Muv-Luv*Vierge 護世界の少女達 血潮染む運命に導かれる 作:空社長
次で【防衛戦】は本当に終わると思います。
感想、評価等、お待ちしています。
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イギリス海峡
空母「クイーン・エリザベス」に大きな損害を与え行動不能とし、空母打撃群構成艦艇の多くを無力化した『ヴォークワイバーン』は「プリンス・オブ・ウェールズ」空母打撃群に対する追撃戦を行った後、ブリテン島への本土侵攻を開始した。
ワイト島の王立第39砲兵連隊からの妨害を一蹴すると、最も近いポーツマス市へ『リトルヴォーク』の軍勢と共に上陸を果たす。
イギリス軍は第4歩兵師団にポーツマス市民の避難を委任すると共に、FV4043チャレンジャー2を含む第1装甲師団を迎撃に当たらせた。
その上空では王立空軍の第21飛行群と、在英アメリカ空軍第48作戦群航空隊が『リトルヴォーク』との交戦を開始する。
「スナップ1、
『こちら、レイブン1。我々が援護する。全力で行け』
「無論だ!」
BAE-Sテンペストで構成される飛行隊が先陣を切り、機体下部に取り付けられている
チャレンジャー2も120㎜ライフル砲を撃ちだしてドラゴンの頭を吹き飛ばし、息をつく暇も無く自動装填され、『リトルヴォーク』の大蛇のような胴体部分に穴を穿つ。
しかし、一見上手くいっているように見えるのは、ただの錯覚に過ぎなかった。
チャレンジャー2数両が『ヴォークワイバーン』の高威力光線によって吹き飛ばされ、『リトルヴォーク』が撃破できているのもサイズが小さいからに過ぎず、次第に物量に圧倒されていく。
航空攻撃も『ヴォークワイバーン』の胴体部から散発的に放たれる光線によって決定打とはならなかった。
「撃て撃て撃ちまくれ!!」
『ですが、このままでは押しつぶされますよ!』
『怖気づかないでくださいよ!私たちは行かせるわけにはいかないんです!』
チャレンジャー2の小隊が他の小隊同様、抗戦を続ける。
だが、赤い光線によって装甲を貫かれ撃破される
「小隊長、敵後方に炎が!」
『……なんでだ?』
その時、『リトルヴォーク』の集団の中心に鋼鉄の弾頭が撃ち込まれ爆発によって数体の『リトルヴォーク』が屠られ、『ヴォークワイバーン』にも損傷が生じ、激しい攻撃が一時的に止む。
その正体は北海にて遊弋するヴァンガード級原子力弾道ミサイル潜水艦から発射された通常弾頭型のトライデントであり、海軍司令部及び潜水艦隊司令部の制止を無視して実行に移していた。
結果的には第1装甲師団の窮地を救うこととなり、勢いが減じた軍勢に対して抵抗を続けながら、第4歩兵師団は多くの市民を避難させることに成功する。
だが、侵攻自体を押し止めることには繋がらず、避難完了の報告を受けた第1装甲師団は撤退を開始し、ポーツマス市はウロボロスの手に落ちることとなった。
_UTC・GMT3月23日午前0時10分_
イギリスイースト・オブ・イングランド地方ハートフォードシャー州イーストベリー
ノースウッド司令部
「状況はどうだ?」
イギリス軍の実質的な最高指揮権を持つブレイス首相が口を開く。
「言いにくいのですが……あまりよろしくありません。『ヴォークワイバーン』及び『リトルヴォーク』の集団は現在ハンプシャー州のリップホックにて侵攻を停止しています。ですが、いつ再開するかわかりませんし、何より彼らは行軍中の我々の攻撃を全て退けています」
ダリル・ウィンストン国防参謀長がブレイスの質問に答える。
「これはもはや通常兵器では撃破することが困難だと言う証拠の現れだ。即時核攻撃を進言します」
会議に参加するアメリカ軍士官が進言する。
それに対し、一人の士官が声を荒上げる。
「バカなことを言うな!!もはや核攻撃を許容できるほど、彼我の距離は離れておらん!市民の避難もまだ完了していないのだ!」
「ですが、それ以外の攻撃手段が無いのも事実では?」
しかし、アメリカ軍士官からも正論をぶつけられ、さらに激昂する。
「プログレスの投入はいかがでしょうか?四世界の情報によれば、ウロボロスとの交戦は可能ですし」
