Muv-Luv*Vierge 護世界の少女達 血潮染む運命に導かれる 作:空社長
※注意
チェチェンの真実編では、女性に対して酷い行いをしている描写が比較的多くありますので、R-15程度の表現に抑えていると思いますが、苦手な方はお気を付けください。
チェチェンの真実《1》【戦争】
10代の少女達の一部は、エクシードという力を持つようになった。
その力に含まれる魔法を使う上で、少女達の体内にはマナというエネルギー源が宿された。
_MSK*1西暦2021年5月28日午前0時頃_
【
ロシアの冷たさが残る春真っ只中。
災いを予兆するかのように、首都モスクワは暗い雲に覆われ雨がポツポツと降りしきる。
その只中、モスクワ標準時間の時計が0時を示し、日付が変わる瞬間迎えた直後。
インターネット掲示板や各種SNSで、ある文章が投稿された。
『
この文章は投稿されてから約1分後には、ロシア連邦軍の情報機関たる
情報収集官は動揺することもなく、小型タッチパネル端末で第3課課長及び第1副総局長へと報告を伝えた。
報告を受けた両者の内、第1副総局長は連邦軍参謀本部次長を兼任する総局長へと情報を送り、総局長はすぐに全部隊に対して警戒を命じる。
しかしこの時点で投稿されてから既に7分が経過しており、5分経った時点でチェチェン共和国、北オセチア共和国各地の連邦軍駐屯地が奇襲攻撃を受け、各駐屯部隊からの通信が一時途絶した。
この事態に、ロシア連邦軍参謀本部及び国防省は騒然とし、対応に追われていく。
「どこがやられた!!」
国防大臣エドアルト・オレーゴヴィチ・イサレフは老齢の体に鞭打つように精力的に動き、慌ただしく対応する国防省職員に報告を求める。
「チェチェン共和国ボルゾイ、シャリ、ハンカラ及び、北オセチア共和国ウラジカフカス、モズドクの駐屯地です!チェチェン共和国に駐屯していた第8、第17、第18独立親衛自動車化狙撃旅団、ウラジカフカスの第19独立自動車化狙撃旅団からの通信は既に回復。
……ただし、モズドクの警備隊との通信は途絶したままです……」
報告を聞いたイサレフはどの国から攻撃を受けたか、どうして攻撃を受けたのか、等の考えを脳裏で巡らせる。
足りない点を思い出し、答えを求める。
「損害についての詳細な情報はあるか?」
「向こうもようやく部隊をまとめ上げ拠点を移動中とのことで、損害については情報が錯綜している状況ですが───」
「構わん、一字一句情報を絞り取れ」
指示を聞き、国防省職員は急いで大臣執務室を退出する。
一息はき、一旦落ち着こうとイサレフは椅子へと座る。
「面倒な事になったな……何が起きている?」
彼は頭を抱える。
しかし、即座に自分の役目を思い出し、大統領へと現在入ってる情報を連絡する。
数分後、職員からもたらされた情報から報告をまとめていく。
_MSK西暦2021年5月28日午前0時37分_
ロシア連邦首都モスクワ 大統領府庁舎
ロシアの政治・経済の中枢である首都モスクワ。
その中心には見た者に厳かな宮殿をイメージさせる建築物、大統領庁舎があった。
「では、これより連邦安全保障会議*2を始める」
その庁舎内部、厳重なセキュリティを潜り抜けた先にある警備兵により閉ざされた大会議室。
その中央に置かれた長大なテーブルに沿うように、官僚・軍人らが並ぶ。
最初に口を開いたのは、彼らの視線が一点に集まる先にいた人物。
純血のロシア人らしい白髪で、壮年だが一切の老いを見せない威厳ある顔、そして元軍人という経歴が証明するがっしりとした体格の持ち主、
ロシア連邦大統領のノヴォーシリ・エゴロヴィチ・ニコルシチャフである。
「始めに、軽く事情を聞いているが、状況の説明を求める。国防大臣」
イサレフはその言葉を聞いて頷き、タブレット端末を片手に報告を始める。
彼が指示を出すと、会議出席者が視線を向けやすいように設計された壁面モニターが起動する。
「では報告をさせていただきます。まず約40分前、GRU第3課の情報収集官がインターネット上に宣戦布告を行う宣言文と思われる文章が投稿されているのを確認しました。発信場所はチェチェン共和国内である事は判明していますが、詳細な場所については使用端末が持ち歩き可能な物と予想しており不明です」
会議室内にあるモニターに文章が投稿された画面が映る。
「そうか……煩わしいな。続けてくれ」
ニコルシチャフ大統領は眉を顰めるも、続きを促す。
GRU総局長に代わり、イサレフが話を進める。
「続けます。その投稿から約5分後、チェチェン共和国ボルゾイ、シャリ、ハンカラ、北オセチア共和国ウラジカフカス、モズドクの駐屯基地及び一部の空軍基地、飛行場に突然の襲撃が行われ、モズドクの第56警備中隊が通信途絶しており、壊滅したと予想しています。
チェチェン共和国ボルゾイの第8、シャリの第17、ハンカラの第18独立親衛自動車化狙撃旅団、北オセチア共和国ウラジカフカスの第19独立自動車化狙撃旅団とは既に通信が回復しており、基地機能が損失した為、近隣の基地に移動中のことです。
国防省及び参謀本部では、以後南部軍管区の各基地に対する襲撃の可能性を考え、臨戦態勢を整えさせています。
また、各部隊からの証言なのですが、彼等の襲撃に不可解な点があります」
「それは?」
「『光の筋が向かってくるのが見えた』、『光線が来た』と……恐らくこれは
ニコルシチャフは訝しげな表情を浮かべる。
