Muv-Luv*Vierge 護世界の少女達 血潮染む運命に導かれる 作:空社長
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ノースウッド司令部
「これは……」
「黒の世界からの、魔女王殿下から特級魔法通信文書です……」
ブレイスとスポール、ウィンストンらの目の前には何らかの力で浮かぶ一枚の羊皮紙に似た紙。
そこには、宛名と共に多数の文章が羅列されていた。
要約すると、最初は挨拶代わりの枕詞を簡潔に記したのち、先遣部隊への後続として用意されていた部隊が突然の『ヴォークワイバーン』からの砲撃に巻き込まれ、半壊。
幸い戦死者はおらず無事な者も多いが、砲撃に巻き込まれた住民の救助活動を行うために進軍を停止。
代わりの増援部隊を送り込むが、
「本当……なのか?」
「報告!スピタルフィールズに着弾を確認したとのことです!被害は大きく攻撃としか思えない、と」
オペレーターよりタワー・ハムレッツ・ロンドン自治区スピタルフィールズ、デトフォードから北西にある金融街が被害を受けたことが報告される。
ドローンによって観測された映像には、レンガ作りの建物が廃墟と化し、高層ビルが燃え盛りガラス片をまき散らしながら崩れ落ちる様子が見られた。
「あの時と同様に、予想される最大射程の砲撃か……」
「誰が……誰が予想できたっ。奴が微小だったにもかかわらず魔力を探知して、その発生源である後続部隊に対して正確に砲撃を打ち込むなどとっ!!」
『ヴォークワイバーン』は微小ながらも目の前で戦っていたクラリッサ達よりも数が多い魔力反応を探知した直後、眼前の敵を無視して正確な砲撃を撃ち込んだ。
全滅させることは不可能ではあったものの、多くの負傷者を発生させたほか、砲撃地点の住民に大きな被害をもたらし、後続部隊は救助活動に専念せざるを得なかった。
黒の世界からの後続兵力の参加を前提としていたイギリス軍の作戦は崩れ去ったも同然だった。
「立て直しを図るしか……どう思う、ウィンストン国防参謀長?」
「今からは無理です、それにこれ以上どこに退くんですか?我々に退く場所なんてありませんよっ!」
ブレイスの発言に、ウィンストンは反論を重ねる。
スポールも国防大臣の職に就く者として頷く。
「!……首相!これを見てください!」
論議を交わす三人は隣にいた秘書が声を上げるのに気づき、指をさした方向にあった文書を見る。
「文章が変わってる?」
「……”彼女らを信じてくれ”……あの者達か」
三人が新たに映った言葉を認識するとともに。その紙は塵となって消え去った。
「全軍に通達。作戦は修正されるが、諸君らのやることは変わらない。戦闘を続行せよ」
_UTC・GMT3月23日午前9時26分_
ルイシャム・ロンドン自治区デトフォード
壁面がひび割れ、崩れ落ちそうな中層マンションの屋上に立つ三人の少女達。
時を同じくしてクラリッサ達にも通信を送ってきた子を介して同様の連絡が届いていた。
その最後に、「必ず……必ず迎えに行くからっ……!」と言い残して。
「……後続は間に合わないっすね……ノヴァたちだけっすか」
ノヴァは口調こそ変えないものの、滲み出る恐怖によってその声のトーンは下がっていた。
「……でもっ、やるしかない」
擦り傷だらけの手をギュッと握りしめ、クラリッサは力強く言い放つ。
「イギリス軍の攻撃に私たちも歩調を合わせる、何時間でも持ちこたえて見せる!」
「うん!私もまだ全力で撃てるよ!」
クラリッサの決意の籠った言葉に、アビーも元気よく返す。
空からは米英軍のF-35から多数の空対地ミサイルが放たれ、地上を這うチャレンジャー1・2及びチーフテンの混成戦車部隊が頭上の『ヴォークワイバーン』めがけて砲撃を放つ。
さらに、テンペストがレールガンを放ち、B-1爆撃機隊がありったけの誘導爆弾をばら撒き、自走榴弾砲が山なりの弾道で胴体を狙い撃つ。
『ヴォークワイバーン』からの反撃は必至であり、最も至近にいた戦車部隊を砲撃によって薙ぎ払い、爆撃の為に速度を落としていたB-1爆撃機の翼を切り裂き、差し向けられた『リトルヴォーク』が近接戦闘が困難な自走榴弾砲を吹き飛ばしていく。
