Muv-Luv*Vierge 護世界の少女達 血潮染む運命に導かれる 作:空社長
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銚子半島から東に約3500kmの地点
多数の赤い光線が降り注ぐ。
護衛艦の船首がぶち抜かれ、「ロナルド・レーガン」の甲板に直撃し、ロシア海軍旗に穴が穿たれる。
太平洋中央部の壁の西側にある赤い裂け目から現れたのは、BF-110重戦闘機がべースではあるが、主翼は2倍以上に伸びた後退翼の形状をしていてコクピットは当然ない代わりに鎖を繋いだかのような触手が上下4つずつ有しており、他の個体と共通して全体のカラーリングが黒をベースに赤いラインが何重も走っていた、3機の個体だった。
上下関係なく高Gのかかる狭い半径の旋回を繰り返し、圧倒的な高機動性を見せつけて、空母艦載機の迎撃手段の選択肢を減らし、被撃墜の可能性も高い乱戦へと持ち込んでいく。
「敵機急速旋回、また来ます!」
「やはり対艦ミサイルの使うタイミングが見えん!引き続き、SM-2による攻撃を繰り返せ!主砲による攻撃も引き続き行え!」
日本海上自衛隊作戦艦隊司令の
その個体は時速600kmと比較的低速ながら、大型機にはあるまじき旋回性能を有しており、ミサイルの命中直前に急旋回され友軍艦に誤射してしまう事例も確認された。
何より威力の低い対空ミサイルが幾度も命中しようと常に修復され、まさに手も足も出ない状況であった。
「駆逐艦2隻轟沈!他、損害多数!」
報告に対して、アメリカ海軍第7艦隊司令官のレオナルド・F・ブローナー海軍中将はくっ、と声を漏らす。
その間にも「カール・ヴィンソン」に赤い光線がぶち当たり、甲板に直撃した光線が駐機していた機体を吹き飛ばす。
アメリカ海軍も同様に対空戦闘を続けており、短距離対空ミサイル及び、近接防空ミサイルが飛び交う。
ロシア海軍では「ルカ・ヴェチカソフ」が船首に1発、甲板に1発、船体右舷に1発の光線が直撃し、誘爆も起きるなどして蓄積されたダメージによって航空母艦としての機能を半分程喪失する。
必死に対空戦闘を繰り返し、初速の速い対空ミサイルが命中を得るが、耐久の低いフリゲートが集中的に攻撃され、大破もしくは撃沈する被害が相次いでいた。
「これではもはや蹂躙か」
ロシア海軍太平洋艦隊司令官のクリント・アルノーリドヴィチ・セルヴェンコ中将は旗艦の惨状を見ながらそう口にする。
3機の同型個体が連合艦隊上空を周回しながら蹂躙する光景は絶望にも等しかった。
主砲による対空射撃、大量の対空ミサイルに臆しもせず、幾らダメージを負おうが修復していく。
そんな状況でも、敵に対して最高速度という点では遥かに優速である空母艦載機隊は勇ましい抵抗を続ける。
『こちら、タイガー01。本機に続く者は?』
『タロン01、我々米海軍が続く!』
『こちらロシア海軍スタルブ01、非ステルス機だが期待には答えよう』
海上自衛隊空母航空団のF-35B、アメリカ海軍空母航空団のF-35C、ロシア海軍航空隊のMiG-29Kが敵3個体へと突撃を開始する。
最後の抵抗とばかりに数多くの空対空ミサイルを投げつけていき、3機の敵個体は爆炎に包まれる。
爆炎による損傷を回復するために3機が回避行動を停止した隙に、ありったけの対艦ミサイルが投げつけられる。
それに対して敵個体は回避行動を再開しようとしたが、時すでに遅く大きく穴を穿たれる。
大きな不協和音が戦場に響き渡り、敵個体は艦載機群から離れるように西へと向かい始めた。
戦闘の音が消え去った海域には、撃沈艦や航行不能となった艦艇から負傷者等へ救助活動をを行う音だけが残った。
「敵の向かう先は……ああ、答えなくていい。分かっている」
永尾は眉をひそめ、顔をしかめる。
「護衛艦隊司令部及び防衛省に『連合艦隊は敗北した、6時間以内に敵個体群が日本本土に到達する』と伝達しろ」
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日本国東京都千代田区永田町
首相官邸 内閣危機管理センター
「つまり、78年以来の本土決戦になるということか」
山井首相がそう口を開く。
「あまり被害を大きくしたくはないですね」
「ええ、同感です」
経済産業大臣、財務大臣は戦闘による経済被害に懸念を表す。
