色に輝いた事、この未知の現象に人々は騒然とし、不安を覚えた国連安保理は事態把握の為、各国に協力を要請した。
そして、状況はすぐに判明する
4つの都市に
彼等はこちらの問い掛けに、共通して
この結果に国連安保理は緊急決議を採択、その代表者の了承を得た後、ニューヨークの国連本部に招待するように各国の国連大使から各国首脳へ伝達する。
その後、代表者が国連本部へと到着した後、国連本部図書館に案内され、一部のスペースで警務隊による厳重な警備の元、国連事務総長との会談が持たれた。
そこで分かったのは、4つの都市にそれぞれの世界と繋がる
その後、国連首脳部は事務総長の決断により、急遽4つの世界と友好条約を締結する事となり、それぞれの世界から全権を任せられている代表者らとの短い話し合いを経て、国連加盟国193カ国を代表した国際連合と4つの世界との間に友好条約を締結。
国連総会でも4つの世界との貿易に関して各国大使らが議論し、
簡易的な条約調印式が終わった後、国連事務総長は、代表者の1人に尋ねられる。
「この世界、いえ星の名は地球でしたか、私どもの世界も名前はついています。しかし、あえて申し上げたい。この世界を色で呼ぶならば、何がありますでしょうか?」
思わぬ質問に事務総長は少し驚くが、十数秒考え、答えを出す。
「色で呼ぶならば、ですか。『地球は青かった』*1、このかつての宇宙飛行士の言葉から引用するなら、【蒼の世界】と呼ぶのがいいと個人的に思います」
その答えに代表者らから感嘆の声が上がる。
「とてもいいと思います、【蒼の世界 地球】。我々はこの呼び名を使おうと思います」
地球と4つの世界との
初めは政府系の人々に限定されたものの、民間での交流も少しずつ行われるようになった。
特に注目が集まったのは白の世界【システム=ホワイト=エグマ】であり、世界各国はその優れた技術を吸収したいと思い、次々と技術者を派遣。その技術を学ばせ、輸入も開始された。
その反面、赤の世界【テラ・ルビリ・アウロラ】、黒の世界【ダークネス・エンブレイス】、緑の世界【グリューネシルト】に関わる国は少なかった。
その理由は、『天使』や『悪魔』という神話や空想でしか登場しない人間とは違う種族に対する理解が難しく、宗教的要因で忌避する国家も少なからずあった。
また、【エクシード】の力にも懐疑的であり、それこそ神話や空想に出てくるような力を理解する事こそ困難であった。
幾つかの国で、エクシードに対する試験も行ったが、「多少の力は持つが、戦略的に脅威のあるものでは無い」とされた。
1ヶ月半も経てば、
だが、
西暦2021年5月28日、ロシア連邦北カフカース連邦管区チェチェン共和国にて「チェチェン解放戦線」と僭称する武装組織が蜂起、独立宣言を行った。
これが後に北カフカース紛争と呼称される出来事の発端であった。
当初、誰もがロシア連邦はチェチェン解放戦線を簡単に叩き潰せると思い込んでいた。
だが、ロシア連邦軍の攻撃作戦は失敗に終わり、世界中が驚愕した。
その結果、多くの政府・軍関係者はすでに判明しているチェチェン解放戦線の軍備以外に、強力な兵器を隠し持っているのではないかという疑いをかけた。
だが、その疑惑は全くの見当違いであった。
それが発覚したのは、秘密活動中の特殊部隊がある二人の少女を保護したことから始まる。
その後行った事情聴取で少女の口から語られたことや紛争後の調査で全てが明らかとなった。
チェチェン解放戦線はイスラーム武装勢力含めた世界各地の反社会的勢力と通じ、エクシードの持つ少女を拉致させたばかりか、性奴隷のような尊厳も何もない肉体的奉仕を強制させ、さらに従わない場合は命を奪うと脅迫し、精神も肉体も消耗していた少女達は逆らえるわけもなく、ロシア連邦軍との
そう、ロシア連邦軍はチェチェンの兵器ではなく、無理やり従わさせていたエクシードを持つ少女達から放たれた魔法によって敗北したのだ。
