Muv-Luv*Vierge 護世界の少女達 血潮染む運命に導かれる 作:空社長
やっとアンジュ・ヴィエルジュに関連する話が出せました。
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イギリスイースト・オブ・イングランド地方ノーフォーク州
マーハム空軍基地
沿岸から最短で24kmの位置にある空軍基地の上空。
真っ青な空を3機の機体が全力で駆けていた。
その内、最後尾の1機はイギリス空軍所属のF-35Aステルス戦闘機であるが、その他2機は見慣れない機体であった。
アメリカ合衆国ノースロップ社が試作した第5世代ステルス戦闘機YF-23にも似ていて、
V字型の尾翼とデルタ翼を持つ機体だった。
2つあるエンジンノズルより勢いよく赤い炎を噴射しつつ、何重もの円が描かれた魔法陣のような物を展開すると、2機の機体はマッハ3まで達する加速を見せて、F-35との距離を勢い良く離す。
「くっそ、やはり追いつけない!これが
そうF-35Aのパイロットがぼやく中、2機は推力偏向機構によってエンジンノズルを傾けて、互いに円を作りつつ、加速する。
さらに可動式ストレーキによって何重もの円を作り終わった後に高い旋回力をもって互いに左と右へと急旋回を行い、雲の白い糸を引きながら飛行していく。
2機の機体にはそれぞれ英国王立空軍と日本国航空自衛隊のエンブレムが描かれていた。
このパフォーマンスを見ていたNATO軍に所属する諸国の空軍士官が唖然とする中、王立空軍の制服を着た男と航空自衛隊の制服を着た男が自慢げな表情を浮かべる。
やがて、英国空軍所属のF-35Aが滑走路に降り立ち、パイロットが降りてくると、二人はパイロットに近づく。
「どうでしたか?」
「比べ物にならないな、このF-35とは。加速性能が違い過ぎる上に、あの格闘戦性能はどうかしてるだろう。暫くはF-35の運用が続きそうだが、いずれはな。最強な戦闘機となるかもな」
「ありがとうございます。その言葉で技術者が報われるでしょう」
そんな会話をしていると、そのような評価を下された2機も滑走路に着陸する。
「やはり……カッコイイですな、
「同感です」
「『テンペスト』と『心神』……
「感謝しかありませんね。
「世界接続が無かったらF-35の劣化版の性能に留まっていた可能性も無きにしも非ずで、幸運だったのは確かです。テンペストの完成も本来なら10年後の予定でした」
王立空軍の男は一拍言葉を置く。
「四世界には驚かせられるばかりですね……我々地球人は」
「全くです」
2人は笑い合う。それは共同開発した機体が世界最高峰である事への自惚れであった。
「そろそろ発表がある頃でしょうね」
「ええ」
_6月30日午前6時20分_
イギリス首都ロンドン
ウェストミンスター地区 イギリス国防省
国防省のとある一室、そこではマクドネル・R・ブレイス首相、ルパート・K・スポール国防大臣、そして日本から訪問に来ていた
スポールと小原の二人は先ほどの互いに握手をする場面が会見場にて映されていて、一時的に時の人となっていた。
「ミスターオハラ、今更ながら我が国と共同開発をして頂いたこと、感謝する」
ブレイスが小原の右手をがっしりと両手で掴み、礼の言葉を言った。
「それはこちらも同じですよ、総理もブレイス首相には感謝申し上げる、と言っておられました」
ブレイスが手を離すと、咄嗟にスポールが右手で握手を求め、
「オハラ、貴国の装甲技術、そして両国の提供された魔法技術によって我々は
小原はそれに応え握手を返す。
「その辺は大変苦労しました。内閣も防衛省の予算詳細を明かさないなどの努力をしましたし、防衛大綱の公開は不祥事のせいにして公開を遅らせました」
「それは大変だったな」
と、ブレイスは小原に労いの言葉をかける。
「ええ。今やっと肩の荷が降りた気分です。まあ帰国したら揉まれることになるんでしょうが、この辺は織り込み済みです」
「流石だな。と言いたいところだが、我々も次の議会で揉まれることになるんだろう」
「疲れます……」
スポールが乾いた笑いを見せる。
「まあこの機体開発を機に四世界の技術を混在させた兵器がさらに出てくるのは間違いないでしょう、まあこれは私の知人の意見ですが」
「私もそうだろうなとは思う」
ブレイス首相は短く返す。
「ところでロシアに超音速技術関連を輸出されると聞きましたが……?」
「ええ、ですがその分の見返りは頂く予定です。あの男ですから約束を反故にする事は無いと思われます」
「なるほど……まあ我が国が口を挟むことではないですね」
スポールの説明に納得した小原は暫く雑談をした後、イギリス国防省を出る。
_同時刻_
アメリカ合衆国ワシントンD.C.
