Muv-Luv*Vierge 護世界の少女達 血潮染む運命に導かれる   作:空社長

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第4話を投稿していない間に、アンジュ・リリンクが2024年10月のサービス終了が決定してしまった。
だけど、この物語はしっかり完結まで進みます。
アンジュ・ヴィエルジュから続く、美海、ソフィーナ、ルルーナ達、アンジュ・リリンクに登場した空、ナクル達、アンジュ世界で生きる無数のキャラ達への愛を込めて、描き続けます。
展開的に辛いこともあると思いますが、見守っていただけますと嬉しいです。


第4話【美しい(虚しい)国の正しき行い(傲慢な愚行)

_UTC(世界標準時)3月29日午後2時26分・EET(東ヨーロッパ時間)3月29日午後4時26分_

“旧”リビア共和国首都トリポリ

 

 遡る事わずか1日前。

 ウロボロス戦役によって大きく深い傷が刻まれたこの国は、未だに復興の目途が立っていなかった。

 戦役後の混乱を収拾できずに政府が崩壊したこの地を簒奪し征服したのは、新たなる支配者であるカルジャレン朝イスラーム帝国だった。

 リビアを瞬く間に手にした侵略国家の勢いは留まることを知らず、目を見張る程の驚くべき侵攻速度で瞬く間にチュニジアを飲み込んでアルジェリアの大半を掌握し、エジプトを首都陥落寸前まで追い込みエリトリアにまで到達している。

 

 支配版図を瞬く間に広げた彼らではあるが、戦火に焼かれた国土を復興させる意志が無いのは、1週間が経っても首都で最も交通量の多かった道路がひび割れだらけのまま放置され、最低限の交通インフラすら直すことをしないことからも明らかだった。

 民家の多くも瓦礫のまま放置され、国から助けられるべき国民は生気の無い目を浮かべて希望の無い生活を過ごしている。

 

 市内中心部、ウロボロスの砲撃によって崩れ落ちて廃墟のまま放置されていたトリポリ政庁跡には、鉄柵に囲われた砂利だらけの広場が作られた。

 広場にはどこかの建材を利用した成人男性身長の2倍程の大きさもある柱が何本も突き立てられ、その面は触れた者が傷ついても構わないとばかりに加工すらされていなかった。

 

 横に交差する棒こそ無いが、豪華にも長大な鎖のチェーンで巻き上げる設備が着いたそれらは罪人を磔にして公衆の目に晒す為のもの。

 そして、この場は現代の常識に反して罪人に人権すら与えずに人生の終着点を定める処刑場であった。

 そこに引き回されたのは、最初にリビア政府の閣僚、官僚ら、要職に就いていた者たちであり、容赦なく死地に追いやってきた。

 そして、現在。その対象とされたのは、プログレスの少女だった。

 

「助けてよぉ!!お母さん!!お父さん!!……なんで、私が何かしたの!!」

 

 磔にされた少女が親に助けを求めながら叫ぶ。

 自分よりも体格の大きい武装した男らに捕まり、逃げ出そうと暴れたら暴力を振るわれて無理やり抑えつけられた少女は、

鎖で縛られ柱に吊り下げられる前から、体は傷だらけであり顔にも複数の大きな痣が出来ており可愛らしい顔を台無しにされていた。

 

 周りを見渡すと、同じように吊り下げられた少女達がおり、大声で泣き腫らす少女や、涙ぐみながら反抗的な目で何かを睨みつける少女もいる中、連れてこられる間に理不尽にも容赦ない暴力を食らい、心を壊され虚ろな目をしていた少女の姿もあった。

 外へと目を向けると、柵の外には柵を超えて近づかんばかりに詰め寄る大勢の民衆がいて、老若男女問わず全員が大人であるという共通点しか無いその群衆は柵の中へと狂気と思える罵声を浴びせており、彼らの表情をよく見れば何かに囚われているかのような虚ろな目をしていて、決して正常な状態ではなかった。

 

 少女は決して社会を知り尽くしてるわけでもないし、常識とは何かを答えられるわけでもない。

 だが、私たちが理不尽な暴力を喰らうことが、何もしてない私たちが罵声を浴びせられることが、普通であるはずが無かった。

 

「いや……なんでよ……助けてよ……お母さん、お父さんっ……」

 

 尋常ではない恐怖に身を震わせる少女は、群衆の一人に両親の姿を見つける。

 二人だけは群衆達と違い、娘の姿を見て警備兵に抗議しており取り押さえられかけていた。

 

maタゲンsヨウniオチtイナイムノgaiタk

 

 突然不協和音とノイズに包まれた、聞くだけでも非常に不快な声が聞こえる。

 少女が声の聞こえた方向に目を向けると、黒い霧のような何かが群衆達の上空で浮いて漂っていた。

 

「……!!上に何かがいるよっ、みんな操られてるからっ、元に戻ってよっ!!」

 