けれども、軍人らは足を止めることを選択しなかった。
守るべき場所があり、必ず神は人に希望をもたらすと信じていたからこそ、彼らは敵の攻撃を少しでも長く引き付けておくことに専念し続けた。
その渦中に少女達は飛び込んだ。
「『
アビーが杖を前に突き出し、彗星の如く光り輝く大きな矢を放つ。
イギリス軍の陽動に『ヴォークワイバーン』が気を取られている間に、その長い首筋にぶち当たり粒子状のものが散らばると共に、装甲が大きく凹む。
「『炎の中で、悉く焼き尽くせよ』……発射」
アビーに意識を向かせないように、クラリッサは敵の眼前まで近づき、左手の魔法陣から詠唱して生み出した複数の火球を回避させる暇も与えず、その装甲を焼き焦がす。
さらにクラリッサは敵に猛ダッシュで駆け出すと、燃焼して脆くなった装甲表面に槍を突き刺す。
「『グランド・デミラル』!!」
そう叫ぶと、槍が鉄をも溶かすほど高熱となり、それが限界に達したタイミングで爆発を起こし、その装甲表面を大きく抉る。
『ヴォークワイバーン』が大きな呻き声を上げる中、ノヴァは高速移動の能力で敵に察知される前に近づき、生み出された数体の『リトルヴォーク』を瞬殺。
そして、『ヴォークワイバーン』の体にある一部分へと短剣を差し向け、短剣は火花を散らしながらある物を削っていく。
鋼を削るような激しい火花が生じた後、それは断ち切れる。
次の瞬間、首筋から頭部にかけての部分が大きく垂れ下がり、それに影響されて胴体部も大きく傾き、激しい音を立てながら倒れ込む。
『ヴォークワイバーン』の体において、重量過多な頭部を支える軸を吊り上げていた頑強な鎖状の触手を寸断したことにより、
後は攻撃を集中させるのみ、と多くの者が勝利を未来視する。
しかし、ウロボロスという化け物であるが故に───
そこから逆襲される未来は悪夢に等しい光景だった。
突然『ヴォークワイバーン』の瞳が禍々しく赤く光り輝くと、
千切れ鎖がまるで生き物の如く動いて首筋に巻きつき、膨大な量のそれは鱗のような装甲に変質していく。
円翼型航空機の形状をしていた胴体部は膨らみが無く締まっている形状に整えられ、その後ろから伸びる鱗に覆われ鎖が巻き付いた三つの尻尾と共に竜の形状へと近づいた。
さらに、胴体から槍を生やす腕を伸ばし、全身から鋭い突起を生やすことで殺意を明白に表した姿を印象付ける。
そして、目が四つとなることで
わずか十数秒の間に変化を終え、体勢を立て直した『ヴォークワイバーン』は接近してきたノヴァに殺意を向ける。
「───え」
三本ある内の一本の尻尾が勢いよく払われ、ノヴァに向けて容赦なくぶつけられる。
その凶器が迫る中、ノヴァは言葉を発する間もなく重い衝撃と骨が折れる音と共に背後にあるレンガ造りの中層マンションに叩きつけられる。
尻尾の勢いは止まらず、1棟目を破壊しながら貫いて2棟目の内壁で物凄い衝撃音を響かせて衝突して停止する。
尻尾は勢いよく引き抜かれるが、その衝撃で壁の一部が崩れてノヴァの元に降り注ぐ。
「───ぐ、い‟っ……」
意識を失っていた彼女は、虚ろ目で目を覚ました直後、激しい痛みに襲われる。
全身を強打して、各所に黒く滲んだ打痕があり、酷い方だと頭部や腕から出血していた。
当然服も元の形を辛うじて保っているだけで、穴が開き千切れボロボロとなっていた。
応急処置をしようとするも、激しい痛みで全く力は入らず腕については僅かでも動かすことが出来なかった。
それだけで骨が折れているんだと理解し、右腕については圧し潰された結果、神経すら損傷している可能性があった。
「───っ……もう、戦えない……」
軽い出血だけならまだ耐えられたが、腕と足の各所には裂創が出来ており、夥しい量を出血していた。
致命傷は避けられたが、助けが来なければ生存の可能性は狭まっていく。
それをたった一撃で与えられて、普段の口調は鳴りを潜めていた。
「……ノヴァは───うっ、うぅぅぅ……あんなの、反則だって……」