ホワイトハウス
「なんだと……!」
椅子に座っていたギレットが驚きの表情を浮かべる。
驚かせる内容の報告を行ったアッシャーは気まずそうな表情をする。
そのようなアッシャーの表情を見たギレットは咳払いし、隣にいるリッジウェイに視線を向ける。
「リッジウェイ長官も……同様の報告か?」
「はい。日本とイギリスが新型戦闘機の共同開発に成功したという情報が入ってきており、激しい勢いで情報公開が進んでおります。
諜報機関の怠慢ではありません。我々が気づかないほど、各国に悟らせないように徹底的な防諜をしていたと考えられます」
「新型戦闘機についての情報はあるのか?」
「現在、国防総省では情報を収集中ですが、確実なことは現在我々が有しているF-22やF-35よりも高い能力を獲得しているということです」
「予想外だな。以前からイギリスと日本による共同開発の話は浮かんでは消えていたが、まさか実現するとは」
ギレットは不満げに唸る。
「どうしますか?対抗策を出しますか?」
「いや……既定路線のままでいい。幾ら性能が優れてるとしても、その他の要素がライセンス契約を阻む可能性もあるだろう」
ギレットは却下する。
だが、指摘したその要素でさえF-35を上回っていたことを後に知ることとなる。
「ではそう指示を出しておきます、少し反応が過剰となっている者もいるため諫めなければ。それと、少し前にお伝えした通り、兵装試験が行われます」
アッシャーがそう伝え、デミリー首席大統領補佐官が中継画面に切り替える為のチャンネルを手に取る。
「分かった。しかし……白の世界の奴らはいい顔をしなかったな」
「当然でしょう、この地球は彼らの世界よりも血に濡れた歴史を持つのです、強力な武器を手に入れたらまた殺し合いを始めるのではないかと危惧してるのではないでしょうか?」
「だろうな、では切り替えてくれ」
ギレットが指示を出すと、画面は観測ヘリからの映像に切り替わった。
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太平洋上
ハワイ諸島より南1000㎞の海上
そこにはジェラルド・R・フォード級航空母艦一番艦「ジェラルド・R・フォード」と二番艦「ジョン・F・ケネディ」を中心とする大艦隊が展開していた。
太平洋には台湾沖に展開する空母1隻を含めた3隻の空母が稼働しており、今この海域にはその3分の2の戦力が集結した事になる。
そして、この大艦隊には試験航海中である「モンタナ」も所属しており、太平洋艦隊旗艦「ブルーリッジ」にいる将官らがそれを眺めていた。
「遂にこのモンタナが火を吹くんだな」
そう話すのは太平洋第7艦隊司令官レオナルド・D・ブローナー海軍中将である。
「荷電粒子砲、発電機より電力供給完了!発射準備完了!」
そのオペレーターの報告を聞き、ブローナーは「モンタナ」とは反対方向に視線を向ける。
そこには武骨な印象を持たせない、上部構造物が1つしかないスラッとした形状が特徴な艦がいた。
ズムウォルト級駆逐艦。
役立たずの烙印を押された失敗作であったが、世界接続がその運命を大きく変える。
その船体前甲板に本来搭載されているはずの155㎜
それは既存砲とは異なる射撃システムを持つ、荷電粒子砲であった。
「司令!発射命令を」
「……発射!!」
ブローナーは発射命令を下す。
荷電粒子砲の砲口に火花が迸り青い光が充填され、さらにその光が球状の物を生み出した瞬間、前方に向けて青い奔流の束が放出された。
それはかなり遠距離に配置された標的艦に向けて寸分狂わず命中し、標的艦を
(威力も強力だが、狙ったところに当たるというのも強いな。いや、強すぎるのか……威力もこれ以上高くする必要などあるのだろうか……)
ブローナーはその威力に対してわずかに畏怖の目を向ける。
その後、「モンタナ」の兵装試験も行われ、40.6㎝
