ボオオオオオオ
どんな色にも染まらない街、ミシロタウン。その港に、ジョウト地方・アサギシティからの定期船が差し掛かろうとしていた。
「zzzzzz……」
定期船のデッキの上に立て掛けられたビーチチェア。その上に、黒と黄色の半袖のシャツに藍のカーゴパンツという出で立ちをした少年が、寝転んでいびきを立てていた。その傍らにはかざんポケモン、バクフーンが、体を丸めて同様に寝息を立てていた。到着を知らせる汽笛が鳴ったというのに、尚もいびきを掻いている二人を見かねた船員が、彼らを起こしに向かう。
「お客さん、お客さん。起きてください。もうすぐミシロに着きますよ」
「ぐぅう……ふがっ」
船員に体を揺すられ、少年は目を覚まし気だるげに延びをする。それに釣られて傍らのバクフーンもまた目を覚まし、大きなあくびをして伸びをする。
「んぁあ……あかん、寝すぎたわ。体バキバキやわこれ……」
「くぁぁああ~~」
ふたりは並んで立ち上がり伸びをしつつ、デッキから見える近づいていくミシロの港を眺める。
「さぁて、久しぶりの我が家やで、バーン。」
「バッフーンッ!!」
ミシロタウン・オダマキ家。
「フンフンフ~ン♪」
上機嫌に鼻歌を歌い、テーブルに食器を並べる、モンスターボールのプリントされた赤いバンダナがチャームポイントの少女、ハルカ。その足元では、彼女のパートナーポケモンであるアチャモが、主人に釣られて上機嫌に飛びはねている。
「ま・だかな~?まっだかな~♪おっ兄ちゃん、まっだかな~♪」
「チャモチャモ~♪」
ハルカの歌に相づちをうちながら、アチャモはちょこちょことあとを追う。
「あらあら、ハルカったら、そんなにお兄ちゃんが帰ってくるのが嬉しいの?」
「ハピハッピー」
そんな彼女の様子に、ハルカの母とその手伝いをしていたしあわせポケモン・ハピナスは、顔を綻ばす。
「うんっ!だってだって、ずっとずっと待ってたんだもん!」
ハルカは迷いなく即答する。優しくて面白くてポケモンをたくさん連れている凄腕のポケモントレーナー。そんな兄がハルカは大好きだった。
「こうしちゃいられない!わたしお父さん呼んでくるね!行くよチャモちゃん!」
「チャモ~!」
そう言うと、ハルカとチャモは台所を小走りに、父のいるであろう林道へ向かった。
「あの子ったら……お兄ちゃんと入れ違いになるとは考えなかったのかしら?」
「ハピー……」
「全くもう、思い立ったらすぐ飛び出しちゃうところは父親似ね。」
「ハピハッピ~」
そんな娘の様子に、ハルカの母とハピナスはやれやれといった具合に顔を合わせた。
101番道路。穏やかな気候で背の高い茂みと広葉樹の広がるそこは、距離は短いが野生のポケモンが多く住んでいた。
「ニョロゾ、"バブル光線"!」
「ニョロッ!」
白いニット帽を被った少年の指示を受け、おたまポケモン・ニョロゾが木に向けてバブル光線を放つ。泡の連撃は太い木の幹を大きく削った。
彼の名はユウキ。先週ジョウト地方から引っ越してきた彼は、パートナーであるニョロゾとトレーニングをしていた。
「あ、ユウキ君!おっはよー!」
「あ、ハルカちゃん!おはよっ」
そこへ通りかかったハルカがユウキに挨拶をする。ユウキは彼女の元気に苦笑しながらも挨拶を返した。引っ越して来てから隣同士になった彼らは、お互いにポケモンを持っていることと、家同士のこともありすぐに仲良くなった。二人の傍らでは、ニョロゾとチャモの二匹もお互いに挨拶をしている。
「ハルカちゃんは何処に行くの?」
「お父さんを迎えに行くの!今日お兄ちゃんが帰って来るんだ~♪」
「え!お兄さんが!?」
ハルカから兄が帰って来ることを聞き、ユウキもまた顔を輝かす。彼はとある理由からハルカの兄とも以前からの知り合いであり、ユウキもまた彼のことを兄のように慕っていた。
「今日お兄ちゃんのお帰りパーティーなんだー!よかったらユウキ君もおいでよ!」
「えっ!いいの!?」
「だいじょーぶだよー!みんな歓迎するって!」
そう言いハルカは朗らかに笑う。彼女の思い切りのよさと前向きさにユウキは苦笑するも、不快な思いは一切なかった。それが彼女の長所でもある。
「だから早くお父さん迎えに行かなくちゃ!行こっ、ユウキ君!!」
「あ、まっ待ってよハルカちゃん!」
そうして二人は101番道路の林道を進んで行った。
「どこかな~オダマキ博士……」
「う~ん、いつものパターンだとそろそろ……」
「……やっぱし」
「あ、はは……」
二人は声のした方向へと走っていく。そこには、探し主であるオダマキ博士が、かみつきポケモン・ポチエナとその進化形グラエナの群れに木の上へと追い立てられていた。
「あ!二人とも!?ちょうどよかった助けて!!?」
「は、博士ぇ!?」
「んもーお父さん!!なんで毎回そんなことになってるのよ!!」
ユウキとハルカの二人に気付いた博士は即刻助けを求める。その声で二人気付いたポチエナたちは博士から二人へと狙いを定めた。
「もうっ!後でお説教だからね!?チャモっGOー!!」
「いっけえニョロ!」
