Muv-Luv*Vierge 護世界の少女達 血潮染む運命に導かれる   作:空社長

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今回は結構文字ばかり、あと軍事用語が少し多すぎたかもしれないと少し反省。

改めて感想や評価等をお待ちしています。

※作戦開始時刻を世界標準時午前9時から午後4時としました。


世界の危機(ワールドクライシス)〈2〉【作戦決行】

_UTC3月18日午前5時00分_

国際連合本部理事会議場ビル 安全保障理事会議場

 

 調査の失敗を受けて、国連安全保障理事会は直ちに緊急招集された。

 その緊急決議において、人類史上初めてとなる正式な意味での国連軍結成が全会一致で採択された。

 

「国連軍の結成はたった今採択されました。これは人類の発展を阻害する障害を排除するためです。人同士、互いに争うことはあってはなりません。その事を多くの国の元首が考えて頂けることを願っています」

 

 国際政治、国家間関係は決して義や人情、善悪で行われるものではなく、利害関係で成立するのが常識であった。

 だが、この時ばかりは例え利害で判断されたとしても、多くの人間や国が手を携え、人同士の争いは散発的なものとなるまでに少なくなった。

 

 組織された国連軍司令部は壁を破壊する計画を立て、作戦の詳細を協議した。

 その答えとして、世界同時に攻撃を行うという概案が導き出され、攻撃部隊の編成や計画などは各国に一任された。

 作戦名は『オペレーション・アンサンブル』。

 アンサンブルはフランス語で統一、調和を意味する言葉であり、これをきっかけに人類が調和へと向かってほしいという願いからつけられた。

 

 そして、各国は作戦に向けて動き出した。

 

 モスクワより約900km東、ロシア連邦沿ヴォルガ連邦管区に属するタタールスタン共和国。

 その南東部にあるアリメチエフスクにはロシア連邦軍部隊が集結する。

 北カフカース紛争から約2年、CLFに対しては常に圧倒的な軍数の差を持っていたロシア軍だったが、同時に大規模な実戦を通して装備の旧式化や軍編成の複雑さに直面した。

 装備の更新及び軍内改革は並行して着手され、多くの定数以下の部隊は解体される一方で、

完全に定数を満たす現代戦に耐えうる主力装備を整えた部隊が幾つも誕生した。

 航空宇宙軍は旧式機を予備役編入させる、もしくは用途を変えて近代化改修を行って別任務につかせる事で、制空戦には最新鋭機の部隊で当たるように部隊編成を変え、

海軍は旧式艦の退役は一切行われなかったものの、大規模なオーバーホールによる設備の換装や近代化等が徹底的に行われた。

 

 西部軍管区からはT-90主力戦車を擁する第6・第17独立戦車旅団、

T-72B2"ロガートカ"及びB3"ズミーニャ"を有する戦車大隊含む第9独立自動車化狙撃旅団、第45・第288砲兵旅団。

 中央軍管区からはロガートカを有する第15独立親衛自動車化狙撃旅団、第23独立親衛自動車化狙撃旅団及び第385砲兵旅団。

 南部軍管区からは第20独立親衛自動車化狙撃旅団がアリメチエフスクに到着し、上記の部隊と合流した上で、第66諸兵科連合軍を臨時編成する。

 さらにアリメチエフスク後方のタタールスタン共和国首都カザンや、ウリヤノフスク州ウリヤノフスクには数種のロケット旅団が複数展開し、発射台を起立させる。

 戦略ロケット軍も第27親衛ロケット軍の各ロケット師団が次々に発射台を起立させ、通常弾頭を搭載する弾道弾の発射準備を総て完了する。

 一方で第1親衛戦車軍隷下の第4親衛戦車師団、第2親衛自動車化狙撃師団等、

アルマータ共通戦闘プラットホームや、2S35コアリツィヤ-SV自走榴弾砲等の最新鋭装備を有する部隊はモスクワ防衛の観点から留め置かれた。

 

