ココロふるいたてる、冒険の旅へ
「ほんまなんぼ言うたらわかんねん!!フィールドワーク行くんなら俺のボックスからでもええからせめて一匹はポケモン連れてけ言うとるやん!!何でわからんの!?いつか命落とすでほんまぁ!!! 」
「はい、スミマセン……」
ミシロタウン、オダマキ邸庭先。そこで正座させられたオダマキ博士はジョウト地方から帰ってきたケンタに説教をされていた。
「お前らもっ!ポケモンの生息地に入る時は常に注意せなあかん!!ポケモンは人間の隣人やけど、同時に強力な存在やねん!!向き合い方を間違えたらケガですまんこともあるんやぞ!!」
「「はい、ごめんなさい……」」
ユウキとハルカもまた同様に正座させられている。ジョウト弁で怒鳴るケンタの迫力に二人とも縮みあがっており、ポケモン達も遠くから震えて見ている。
「まぁまぁ、ケンタもそのくらいにしてあげなさい。みんな今回のことはちゃんと反省してるだろうし。せっかく帰ってきたんだから、いつまでもカッカしてちゃだめよ~?」
「ハッピ~」
様子を見ていた母とハッピに咎められ、ケンタは再びハルカ達に視線を向ける。三人はビクッと肩を震わせ項垂れる。
「……反省した?」
「「「しました」」」
「もうしない?」
「「「しません」」」
「ちゃんと気を付ける?」
「「「つけます」」」
「……そっか、だったらよし!それじゃお腹すいたし家帰ろ。母さん晩ごはんなに~?」
「ええ、今日はご馳走よ~。ね、ハルカ?」
「え、えと…うんっ!お兄ちゃんの大好きなものいっぱい用意したんだから!!」
「そっか、そりゃ楽しみだ。じゃ、家入ろっか」
そう言ってケンタは笑ってハルカ達の手を取り立ち上がらせる。ハルカ達はホッと胸を撫で下ろし、玄関へと向かった。
「あ、そだ。ユウキ、センリさんにはこのことはちゃ~んと言っとけよ?」
「あ、あははは……はい」
項垂れるユウキをニョロゾは肩を叩いて励ました。
「へぇ~、お兄ちゃんジョウト地方で伝説のポケモンのことを調べてたんだ!」
「そ、この2年くらいはジョウトの各地に存在する伝説のポケモンの伝承についての調査と、生息するポケモンの種類と傾向の調査だな。渦巻き島とスズの塔にも行ったぞ。生八つ橋とタンババーガーが美味しかった。」
「食べてばっかじゃないですか……」
ハルカ達の用意した豪華な夕食を食べながら、ケンタはジョウトで過ごしたことを語る。それをハルカはキラキラとした目で聴いていた。
「じゃあポケモンリーグには出なかったの?」
「ああ、ジムリーダーとか何人か知り合いは出来たけど、リーグには出ようと思わなかったな。バッチも集めなかったし」
「えー!?もったいないよー。お兄ちゃんなら絶対に優勝できるのにー!」
「そうですよ、ケンタさんすっごく強いじゃないですか!なのに何で……」
二人の疑問の声に、ケンタは困ったように笑う。
「ま、俺はのんびり漫遊しながら旅するのが性に合ってるからな………それに、昔はそんな余裕もなかったし……」
ポツンと呟かれたその言葉、それを言ったケンタと父の顔がどこか沈むのをハルカは感じた。二人ともいつも笑顔の家族だが、時々昔の話をしていると、顔に暗い影を落とすことがある。ハルカはそれが堪らなく嫌だった。
「~~ッ!!……でも、でもでも!今は違うんでしょう?今はゆっくりのんびり旅できるんでしょう?」
「ん?ああ、そりゃあまぁ……」
それを聞いて、ハルカは椅子を立ち上がる。
「だったら、出ようよ!ポケモンリーグ!!わたしと、ユウキ君と、お兄ちゃんと!三人で!!」
ハルカの突然の言葉に、みな呆気にとられる。答えを迫るように体をのめらし見つめられ、ケンタは言葉を繋げる。
