Muv-Luv*Vierge 護世界の少女達 血潮染む運命に導かれる   作:空社長

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書いてたら、かなり長くなりました。
後ろに別の話を挟もうと思ってましたが、次回に持ち越しです!

※後半、描写注意です。
本作当初から読んで頂けてる方はこの作風をご理解しているかとは思いますが……


第10話【彗星となった首飾り】

 果てしなく広大な宇宙。

 数十億の惑星が存在するこの世界で、一つの惑星が滅びの時を迎えたとしても、多くは気づかれずに死を迎える。

 しかし、星間文明の交流で生み出された星間地図は例外であり、地図に載っていた星が消えた事に気づく者は多い。

 

オルレンシア恒星系第5惑星オロンド

 

 この星が文明を築いてからあまりにも長い時が過ぎ、質量の巨大だった恒星はエネルギーを吸い取られた為に、衰弱していくように恒星活動が弱まっていき、赤色巨星へと成りきらずに白色矮星となって白く淡い光を惑星達に照らすのみだった。

 その環境下では惑星のほとんどが凍り付き、第6惑星軌道以降では表面を氷に覆われてその姿さえ変貌した星もいた。

 

 しかし、恒星の恩恵を活用できる術を持ち、エネルギーを吸い取った張本人である惑星オロンドは、寒冷化こそしても恒星から得られた莫大なエネルギーを用いて恒星無しで生存可能環境を構築できる技術を作り出し───、ガスも放射線も吹き荒れない安定した星系環境による交易中継地点に生かせる立地と、星系内の氷結した岩塊群という星間及び観光資源を用いて───

 星系外に出ていないにも関わらず、商業貿易国家として躍進することになった。

 

 活動範囲が星系内に留まっている、即ち恒星間航行可能な技術を持っていない事であり、氷星暦574年侵攻事件以来、彼らは攻め込む舟を持たない代わりに守る術を持つこととなった。

 『首飾り』───惑星を何層ものリングで覆う数千を数えるレーザー衛星群。

 それを突破した星間国家は未だ、いない。

 

惑星オロンド中央制御区 オロンド統政庁───

 

「ラズワーユから音信が途絶えて幾日か経ち、未だ返答は無い……これが意味するのならば、恐らくは滅ぼされたのだろうな」

 

 オロンドの全てを司る統政庁では、全政庁職員による会合が行われていた。

 元々30万人の職員が働く施設であり、外部派遣業務のある6万人を収容するのに造作も無かった。

 

「馬鹿な!では音も無く滅ぼしたというのか!それは協定違反ではないか!」

「そもそもあの星を滅ぼしたとて、協定受理国内に利がある国は無いはずだ……なら、蛮族か……?」

 

 彼らの議題は星間地図に載っていて貿易交流も行っていたラズワーユⅣとの交信が途絶えた事についてだった。

 

「そう───蛮族だ。そして、ラズワーユ方面より向かっている多数の艦影を外宇宙監視レーダーが捉えた」

「「!?」」

 

 ほとんどの職員が驚くのも無理はない。

 突然現れた脅威、そして574年侵攻事件から長い時が過ぎており、実戦を知らない職員もいた。

 

「そんなもの、我らの首飾りで迎え撃てばよい!それか、盟友イシュックの力を借りるべきだ!」

「確かに首飾りは頼りになりますが───情報が不明なままでは不安要素もあります───そして、イシュックの応援には期待できません」

 

 イシュック───正確には、イシュック星団軍閥と呼ぶその勢力はオロンドとは隔絶した技術力で艦隊戦力を保有していて、義理と人情を重んじる者たちだった。

 

「なぜ───?」

「───イシュックにもラズワーユ方面からより大規模な艦隊が向かっており、全戦力をそちらに集中させるとのことで」

 

 頼りになるイシュックでさえ全力を出さなければいけない敵、そんな敵がこっちにも向かってくるという事実。

 その恐怖が会合全体に伝染する。

 

「く───首飾りだけでもなんとかなるはずだっ───その為に我々は幾度も防衛力を増強してきたのではないか!!」

 

 老練の職員が震えを隠そうとしながらも、他の職員らを鼓舞する。

 それに心を動かされた職員らは自分を勇気づけようとした、その時───

 

「───失礼します!外惑星系外縁に正体不明の……影、艦影と言っていいのかわかりませんか、不明物体を確認しました!」

 