「……問題なのは、今回の侵攻に対しては効果のある攻撃手段が不明だと明言したことだ」
別の士官が進言するが、スポール国防大臣が答える。
「いかがしますか?ウィンストン参謀長」
スポールがウィンストンに問う。
「核攻撃は容認できません、まずは市民の避難を最優先に。それからです。今は持てる最大火力をもって、敵の侵攻を遅らせることが重要です」
「……わかりました」
アメリカ軍士官が甚だしく落胆した様子が遠目からでもはっきりと映った。
「落胆しているようですが、では聞きます。アメリカは敵に対して核兵器を使用するのですか?」
「それは大統領の意思次第ですが、通常兵器で効果が無いのであれば、使用するでしょう。はっきりと断言しておきます」
1時間後、熾烈な航空攻撃に曝されている中で、『ヴォークワイバーン』は引き連れている軍勢と共に再び行動を開始。
イギリス陸軍がロンドン手前で防衛線を張る一方で、空海軍は攻撃を続けた。
再浮上した王立潜水艦隊のアスチュート級、トラファルガー級原子力潜水艦が攻撃に加わり、一斉に巡航ミサイルが発射され、対艦ミサイルも弾薬庫が空になるまで撃ち尽くされる。
さらにB-1Bで構成されるアメリカ空軍第34爆撃飛行隊が来襲し、ありったけの対地ミサイルが『ヴォークワイバーン』へと着弾する。
その圧倒的な攻撃力による爆発は周辺に影響を与え、『リトルヴォーク』の集団はほぼ全てが殲滅され、『ヴォークワイバーン』も損傷を負う。
だが、イギリス軍の兵器が常に絶え間なく攻撃できるわけ無かった。
『ヴォークワイバーン』が修復を行った後、周辺に多数の光線を乱射し、まるで見せしめのように多くの建造物、道路を破壊していく。
そして再び、『リトルヴォーク』の軍勢を生成していた。
その何も生まない結果に、イギリス軍の士官らは憔悴感を抱いていた。
「市民の退避はどうなっている!」
「間に合いません!民間人が退避する前に敵がロンドンが到達するのは確実かと……!」
「もとよりロンドンに近すぎて核攻撃は不可能か……核攻撃で民間人を熱風や放射線に曝すのはもってのほか、我々は甘く見ていたっ!!」
ウィンストンは自分自身に腹が立ち、机に拳を叩きつける。
「それではロンドンが被害を受けてしまいますが」
「再び作り直す、そもそも人の命が最優先だ、生きていれば都市などいくらでも立て直せる。もとより我が国は第二次大戦時に空襲を受けて大きな被害を蒙っていたが、それを復興させている。その為に我々軍は国民の盾となる」
ウィンストンはアメリカ軍士官の質問に、主張を押し出した。
「……分かりました、では我々在英アメリカ軍は最善を尽くします」
「国防参謀長、何でも申し出てくれ。我々は政治家だ、武器以外の戦い方などいくらでもある」
数十分後、『ヴォークワイバーン』はサリー州ギルフォードへと到達。
イギリス・アメリカ連合空軍の抵抗虚しく、ギルフォード大聖堂を真っ二つに破壊され、その遺構に目も暮れず、ロンドン方向へと進路を取り続ける。
「リッチモンド・アポン・テムズ区のブッシー公園と、リッチモンド公園を中心としたエリアに防衛線を構築する!」
「ですが、それではキングストン・アポン・テムズ区と、ロンドン南西を見捨てることになりますよ!」
ノースウッド司令部内ではウィンストンの決断に、一人の参謀が声を上げて反対する。
「部隊が集結でき、最大限の火力を発揮するには、この場所しかない。それより前では部隊の集結が間に合わないだろう。幸い密集住宅地は少ない上、避難も完了している」
司令部にあるイングランド地方の地図を映したモニターに、防衛線の構築を表した図が現れる。
「第1装甲師団を前面に展開し、第3、第6歩兵師団はIFV*1、APC*2を受領した上で、戦車隊の援護へ投入する。第4、第5歩兵師団は引き続きロンドン市民の避難を急がせろ!」
「では、リッチモンド公園には戦域部隊司令部隷下の第1砲兵旅団や王立砲兵等の支援部隊を展開させます」
「空軍及び海軍は引き続き攻撃を続けてください、アメリカ軍も同じように」
「了解した」