「いやいや、しかしだな、俺はともかく二人はまだトレーナー免許をもらったばかりだろう?」
「じゃあお兄ちゃんがわたしたちを鍛えてよ!三人で旅しながらジム巡りして、わたしたちを立派なトレーナーに鍛えて!」
「僕からもお願いします!」
そこでユウキからも声が上がる。思わぬ伏兵にケンタはまたしても唖然とする。
「ゆ、ユウキ?お前まで何を……」
「あの時、ケンタさんが助けてくれなかったらどうなっていたか……僕、強くなりたいんです。ケンタさんや父さんみたいにみんなを守れるくらいに強くなりたいんです!だから、お願いします!」
「「僕/わたしたちを強くしてください!!」」
二人は打ち合わせでもしていたかのように、言葉を揃えて頭を下げる。そして、未だ唖然とするケンタに真剣な目で訴えかけた。ケンタは二人の目を見つめると、やがて髪を掻いてため息を溢した。
「……はぁ、わかったよ。ここまで言われたんじゃしょうがない。どーせ今度はホウエンで仕事するつもりだったんだし、ジム巡りしながらでもかまわんだろ。」
その言葉に二人は目を輝かす。ケンタはニコニコと様子を眺める父に視線を向けた。
「と、まぁそう言う訳で。いいよな、父さん?」
「もちろん、むしろ大賛成さ。君らは若いんだ、思うままにしたらいい。僕は応援しているよ。」
「ーーッ!!じゃあ…!!」
「ぃよし!それじゃ出るぞポケモンリーグ!!目指すはホウエンチャンピオンだ!!」
「「「お~~~ッ!!!!」」」
夜も更けた深夜、ハルカが明日への思いに胸膨らませベッドでアチャモと寝息を立てるなか、ケンタとオダマキの二人はソファーで向かい合い語らっていた。
「ごめんよ父さん、勝手に決めちまって。俺は父さんの研究の手伝いで旅をしてるのに…」
「いいんだ。むしろ嬉しいくらいさ。これまでもケンタの送ってくれたデータのおかげで随分と助かってるんだ。君は君の思うままに人生を生きればいいんだよ。」
「……ありがとう、父さん」
ブリーの実のジュースをカップに注ぎ、オダマキはケンタに差し出す。舌に残る濃厚な甘味に苦笑を洩らすと、オダマキが口を開いた。
「手掛かりは見つかったかい?」
それは、二人だけの秘密。七年前、意識を取り戻した健太が幼いながらも必死に訴えかけ、そしてオダマキが決して誰にも話してはならないと約束した、ハルカにも、妻にも話したことのない、二人の抱えた秘密だった。
「いや、ぜんぜん。人欠片もなし。ウバメの祠やハテノ村にも行ってみたけど……」
「………帰りたいかい?元の世界に」
オダマキのかけた言葉に、ケンタは言葉無く、顔を曇らせ沈黙する。
部屋に沈黙が降りる。やがて、健太は絞り出すように言葉に出した。
「………正直、わからないや。」
そうしてポツリポツリと、選ぶように言葉を続ける。
「父さんや母さん、ハルカのことは本当に家族だと思ってる。事故にあって、この世界に来て、父さんや、ポケモン達に出会って、みんな本当に、本当に大切な家族なんだ…………けど、」
『健太!!!健太ああああああああああ!!!!』
「今でもね、頭に、浮かぶんだ……俺に手を伸ばす向こうの父さんの姿が、家で待ってた母さんが……頭に……浮かぶんだ」
悲痛に叫ぶ父の顔が、自分を送り出した母の顔が、幾度となく頭をよぎる。はじめは、大好きなポケモンの世界に来れたこと、空想の存在であったポケモンとふれあえたことを純粋に喜んだ。
だが、やがて気づいたのだ。"ここには父と母はいない"と。そして"自分はこの世界でただ独りなのだ"と、嫌でも実感した。
