もしもかごめちゃんが完全に桔梗さまの生まれ変わりだったら   作:ろぼと

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感想・評価まことにありがとうございます。いつもニヤニヤ見させてもらってます

お待たせしました、鉄砕牙シーンの後編です。書き直しまくって展開がごっちゃになったので、幾つかの名シーンをカットしました、済まぬ…

ではどうぞ!
 


妖刀・"鉄砕牙"(下)

 

 

「────犬夜叉が…消えた?」

 

 

 偉大なる主に仕える小鬼の従者、邪見(じゃけん)は目の前で起きた出来事に唖然と顎を垂らす。

 

 瀕死の犬夜叉を追い詰めることで、大層次男を──もといその母親を──贔屓していた父君の愛情を逆手に取り、奴の形見の類に仕組まれているであろう墓への道しるべを開かせる計画。その最中、倒れ伏す半妖が突如現れた謎の風穴に周囲の空間ごと呑み込まれ、気付けば主従の佇む森は二人を除く無人となっていた。

 

「み、巫女もおらぬ。彼奴らめ、一体どこへ…!」

 

 焦る邪見は、しかしふと無言の主人の様子が気になり姿を探す。そこには犬夜叉と四魂の巫女が消えた辺りへ近付き、地面の一点を見つめる彼がいた。

 

「…殺生丸さま?」

 

 叱咤を恐れこそこそと青年の下へと近付くと、視線の先には何やら輝く小さな玉が。およそ斯様な場に落ちているとは思えぬ美しい漆黒の宝珠に邪見は息を呑む。

 

「黒い、真珠…? 何故にこんなものが犬夜叉の消えたところに…」

 

「"人頭杖"を寄越せ」

 

「…へっ? あ、は、はいっ!」

 

 唐突な指示に慌てて手の大杖を差し出すと、殺生丸が突然、転がる黒真珠へその先端を突き立てた。 

 

 すると。

 

 

「こ、これは───翁の顔が笑った!?」

 

「フフ、ようやく見つけたぞ…!」

 

 

 "人頭杖"の頭部より「カッカッカッ」と不気味な嘲声が響くと同時、二人の正面に先ほどの渦が再現した。間違いない、犬夜叉を吸い込んだものと同じ宙の洞穴だ。

 

「なんと…! もしや犬夜叉はこの黒真珠の中に逃げ込んだのですか?」

 

「右目に封じられし冥道への入り口。まさかそんなところにあろうとは、父上も妙なところに隠したものよ」

 

「で、ではこの渦の先に父君の御墓が───って、あ、殺生丸さまお待ちを!」

 

 微塵の躊躇いなく異界の門を潜り消えて行く主を追う邪見。二百と余年もの"宝探し"を経、ようやく見つけた確かな手がかりを前にしても殺生丸の頬に綻びはない。愚弟に先越された憤りに眉間を顰める青年とその従者は脇目も振らず、渦の奥の暗闇へと姿を消した。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 微睡みの闇が、突如深い雲に覆われる。眩いばかりの世界で閉じたはずの目が眩み、犬夜叉は光を遮ろうと手を翳して瞼を開けた。

 その瞳に、安堵にほっと胸を撫で下ろす焦げた襦袢姿のかごめが映る。

 

「こ、こは…」

 

「…気付いたか、犬夜叉。話すよりその目で見たほうがいいだろう」

 

 視界が晴れ、直後強烈な突風と竦むような浮遊感を感じる。少女に促され慌てて辺りを見渡した少年は、あまりの天変地異に目を疑った。

 

 目の前に広がるは辺り一面の剣山。壮大な空を斬り裂く巨人の槍矛の如き山々は、その全貌を雲海の中に隠している。だが犬夜叉の見開いた眼が囚われているのは眼下の果て無き山脈でも、空飛ぶ無数の骨の鳳でもない。

 

「お、親父…!?」

 

 力を欲し、訳がわからぬままに連れてこられた少年は、見知らぬ地にて巨王の屍を刮目する。雲を貫く峰の上に、まるで畳床机(たたみしょうぎ)のように腰を下ろす、大きな大きな骸の武者を。

 