 会合の全職員が見れる巨大なモニターに、凍結した第9惑星”ヴィカ”の軌道上に出現した物体が映る。

 長大距離から補足した為にその映像解像度は低く、赤外線や熱探知でしか物体の動きを計ることが出来ない。

 

「鳥……いや、巨大な羽虫か……?」

 

 明らかに艦艇形状ではなく、生物的な形状をしていた未確認物体は、当初宇宙で活動する生物がたまたま迷い込んだのではと思われた。

 しかし───

 

「!───未確認個体からエネルギー反応増幅を確認!熱探知でも生体の熱源増加を確認!赤外線でもはっきり生体中央部に反応見られます!」

「エネルギーの指向性……オロンドへと向けられています!!」

 

 モニターに映る映像からも巨大な火球が生み出されているのが見え、それがオロンドへと差し向けられようとしていることに恐怖は増した。

 

「首飾りの迎撃を───」

「───まだ射程圏外です、遠すぎます!!あんなところで撃ってどこを狙おうと!?」

 

 宇宙間戦闘でもこれほどの長距離で交戦することはあり得ず───

 この長射程から撃てる能力があるのかと畏怖する。

 

 エネルギー充填臨界状態に達した火球は、オロンド方向へと勢いよく射出される。

 その飛翔途中に首飾りのレーザー衛星群第36層と接触し───予め定められたかのように、巨大な爆発を引き起こした。

 

「爆発!?一体何が───!」

「損害報告……!これは……未確認個体前面のレーザー衛星群の大半が消滅───残っているのは、レーザー衛星群第1層のみです……」

 

 長い時を経て築き上げられた防衛網が、一瞬な爆発でその1角を崩された結果に多くの者が戦慄する。

 さらに、その爆発は地表からもはっきりと見え、何も知らない民間人には混乱が押し寄せる。

 

 さらに急速に事態は進行する。

 

「…!?、補足していた敵艦隊の一部が分離───加速して、まもなく星系外縁に到達します!」

「───ばかな!!まだ遥か彼方にいたはずだぞ!」

 

 明らかなる異常事態に会合は騒然とする。

 それを遮るように机を叩く音がするとともに、会合の議長が声を荒上げる。

 

「───非常時防衛装置を起動させよ、地上の防空砲台も緊急展開を急げ……!やれる事は全てやるのだ」

 

 非常時防衛装置───既存のレーザー衛星群第1層の内側、半ば封印状態の擬装から実体化したその姿は旧世代のジェネレータを利用したチェーン状リングに繋がれた重レーザー衛星群だった。

 今のレーザー衛星群を制御する術を持たない時代に作られたそれらは、空間を敷き詰めるように配置されておらず、リングの回転遅延から遥かに防衛効率が悪く、単体の砲台火力だけがメリットであった。

 

 地上各地ではレーザー砲台が展開し、同じく民間人の避難も迅速に行われる。

 

 ───しかし、その結果として。

 

 その火力で抗する事は出来ず、敵の惑星圏突入艦船に文字通り突き破られ、オロンドの重力圏に入り込み過ぎた衛星は地上へと墜ちるか、空中で燃え尽きるかの運命を迎えた。

 運よく回避しても、その場でデブリとなるか、オロンドを偶然フライバイして燃えながら彗星となって宇宙を漂うしかなかった。

 

 地上でも懸命な対宙型重レーザーの雨も、惑星圏突入艦船の重装甲に打つ手がなく、放たれた爆撃で葬られていく。

 そして───。

 大地を震わすほどの轟音、目も空けていられない程の閃光の後───、艦船による直接打撃を受けて巨大な統政庁施設が崩壊していくのが見えた。

 艦船の吶喊を受けて無残な姿となった中層階はもちろんのこと、会合のあった上層階も激しい爆発が起きて、バラバラに砕け墜ちていく。

 

 一方で一般人も立ち入る事が出来る下層階の被害が少なく、上層での爆発と窓から見える瓦礫が降ってくる現状で、事情を知る者は少なくパニックは必然だった。

 

「な、何が……起きて」

 

 受付係をしている統政庁末端職員の少女ともとれる若い女性は呆然として立ち尽くす。

 その状況下で軍人らは民間人の避難誘導を率先して行い、会合にいた職員らが全滅したことで現時点で最も高い階級を持つ職員となってしまったその少女は軍人らに守られながら、息を整える。

 

「あれは!?……船から何か落ちてくるぞ!!」

 