「忘れられやしない。忘れたくない。忘れるのが怖い。」
夢にうなされたことも幾度となくあった。一時期この世の全てを拒絶した。
だが、オダマキが、オダマキの妻が、ハルカが、ポケモン達が、そんな自分に暖かく寄り添ってくれた。絶望に沈んでいた自分を、家族として受け入れてくれた。いつしか、心を覆う絶望と孤独は、消えてなくなっていた。自分は独りではないと、そう思えるようになった。
「……けど、それ以上に、俺は知りたい。なぜ俺がこの世界に来たのか。どうして俺だったのか、俺はそれが知りたいんだ。」
「………そうか」
「正直に言うよ。僕も、ケンタのことは本当の息子だと思っている。離れたくはない。ずっと一緒にいてほしい。母さんも、ハルカも、みんなそう言うと思うよ。」
はじめは突拍子もないことだと思った。自分が事故にあって異世界から来て、そこではポケモンがフィクションの存在であり、自分達がゲームのキャラクターだったなど、到底信じられないことだった。
だが、彼の語ったオーキド博士をはじめとした、ポケモン関係の著名人の名前とポケモン学会でも一部しか知らないような伝説のポケモンの名前。そして、彼の持っていた冊子の中を見て、それが真実なのだと確信した。
未だ研究の浅いアローラ地方に生息する固有種のポケモンの名前、タイプ、特性、進化系列。それだけではなく、覚える技やそのレベル、果てはその糸口すらまともに掴めていない、そのポケモンの持つポテンシャルや卵グループなどが、明確に数値化され記されていたのだ。
これを公開すれば世界がひっくり返る、そう確信した。
だが、
そんな子供を自分たちの勝手なエゴに巻き込むようなことは、オダマキには到底できなかった。そして、彼は自分が守らねばならないと、そう心に誓った。
彼を家に迎え入れることにした際、妻と娘にはポケモンの生息地で瀕死の重態で倒れているのを発見し、引き取る親も戸籍もないと説明した。当時からやんちゃだった幼い娘は新しい兄をすぐに受け入れ、妻もそんな彼の境遇を嘆き、本当の息子のように接した。そして、その努力も実り、彼は明るい笑顔を見せるようになり、立派に成長してくれた。そしてそう思えたとき、とっくに自分たちは本当の家族になっていた。
「だけど、これだけは覚えていてほしい。僕は何があろうと君の味方だ。君が真実を知った時、どんな選択をしたとしても、僕は絶対にそれを否定はしない。」
だからこそ、自分は彼を見守ろうと決めた。旅の末、彼が元の世界へと帰ってしまったとしても、自分は笑顔で見送ろう。そう心に決めていた。
「……父さん」
「頑張りなさい、君は僕の自慢の息子だ。ハルカ達を、頼んだよ。」
「……ああ、わかった。任せてくれ。」
けれど、そんな立派になった息子を見ると、やっぱりどうしようもなくーーー
(寂しくなっちゃうなぁ~……)
「ユウキくーんっ!こっちこっちー!」
「わかってるよーハルカちゃんっ」
ミシロから101番道路へと続く道、そこで待っていたオダマキ一家はユウキを出迎える。
「ユウキ君、そしてハルカ。準備は出来たのかい?」
「はいっ!」「バッチリだよー!」
オダマキ博士の問い掛けに、二人は元気よく答える。オダマキはその答えに満足の笑みを浮かべてうなずいた。
「よろしい!二人の旅立ちを記念して、僕からプレゼントを贈ろうと思うんだ。」
そう言ってオダマキ博士は、二人に赤い楕円形の機械を手渡す。
「これはポケモン図鑑、ホウエン地方のポケモンのデータが記録されていて、さらに出会ったポケモンのデータを自動で更新するハイテク図鑑だ。因みに、中のデータはケンタの集めた情報をもとにしているよ。」