「まさかおまえの体の中に墓への入り口が隠されていたとはな。見事な結界だ、私ごときでは及びもつかぬ…」

 

 あれこそが父、"犬の大将"の霊廟。

 かつて母が愛おしそうに語ってくれた、この世で最も強かった大妖怪の、成れの果てであった。

 

「うおっ」

 

「ちゃんと掴まれ、わざわざ運んで貰っているのだから」

 

 父の威容に圧倒されていると、突如足下が大きく揺れた。羽毛を掻き分け顔を上げた犬夜叉は、周囲の空に隊列を作る骨の鳥たちの姿を捉える。その内の一羽の背に乗っていたのだと遅れて気付き、墳墓の主の息子は少女と共にそのまま父の遺骨の中へと歓迎された。

 

「静かに眠るおまえの父君には申し訳ないが、ここで態勢を立て直そう。楓や村のことを思えばあまり悠長にしていられぬが…」

 

「いや、殺生丸は敵に逃げられた腹いせに村を襲うようなヤツじゃねえ。おそらくおれが外の世に戻るのを待ってやがる」

 

「…ならまずは父君の妖刀を探すぞ。御墓のことと言い、おそらく殺生丸の欲する"鉄砕牙(てっさいが)"とやらは…おまえに授けられたものだ」

 

「おれに授けられた?」

 

 犬夜叉は思わず隣のかごめへ振り向く。言われてみれば、墓の鍵守と継承者を別とする理由など思い付かない。自分の体の中にあったのなら、それは自分のものになるのだろう。

 そう悶々と思考に耽る犬夜叉の耳を、かごめの優しげな声が包み込んだ。

 

「犬夜叉。おまえは兄には好かれなかったが……お父上には確と愛されていたのだろうな」

 

 まるで自分のことのように嬉しそうな微笑。泥煤に塗れど微塵も陰らぬその美しい相貌が少年の胸を高鳴らせる。肌着一枚の服装といい、直視に堪えなかった犬夜叉に出来たのは、自身の水干を彼女に手渡すことだけだった。

 

 一拍遅れて上着の礼を返したかごめは、すると何故か頻りに襦袢を弄り始めた。

 

「…しかし困った。こんなはしたない無礼な装いではとても、その…この場には…」

 

「女なら水浴び終わった直後に気付きやがれ! なんで今になっていきなり気にしだすんだ、変なやつ」

 

「……何でもない」

 

 恥じ入るように胸元の上衿を整える少女から目を逸らし、何とか雑念を振り払おうと少年は一足先に道の奥へと急ぐ。

 

 幾億の妖怪の髑髏が石畳を成す、巨王の腹の最奥。山一つ丸呑みにするほどの大顎を潜り、肋骨を這う蔓を掴み降り、辿り着いた先に、犬夜叉は豪奢な台座に突き刺さった一本の(なまくら)を目にした。

 

「…何だこれ?」

 

「強固な魔除けの結界を感じる。妖力を持つ者がこれを抜くのは至難だろう」

 

「何でこんなモンにそんな大それた守りが───まさかこのボロっちいのがその(てつ)ナントカとか言う親父の妖刀だってのか?」

 

 眼前の錆び刀を胡散臭そうに見つめながら、台座に立った犬夜叉は手垢で解れるボロボロの束を何気なく引き抜こうとした。

 

 だが。

 

「ぐっ!? ぬうううッッ!! な、何で…!」

 

 つっかえた力は捻る腰を伝い少年の素足を後退せる。突き刺さった刀は台座はおろか大地そのものにも等しくびくともしない。

 

「そんな手負いの体で無茶をするなっ、妖怪の血を持つおまえにこれは抜けぬと言っただろう」

 

「ぜー…ぜー……だったら人間のてめーがやってみろ。そんな棒切れみてえな細腕で抜けるか見ものだぜっ」

 

「私が?」

 

 ムキになった犬夜叉の嫌味にかごめがきょとんと目を丸くし、続けて首を竦めると小さく視線を彷徨わせた。

 

「人間相手に作用する術の類は見当たらぬが……その、いいのか? 私が勝手に…」

 

「ふん、そんなに抜ける自信があんなら見せて貰おうじゃねーか」

 

「…………失礼仕ります」

 