 少女は直感的に感じたことをのどが張り裂けんばかりの大声で叫ぶ。

 だが、少女というのはあまりに非力だった、それが彼らの目には見えないものであれば尚更だった。

 

「黙れ!!民衆を扇動したテロリストが!」

「っ……そんなこと───」

 

 言葉を遮るように少女の細い足をライフル弾が貫く。

 射撃を行った軍の装備を身に着けた兵士と思われる男もまた虚ろな目をしており、少女達プログレスを別の物と認識させられていた。

 

「これ以上喋らすのも問題だな、アッダ・ガレーテッ(総員塵殺せよ)!」

「「はっ!」」

 

 隊長格と思われる男が()()()()()()()()で命令を下すと共にその目が紫色に光り、部下達がまるで言葉を理解したかのように動き出し、4名の少女へと照準を向ける。

 

「総員、射撃を開始せよ」

 

 アサルトライフル、日本語では自動小銃と呼ばれる銃のトリガーが強く握られ、マッハ2にも及ぶ高初速の凶弾が飛ぶ。

 

「……あぶっ……」

 

 殺すには余りある数の銃弾を吐き出し、一人の少女は脳と心臓に銃弾を喰らい小さな悲鳴だけを上げて即死。

 同じ人間、しかも自分よりも幼い少女を相手にして容赦無く銃弾が放たれ続け、鮮血が飛ぶ。

 わずか3秒間の射撃、それでも少なくとも30発以上の人体を確実に破壊しうる弾丸が放たれていた。

 

「……コフュっ…ゴぶぷ……こふゅーっ」

 

 一人は不運にも肺を破壊し尽くされ、激しい痛みと息苦しさに襲われており、助けも喋ることが出来ないまま呼吸困難状態のまま終幕を迎えようとしていた。

 もう一人は片目に銃弾を喰らい、激しい痛みに悶え苦しみ体を動かした時に追加の銃撃を喰らって苦しみから解放される。

 

 そして、最後の一人。

 

「……コホッ」

 

 少女は腹部や腕や足を執拗に狙われ、激しい出血により足から垂れた大量の血が地面を赤く塗り、腕を動かそうにも筋肉繊維が撃ち切られており脱力した状態だった。

 プログレスのタフさが仇となり、人の致死量を超えた出血でも少女は意識を保っていた。

 

「カハッ……もう、何をしても無駄かな……」

 

 顔だけは痛みに耐えつつ前を向いていたが、全てを諦めた少女は顔を俯かせる。

 

「神様……もっといい所で生きたいな」

 

 少女の簡単なお願いだったが、それを聞き遂げたのか少女の意識が薄れゆくのを感じる。

 血を失い過ぎた少女にとってそれは確定した運命であり、やがて少女の意識は真っ黒に塗りつぶされた。

 

トリポリ郊外

 

「くっ……なんでよっ、なんでっ……!」

 

 首都トリポリ中心から数km離れた場所。

 そこはウロボロス戦役の被害だけでなく、暴動や内戦の影響により住宅街だった姿は無く、荒廃したスラム街と変わっていた。

 

 そんな荒れ果てた道を3人の少女が駆ける。

 一見するとただの追いかけっこのように見えなくもないが、少女達は必死の表情で走っており、後ろから追いかけてくるのはトリポリ市警察や軍の服装を男たちであり、そのいずれもが片手に拳銃を握っており、走っている相手に当たる確率は少ないが発砲も行っており、本気で3人を殺そうとしているのは事実だった。

 

 3人の先頭を走る少女はウロボロス相手に戦ったプログレスの一人であり、この街に家族と一緒に暮らしていた。

 しかし、突然両親が虚ろな目で襲ってきたため家出していたが、突然同じく虚ろな目をした軍人に襲われ必死に逃げていた。

 それに続く2人の少女もプログレスの仲間であり、別々に逃げ隠れしていた頃に巡り合い、隠れ家が発見された時に一緒に逃げようと提案して、行動を共にしていた。

 

 しかし、逃げ続けても追手を撒くことはできず、さらに追手が増えるばかりだった。

 さらに民衆も捕まえようと追いかけてくるため、次の隠れ家を見つけるのすら困難になっており、休む場所も食べ物も宛が無い少女達は疲れ切っており走るのもやっとだった。

 

「はぁ、そんなこと言っても……状況は変わらないよ」

「でもっ……逃げないと、殺されるっ」

 

 少女達全員走るのが得意ではなく体がひ弱な少女もいる中で、このままだと捕まる未来しか見えなかった。

 でも、見捨てる選択肢なんて取れなかった。

 だからこそ、後ろに続いていた2人の内、勝気な少女が一つの提案を出す。

 

「私が別行動取るよ、それで少し分散させる」

「……わかったっ」

 