だが、小原防衛大臣の鋭い視線に萎縮する。
「経済産業省、財務省の懸念は理解できますが、未知の敵ですので予想がつきません。そこはご覚悟お願いしたい」
そして、改めて小原は両名に釘を刺した。
「敵の動向は?それと、自衛隊の配備状況も教えてくれ」
「海自のF-35Bが限界まで追跡中です、敵個体群についてですが、現在は真西を目指していることは確認できています」
「自衛隊ですが、現在陸上自衛隊の東部方面隊第1師団、第12旅団、第20高射特科群、東部方面航空隊、習志野の第1空挺団が千葉県沿岸に展開、東北方面隊第6師団が茨城県に展開。航空自衛隊は百里基地に当該基地所属の第7航空団を含めた、浜松の第1航空団、松島の第4航空団を集結させています。海上自衛隊は現在急行中であるものの、おそらく敵到着時には間に合わないと思われます」
小原は端末は見ながら、情報を伝える。
山井はしばらく熟考していたが、決断する。
「わざわざ躊躇して民間人の犠牲を生む愚考は犯したくないな。Jアラートを発令し、侵攻予想地域には避難指示、それ以外には避難勧告を出す。それでいいな?」
「自衛隊としてもそれで構いません、民間人を巻き添えにするのはごめんですから。戦闘地域では強制疎開も実施します」
「ああ、頼んだ」
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アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコ
砲声が轟く。
飛行船に似た全長400mに上る大型個体はアメリカ合衆国国防総省の予測通り、サンフランシスコへと到達。
アメリカ軍
「全艦攻撃開始!!」
沖合にはサンディエゴ海軍基地から急行してきたモンタナ級戦艦「オハイオ」とアーレイバーク級ミサイル駆逐艦4隻の
アーレイバーク級のVLSから次々にトマホーク巡航ミサイル及びハープーン対艦ミサイルが放たれ、オハイオの16インチ
陸上ではM777榴弾砲が火を吹き、152㎜榴弾を黒く機械的な表面装甲へと次々に直撃させ、即座に陣地を転換する。
「トマホーク、ハープーン及びM777の152㎜榴弾着弾!オハイオからの16インチ砲弾、個体側面に直撃!個体名称『ダークヒンデリア』、損傷回復させます!!」
沿岸部より少し離れたCDJTF司令部にて、オペレーターが声を上げる。
「まだ足りないか……空軍にも追加の攻撃命令を出せ。戦車部隊も前進し、砲撃に加われ」
オペレーターの報告を聞き、大統領よりカリフォルニア州防衛の任を与るアーノルド・R・スターン陸軍中将が新たな命令を下す。
「対戦車火器を有する歩兵各部隊はどうしますか?」
「ふむ……遮蔽物に隠れて前進させろ。使用を許可する」
「了解しました」
『ダークヒンデリア』と称された大型個体はサンフランシスコに聳え立つ高層ビルの標高近くの低空にまで降下しており、地上からでも狙える高さであった。
空よりはF-35A"ライトニングⅡ"、F-16V"ファルコン"、F-15EX”イーグルⅡ”等の空軍・空軍州兵の戦闘機部隊が急襲する。
「パンサー1より各機、パンサー隊で奴の探知能力を搔い潜る」
『ブレード1了解』
『リーチ1了解した』
「返事がいいな、では
F-35Aで構成されるパンサー隊が誘導爆弾を敵の上部装甲に喰らわせ、敵の関心をF-35に向かわせると共に、その影から飛び出してきたF-16Vのブレード隊、F-15EXのリーチ隊が対地ミサイルで敵の前端部を叩きつける。
さらにM1A3”エイブラムス”を中心とした機甲部隊が、敵の関心が空にある内に遮蔽物を利用しながら敵正面へと前進。
ゆっくりと大きな砲塔を旋回させて照準を合わせ、重厚感のある砲撃音と共に120㎜APFSDSを砲口から打ち出し、前面下部装甲へと食らわせる。
それに追い打ちをかけるように、M109A6”パラディン”152㎜自走榴弾砲やアメリカが性能に信頼を置き、後継としての試験運用を行っているドイツのPzH2000自走榴弾砲の支援砲撃部隊から曲射攻撃が上部装甲へと次々に着弾する。
しかし、『ダークヒンデリア』は積み重なったダメージを全て回復させると、お返しとばかりに胴体下部より砲身を展開し眩いばかりの赤い光を輝かせ、そのエネルギーを一気に撃ち出した。