 航空宇宙軍では第6航空・防空軍よりSu-27SM2戦闘機で構成される第62親衛戦闘機航空連隊、第159戦闘機航空連隊計59機に加え、

第67戦闘爆撃機航空連隊のSu-34戦闘爆撃機26機、Su-35S戦闘機28機で構成される第9親衛戦闘機航空連隊が派遣される。

 アリメチエフスク上空を含む地域を担当する第14航空・防空軍は第77戦闘機航空連隊に加え、

第2親衛爆撃機航空連隊、第48独立ヘリ連隊が展開する他、

第4航空・防空軍から第154親衛戦闘機航空連隊が派遣される。

 さらに航空宇宙軍中央司令部隷下の遠距離航空コマンドの派遣も決定され、

第6950親衛遠距離航空作戦軍団所属のTu-95MS"ミドゥヴィェーチ"戦略爆撃機及び

Tu-160M2"リェービェチ"超音速戦略爆撃機計32機含む第1航空作戦群が派遣される。

 ロシア海軍は北部軍管区を管轄する北方艦隊が射程距離の関係上、警戒態勢を維持する一方で、黒海艦隊は2年振りの全力出撃を行ってアゾフ海に展開し、

カスピ海小艦隊(フローティラ)もカスピ海北部に展開する。

 

 太平洋を縦断する壁はアリューシャン列島アンドリアノフ諸島からフィジー諸島近海まで伸びており、太平洋を東西に分断していた。

 国連軍司令部はこの単一幅の大きい壁を破壊するため、両側からの同一地点に対する攻撃を要請した。

 太平洋東部はアメリカ・カナダ連合軍が担当する。

 同一地点に定められたミッドウェー島の北約300kmの海域にはアメリカインド太平洋軍所属海軍太平洋艦隊の第3艦隊を中心とした

ジェラルド・R・フォード級航空母艦「ジェラルド・R・フォード」「ジョン・F・ケネディ」、

ニミッツ級航空母艦「ニミッツ」「セオドア・ルーズベルト」という4つの空母打撃群が展開し、

モンタナ級戦艦「モンタナ」を含めた第3艦隊主力艦艇の5割にのぼる戦力が集結する。

 その他に太平洋艦隊潜水艦部隊隷下の第7、第11潜水戦隊も合流させ、上記の部隊と共に第3艦隊作戦戦闘部隊を編成する。

 航空戦力は4空母打撃群の各空母航空団に加え、太平洋空軍直属の第15航空団第38戦闘飛行隊と第11空軍第3航空団第138戦闘飛行隊のF-35A計26機、

そしてB-52H戦略爆撃機擁する第5爆撃航空団及び

B-1B"ランサー"超音速戦略爆撃機擁する第28爆撃航空団が展開する。

 

 太平洋西部は日本国自衛隊、アメリカインド太平洋軍の西太平洋戦力、ロシア連邦軍東部軍管区が担当する。

 日本列島銚子半島から東に約3500kmの地点に日米露の連合軍は集結する。

 自衛隊は海上自衛隊自衛艦隊より第1護衛隊、第5護衛隊からなるいずも型航空護衛艦「いずも」を含む第1護衛隊群、

第4護衛隊、第8護衛隊からなるいずも型航空護衛艦「かが」含む第4護衛隊群、

潜水艦隊より第2潜水隊群のさつま型潜水艦「さつま」含む第2、第4潜水隊、

海上自衛隊航空集団の第4航空群第3航空隊のP-1哨戒機が全力出撃する。 

 アメリカ軍は太平洋艦隊第7艦隊のニミッツ級航空母艦「ロナルド・レーガン」

「カール・ヴィンソン」の二つの空母打撃群を中核とする、

第15潜水戦隊を含んだ揚陸指揮艦「ブルー・リッジ」を旗艦とした第7艦隊作戦戦闘部隊の他、

太平洋空軍直属部隊であるB-1、B-52Hで構成される第36航空団が

アンダーセン空軍基地より派遣される。

 ロシア軍は東部軍管区作戦・戦略司令部(OSK)の指令の元、

海軍太平洋艦隊の1143.6型(キエフ級)航空巡洋艦「ルカ・ヴェチカソフ」*1

1164型ミサイル巡洋艦「ヴァリャーク」を含む

第36水上艦艇師団計8隻及び第19潜水艦旅団がウラジオストクより派遣される。

 