 軍人の一人が叫びながら指先を向けた先には、統政庁の中層階に突っ込んだ艦船の姿があり、その下部ハッチが開いて超高速で落ちてくる影があった。

 地上へと落着した後、激しい砂煙と暴風が避難民らを襲う。

 

「総員警戒せよっ、彼らを守れ!!」

 

 軍人の指揮官らしき人が指示を出して、武器を構えて一歩ずつ砂煙へと近づく。

 しかし、次の瞬間砂煙の中から風が巻き起こって煙を晴らし、巨大なハンマーが回転しながら迫り、直撃を受けた軍人の首がねじ曲がり即死した。

 

「ば、化け物か……!?」

 

 オロンドに住まう男性の最高身長は2mを越えていて、この時民間人を守る部隊にもそのような高身長の軍人はいた。

 しかし、相対するのは小さくても3m、平均でも4mクラスを越える大柄な者達であり、何より揃って醜悪な見た目をしていた。

 

「ゴ……ゴヴロ族……」

 

 この宇宙ではゴブリン族、そして亜種のオーク族は人間と変わらない理性ある種族として存在していた。

 中には豊かな知性を持ち、高度に都市化された文明にも順応しているゴブリン族がいる星もいるほどだった。

 

 しかし、ゴヴロ族はゴブリン族から枝分かれして、ウイルスとも捉えられる呪われた悪しき遺伝子を打ち込まれてこの宇宙に生み出された種族であり、

理性を完全に捨てその欲望のままに破壊を繰り返す暴力的な性格を持つに至り、その性格から顔つきも醜悪な見た目でしか生まれなくなってしまった種族である。

 その種族の存在はどの文明にとっても邪悪極まり、ある文明では隔離され、ある文明では種族ごと殲滅され、目の前の文明は戦士として編成した。

 

「総員撃てー!!、なんとしても退けろ……!!」

 

 軍人らが構えた銃からはエネルギー光線が放たれ、ある敵には盾で防がれ、ある敵の顔半分を吹き飛ばし、ある敵の胴体を貫く。

 だが、防がれたのは仕方ないにしても、顔半分を失ったり、胴体に穴を開けた敵の歩みは止まることが無かった。

 

「はぁ!?……顔撃たれて倒れんとは───グヴォっ」

 

 銃がオーバーヒートするまで連射され、複数発直撃して倒れる敵もいたが、反撃とばかりに投げられたハンマーで今度は複数人にまとめて激突し、その質量に押しつぶされ肉体がひしゃげる。

 学習したのか、盾を活用してくる敵も増え、確実だが徐々に追い込まれていった。

 

「……ひっ……来ないで来ないで……」

 

 自分を守る軍人の数が徐々に減っていってることに、ゴヴロ族の巨体が迫ってくる事に少女は恐怖を覚え、無駄と分かっていても半歩ずつ後ずさりしてしまう。

 更に、1体の敵が複数の銃身を持つ機構を両手で抱えて持ってきて地面に置かれた。

 よく見れば銃身の一部が黒く焼け焦げたものもあり、全力は発揮できないように思えた。

 そして、それは他部隊の軍備に多少物知りであれば、分かるものだった。

 

「!……まさか、墜落したレーザー衛星の自衛用砲塔か!?2トンはある代物だぞ!!」

 

 後部の備蓄エネルギータンクからエネルギーが充填され、一部の銃身が発射不能とは言え文字通りレーザー弾の雨が軍人らに掃射された。

 対航空機・小型艦艇用のレーザーであるため銃と装甲服を身に着けただけの軍人には過剰な威力であり───

 

 ───肉が千切れ肉片が飛び散り血飛沫が上がり、残ったのは原型すら分からない肉塊だけだった。

 

「……ぁ……ひっ」

 

 まだオロンド軍の数は残っていたが、今のレーザーの雨で激減しており、再び喰らえば全滅しかねない状態だった。

 ……ゲリラ戦であれば負けない自信だけはあったが、衝撃的な光景に呻き言葉を失って座り込む少女の事を放っておける訳がなかった。

 しかしその判断する暇も無く、巨大なハンマーが振り下ろされ、投げられ、少女を守る軍人が次々に有無言わず肉塊と化して果て、血がぶちまけられる。

 