サンフランシスコに聳え立つ高層ビルの摩天楼を一本の赤い光が貫き、巨大な爆発が幾つも起き、ガラスの破片をまき散らしながら幾つものビルが倒壊する。
さらに、何重にも走る胴体の赤いラインから、砲身から発射されたものより幾分か威力の劣る赤い光線がバラまかれる。
航空機を一撃で大破に追い込む威力の光線はその多くがビル群を切り刻んで倒壊させ、無数のガラスの破片が地上に落ち、一部の光線は機関銃に耐えうる装甲しか持たない歩兵戦闘車を直撃し、または偶然接近していた歩兵部隊にも着弾する。
「一部歩兵部隊との通信途絶!!、連絡取れた部隊もがれきの山で身動きが取れなくなっている模様!」
作戦司令部モニターには通信途絶した部隊の大半の位置情報も記載されていた。
それが示すのは、ビルの倒壊で下敷きとなったり、光線の直撃した事例は決して多くないことだった。
「ちっ、やはり接近は困難か。ひとまず動ける部隊には敵至近から撤退させろ!しかし……あんな攻撃はデータに無いぞ……」
「救助を求めていますが、どうしますか?」
スターンは悩むが、オペレーターから命令を求められる。
「……救助活動は最小限に。爆撃航空団及び地対地ミサイル支援部隊に攻撃命令を」
「はっ……」
攻撃命令を受け、ノースダコタ州マイノット空軍基地、サウスダコタ州エルスワース空軍基地より離陸し、戦域後方にて空中待機をしていた第5爆撃航空団、第28爆撃航空団が作戦空域へと前進する。
先の壁破壊作戦において壁を破壊できなかったことによりこの被害を蒙った為、彼らは復讐に燃えながらミサイルを撃ち出した。
同時に、M777榴弾砲よりもさらに後方に展開するM270
両部隊より発射されたミサイルは敵個体表面上に巨大な爆炎を幾つも生み、不協和音が何回も響き渡る。
さらに一部の爆撃機は直上から多数の爆弾を降らせることで、さらに追い打ちをかける。
だが、どんなに努力しようとも修復を繰り返していくその姿に、将官含めた兵士たちは困惑を通り過ぎ、畏怖すら覚えていく。
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アメリカ合衆国バージニア州ハンプトン
ラングレー空軍基地
サンフランシスコにてアメリカ軍が奮闘している一方で、第117戦闘飛行隊はラングレー空軍基地に留め置かれていた。
「どうして、私たちも一緒に戦うことは出来ないんでしょうか?」
副隊長であるリラ・カヴィル少尉がオーブリー・バース少佐を問い詰めるような表情で尋ねる。
「
「どうしてですか?」
バースの答えに、マリオン・ペイリー少尉がさらに追及する。
「いわゆる戦艦保全主義と同じだ。兵器であれば、替えが効く。だが、個人の能力がそれぞれ違うプログレスは貴重な戦力だから、というのが上の言い分だ」
「……兵士だって替えは効かないですっ……!」
替えが効く、その言葉にチェルシー・ウェイン少尉が憤慨する。
「建前だ、我々を動員させない理由付けにな。本音はそうは思って無いはずだ」
「……本当に建前?」
バースに、アイリーン・マクニール少尉が異論を表す。
「……本当だ。プログレスを失うのがかわいそうだからと言った感情論でもない。まあ、私はそう思ってるのかもしれないが……」
「バース少佐……」
バースが会話で生まれた薄暗い空気に嫌気が差し、立ち上がる。
「さて、辛気臭い話は息が詰まってどうにもならんから、ここまでにしよう……ん?待て」
言い切ろうとした時、突然携帯端末の着信が入る。
「……なんだ?何……本当なんだな?……そうか、分かった。準備する」
バースは携帯を取り出し通話に出ると、段々と眉をひそめ、表情を暗くしていく。
「何があったんですか?」
「……サンフランシスコの第1次防衛線が破られた。直にプログレス部隊にも後方支援として動員がかけられる」
その言葉を聞き、マーシャ・シェルベリ少尉とサラ・カールソン少尉は初実戦が迫ってることを確信し、身を引き締める。
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アメリカ国防総省 作戦指揮センター
「第1次防衛線が完全に崩壊しました……!スターン中将の元で部隊は撤退を開始しています」
『ダークヒンデリア』から幾度も発射された大口径光線は摩天楼聳え立つサンフランシスコを瓦礫の山とした。