 欧州ではイギリス海峡の開放を目指し、イギリスと大陸諸国が連携していた。

 特に主要航路の大半を塞がれ、アイスランド近海とノルウェー海という氷の海経由でしか貿易できないイギリス軍は壁を打破することに全力を注ぐ。

 常設統合司令部の元で、イギリス海峡のポーツマス沖南に約40kmの海域には

クイーン・エリザベス級航空母艦「クイーン・エリザベス」「プリンス・オブ・ウェールズ」を含む水上戦闘艦隊

及びアスチュート級、トラファルガー級原子力潜水艦で構成される王立潜水艦隊が展開。

 王立空軍は航空軍団の第1航空団隷下でユーロファイター・タイフーンFGR.4、

F-35Bライトニング II、BAE-Sテンペスト多用途戦闘機で構成される第21飛行群が編成され、

在欧アメリカ空軍の第48戦闘航空団第48作戦群及びアメリカ本土から派遣された第28爆撃航空団のB-1Bで構成される第34爆撃飛行隊と、第7作戦航空団が臨時編成される。

 王立陸軍は壁への間接打撃戦力として、AS-90"ブレイブハート"155㎜自走榴弾砲及びMLRSを装備する王立第4、第19、第39砲兵連隊を展開する。

 

 大陸側でも北大西洋条約機構(NATO)作戦連合軍の指揮部門である欧州連合軍最高司令部の指令を元に

コタンタン半島より北東約40kmの海域には

航空母艦「シャルル・ド・ゴール」を中核とするフランス海軍戦闘部隊、

ル・トリオンファン級戦略ミサイル原子力潜水艦で構成される戦略海洋部隊が展開する他、

ドイツ海軍第2機動隊群第4フリゲート戦隊、ベルギー=オランダ艦隊が派遣される。

 航空戦力は空母艦載機に加えて、

フランス航空宇宙軍航空戦力集団の戦闘機空軍旅団からダッソー・ラファールC多用途戦闘機、ダッソー・ミラージュ2000D戦闘攻撃機を含む飛行隊群や

ドイツ空軍第2空軍師団のユーロファイターEF-2000多用途戦闘機、

トーネードIDS攻撃機含む第24戦闘航空団、第31戦闘爆撃航空団、

オランダ王立空軍のF-16MLU"ファイティング・ファルコン"戦闘機で構成される第313飛行隊、

ベルギー航空構成部隊の第10戦術航空団が展開する。

 さらに陸上ではフランス陸軍第1機甲師団のMLRS擁する第1砲兵連隊や、

ドイツ連邦陸軍第1装甲師団の多連装砲兵型"レーヴェ"を含む第21装甲旅団が間接打撃戦力として展開した。

 

 中華人民共和国安徽省合肥市近郊。

 都市より少し離れた草原地帯に人民解放軍が集結する。

 中国の目的は南北を隔絶する壁の打破であり、成し遂げられなければ交通網の遮断はもちろんの事、どちらかに頼る発電システムの送電網の遮断、

そして北京中南海からの中央政府の統制が取れず、国家としても2つに分かれてしまう可能性があった。

 よって、人民解放軍は総力を挙げて壁の破壊に取り組んだ。

 

 中央軍事委員会は各方面で統合作戦を指揮する組織である戦区の内、

東部戦区の半分と中部戦区の戦力を壁北側に、

東部戦区のもう半分と南部戦区の戦力を壁南側の合肥市近郊の作戦域へ集結させることを決定。

 

 陸軍は北側で東部戦区第71集団軍の99A式、96A式戦車で構成される第23装甲旅団及び

中部戦区第81・第82集団軍より99A式戦車含む第54、第63装甲旅団、

第87、第119機械化歩兵旅団、

07式122mm自走榴弾砲含む第5、第63砲兵旅団によって、第17統合任務集団軍を形成する。

 南側は東部戦区第72集団軍の96式、88B式戦車で構成される第12装甲旅団及び

南部戦区第41集団軍の96B式戦車含む第9装甲旅団、第33機械化師団、

05式152mm自走榴弾砲含む第31砲兵旅団で、第36統合任務集団軍を形成する。

 