結果的に、アメリカ合衆国海軍の大演習は成功に終わり、アメリカ海軍は精強である事を世界に示した。
しかし、その下を我が物顔で航行している者がいた。
葉巻型の船体に白く"さつま"と描かれている潜水艦が動く。
日本国海上自衛隊第2潜水隊所属のさつま型潜水艦「さつま」であった。
「さて、彼らはさつまに気が付いているかな。荷電粒子砲の分析はどうだ?」
「量子演算の調子は良好です、あともう少し……5、4、3、2、1……完了しました!」
「よし、では離脱するぞ」
彼は
その彼に対して副長が疑問を投げかける。
「命令なのは分かっておりますが、同盟国としてやっていいのでしょうか?本来ならすべきでは無いと思いますが」
「同感だな……」
「なら_」
部下の言葉を遮り、「だが」と前置きした後、話し始める。
「
「……納得がいきませんが、義理や人情で動くものではありませんでしたね」
「そうだな……まあ、通常航行時の静粛性が従来の海自潜水艦の静止時の静粛性さえ大幅に上回る本艦がバレることは無いさ」
日本が作り上げた海龍は静けさの中でゆっくりと母国への帰路を進む。
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ロシア連邦北西連邦管区ムルマンスク州セヴェロモルスク
北部軍管区海軍北方艦隊基地
ロシアの閉鎖都市、艦隊主力が駐留するセヴェロモルスクでは就役式が行われようとしていた。
基地に停泊する11435型重航空巡洋艦「アドミラル・クズネツォフ」の傍には300m近い艦艇が接岸していた。
最新鋭艦である32型艦隊戦列艦1番艦「イヴァン・ヴェリーキイ」であった。
戦後ロシア初の戦艦を傍目に就役式は初代艦長、北方艦隊司令官らの演説が進み、最後にニコルシチャフ大統領の演説の番が訪れる。
ニコルシチャフは事前に用意したメモに従い、口調を変えつつ読み上げていく。
メモを読まずに自分の思いを伝えるのもいいが、それは絶対に言い間違えてはいけない、調子を外してはいけないというプレッシャーが伸し掛かる。また、不必要なことは言ってはいけない。
その為、ニコルシチャフは自分の思いを綴ったメモに従って読むことを鉄則にしていた。
演説が終わると、ロシア海軍に伝わる伝統曲が流れ始め、基地内に並んだ将兵たちが次々に乗艦していく。
その間、ニコルシチャフは直立不動のまま敬礼をするという体勢を維持し続ける。
最後に艦長がニコルシチャフの眼前を訪れ、彼に敬礼し、乗艦する。
「
艦長のマイク越しの声が響き渡ると共に、タグボートに連れられて「イヴァン・ヴェリーキイ」は岸を離れる。
港にいる各艦船からも敬礼を受けつつ、港から離れていく。
「なんとか就役式は終わりましたね」
「戦艦の、だから私が出向くのは当然だ」
就役式の後、ニコルシチャフはロスチヤと会話を交わしていた。
「1番艦は就役しましたが、2番艦以降の3隻も就役予定です。その他、駆逐艦やフリゲートを含んだ多くの艦艇を就役予定です」
「……私はソ連のような巨大艦隊を目指す気はない。せめて現代戦に耐えうる艦隊をな」
「分かっております。あくまでこれは理想に過ぎませんよ、現実的な案を常に求め続けていくつもりです」
「頼んだぞ」
会話は短く終わり、ロスチヤは立ち去っていく。
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中華人民共和国北京市
「なんとか白世界の技術を導入しここまで辿り着けました。『七六空中軍隊計画』の完成へ向けた第一歩です」
「ああ、我々の一部から生み出されたアイデアだったが、実現できるとは思いもしなかった」
会社のラウンジにてCSIC重役と軍人の二人は外に目を向けていた。
視線の先にあるのは全長65mのミサイル艇程度の艦艇だが、それは海面より高い位置に
「03型空中戦艇、まずは1隻です」