高層ビルは倒壊し、もしくは引き裂かれ、破片や瓦礫を地上へと墜とす。
そんな惨状では満足に地上部隊を活動させることもできず、さらにビル群の倒壊で遮るものが無くなったことでレーザーの標的となった。
そうした状況から、スターン中将は撤退を決断した。
「遅滞戦闘実施を各部隊に要請!奴は大口径の爆弾や砲弾を食らったときは行動を停止している、その状態を維持させるんだ!」
アッシャーが声を上げて追加の命令を下す。
「プログレス部隊は前線に投入しないのか?」
「……確かに彼女たちの力は強力でしょう……しかし、あれに抗えるとは思えません。もし全滅してしまったらと考えると、我々は貴重な戦力を失う事になる上、無駄死にさせてしまうことになります。そのリスクを考えると、後方支援が最善でしょう」
ギレットの疑問にアッシャーは理由付けを考えて答えるが、その表情には苦悩が伺えた。
その時、オペレーターが声を上げる。
「白の世界【システム=ホワイト=エグマ】よりメッセージを受信!『太平洋上で遊兵となっている艦隊に対して、私たちは支援策を講じます。一名にその役割を任せ急行させています』と」
「返信は不可能か……すぐに第3艦隊に伝えろ!だが……支援策というのは何だ?」
アッシャーは今までビジネスでしか関わりが無かった白の世界が突然話を持ち掛けてきたことに違和感を感じた上で、その言葉の意味に疑問を持つ。
_同時刻_
太平洋上
アメリカ海軍第3艦隊旗艦「ジェラルド・R・フォード」
東へと進路を取り、可能な限りの速さで本土へと向かうアメリカ海軍第3艦隊戦闘部隊。
だが、サンフランシスコの防衛線が崩壊したことを知り、それが徒労に終わろうとしていることを感じ取る。
イーストンは常に無言を貫きながら憂鬱な表情を浮かべており、空母戦闘指揮所の要員の誰もが言葉を交わそうとはしなかった。
「南西より所属不明機接近!」
「敵か!」
「データ識別します!いえ……これは、ホワイトエグマの輸送機です!」
その機体は白の世界の技術で作られた超音速輸送機で、シンガポールの
第3艦隊上空に到達した輸送機は海上からはっきり視認できる低空へと高度を下げ、
そして、「ジェラルド・R・フォード」の甲板にて投下時の衝撃を和らげる為のユニットである光の繭が消えた後、その眩いばかりの光から現れたのは、純粋に少女と呼ぶには異質の存在だった。
短くカットされたような白い髪に、負の感情を感じさせない程に純粋で澄んだ黄色い瞳を持っていた。
容姿はボディラインがはっきり見えるレオタード状の服装、肩マントや前が開いたスカートを身に着け、側頭部には何らかの機械が取り付けられていて、体の傍には自律浮遊する縦に長い盾状の物体があった。
さらにそれ以外の体の各所には機械状の部品が伺えた。
明らかに人間ではないその少女は甲板要員の混乱をよそに、その一人に対して言葉を告げる。
「白の世界【システム=ホワイト=エグマ】より来ました。司令官に会わせてください」
光の繭が甲板に到達する直前、イーストンは国防総省との映像通信を行っていた。
「なるほど、彼らの輸送機が接近していたのは、支援策を実行するためですか……しかし、1名だけも気になりますが、やはり一番疑問に思うのは内容ですね」
『当然だな……だが、向こうから話を持ち掛けてくる以上、無益ではないことは確実だろう』
ふむ、とイーストンはぼやく。
その時、一人の士官が彼に声をかける。
「閣下!輸送機より光の繭が落下し、その中から少女らしき者が現れ閣下との対面を希望しているようです……!」
「どういうことだ……」
イーストンは疑問を浮かべるが、その疑問を問われた士官も困惑の表情を浮かべていた。
「分かりません。それが何かの支援策なのでしょうが……少なくとも白の世界から来たと明言してますので、会うに越したことは無いかと」
「分かった。では、国防長官」
『ああ、期待しておく』
イーストンは国防総省との通信を切ると、すぐに甲板へと降りる。
「それで、貴方が白の世界から支援策を実行するために派遣されたということか?」
「はい、それで合っています。ああ、忘れていました。私、コード
「第3艦隊司令のバートランド・J・イーストンだ。……失礼ながら、あなたはアンドロイドです?」
イーストンは自分の予測を確信させるために、その疑問を投げかけた。
彼女は不快を表すことなく、素直に話す。