 守る者がいなくなった時、やっとその事実に気づいた少女は四つん這いになりながら逃げようとするが、半歩も進まぬ内にゴヴロ族の1体に巨大な手で後頭部を鷲掴みされる。

 手足が地面に届かないぐらい持ち上げられると、勢いよく地面に打ち付けられる。

 

「ごぉ……が……ぐ……」

 

 器用にもその直前で顔だけは勢いを落とされたが、それでも歯が折れて額や頬から出血していた。

 遠心力で勢いよく叩きつけられた他の部位は指があらぬ方向に曲がって折れたり、腕の骨が折れたりして酷く痛めつけられていた。

 

「駄目ですよ、その方は。我々と()()できる人なんですから。先に武装している他の方たちを排除してください。そんな非力な人間、後で始末できるでしょう」

「ゴォォゥゥヴゥゥッ!!」

 

 その時、ゴヴロ族とは異なる男性の声が聞こえ、それに応えるようにゴヴロ族が咆哮を上げると、少女の後頭部から手を離す。

 少女は先の暴力的な行為がトラウマとなって一切動くことも出来ず、過剰な恐怖が精神を侵し失禁さえした。

 

 声のした方向、そこにはオロンド人とは外見がほとんど変わらぬ、老齢男性の姿があった。

 

「敵の指揮官か!撃て!撃ち殺せ!」

 

 残存する軍人らは男の姿を視認すると、銃の狙いをつけて発砲する。

 しかし、そのエネルギー光線は男の周囲に展開する透明な円球バリアに防がれ、軍人らは驚愕する顔を隠せない。

 

「だから、言ったでしょう。彼らを先に殺しなさいと」

 

 男は余裕な表情でそう言い切り、ゴヴロ族の集団から複数のハンマーが投げられ、残存していた軍人すらも肉塊として果てていく。

 そして、抵抗する音が消え、悲鳴以外の音が無くなった時、男は少女の前に立つ。

 

「では、()()()()と行きましょう」

「……なんで、私が……」

「あら、ご存じ無かったのですか。あなたより上の階級の方は全員死亡しました。なので、あなたに回ってきただけですよ。統政庁職員さん」

 

 え、と少女は呆然とするしかなく、上層階が崩れ落ちた建物を見て現実だと認識する。

 

「我々の要求はこの文明の隷属です。ああ、逃げても無駄ですよ。この星は我々の艦隊の包囲下にありますから」

「……なんでこんな目に……私はっ……無理やり試験を受けさせられて、受かってただけなのに「───うるさいですよ」───!」

 

 少女の頬はその男に勢いよく殴られ、赤く腫れて痣すら出来る。

 

「もっと、効率よく行きましょう。……そうですね……」

 

 男が思案した後、ゴヴロ族の1体が少女の背後から近づいて拘束し、更にはその巨大な手で首を絞め始める。

 

「ッ!?……おごっ……がっ……あっ……っ……ぃ」

 

 2トンもの物体を抱えられる握力で容易く殺せるはずなのに、その個体はじわじわと締め付けて、少女を恐怖のどん底に落とす。

 

「まあ何も無しは可哀想でしょうし、()()あなたの身の安全を保証する、ってことでどうでしょうか?あぁ、離してください」

 

 手が離れた瞬間、少女は息苦しそうに咳を吐き、呼吸を整える。

 

「はぁ……はあ……こ、断ったら、どうなるの……?」

「ふむ……あなたを殺し、別の誰かを探すまでですね。いなくても適当な誰かをでっち上げるだけですから。おや、死にたいの───」

 

 ”死にたいのですか”と言い終える前に、少女は泣きながら声を遮った。

 

「───待っでよ”!!、従うから……殺さないで」

「では、この文書に記入を。あと、あなたが武装解除の指示を出す映像を取りたいので、その”汚い”涙は流しきってくださいね」

「……は、はい……」

 

 恐怖に心も体も染まった少女は男の思惑通り、操り人形になるしか無かった。

 自分の安全という誘惑に負け、抵抗して死んでいった上司や守った軍人に対する裏切りという罪の意識に少女の精神は苛まれ───

 ───心はあと一抹のところまで壊れ切っていた。

 

 そして───

 

「これで、終わりです。では───」

 

 男は少女の体を軽々しく抱えると、ゴヴロ族の集団内に投げ入れる。

 

「───ゴヴロ族の皆様にご褒美です」

「……え」

 

 少女はそれを現実として受け入れたくなかった。

 しかし、事実として欲望のままに生きる種族の戦士たちに囲まれていた。

 