そして、今も数多くの少女が囚われている。
この事実に、作戦失敗後に報道されたチェチェン解放戦線のトップがロシアの元軍人であることを含めて、ロシア政府は憤慨する。
‶チェチェン‶の名を付けているのにも関わらず、チェチェン人の為になることは一切していないとし、チェチェン解放戦線という名称を認めず、女性名詞で‶暴力‶を意味する単語の頭文字を当てたCLFと呼称した。
ロシア政府はさらにこの事実を広め、ロシアを正義の味方と印象付ける為に、自国の全メディアに放送させるとともに、
その結果、各国政府はともかく人々には同情的な意見が広まり、特にアメリカは多民族国家故にこうした人権的問題に感情的になりやすかったために、多くの国民がデモに集い、『救え!』と一心に呼びかけた。
世論を無視できないアメリカ合衆国政府はロシア政府との交渉の結果、ロシアに対する協力を決断した。
ロシア連邦軍はアメリカの協力を受ける前から、少女達の救出とCLFに殲滅を目的とした作戦を迅速かつ緻密に計画し、陽動・偵察・強襲と三段階に分けた作戦を実行に移した。
この作戦を実施する者達に前回の様な慢心はなく、徹底的に攻撃を行う。
また、前回の作戦失敗後にエクシードを持つ少女達が有用と分かる前に行われた再調査によって、ロシア連邦軍は彼女たちの承諾を得てその能力を借りる形で実戦に投入し、その効果は抜群だった。
そして、強襲の段階となって、ロシア連邦軍は全力攻撃を行った。
様々な軍事施設に巡航ミサイルをアメリカ軍とともに叩きこむとともに、大規模な航空部隊を送り込み、持久戦による消耗を狙う。
この段階でアメリカ軍も実戦協力を行い、マジックガールと呼称するエクシードを持つ少女達を含む戦闘飛行隊を投入し、ロシア連邦航空宇宙軍のエース部隊とともにCLFの熟練且つ狂気の戦闘機乗りを撃墜するなどの戦果を上げる。
ロシア連邦陸軍はエクシード・リグラと呼称するエクシードを持つ少女達による部隊も動員して、当然救出を前提とした作戦を実行し、カフカース地方の各所で激戦を繰り広げる。 その激戦の中で多くの死傷者が出てしまったものの、CLFの指導者の拘束に成功し、ここにCLFという反人道的なテロ組織は消滅し、北カフカース紛争は終結する。
だが、この事件は良くも悪くも世界中に衝撃を与えた。
一人の少女が戦略的に大きな力を持つわけではなかったが、それでも集団であればエクシードの力がロシア連邦軍をも打ち破る程であることを思い知らされた。
その結果、エクシードを持つ少女の事を指す【プログレス】について定めなければいけないと判断され、国連安全保障理事会が緊急招集された。
日本・シンガポールという別世界への接続地域を持つ特別招集国を含めた全参加国による話し合いが行われ、国家によって特色ある様々な案が出され、その間にひと悶着起きつつも議題は珍しくまとまっていき、各家庭におけるプログレスの扱いの改善などを要請するプログレス条項が採択された他、議題を引き継がれた国連総会では、親のいないプログレス等の扱いを定め、五世界共同の国際エクシード研究機構及び国際プログレス専門複合機関の設立及び孤児院含むこれら組織の複合施設の建設に関する話題などが話し合われ、参加国が多いためこちらは投票制にした結果、綺麗にまとまることができていた。
なお、このような政府首脳部だけで取り決めたものに少なからず反対する者はおり、プログレスに関連する事件の発生件数が少なくなかったが、政府の介入によりすべてが一応の解決を見せている。
その後、世界は技術力の向上と、プログレスの育成に力を入れる。世界各国で徐々にプログレス専門部隊も設立され、4世界との接続無くしては生み出されなかった、従来兵器を上回る新機軸の兵器も配備されるようになった。
世界の大局を変える出来事が無いまま、平和な日常で約2年が経過した。
その時、世界を大混乱に陥らせる大事件が起きた。
_西暦2023年3月16日_