「だが、チェチェン如きにレーザー兵器等持てるとは思えないが?」
「同意見です。ですが実際に見た者がいる為蔑ろに出来ず_」
イサレフはそこまで言ったところでニコルシチャフに遮られる。
「終わりにしよう、国防省、参謀本部、GRU等は全力でこの正体を明かせ。それで、襲撃された陸軍基地の様子は?」
ニコルシチャフが尋ねると、モニターの画面が衛星写真に切り替えられる。
「こちらは、会議の数分前にチェチェン共和国ボルゾイ、第8独立親衛自動車化狙撃旅団が駐屯していた基地を撮影した衛星写真になります。参謀本部作戦総局、GRU、
「ふむ……この時点で、まさか平和的解決を図ろうとする者はいないだろうな?」
ニコルシチャフの目つきが鋭くなり、その表情に外務官僚の一部が顔を俯かせる。
「奴らは、『武装闘争を開始する』と、つまり戦争の宣言、宣戦布告をしてきたのだ。民意による独立は認めてもいいが、一方的な暴力行為は許されざるものだ。平和を乱すものには制裁を与えなければならない!」
ニコルシチャフは声を上げる。
そして、イサレフに振り向き、話を続ける。
「国防大臣、直ちに反撃を開始せよ。民間人の被害は抑えてもらいたいが、奴らに対する手段は問わない。チェチェン解放戦線という者共には徹底的な攻撃を行え」
「はっ!」
イサレフは威勢よく返事を返す。
会議開始から20分後、国防省から命令を伝えられた南部管区
始めに、カスピ海にいるロシア連邦海軍カスピ
さらに、第11独立航空群エクラノプラン*4部隊も動員し、クラブ巡航ミサイルの攻撃を行い、偵察衛星で発見できた多くの拠点を徹底的に破壊する。
同時に第4航空軍第123戦闘機航空連隊、第39親衛戦闘機航空連隊Su-27SM2"フランカー"計54機が偵察衛星からでは確認できない軍事拠点を攻撃すべく、チェチェン共和国上空に展開する。
陸軍部隊も行動を開始し、カスピ小艦隊司令部があるダゲスタン共和国*5カスピースク防衛及びチェチェン共和国への侵攻準備の為、第35独立自動車化狙撃旅団、第68、第146独立親衛自動車化狙撃旅団、第56独立親衛空挺旅団が配置された他、クラスノダール州クラスノダールの第1親衛ロケット旅団、アストラハン州ズナメンスクの第439親衛ロケット砲兵旅団の9K720戦術ミサイルシステム計十数両からイスカンデル-M戦域弾道ミサイルが発射される。
たかがテロリスト相手にロシア連邦軍は圧倒的な戦力で叩き潰そうとしていた。
だが、作戦行動はいきなり頓挫する。
ロシア連邦南部連邦管区ロストフ州ロストフ・ナ・ドヌ
南部軍管区
「イスカンデルが撃墜されただと!?」
二キーチンは声を上げる。
「ええ、チェチェン上空に先行していたA-100
「奴らが各基地に襲撃してきた時もその様なものが目撃されたが……
「いえ、イスカンデルの撃墜直後の爆発で一時的なレーダー障害が発生し、捉えることは叶わず……」
「ちっ……忌々しいな……だがなんでレーザーが使える……」
参謀の報告に二キーチンは思わず舌打ちをする。
「どうしますか?陸上部隊で援軍を送ることは出来ますが、直近の第58諸兵科連合軍はウラジカフカスの司令部がやられた他、各基地にも奇襲を受けていた為、無事なのはダゲスタン共和国ブイナクスクの第136独立親衛自動車化狙撃旅団のみです」
二キーチンはその言葉を聞き、黙って考え込む。少し経った後、決断する。
「作戦に変更は無い。部隊の増派は戦況によって調整するまでだ」
_午前1時10分_
モスクワ市アルバート地区 ロシア国防省ビル地下
ロシア国防省職員でも幹部クラスしか入れない会議室にて十数名の軍事関係者が話し合っていた。
「やはり、分からんな。基地襲撃、そして先程南部軍管区OSKから報告があったイスカンデル戦域弾道ミサイルの撃墜で使用されたのは確実にレーザー兵器だ。だが……それらしき兵器は確認できない上に奴らにそんな物が作れるはずない、一体どういうことだ?」
頭を抱えるイサレフにマカール・シードルヴィチ・ロスチヤ国防副大臣が提言する。
「もしかしたら、
「エクシード・リグラ*6と同じヤツらが混ざっているとでも?……だが戦略的には─」
「影響が無い、と言いたいのでしょうが実を言うと、このようなデータが出ています」
ロスチヤは机上に板状の
イサレフはその画面を注視して、顔をこわばせる。
「いつのだ?」
「1ヶ月前です。彼女らを採用した特殊任務連隊や
イサレフは眉を顰める。
「なぜ報告を上げなかった?」
「彼らなりに調査した迄で、報告する必要はないと判断したようで」
返答を聞き、ため息を吐くイサレフ。
「確かに最初の調査で戦略的に影響がないと判断はしたが……調査結果を上げといても良かったのではないか?」
「そうですね、伝えておきます」
それはともかく、とイサレフは話を戻す。
「仮にエクシード・リグラと同じ者がいたとしてだ、世界にその事が知られれば間違いなくその存在を否定する連中が出てくる。そいつらはその理由がどうであれ、表面の事実しか知ろうとしないからな」
「あくまで推測です」
「わかっている。ところで、エクシード・リグラの少女達がいたとしても、我々が負けることは無いな?」
「恐らくは……」
ロスチヤは不安気味に部隊展開状況を映すモニターを見る。
※次回予告
チェチェンの真実《2》【暗霧】
チェチェン解放戦線の支配下では残酷な光景があった。