二人の指示を受けてアチャモとニョロゾは動き出す。"かみつき"にかかるポチエナをアチャモが"ひのこ"で牽制し、ニョロゾの"みずでっぽう"がポチエナを吹き飛ばす。2体は協力してポチエナの群れを対処しているが、流石に多勢に無勢であった。
「そ、そうだ!二人ともこれをっ!」
それを見た博士はカバンから2つのモンスターボールを取り出し二人に投げ渡す。ボールはそれぞれユウキとハルカがキャッチした。
「その中のポケモン達も加勢させるんだ!」
ハルカとユウキは顔を見合わせると、ボールを投げ中のポケモンを繰り出す。
「ガリャ?」
「キャモッ」
ボールから飛び出したのは、みずうおポケモン・ミズゴロウと、もりとかげポケモン・キモリ。二匹はだいたいの状況は察しているのか、すぐに臨戦態勢に入った。
「キモリ、"はたく"攻撃!ニョロゾ、"バブルこうせん"!」
「チャモちゃん"ひのこ"!ミズゴロウ"みずでっぽう"!」
こうして二匹も加えた四匹はなかなかのコンビネーションによって徐々にに巻き返していく。ポチエナ達も数で応戦するが、遠距離攻撃を持たない為に攻めあぐねていた。
「グルルルル……グァオォ!!」
すると群れのリーダーと思われるグラエナが鳴き声を上げ、ポチエナ達はその場を離れる。どうやら子分達に代わって自分が相手をするつもりらしい。進化形の登場に一同は緊張が走る。
「グォワアアアア!!!」
グラエナは"とおぼえ"を上げると一直線に"とっしん"する。それによりミズゴロウは撥ね飛ばされ、木に激突する。
「ミズゴロウ!?」
「ニョロゾ!!」
ニョロゾはバブルこうせんを放ちグラエナに命中する。グラエナは多少押し出されたものの、その場で持ちこたえるとニョロゾへ飛びかかり"かみつく"。鋭い牙が食い込みニョロゾは苦しむ。
「ニョロゾ!?」
ニョロゾを助けようと、キモリとアチャモが駆け寄るが、グラエナはニョロゾを投げ捨て、その場で巨大な咆哮を上げる。
『グオオオオオオオオン!!!』
"バークアウト"の衝撃により、小型なキモリとアチャモ、そしてユウキとハルカは吹き飛ばされる。耳鳴りのする中、グラエナが唸りながらゆっくりと近づいてくるのが見えた。ポケモン達も皆動けない。絶体絶命の状況で、ハルカは兄の姿を思い浮かべた。
「グルルルル……!」
「お、お兄ちゃん……」
「グワアアアア!!!」
「助けてっ!お兄ちゃん!!」
「"かえんぐるま"!!」
"かみくだこう"と飛びかかるグラエナを炎の弾が吹き飛ばす。炎は弾け、中からバクフーンの姿が現れ、グラエナの前に立ちふさがる。
「ったくもう、だからあれほど護衛くらいは付けろって言っとんのに。心配になって来てみたら案の定かい。」
ハルカは声のした方を見る。黒と黄色のシャツ。ジョウト弁混じりの言葉。そしてこのバクフーン。
「~~~ッッ!!!お兄ちゃん!!!!」
「よっ、ハルカ。色々話したいことはあるけど、まずは……」
「グォワアアアア!!!」
ケンタはグラエナへと視線を向ける。グラエナは邪魔をされたことに怒り、乱入者であるバクフーンのバーンを睨む。そして再び"とおぼえ"を上げ、バクフーンを"かみくだく"為に牙を剥いて迫りーーー
「"かわらわり"」
その前にバーンの手刀がグラエナの額に降り降ろされた。効果抜群の一撃は、グラエナの脳を揺さぶり、そのまま意識を刈り取った。
目を回し倒れるボスの姿を見て、ポチエナ達は竦み上がり一目散に逃げ出した。
余りにも呆気なく終わった死闘に、誰もが唖然とする中、ケンタはバーンを労うと、腰のボールを取り出す。
「ハッピ、"いやしのはどう"だ。」
「ハッピ~」
ボールから出てきたハピナス、ハッピの放ったいやしのはどうがアチャモ達に降りかかる。するとアチャモ達の傷が回復して行き、みな起き上がってトレーナーのもとに集まる。
「チャモちゃん!ミズゴロウ!」
「ニョロゾ!キモリ!」
「よし、あとは……」
ケンタはアチャモたちが回復したのを確認するとハッピへ目配せする。それを受けたハッピはグラエナの元へ歩みより、同様にいやしのはどうをかけた。
「グ、グァア……」
「ごめんな、本当ならテリトリーに入った俺たちが悪いのに。これはせめてものお詫びだ。」
「ハッピ~」
ふらふらと立ち上がるグラエナに、ハッピはお腹の卵を差し出す。グラエナは困惑するが、やがて卵を咥えて林の奥へと走り去った。
「ふぅ、さて、これでもう…」
「お兄ちゃん!!!」
言うや否や、ハルカはケンタに飛び付く。ケンタは一瞬面食らうも、すぐにハルカを受け止めた。
「おっとっと、……ただいま、ハルカ」
「うんっ!お帰り、お兄ちゃん!!」
正直 挿し絵って必要でしょうか?
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一話に一枚欲しい
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あった方が面白い
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文章だけで表現して欲しい