「はい。白の世界で創り出されたアンドロイドと、システムには記載されています」
「そうか、では支援策について話を聞かせて貰えないだろうか?我々が何も出来ないことは自覚してるが、やはり内容を聞かないと安心できない」
「分かりました。では、少しお待ちを」
彼女は、手を傍にやり幾つか動かしていくとキーボードと同じくらいの大きさのホログラムが現れる。
彼女がそこに現れたカーソルを幾つか押すと、第3艦隊全体を覆う光輝く円が現れる。
「あなた方アメリカ海軍の多くが戦場から遠く離れた地にあると聞いています。そこで、私たちが用意した支援策は、この艦隊を転送装置によって北アメリカ大陸近海へと転送することです」
「なに……!?」
イーストンは驚く。
確かにありがたい気持ちは含まれていたが、それよりも驚きや困惑の方が大きかった。
それを確かめる為、再び疑問を投げかける。
「その支援策は戦略的に大助かりするが……提供された多くの技術を兵器開発に注ぎ込み、荷電粒子砲などを開発してきたアメリカにあなた方白の世界は敬遠していたはずでは?」
支援策を講じると伝えられた時点から一番疑問に思っていたことを口に出す。
その反面、不快を与えるかもしれないという危惧を感じていた。
その言葉を受けたセニアは少し考えた素振りをすると、まっすぐイーストンの目を見て話す。
「それとこれは話が別です。あなた方が開発した兵器を人間同士の戦争に使うと言うのなら、看過できません。ですが、私たちが知っているものと違うとはいえ、ウロボロスが相手ならば───私たちが黙ってみていられる道理はありません」
彼女は力強く答える。
その言葉にイーストンは自分の考えが幼稚であったことを恥じる。
「そうだな、先ほどの質問は失礼だった。それに加えて一つだけ要望に応えてくれないか」
「なんでしょうか?」
「空母ジョン・F・ケネディを救助活動用の艦艇として、ハワイに送りたい。こちらの準備が完了次第、ジョン・F・ケネディをハワイ沖に転送してくれないか?」
「分かりました、少し演算出力が要りますが、些細な違いです」
素直に応じてくれたことにイーストンは感謝し、いつの間にか頭を下げていた。
「感謝する、では急いで準備する」
そして、「ジョン・F・ケネディ」の艦載機を他艦へと移した後、代わりに救助活動要員を乗せて転送準備が完了する。
「では、転送開始します。
そう言葉を発すると、彼女の体が白く煌めき輝き始める。
ホログラムには「使用権限承認」との文字が表れ、艦隊を覆う円の輝くが強まり、さらに各艦それぞれにも艦を囲う円が表れ、出力が強まっていく。
先に「ジョン・F・ケネディ」の転送が進み、眩いばかりの光に覆われた直後、ジョン・F・ケネディは粒子となって消失する。
「本当に転送されたんだろうな?」
「はい、既に確認しています」
続いて艦隊全体の転送が開始され、セニアはホログラムに浮かぶハンドルを掴み回して、彼女のエクシードと転送装置を連携させ、さらに出力を強める。
そして、先ほどの「ジョン・F・ケネディ」と同様に、眩いばかりの光に覆われた後、その海域から姿を消す。
目すら瞑った彼らが見たのは転送前と変わらぬ艦隊の光景だった。
「すぐに現在位置を確認しろ!」
「サンフランシスコより西に100kmの海域です!」
「よし、艦隊を再編成!全艦載機発艦準備!」
イーストンは周りにいた参謀や甲板作業員、偶然近くにいたパイロットらに命令を出すと、空母戦闘指揮所に戻ろうとするが、彼女に気づき足を止める。
そして、歩んだ道を戻り、彼女に声をかける。
「支援策には感謝する。それと、貴方は今後どうするのだ?」
「いえ、実は支援策は終わってません。私も皆さんと戦います、私もプログレスですから」
イーストンはその言葉に驚きの表情を見せつつ頷く。
「分かった。貴方の行動に口を挟むつもりは無い、そして、全力で支援する。恩人を死なせては元も子もないからな」
「!……ありがとうございます」
意外な言葉をイーストンの口から聞き、セニアは少し驚いた表情を浮かべる。
しかし、すぐにニッコリと微笑み、感謝の言葉を伝える。
そして、数分後。
艦載機の発艦準備が終わり、3隻の空母より次々に戦闘機が飛び出していく。
第3艦隊の復讐の刃が『ダークヒンデリア』へと向けられる。
※次回予告
世界各国による防衛戦は続き、激しさを増していく。