起き上がる事はできず、待っている事しかできない彼女の視界は涙で朧気となる。
そんな視界の中に見知った二人の影を見る。
「ノヴァっ!……しっかりして……生きてる、よね?」
「治すよ……『ヒール』!」
駆けつけたクラリッサとアビー。
二人は驚愕しながらもノヴァの応急処置を行う。
ヒールは頭部の出血等小さな傷を完全に塞ぐ一方で、クラリッサが包帯で締め付けて裂創等の止血を行う。
だが、クラリッサはノヴァの右腕が不随状態となっていることを知って、ショックを露わにする。
「ごめん……もっと早く駆けつけるべきだった」
「───!それでももう遅いよ……それより、早く───戦いに行って……」
軽口すら叩けないまで精神を弱らせた様子のノヴァに、クラリッサとアビーは心配そうに見つめる。
言いたいことは分かる、戦力価値の高い私たちがいないと勝ちようが無い事ぐらいは。
だが、全身をほぼ骨折して一歩も動かせないノヴァを置いて行って、狙われたら確実に殺される。
「……戦えないわけじゃ、ない。治してもらって少し動かせる……もしもの時は戦うっすよ……だから───」
「───だから、私を置いて、前に進んでって?」
「……うん、戦って……倒してっ」
ノヴァはクラリッサに半ば願うような気持ちで催促する。
クラリッサは少しの間だけ葛藤し目を瞑りながら悩む。
そして、決断する。
「……分かった。だけど、約束して。絶対に死なないで」
「……りょう、かいっす」
クラリッサとアビーが飛び去って行くのを見届けると、ノヴァの両目からまた涙が頬を伝って流れ出す。
勢いよく膨れ上がる感情を抑えきれず、何度か涙を拭おうとするも立て続けに流れる涙がまた頬を濡らす。
「ごめん……ノヴァはっ……嘘つきだ……。
戦って分かった……あんなのに……勝てるわけが……無い」
尻尾に叩きつけられた時の衝撃、痛み───そして、恐怖。
それらがフラッシュバックし、植え付けられたトラウマを掘り返される。
運要素が絡んでも、たった1撃でプログレスを戦闘不能に追い込んだウロボロスはいなかった。
その事に気づいたはずなのに───
「───ノヴァはっ、言えなかった……
なんで……死なないで欲しいのに……なんで。
2人だけじゃ勝てない……だから、生きて」
大事な事を言えなかった自分を卑下していき、戦えたら言えた事を悔やんだ。
しかし、最後には2人には生きてほしいという思いで祈った。
クラリッサ達が一時的に離脱してる間、『ヴォークワイバーン』の猛攻がイギリス軍のプログレス達を襲う。
どのような形にでも形状変化可能な生命体にとって、非効率にもその巨大な口を開く動作を行い、毒々しさを露わにした真っ赤な光球を生成する。
それに送り出すエネルギーを増幅し、口に収まりきらない大きさまで膨張させ───。
───それは突然弾けた。
「ぎ、きゃぁぁぁぁ!!」
前触れも無く、膨れ上がった光球は風船のように弾けると、血の雨の如く赤い光弾を大量にばら撒いた。
最初から防御系のエクシードにより身を守る魔法を展開していた少女は身を屈めてなんとか防ぐが、不運な少女はその槍に全身を突き刺され、苦しみ泣きながら死んでいくか、脳髄を貫かれて即死するかの運命を辿った。
『ヴォークワイバーン』の猛攻はそれだけに収まらず、黒い胴体の中で真っ赤に塗られた腕と、尻尾をくねらせて向けた尾先から赤い光線を放つ。
光弾の雨を防ぎながら身を屈めていた少女らは絶え間なく与えられる衝撃に目を逸らしていたため、敵の動きに気づくことができず、爆風で吹き飛ばされていく。
戦場が瞬く間に地獄の様相を呈したころにクラリッサ達が駆け戻る。
「酷い……アビー、さっきと同じように魔法攻撃をお願い」
クラリッサがそう声かけると、自分も攻撃を仕掛けるべく槍を前に構え、詠唱を始める。
「『炎の──』詠唱省略っ、放て!!」
しかし、その一瞬で自分に向けられた明確な殺意を感じ取り、一時的に魔力消費が大きくなるのを承知で詠唱を省略して、幾多の火球を放つ。
込めた魔力が少しだけ多い分、大きめの火球は『ヴォークワイバーン』の装甲を焼き焦がす。