 空軍は東部戦区に属する第10爆撃機師団の轟炸6K型"戦神"爆撃機が含まれる第28航空連隊、

殲撃16型戦闘爆撃機、殲轟7型戦闘爆撃機を含む第7、第83航空旅団、

中部戦区の轟炸6K型で構成される第36爆撃機師団、

殲撃11型戦闘機、殲撃16型で構成される第19、第43、第55航空旅団を北側に展開。

 東部戦区の轟炸6H爆撃機で構成される第28航空連隊、

殲撃11型、殲撃16型で構成される第40、第41航空旅団、

南部戦区の轟炸6K型で構成される第8爆撃機師団、

Su-35戦闘機、殲撃11型、殲撃16型で構成される第4、第6、第26航空旅団が南側に展開する。

 

 海軍は上記2軍種と異なって北部戦区の北海艦隊も加わっており、

002型航空母艦「山東」、003型航空母艦「福建」を中核とし

第1、第4、第6、第7駆逐支隊からなる大規模な空母機動部隊を黄海に遊弋させる。

 さらに091型及び093型という2種の攻撃型原子力潜水艦を巡航ミサイルの発射母艦として黄海及び東シナ海に待機させ、

万が一の場合に備え094型原子力弾道ミサイル潜水艦の全艦を両海域に潜航待機させる。

 

 そしてロケット軍も通常弾頭を搭載する短距離弾道ミサイル及び

車両発射式の長距離巡航ミサイルを作戦周辺域にて発射台を起立させ、発射命令に備える。

 通常弾頭で効果が期待できないという最悪の場合にも備え、

戦略核弾頭を搭載する弾道弾の移動式発射台も展開される。

 

 その他、インド空海軍合同任務コマンド作戦部隊、スペイン・ポルトガル連合海軍艦隊、

オセアニア空海軍連合部隊、トルコ・サウジアラビア同盟空軍戦闘部隊、

南米州空海軍連合部隊、欧州合同軍バルカン半島方面空陸作戦部隊、イラン合同作戦部隊、

アフリカ各国の航空及び陸上戦闘部隊等が各作戦域へと展開する。

 

 作戦準備は着々と進んでいた。

 

_UTC3月22日午後3時50分_

国際連合本部理事会議場ビル 安全保障理事会議会見場

 

 壁の位置が確認され、1部の空路、海路が再設定されたものの、多くのルートの復活はならず、世界経済に深刻な影響を与えていた。

 よって、「触らぬ神に祟りなし」等の少数の反対意見を除けば、

『オペレーション・アンサンブル』が予定通り遂行することが確認された。

 

 会見場のマイク前に白髪ツーブロックの丸眼鏡をした壮年男性が現れる。

 スラヴ系カザフスタン人のアンドレイ・クニツィン国連事務総長は作戦開始時刻の10分前より話し始める。

 

「全世界の皆様、ごきげんよう。ああ、作業をしていた者はそのまま手を止めずに。国連事務総長のアンドレイ・クニツィンです。

まもなく、『オペレーション・アンサンブル』が発動されます。人類史上初となる本当の意味での国連軍結成、そして世界同時の共同作戦です。

壁が打破されなければ、人類の発展に大きな障害となるでしょう。各員の奮闘に期待します。アンサンブルは調和という意味を持ちます、この作戦の結果、人類に調和があらんことを」

 

 そして、世界標準時3月22日午後4時00分00秒。

 国連軍司令部より『オペレーション・アンサンブル』作戦コードが全展開部隊へと送信される。

 

_同時刻_

アメリカ海軍第3艦隊作戦戦闘部隊

旗艦「ジェラルド・R・フォード」

 

「作戦コード受信!相違ありません!」

 

 通信士が声を上げる。

 

「よし、展開中の飛行隊及び爆撃航空団に攻撃命令を出せ。甲板待機中の飛行隊も順次離艦!艦隊も砲撃及びミサイル攻撃を開始しろ!」

 

 第3艦隊司令のバートランド・J・イーストン海軍中将が報告を聞き、声を張り上げて命令を出す。

 