 それしか方法が無かったとしても、それを選びたくなかった少女は悔しさを露わにする。

 分かれ道で3人が2人になって追手の人数が減り2人への圧力は減じたが、追手は別の武器を持ち出して殺意を明確にする。

 

 ───バババババッ、と連射する音が鳴り響き、その火線は少女の足元を打ち付ける。

 

「ライフルっ!?そんなものまでっ」

「ひっ……」

 

 火線から逃れるためには姿勢を低くして進むしかないが、それは視界を狭めることに繋がり荒れ果てた悪路では悪手でしかなかった。

 

「痛っ……」

 

 ───ズリッ、と音がすると共に後ろに続いていたひ弱な少女が足を滑らせ怪我をしていた。

 追手との距離はわずかしかなく、少女は急いで彼女を背負って走る。

 だが───パンッと音がしたのも束の間、駆けだした直後に右足に激痛が走り、背負ったまま転倒する。

 

「……うぐっ……あ、どこに……!」

 

 少女は転倒して頭をぶつけたため軽い脳震盪の後に起き上がる。

 見えた視界に誰もいない事に気づき、後ろを振り向く。

 その瞬間、今まで背負っていた少女が男に頭を拳銃で撃たれる瞬間を目撃する。

 

「嘘……嘘だって……私の、せいで……」

 

 自分が撃たれたから、転んだからと少女は後悔に駆られる。

 

「もう一人の方は?」

「執行部隊が発見、既に射殺しています。遺体は保管する予定です」

「ならばよし。……起きたか、捕えろっ」

 

 さらに別行動を取った勝気な少女の方も、男たちの話で既に殺されたことを知ってしまう。

 悲しみの感情が溢れそうになるが、その暇も無く武装した男数名が捕えようと近づく。

 当然抵抗しようとするが、傷を負った少女では逃げることもできず瞬く間に組み伏せられ、司令官らしき男に体ごと顔を向ける形で抑えられる。

 

「ふんっ無様だな。……そうだ、最期に言い残すことはあるか?」

 

 額に拳銃の銃口を押し当てられたのにも関わらず、少女は男に目尻に涙を浮かべつつ反抗的な目で睨みつけながら言い放つ。

 

「……私たちにっ、ウロボロスを相手に戦わせたくせに……一杯死んだのにっ……こんなのって……!死んでも恨むから……」

 

「この……クズ野郎!!」

 

 一発の銃声が鳴り響く。

 少女の歩んでいた人生時計の針は永遠にその動きを止めた。

 

トリポリ中心部 “旧”リビア共和国評議会議長官邸

 

我らが皇帝(デラ・ハーダート)、ただいま戻りました」

 

 領土簒奪の折、議長親衛隊との激しい攻防を繰り広げ血濡れた場と化した議長官邸は綺麗に清掃され元通りの姿へと概ね復元されていた。

 普段であれば政権運営メンバーが揃って閣議を行う大会議室の長テーブルの1角に派手な黒装束の男が座っており、左手には中心が赤く光る金色に塗られた小さな円時計が握られていた。

 一般的な黒装束服を着た男が異星言語でそう呼ぶと、皇帝は不快感を露わにする。

 

「その物言いはやめろと言ったはずだ。私は皇帝ハダート・カルジャレンとしてここにいるのだ、何度言わせるつもりだ?」

 

 演役に酔った皇帝は同じ同志たる男にカルジャレン朝イスラーム帝国としての装いを厳命する。

 だがある程度決まりきった会話なのか、あっさりと切り上げると報告を求めた。

 

「はっ、定例処刑は完了致しました。しかしその際に、元々悪に染まりきっていたのか()()()()()()()()()男が部下にしてほしいと頼み込んで来まして……テロリスト、政府軍関係無しに殲滅する我々に服従するのはある程度考えた手段なのでしょうが」

「……指示は要らぬな?」

「ええ……皇帝陛下の手を煩わせることも無く、より強力なアルゴミラスの処置を完了してあります」

 

 皇帝は報告に対して、満足も不満も表すこと無く無表情のまま受け取る。

 

「……我ら同郷の者以外に忠実な部下など必要ない。我らが求めるのは……従順な下僕、それだけだ」

「当然です」

「……監美の王環(アンディエラ・ゴーダム)からの指示は無いな?」

 

 同郷の男が頷くと、皇帝は用は無いとばかりにその者を下がらせる。

 

「……砂漠か、()()と同様に不毛な大地だ、だが戦うには易い場だ。頭の足りぬ武闘派と言われた頃が懐かしい……ふっ」

 

 皇帝は金の円時計に力を籠めると、円時計の赤い光が強まると共に左目が紫色に輝く。

 さらに左目だけではない、右目を除いた突如顔の周りに現れた七つの目からも紫色の輝きが灯る。

 

「あぁ……高揚する。全ての企てが見破られた時、我はその真価を発揮するのだ」

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