「は、嘘っ……!?」
だが、焦がす
その光景はクラリッサに、初めて戦う時とは違う、大変不気味な恐怖心を与えるには十分だった。
「これが……ヴォークワイバーンの実力……?装甲がこんなに……だったら、火力も───」
直後『ヴォークワイバーン』は反撃とばかりに、その巨大な口から赤いエネルギー弾を放つ。
恐怖の余り身体がこわばって動けない彼女は、盾代わりに槍を突き出す。
しかし、壊れる筈無かった愛槍が容赦無く叩き割られる───
「───くっ……」
槍を壊された悔しさと、その強化された火力への恐怖を味わい、尚更思うように体が動かなかった。
砕けた破片で頬が傷つくも、それに悶える暇は無く───。
邪竜の腕から複数の赤い光線が連発され、彼女は自分の魔法で相殺しようとするが───間に合わなかった。
放たれた光線は七つ、その内回避や魔法で弾道を逸らすなどして彼女が受けたのは三つ。
一つは右の太腿を貫き、もう一つは左の脇腹を掠めて高熱で焼き、最後の一つは───腹のど真ん中を貫く。
その瞬間、彼女は時が止まったかのように硬直し、衝撃で血をまき散らしながら吹き飛び、瓦礫の散乱する市街へと突っ込んだ。
地面に打ち付けられた衝撃で正気に戻ると共に、死にそうな痛みに悶え、弱々しく息を吐いた。
「クラ……リッサ……?」
半ば呆然とするアビーの声は戦場の喧騒にかき消されていく。
地上への『ヴォークワイバーン』の攻撃が一時的に止み、負傷者の応急処置をしていたプログレス達の一部に動きが見られた。
それは恐怖心に後押しされた動きであり、勝てるわけが無いと絶望した少女は次々に逃げようとしていた。
「何、してるの?」
自分への応急処置をしていたミーシャは負傷者に寄り添いながら逃げようとして通り過ぎた少女に声をかける。
「何って……見ればわかるでしょ。逃げる……しか、無いじゃん!私の仲間だって何人も死んだのっ!クラリッサさんだって墜とされて……。あんなのに勝てっこないよっ!!」
「だったら、どこまで逃げるの?」
「え……そんなの……わかんないよっ……うぅ…」
恐怖のあまり逃げ出した少女にそんなことが分かるわけも無く、少女は泣きだした。
「私はっ……先の見えない未来なんて欲しくない。もう……逃げたくない、から」
「ミーシャっ……?……!?」
少女はミーシャのたどたどしい発音に疑念を浮かべる。
ずっとこっちを振り向かない彼女を優しく引っ張る。
ミーシャの容態を見た少女の顔が驚愕に染まると共に、唖然とする。
左肩から太腿の付け根までが光線で焼かれがっぽりと空いた傷口から真っ赤な血がとめどなく流れ出し、よく見れば地面に血だまりを作っていた。
「私のっ、お父さんが帰ってくる家を守りたいからっ。頑固で我儘だけどっ、私の好きなお父さんだからっ……私は、逃げ……たく、ない」
出血多量で顔面が蒼白になり、足元がふらついたミーシャをさっきまで逃げようとした少女が支える。
「ミーシャこそ死んだらダメでしょっ!親を悲しませるなんて絶対にダメ!……もう、逃げないから……『
彼女の生かしたいという気持ちが増幅され、魔法が発現する。
対象の物を決めた時間だけ巻き戻せる魔法によって身体にあった傷が戦う前の状態に戻り、ミーシャは「ありがとう」と一言返す。
逃げていく少女も未だいたが、抗おうとする少女が少なくないという事実だけは確かだった。
_UTC・GMT3月23日午前9時51分_
サウス・イースト・イングランド地方ハンプシャー州ニューフォレスト近海
「プリンス・オブ・ウェールズ」空母打撃群
「……気のせいか」
「プリンス・オブ・ウェールズ」の
そこでは壮絶な弾幕の嵐が振り撒いていた、他でも無い自国海軍によって。
55口径114㎜単装砲が分間25発の発射速度で爆音と共に空へと砲弾を叩き出す。
その傍ではファランクス20mmCIWSが『リトルヴォーク』を自動追尾しながら鉛玉の雨を叩きつける。
「9時方向より敵!優先目標の再選定急げ!!」
「11時方向から急旋回して戻ってきます!」