_UTC・GMT3月23日午前1時50分_
ロンドン地区リッチモンド・アポン・テムズ・ロンドン自治区ブッシー公園
ギルフォードからサリー州とロンドン地区の境目に至るまでに激しい攻撃は続いていた。
海軍の残存して立て直した艦艇群も攻撃を開始。
アスチュート級、トラファルガー級らは上部甲板上からVLSを開口し、幾度も巡航ミサイルを放ち、ヴァンガード級から核弾頭を積載する弾道弾を除いた通常弾頭の弾道弾を容赦無く撃ち込んでいく。
さらに流線形の機体形状を持つB-1Bの第34爆撃飛行隊は燃料消費を気にせず全力で加速しながらも滑空誘導爆弾や大重量の無誘導爆弾を多数投下し、『ヴォークワイバーン』表面上に姿が見えないほどの大量の爆発を発生させる。
テンペスト、F-35らの戦闘機隊も常に遊撃を欠かさず、『リトルヴォーク』を1体ずつ確実に葬っていく。
「やはりだ!リトルヴォークの生成速度が下がっている!」
『ヴォークワイバーン』自体の修復量も修復速度も変化は無かったが、幾度も殲滅される『リトルヴォーク』に限っては再生成の速度及びその数が落ち込んでいる様に見えた。
しかし、それでもその数は未だに圧倒的だった。
第1装甲師団に属する戦車隊の射程に入ると、次々に『ヴォークワイバーン』に対して砲撃が飛んでいく。
「まじかよ、こんな骨董品も保管してたのかよ!?」
砲撃を行うのはチャレンジャー2だけでなく、既に第1線には無いチャレンジャー1や緊急国防保管兵器に指定され整備を行われていたFV4201チーフテン主力戦車や少数ながら解体間近であったFV214コンカラー重戦車すらいた。
苛烈な砲撃により『リトルヴォーク』が次々に粉砕され、その傍から対戦車ミサイルが放たれ機関砲が装甲表面を叩く。
「第26大隊は敵左側面へ回り込め!いいか、側面だぞ!」
緊急国防保管兵器となっているFV101スコーピオン偵察戦闘車、FV108セイバー偵察装甲車、FV721フォックス装甲偵察車らが戦車を上回る機動力で小規模な公園を駆け回って側面へと周り、76㎜砲で『リトルヴォーク』の装甲を貫き、破損箇所を30㎜機関砲が吸い込まれるように入り込んで、内部を破壊していく。
その『リトルヴォーク』が耐久が限界を迎えて爆散し、第26機械化大隊は『リトルヴォーク』の一部を誘導する事に成功する。
「誘導成功!アタッカー、攻撃を頼む」
『了解した。急行する』
第26大隊ではスコーピオン以外は攻撃能力に欠けるため、AH.1攻撃ヘリがその役目を担った。
AH.1は時折飛んでくるビームを回避していきながら対戦車ミサイルを放つと共に、大量の対地ロケット弾をばら撒く。
数体程度ではこの攻撃を防ぐ事はできず、不協和音を鳴らしながら爆散する。
だが、優勢ばかりではなく反撃による痛手も当然蒙った。
最も被害受けたのは重く速度の出ないコンカラー重戦車であったが、それでも純粋な装甲の厚さでは他の車両を圧倒する耐久性によって1回ビームを食らった程度では撃破できないタフさを見せつけた。
数回の連射を受け、幾つもの車両が撃破されていくが、それを戦車の物量で補っていく。
それがリッチモンド・アポン・テムズ区を防衛線に選んだ理由だった。
後方のリッチモンド公園から支援部隊が前線への支援を常に継続していた。
数十両以上のAS-90ブレイブハート自走榴弾砲からの155㎜榴弾砲の猛射が『ヴォークワイバーン』へと向かい、L118榴弾砲が弾薬のある限り火を吹き続ける。
MLRSからは轟音と共に誘導ロケット弾が吐き出され、精密誘導によって『ヴォークワイバーン』の頭部に着弾をしていく。
その他に注意を引く程度で、自走対空ミサイル車両のストーマーが『リトルヴォーク』へと大量の対空ミサイルを撃ちだしていく。
数回以上に及んで『リトルヴォーク』が殲滅されると、『ヴォークワイバーン』は突如として動きを変える。
一時的に動きを止めると、再生成した『リトルヴォーク』の集団で自身を完全に囲ったのだ。
「ヴォークワイバーンがリトルヴォークによって姿を覆っています!目視ではヴォークワイバーンを視認できません!」