「なんで……安全を保証するって……」

「はて……私はあなたの安全を保証しましたよ?ただ戦士の皆様に引き渡しただけ。我々は主従関係ではなく契約関係なので、これ以上は踏み込めませんね」

 

 それは嘘であった。

 そして、少女もそれが嘘であることを瞬時に理解し、嵌められたという事実も正しく認識した。

 

「嫌……嫌ぁぁぁっ───がっあ……」

 

 背後からゴヴロ族の1体に引きずられるように引っ張られると、抵抗されないよう体を殴られる。

 ゴヴロ族は欲望に振り切った種族であることは周知の事実であり、その欲の発散を阻害されないように、獲物を生きたまま行動不能にさせる癖があった。

 それが終わると、1体が鼻息荒くして近づいて覆いかぶさってくる。

 あまりに近すぎて気味悪く温かい鼻息は少女にも感じられ、頭にベタベタとした粘液がかかってくるも気味悪さを増すのに十分だった。

 

「嫌……嫌だ……ぅぅぅ……」

 

 やがて、腹部に無理やりこじ開けられる強烈な痛みを感じると共に、防衛反応なのか意識が強制的にブラックアウトする。

 その瞬間、父と母が愛し合いながら子という命を育む行為とは異なる、人の尊厳を奪う行為が始まったと理解する事は無かった。

 

───1000日後

 

 その間、イシュック星団軍閥の応援が来ることは無く───。

 心が壊れ瞳に光が灯っていない少女が淡々と武装解除を促す映像が惑星全土に流され、

 当初は侵略してきた文明に抵抗する勢力は大きく、激しく抵抗を続けてきたが。

 

 圧倒的な戦力差という絶望に加えて、少女が壊されたんだという事実に抵抗する気力さえ削れていき───。

 ───ある時を境に抵抗勢力は消滅した。

 

 星には豪雪が降っていた。

 惑星環境維持システムが壊れたのか、単に設定を間違えたのか定かではないが、この星を侵略した文明にとって

 この星は奴隷の供給元でしかなく、既に惑星の7割に及ぶ人口を他惑星に放出・移住させた今、この星が消えることに痛みも感じないだろう。

 

 実際、オロンドを隷属させた後、惑星環境維持システムを制御下に入れた侵略文明は、これを脅しの道具として利用した。

 従えば隷属主として命令を実行し、従わなければその地域の環境を生存不可能にして抹殺するという、容赦無き冷酷な手段を取っていた。

 そして、今いる地域の豪雪も限定的な物で、抵抗する者に猶予を与えていただけの事だった。

 

「……何が、安全を保証する、だ……」

 

「あいつらは、その甘い蜜を何度も利用して、俺たちを結局破滅させたっ……!」

 

「くそっ……!こいつは!?」

 

 防寒着を着てゆっくりと歩きながら悪態をつく男は、目の前に裸の少女を見つける。

 いや、単に裸ではなく、綺麗な肌や髪には汚れた液体が付着し、髪がボサボサとなった姿からその美貌が完全に失われたのが見て取れる。

 オロンドの住民なら瞬時に理解できるその顔は、望まずに有名人となってしまった、武装解除を促す言葉を発し続けた少女だった。

 

「……冷たいな。流石に死んでるか……最初は恨んだが、いつ聞いたか暴力的な性行為を受けてると聞いたときは同情すらした」

 

「……しかしな、これは余りにも酷すぎる……」

 

 自身も凍えているはずなのに、男は少女の遺体に防寒着を着せ、抱き上げようとする。

 その時、眼前に見えた光景に目を疑った。

 

「……ゴヴロ族、あの時の……戦士でさえ使い捨てるのか、あいつらは……」

 

 どの星からも邪悪扱いされる醜悪な見た目。

 しかし、ここで見た凍死したゴヴロ族だけは可哀想に思えてしまった……侵略者の一端であるはずなのに。

 

「……さて、連れて帰るか。洗い流して……そして、死後の冥福を祈ろう」

 

 男は重いのを我慢しながら、歩いてきた道を引き返していく。

 

 

 ───結局のところ、この星の環境は維持された。

 しかし、維持されたところで文明としては終わりを告げており───

 星間地図から消滅した。




こうした謎のシーンをあと2つぐらい用意していますので……

次話は戦争前の静けさと事件を……こちらも描写注意で(予告)
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