 空母航空団のF-35Cが翼下のハードポイント及びウェポンベイから空中発射型対艦巡航ミサイルを次々に発射する他、太平洋空軍のF-35A戦闘機はハープーン対艦ミサイルを発射する。

 B-52H及びB-1Bからなる爆撃航空団は、1機に20発程搭載するアリスム空中発射巡航ミサイルを一斉に発射する。

 艦隊では戦艦「モンタナ」が16インチ電磁加速砲3基9門の一斉射撃を行い、アーレイバーク級ミサイル駆逐艦及びタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦からトマホーク巡航ミサイルが次々に発射されていく。

 

_同時刻_

インド洋ラッカディブ海

インド海軍合同任務コマンド作戦部隊

 

 航空母艦「ヴィクラント」、「ヴィクラマーディティヤ」を中核とするインド艦隊から発射された超音速巡航ミサイル"ブラモス"が壁面へと次々に着弾する。

 さらにジャギュアIM攻撃機及びSu-30MKI戦闘攻撃機より対艦ミサイルや巡航ミサイルが打ち出された他、陸上からはブラモス及び通常弾頭型のプリットヴィーIII弾道ミサイル、アグニIV中距離弾道ミサイルが放たれ、壁に大きな爆発を起こす。

 

「更なる攻撃を続けろ!かならず撃ち破れる!」

 

 その声と共に、再び展開中の航空機及び艦船からブラモスが打ち出されていく。

 

_同時刻_

ロシア連邦沿ヴォルガ連邦管区タタールスタン共和国アリメチエフスク

ロシア陸軍第66諸兵科連合軍

 

Начните стрелять!(砲撃開始!)

 

 マイク越しにシードル・マカーロヴィチ・アスタホフ陸軍中将が声を張り上げる。

 

 最初に動き出すのは自走砲でも戦車隊でもなかった。

 戦域後方に展開する数個ロケット旅団より通常弾頭型であり且つ弾頭に『爆裂術式魔法』が込められて威力が増幅されたイスカンデル-M戦域弾道ミサイル十数発が打ち出される。

 さらに、2S19ムスタ-S自走榴弾砲の射撃が開始され、

152㎜榴弾砲よりマナによる爆発威力増幅効果を持つ魔導誘導砲弾『ドヴォネフ』を放つ。

 第6・第17独立戦車旅団及び第9独立自動車化狙撃旅団に含まれる戦車部隊も行動を開始し、

T-90"ヴラジーミル"、T-72B2"ロガートカ"、T-72B3"ズミーニャ"から125㎜滑腔砲の砲撃が開始され、ヴラジーミルはそれに混ざり砲発射式レフレークス対戦車ミサイルも放つ。

 第6950親衛遠距離航空作戦軍団のTu-95MS及びTu-160を含む第1航空作戦群は

Kh-55空対地ミサイルを一斉に発射し、それに加え数多の戦闘機航空連隊より空対地ミサイル及び空対艦ミサイルが大量に発射される。

 

_同時刻_

イギリス海峡

 

魔導砲(マジックキャノン)の調子はどうだ?」

『まだです、まだ調整に時間が要ります』

 

 王立海軍水上戦闘艦隊司令官のイアン・マクルーア海軍中将はその報告を聞いて一瞬眉を顰める。

 しかし、その感情を振り切り、マイクをつなげる。

 

「まあいい。希少兵器に運命を託すことはできん、あと一押しというところで使わせてもらう。いいな?」

『構いません』

 

 マクルーア中将の砲撃開始!との命令により、45型駆逐艦のハープーンSSM4連装発射筒からRGM-84ハープーン艦対艦ミサイル(SSM)が、

26型フリゲートのシルヴァーA70VLSからストームシャドウ巡航ミサイル(SLCM)が発射されていく。

 水中では王立潜水艦隊が海面に浮上し、アスチュート級、トラファルガー級原子力潜水艦より

トマホーク巡航ミサイル、

北海のブリテン島沿岸沖に浮上するヴァンガード級原子力弾道ミサイル潜水艦より

通常弾頭型トライデントⅡD5・SLBM*2を投じていく。

 空では「プリンス・オブ・ウェールズ」艦載機であるBAE-Sテンペストから電磁加速砲(レールガン)による砲撃を繰り返され、

第7作戦航空団の内、第21飛行群からは空中発射型ストームシャドウ巡航ミサイル及びブリムストーン空対地ミサイルを放ち、

アメリカ空軍第48作戦群は統合空対地スタンドオフミサイル、第34爆撃飛行隊はアリスム巡航ミサイルを放つ。

 