そこに拍手をしながら入ってくる人物がいた。
スーツを着ていたが、肩には中華人民共和国国防部の人間を表すマークが描かれていた。
「お疲れ様です、素晴らしい出来ですよ。ですが、ミサイル艇程度では防御面に不安が残る。今後は駆逐艦や巡洋艦、理想は空中空母等を作れたら完璧でしょう」
「……ええ、もちろん。空中空母は理想に過ぎませんが、駆逐艦や巡洋艦クラスは既に組み立てに入っております。これがその設計です」
CSIC重役は軍人に目配りした上で、設計図を広げ簡単な説明をする。
「ほう、素晴らしいです。では、これからも頑張ってください……ん、なんですか?」
国防部の男は満足気に立ち去ろうとするが、軍人が「まだ話が続いています」と呼び止める。
「ただし、反重力というのは当然我々にとっては未知の技術です。それを提供しているのはシンガポールと繋がっている白の世界。しかし、現在輸出を渋る話が出ているようです」
「ふむ……分かりました。上と相談してみましょう」
国防部の男は考えるそぶりを見せ、テンプレのような返答をして去っていく。
「では、私もこれで」
その後、軍人の男も去り、ラウンジはCSIC重役ただ一人となった。
「ふぅ……疲れますな。いずれにせよ、艦隊拡張は既定路線。生活を維持するために働かなくては」
彼もラウンジを出る。
その後ろでは再び着水する03型空中戦艇の姿があり、会社が保有する造船所では駆逐艦や巡洋艦クラスの空中戦艇に加え、多数の03型がモジュール方式で建造されていた。
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ドイツ連邦共和国ザクセン=アンハルト州レッツリンゲン
ドイツ連邦陸軍陸軍戦闘訓練
ドイツ陸軍が使用する交戦訓練場。
この場所の司令部施設には3人の民間軍需企業の研究者がおり、コンソールを叩き続けていた。
「日本とイギリスが新型戦闘機を出したらしいが、この性能は尋常じゃないな」
「俺は空には興味ない」
「本当に興味無さそうだなお前、まあ専門は
3人は駄弁りながらも正確にコンソールを叩き入力していく。
そこに3人の上司である開発主任が訪れる。
「
「はい、こちらの映像をご覧ください」
研究者の1人がモニターに映像を映す。
そこには、Leopard1の砲塔を搭載し四脚で走る車両の姿が映されており、
Leopard2戦車ならスタックして走行できない厳しい地形も難なく乗り越える様子もあった。
「四脚式重車輌プラットフォーム『レーヴェ』はLeopard1や2、パンツァーハウビッツェ2000、プーマの砲塔を換装可能で、最大重量の52口径155mm榴弾砲を搭載しながらも、このように地形走破性は非常に高く大変優れた性能です。しかし……」
「登攀性能か?」
「……はい」
研究者はわずかに発言をためらうも、主任の発言を肯定する。
この兵器に求められたのはあらゆる地形で戦闘行動が可能という能力であった、それこそ岸壁であっても。
「重量もそうですが、岸壁に車体を固定させる能力が不足しています。しかし、我々の努力では傾斜地形が限界で、垂直地形は困難を極めます」
「やはり現実は厳しいか、先行量産型をそのまま正式採用するべきかね?」
「先行量産型はもちろん地形登攀能力はオミットしています。しかし、制式採用版は多少付与させるべきかと」
「そうだな、現場とさらに協議を重ねて制式型の性能を見定めよう」
ドイツ語で"ライオン"を意味するレーヴェという愛称を付けられた兵器はさらなる躍進を目指すと言わんばかりに、映像の中で155㎜榴弾砲を轟音と共に放つ。
各国は白の世界【システム=ホワイト=エグマ】等からの技術供与を受け、兵器開発を促進していく。
※次回予告
【平和は戦争の準備期間】(2)
プログレスの育成も行われていく。
一方で地球と接続した四世界は変化を遂げていた。
そして、使い慣れた
事態は動き出す。