動きを変えたことに警戒したが、最初はこちらの攻撃を防ぐためと思われた。
だが、現場の兵士達は何とも言えない予感に襲われていた。
「各車、砲撃しつつ配置を変更。コンカラーを中心に古い車両で囲え、最新兵器は一番外側だ。人数も外よりに多く配置しろ、真ん中は老兵でいい」
「なぜそんな命令を?」
「嫌な予感、それだけだ」
その予感は的中する。
突如として自身を覆っていた『リトルヴォーク』の集団を自身から放つ衝撃波で吹き飛ばすと、口腔に貯めていた赤く眩いばかりに輝く光球へエネルギーを増幅させさらにその塊は口に収まらないばかりの大きさまで拡大する。
「ヴォークワイバーンに高エネルギー反応確認!!」
「何だとっ!?」
ロンドン中心からもはっきり捉えられるほどの高エネルギー反応。その報告がオペレーターからもたらされると、司令部内は大きくざわついた。
そして、『ヴォークワイバーン』は口腔から増幅しきった光球の弾丸を一気にブッシー公園の中心へと撃ちだし、ブッシー公園全体を爆炎が覆いつくした。
「第1砲兵旅団より緊急連絡!ブッシー公園を爆炎が覆いつくしたと!第1装甲師団の消息は不明!」
「奴が迫ってくる。リッチモンド公園配備の部隊は直ちに後退しろ!」
ノースウッド司令部に届いた報告に誰もが戦慄すると共に、ウィンストンは辛うじて命令を出し、第1装甲師団の消息も明らかにしようと動き出す。
だが、それは簡単に判明した。
「国防参謀長!第1装甲師団より通信が!」
『こちら第1装甲師団!一応生き残っております……国防義勇軍の老兵たちはコンカラーごと亡くなりましたが……』
「……どういうことだ?」
第1装甲師団師団長はウィンストンに対して詳細を説明する。
それは中央にコンカラー・チーフテン含む旧式の車両を置き、外側よりに最新鋭の車両を配置していたために、壊滅した常備戦力が抑えられたことだった。
『ヴォークワイバーン』がビームではなく砲弾モドキを放ったのも、外側は爆風ダメージが少なく功を奏していた。
中央の車両にはかつて現役で車両を操っていた国防義勇軍の老兵が自ら志願したのも配置転換が速やかに進んだ理由だった。
『ですが、それでも被害は少なくありません、我々第1装甲師団では副師団長が戦死し、第3歩兵師団では師団長が戦死なされました。複数の大隊長も戦死したため、再編を行わなければ組織的戦闘を行うにはぎりぎりかと』
「被害総計は?」
『最初の戦闘から含めるのであれば、5分の3程に戦力は減っています。ほぼ半壊と言っても過言ではないでしょう』
その報告にウィンストンは顔をしかめるが、すぐに次の言葉を口に出す。
「支援部隊には後退命令を出した。国防義勇軍も総動員を行い、ゲリラ戦を展開するつもりだ」
『……了解ですっ……。我々もすぐに奴を追います』
師団長の声には悔しさが滲み出ていた。
_UTC・GMT3月23日午前3時10分_
ロンドン地区ワンズワース・ロンドン自治区
リッチモンド公園を突破した『ヴォークワイバーン』はワンズワーク区パト二ーで突然方向を転換し、テムズ川南を東進するルートを進む。
『リトルヴォーク』は『ヴォークワイバーン』の動きと同調することなく、南ロンドン各地に散らばった。
マートン区ウィンブルドンでは複数体の『リトルヴォーク』によって数棟の建物が廃墟と化し、マートン区最大の商業中心地が無残な姿となろうとしていた。
FV107シミター装甲偵察車がそれを阻止しようと、30㎜弾を装甲に叩きこむ。
しかし損傷を負わせることはできたものの、撃破に至らずに反撃を受けて大破させられる。
その代わりに、チャレンジャー1戦車が前進し、120㎜砲を叩きこんで無力化するが、その残骸は住宅へと突っ込んでしまう。
「これが……本土防衛というものか」
ランベス区ブリクストンにも現れた『リトルヴォーク』の群体は、1つに合体した『テンプルヴォーク』となり、横薙ぎに放たれるビームによって古い伝統ある街並みを幾つも破壊しながらも、戦車隊との戦闘を行っていた。
「くっそ!奴は俺らの事を遊びながら街を破壊しやがる!」
時折放たれるビームによって数両が撃破されるなど苦戦を強いられていたが、テンペスト戦闘機が上空から急襲し、レールガンを叩きこんで墜落させる。