その日、世界は分かたれた。
世界各地の陸や海で、深海から成層圏まで跨る壁と呼ぶにふさわしい
後に【世界分断】 と呼ばれたこの事件は世界に混乱をもたらした。
交通網、交易路の遮断によって貿易は成り立たなくなり、国力が徐々に落ち込んでいく。
グローバル経済によって成り立っていた世界は崩れ、この事件は世界各国に大きな経済的ダメージを与え、経済大国ですら動揺を隠せず、地域大国は混乱が混乱を呼ぶ。
各国は経済の縮小を余儀なくされ、遮断されてない国との貿易等でなんとか立て直そうとする世界各国だったが、その事件はまだ終わっていなかった。
壁から出現する謎の化け物、
世界各国はそれぞれが持つ軍事力で防衛戦を展開する。しかしウロボロスは、攻撃を受けても修復を繰り返す大型の個体を筆頭に、物量で上回る小型の個体までもあり、現代兵器の攻撃はただの遅滞戦闘にしかならず、世界各国の防衛線を無理矢理突破する。
人類の抵抗を嘲笑うかのように、ウロボロスは侵攻した都市を蹂躙、無辜の民間人を殺戮する。
これに対しアメリカとロシアを筆頭とした核保有国の一部は、苦悩しながらも自国領内に侵攻するウロボロスに対し核兵器による集中攻撃を実行に移す。
だが、小型の個体は消滅し尽くしても、最も大型の個体は削り切れずその体を修復され、反撃を許してしまい、多くの人々が絶望する。
絶望的な戦況であったが、人類は反抗を開始する。
その先駆けは日本のプログレス達であった。
貴重な戦力を失いたくないが為に彼女達を前線に投入する事を渋っていたのは、太平洋から迫るウロボロスに自衛隊による徹底抗戦の効果も見えず、九十九里浜に上陸を許した日本も同様だった。
だが、プログレスと名はついてるも精神的には幼いはずの彼女たちからの要請、そして日本が終わることを嫌った防衛大臣本人によってプログレス部隊は前線に展開された。
遭遇したのはアメリカやロシアのような大型のウロボロスではなかったが、小型のウロボロスに対して彼女たちは楽にダメージを与えることができ、
『プログレスならばウロボロスに損害を与えられる』
その文章だけが奮戦する世界各国に届けられ、世界各国は反撃を開始し、多くの犠牲の元にウロボロスを葬り去っていく。
超大型のウロボロスの撃破によって全ウロボロスが消滅したことで戦いは終結し、平和に向かう
【世界分断】とウロボロスの襲来、この短期間の出来事は世界各国に大きな被害を与えていた。
経済的不況・財政難・デフォルト、それ以外にも様々な物が要因となり、混乱・内紛・分裂・分離独立・政府崩壊が世界各国の中で発生し、世界協調は完全に失われ地域ごとの経済協定や軍事同盟が発足し、国連の意味は失われ形骸化してしまう。
それでも多くの国は四世界との共存共栄を掲げていた。
そして、約2年が経過した時、地球人類は火星にて地球以外の生命体を発見する。
だが、この時多くの人々が沸いたこの出来事が後に惨劇となるとは予想していなかった。
_西暦2026年1月25日_
地球外経済連携機構が1ヶ月前に観測した謎の地中振動波の調査のために第23武装調査隊を月面へと送り込み、火星生命と同様の生命体と
そのサクロボスコクレーターでのファーストコンタクトは交渉の余地なしに戦闘となり、惨劇と成り果てた。
後にこれが【サクロボスコ事件】と呼ばれる、人類とBETAの初めての接触である。
そのサクロボスコ事件後、地球外経済連携機構は接触した火星生命を
世界各国に月面への軍派遣を要請し、世界分断の影響で形骸化した国連の名の元に世界各国が月面派遣軍を編成し月面へ送り込んだ。
だが、低重力環境用の装備を整えたとしても、月面環境下に不慣れな人類はBETAの圧倒的な物量に押しつぶされていった。
そして。
_西暦2028年4月19日_
BETAの落着ユニットが地球に落着。
この時より、人類かBETAか
種の存亡をかけた大戦争
BETA大戦が幕を開けた。
次回以降はチェチェン編となります。