「へぇ~!すごいねお兄ちゃん!」
「いやぁ、それほどでもね」
「そして、ユウキ君。君にはもうひとつ贈るものがあるんだ。」
すると、ユウキの背中をよじ登り、キモリがユウキの頭に飛び付いた。
「キャモッ!」
「うわっ!キ、キモリ!?」
驚くユウキにキモリは頬をこすりつける。
「あの戦いの後、君のことをいたく気に入ったみたいでね、どうか連れて行ってやってくれないかい?」
「いいんですか!?」
「ああ、君といる方がキモリも幸せそうだ」
オダマキ博士の言葉にユウキは満面の笑みを浮かべ、キモリを抱えて正面から向き合った。
「よろしくな、キモリ!」
「キャモ!」
「えー!いーなーユウキ君~」
「ハルカちゃんはアチャモをもらったんだろ?」
羨ましがるハルカにユウキが指摘する。見れば彼女の足元でアチャモのチャモがピョコピョコと抗議していた。
「でもユウキ君にはニョロゾがいたじゃなーい!あっ、じゃあミズゴロウは!?お父さん、わたしミズゴロウを連れてってもいい!?」
「それなんだがね……」
「ゴリョ」
オダマキ博士は苦笑してミズゴロウのボールを取り出す。出てきたミズゴロウはピョンと飛び出し、ケンタの前へと降り立った。
「どうやらミズゴロウはケンタに連れて行ってほしい様なんだ」
「俺に?」「お兄ちゃんに?」
「ゴリョ、ゴリョゴリョ!」
そうしてミズゴロウはケンタに胸の内を語りだす。
「ゴリョ、ゴリョリョ。ゴリョゴリョゴリョ、ゴリョ~ゴリョゴリョ。ゴリョゴ、ゴリョ~!ゴリョーゴリョゴリョー!!」
「ははは、何言っとんのかわっかんねーや」
ガビーン !?Σ(゚ロ゚;)
「けど、わかるぜ。強くなりたいんだろ?」
そう言って、ケンタはミズゴロウの瞳をじっと見つめる。見つめられたミズゴロウもまた、真剣な眼差しでケンタを見つめかえした。
あの時、グラエナになすすべなく吹き飛ばされ、そのグラエナを一撃で倒したバーンの姿。それを見て、自分が余りにも情けなかった。悔しくて、羨ましくて堪らなかった。
けれど、それ以上に彼らがとてもかっこよかった。彼らのように強くなりたいと、心から思ったのだ。
「いいぜ、行こう!」
「ーーッ!ゴリョ!!」
ケンタの答えに、ミズゴロウは歓喜の声をあげる。いつか自分も、ケンタの傍らに立って、一緒に戦いたい。そして、みんなを守るんだ。その思いを胸に、ミズゴロウはケンタへ抱きついた。
「ちぇ~、じゃあしょうがないっか。わたしもポケモンゲットしなきゃね!」
「そうそう、その意気だハルカ。」
ハルカは少し残念に思うも、ミズゴロウの意識を汲み取り自分も新たな出会いに意気込む。見ればチャモも、彼女の足元で小さな胸を張って意気込んだでいた。
「ぃよっし!それじゃいくぞ!まずはトウカシティだ!ホウエンリーグへの旅!しゅっぱーーーつ!!!」
「「おーーー!!」」
こうして、ケンタ、ユウキ、ハルカの三人による、ホウエンリーグへの旅が始まった。
最初は以前書いてたポケモン物のリメイクのつもりだったのですが、気づいたらぜんぜん内容違っててリメイクと読んでいいのか疑問です。
目標としてスッキリと完結させるよう、頑張ります。
正直 挿し絵って必要でしょうか?
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一話に一枚欲しい
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あった方が面白い
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文章だけで表現して欲しい