 対岸ではフランス海軍戦闘部隊、フランス航空宇宙軍数個飛行群より

ストームシャドウ巡航ミサイル、戦略海洋部隊よりエグゾゼ対艦ミサイルの攻撃が行われ、

フランスの海軍の象徴たるレピュブリク級戦艦も41㎝3連装砲3基9門による砲撃を行う。

 これに続き、ドイツ海軍第4フリゲート戦隊がハープーン対艦ミサイル、

ドイツ空軍第2空軍師団よりタウルス巡航ミサイルの攻撃が行われ、

ベルギー・オランダ空海軍も空対地及び対艦ミサイルによる攻撃を行った。

 

「砲撃開始!」

「絶対に撃ち破るんだ!」

「艦載機隊に再度の攻撃命令を!」

「巡航ミサイル一斉射!」

「ロケット軍、弾道弾発射命令を!」

 

 世界中のあらゆる地域で各国が総力を上げた攻撃作戦が実行される。

 壁面にはあらゆる物を吹き飛ばす爆炎が生まれては消えて、

例を見ない異常な量の弾薬が消費される。

 だが、爆煙が晴れた瞬間、壁が破壊されているという事実が無いことを

各国軍及び政府高官は知る。

 

「バカなっ!!」

 

「あり得ない!」

 

 それが世界共通の叫びだった。

 

「攻撃を一旦中止しろ!艦載機に帰投命令を出せ!」

 

 イーストン海軍中将はそう叫ぶ。

 世界も同じような動きを見せる。

 

「砲撃中止だ、……どうやっても無駄なのか?」

 

 アスタホフ陸軍中将はぼやき、

 

「やはり核を使うしかないのか?」

 

 マクルーア海軍中将はそう歯ぎしりしつつ、壁を見つめる。

 

 世界から砲声が止む。

 残っていたのは、崩壊した自信と、増幅する恐怖だけだった。

 

 そして、異変が起き始める。

 

 その始まりは、地球ではない。

 地球と接続する四世界へ何の前触れも無く、ウロボロスが襲撃したのだ。

 

_UTC3月22日午後4時32分_

赤の世界【テラ・ルビリ・アウロラ】 虹彩の宮(テンプルミ・イリス)

 

「ノエリア、もしかしたらだけど、あなたの予想外れてるかもしれないわ」

 

 七女神の1人、《暁の女神》アウロラがノエリアに優しい口調で話しかける。

 

「いえ……必ず来ます。必ず、奴らは地球に……」

 

 だが、赤の世界にもウロボロスが襲撃してもなお、頑なに譲らない彼女にアウロラは折れる。

 

「そうね……ごめんなさいノエリア、私まであなたの考えを疑ってしまうのはまずかったわ。

ミシス、ノエリアも守ってあげて。この規模だったらもしかしたら何てことは無いと思うけど」

「分かったよ!ノエリア、今は私が守るから」

 

 ミシスは嬉しそうに体を跳ねる。

 その傍ら、ミシスは心の内でノエリアの予言を確信してた。

 

(私の前であんなことになったんだから、たぶん相当やばいね。地球の人たちが心配)

 

 その直後、壁は人には聞こえない不協和音を響かせる。

 壁が破壊できない事に苦悩していた人々は、

とてつもない脅威が襲ってくる事に未だ気づいていない。

*1
旧ミンスクから改名

*2
潜水艦発射弾道ミサイルの事




※次回予告

世界の危機(ワールドクライシス)(3)【破綻】

作戦失敗という事実、脅威の襲来が人類を襲う。
その脅威に人類は本当の絶望を初めて味わう。
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