再び飛び立つ前に戦車隊が一斉砲撃することにより、なんとか撃破に成功する。
「他のところも報告が……行くぞ!」
_同時刻_
ブレント・ロンドン自治区ウェンブリー
「来る……!」
少女が左で二股の槍を持ち、右手は魔法陣のような物を展開して立ち止まる。
視界に現れたのは、赤いビームを幾つも住宅に放ち破壊を繰り返す『リトルヴォーク』の姿だった。
「私が始末するよ、私が別世界の人間だからなんて関係ない、人が殺されるのは見たくもない」
少女は金色の短めの髪をサイドアップでまとめ、上着はクロップカーディガンを着ていて腰にマントを巻いている姿だった。
「ですが、対処法が!」
「私たち黒の世界は、プログレス関係なく魔法使える人がいる。私もその一人だから、出来ると思うよ」
「だが……ちょっと……!」
少女は話を聞かず、飛び出す。
同時に『リトルヴォーク』も少女の姿を視認し、目掛けて突っ込んでくる。
その背中から見ても、明らかに人間らしからぬ姿。
それこそ少女が黒の世界の住民である証だった。
「『炎の中に滅せよ』……当たって!」
少女は槍を突き出す事も無く、右手の魔法陣から詠唱して発動させた火球を『リトルヴォーク』に撃ち込んだ。
『リトルヴォーク』は対して気にすることも無く火球を受けるが、その代償として胴体が大きく削がれていた。
「私らの魔法を甘く見ると、痛い目見るよ。さてっ」
少女はそう言い捨てると高く跳躍し、墜落した『リトルヴォーク』目掛けて槍を突き刺す。
「『グランド・デミラル』!」
突き刺す直前にそう言い放つと、『リトルヴォーク』の胴体は四散して消滅した。
「……先ほどは制止して申し訳ありません。助かりました」
「いいよ、あと私は魔女王サマに報告しなきゃいけないから一旦帰るね」
「あ、ありがとうございました」
(私の魔法、普段のウロボロスなら一撃で殺せてた。でも、この敵は1撃じゃ死なない。だったら、あの『ヴォークワイバーン』はどのぐらい強いの?)
彼女──竜の血を継ぐ少女──クラリッサ・リュラドミル。
少女の懸念を表すように、オッドアイである彼女の右目に輝く金色の隻竜眼は金色が淡く変化するほど揺れ動いていた。
_UTC・GMT3月23日午前4時40分_
ハートフォードシャー州イーストベリー
ノースウッド司令部
「ブロムリー区にも『リトルヴォーク』出現を確認!現在戦闘機隊が対応中!」
「ニューアム区に『テンプルヴォーク』も出現しました!戦車群が対応中ですが、増援を要請しています!」
「ロンドン全域……特に南ロンドンに『リトルヴォーク』の報告例が多数!」
モニターには敵を示す多数の赤点が表示され、士官らが司令部内を走り回る光景が相次いだ。
「敵侵攻地域を可視化しました!一部の孤児院付近の侵攻が停滞しているようです!」
「孤児院……?どういうことだ?」
「不明です、情報不足しています」
「まあ……いい。我が何とかすべきなのはあの巨体だからな」
ウィンストンは息を吐く。
しかし、次の瞬間オペレーターから急報が舞い込む。
「デトフォードにて停止する『ヴォークワイバーン』より高エネルギー反応!」
「なぜだ!集結している部隊もないはずだ!」
「分かりません……ですがこれは攻撃の兆候です!」
「そんなことぐらいわかっている!」
先ほどの第1装甲師団が半壊した攻撃がフラッシュバックし、ウィンストンは焦りの余りオペレーターを強く叱責してしまう。
その間に充填は完了し、『ヴォークワイバーン』の口腔が赤く光り輝き、真っ赤な光線が放出し薙ぎ払われた。
ランベス区、ザザーク区の北部一帯、『ヴォークワイバーン』より6km圏内の建物が完膚なきまで破壊され、壊滅状態と化していた。
「ランベス区の映像が途切れました、ロンドン塔からの映像に切り替えます!」
そこで司令部の人員が見たのは、燃え盛る南ロンドンと光線を吐き出し小康状態となってそびえ立つ『ヴォークワイバーン』だった。
彼らの苦難はまだ続く。
※次回予告
激闘の続く戦場、重なる敗北。
そして、最大威力の兵器使用が検討されていた。