攻撃の先手を打った「プリンス・オブ・ウェールズ」空母打撃群はその直後から『リトルヴォーク』の大群に襲われた。
陸からの航空支援も無い状況で必至に耐え続けていたが、本体から離れているのにも関わらず再生成を繰り返し、その戦いは長期化していた。
しかし、ちょうど『ヴォークワイバーン』が変化を行った時から再生成は無く、終わりが見え始めていた。
されど1隻が大破し、残りの艦も大小問わず黒煙を曳いており、『リトルヴォーク』の数も50は下らなかった。
だが、この状況を聞いて尚、スコットは「上等だ」と答えて抗う意志を崩さなかった。
その意志を表すかのように、45型駆逐艦からアスター艦対空ミサイルが次々に放たれ、『リトルヴォーク』を狙い撃つ。
1体が海に墜ちる中、『リトルヴォーク』も1隻のフリゲート艦へと群がりながら突進し、放った光弾によってフリゲート艦は炎上する。
翻弄する『リトルヴォーク』だったが、空母航空団のF-35Bがその後背からミサイルで狙い撃つ。
さらに機関砲弾が飛び交う中を味方撃ちのリスクを承知で飛び、『リトルヴォーク』を追う。
「プリンス・オブ・ウェールズ」が20㎜CIWS及び30㎜機銃といった全ての個艦防御兵装による弾幕を敷き、それを守るように45型駆逐艦と26型フリゲートがアスター艦対空ミサイルと主砲によってより分厚いものとする。
114㎜単装砲の砲身が過熱してオーバーヒートする寸前まで砲弾を『リトルヴォーク』へと当て続け、1体ずつ損傷の修復が追いつかない程度に集中砲火を浴び、海へと墜ちていく。
しかし、中には驚くべき動きで空母に迫る個体もいた。
「10時方向より『リトルヴォーク』4体来ます!対空迎撃!!」
空母及び僚艦のCIWSがフル稼働して弾幕を形成する。
赤い光弾が放たれ「プリンス・オブ・ウェールズ」を守る駆逐艦「アンセル」が被弾するも主砲とミサイルの火を絶やすことは無く、懸命な迎撃により2体を撃ち墜とす。
しかし残りの2体が突然急降下し海面スレスレを飛行し始めた事に、海兵らは表情を険しくする。
「敵、
迎撃手段が限定された上、『リトルヴォーク』の飛行高度が第二次大戦時のレシプロ機による近接信管の誤作動を誘発する低空飛行よりも低く、主砲弾の効果は薄れていた。
上空から海軍のF-35B複数機が空対空ミサイルを一斉に放ち、目標へと殺到する。
1体は複数のミサイルを食らって海中に没するが、もう1体は風圧による波で多くのミサイルが機能出来ず、当てることができなかった。
「敵、接近します!」
「総員、衝撃に備え!」
「プリンス・オブ・ウェールズ」との距離が近づき、同士討ちを恐れて他の艦艇が苦渋の決断によって射撃を止め、その時を待った。
だが、まもなく衝突する寸前で、1隻の駆逐艦が割り込む。
空母直轄の護衛艦である「アンセル」が光弾によって主砲もミサイルも照準が出来ない中、艦艇ごと『リトルヴォーク』の進路へと突っ込んだのだ。
ジェット戦闘機には劣るものの『リトルヴォーク』の衝突によって「アンセル」の艦首装甲は重大な損傷を負い航行不能となったが、『リトルヴォーク』の勢いを確かに止めた。
その意図を理解した同じ空母直轄艦の26型フリゲート「テンペート」が対艦ミサイルを放ち、間もなく直上から振り下ろされ対艦用爆薬の威力により文字通り海の藻屑として砕け散る。
「プリンス・オブ・ウェールズ」のCDCにて「アンセル」に対して救助の命令が飛ぶと共に、艦隊の損害確認が行われていた。
その中でスコットはマイクを手に持つと、艦内へと通信を繋げる。
「我々はやられるだけでは済まない。本艦隊は直ちにロンドンへと作戦支援を開始する。甲板の補修作業は一時中断、飛ばせるなら最低限で構わない。発進可能な機は直ちに対艦ミサイルを搭載しろ、親玉を殴り飛ばす、急げ!」
光弾によって穴を開けられ簡易的な補修のみが済まされた甲板上を、アフターバーナーを吹かしながら攻撃隊が発進していく。
「待ってろ、守るべきはお前もだ」
スコットはその光景を見ながら、ロンドンで戦う娘の身を案じ表情を変えないものの無事を祈る。
※次回