 台座へ静々と礼をするかごめの奇行に「誰にことわってんだ」と首を捻っていると、自身の苦戦が嘘のようにスッと刀が少女の華奢な手に引き抜かれた。

 

 

「ぁ…」

 

「嘘、だろ…?」

 

 

 感動も何もない。まるでそれが当然であるかのようにかごめの両手で掲げられた古刀を、二人はまじまじと見つめる。

 

「…親父のやろぉ、何で桔梗に…! "礼儀"か? 礼儀が足りねえってのか? まさか"女"だとか言うんじゃねえだろうな!?」

 

「そんなわけがあるまい。しかし……私がお父上殿からこの大役を…」

 

 大した労ではなかったはずなのに、妙に面映そうな顔で感慨に浸るかごめの姿が犬夜叉の神経を逆撫でする。

 

「けっ、ヤラセだヤラセ! 人間にしか抜けねえならてめえに抜けて当然だろ。とんだ茶番だぜ、ったく」

 

「わかっているさ。…ただ少しだけ……特別な意味を感じた気がしただけだ」

 

「特別な意味ぃ?」

 

 少女と、"鉄砕牙"を託した父。武器や死者と共に自分の世界を築く彼女が気に食わず、犬夜叉の声には棘が尖る。そんな彼にかごめは「忘れろ」と首を振り、そして一息の後、空気を一変させた巫女が恭しく刀を差し出した。

 

 

「────お納めくださいませ、彦君さま」

 

 

 父王の骸の中に、楚々と跪いた巫女の涼音が木霊する。焼け焦げ破れた肌着姿すら高貴に見せ、少女が傅くだけで景色は唐土(もろこし)の含元殿が如き厳かな空間へと変貌する。その両手に差し出された鈍のみすぼらしさは転じて真逆の神聖さすら覚え、まるで神器の宝剣のように見えた。

 

 美しく洗練された仕草で自分へこうべを垂れる桔梗。犬夜叉はそんな彼女の淑やかで神秘的な姿に息を呑み、暫しの間固まってしまう。

 

「…彦君さま?」

 

「え、あ。お、おうっ」

 

 思わず見惚れていた犬夜叉は少女の困惑げな声を耳にし慌てて姿勢を正す。そして、この瀟洒な乙女に敬われるに相応しい男たれと胸を張り、必死に厳顔を保ちながら鷹揚に宝刀を受け取った。

 

「たっ、大儀でありゅっ!」

 

「……フッ。まったく締まらぬやつだ。父君の墓前でくらいしゃきっとしなさい」

 

「う、ううるせえ! てめえがいきなりヘンなこと始めるからだろ!」

 

 照れ隠しに視線を逸らした犬夜叉は、元の"ただの女"に戻ったかごめの苦笑顔から逃げるように手元の妖刀を確かめる。

 

「…ただのボロ刀だな」

 

「まさか。その刀には妖力に呼応する封印がかけられている。妖怪の血を持つおまえなら解放出来るはずだ」

 

 呆れる声に従い自らの妖力を注ぐも、刀は無反応。何が足りないのだと苛立つ犬夜叉は、ポツリと後ろから聞こえた「犬夜叉の力と言えば…」のかごめの小さな呟きに思わず振り向いた。

 

「────"優しさ"…」

 

「えっ?」

 

「ッ、何でもない」

 

 まさか聞かれるとは思っていなかったのか、慌てて取り繕った少女は誤魔化すように歩みを早め、来た道を引き返そうとする。

 つい緊張が途切れ気が緩んでしまったが、これは父君の下さった束の間の平穏。あまりもたもたしていると追っ手が強引な手段を投じてくるだろう。半妖の犬夜叉と違い容易く傷を癒すことが出来ないかごめは体の調子を確認しつつ、再度気を引き締める。

 

「それよりさっさと"鉄砕牙"を使い熟せ。あの殺生丸が何の策も無く私たちを外界で待ち続けているわけが───」

 

 だが少女がその言葉を言い終えることはなかった。

 妖刀と睨めっこを続ける犬夜叉へ目掛け、突如とてつもない妖気が襲いかかったのである。

 

 

「────ありえん。貴様のような汚れた血の半妖に、父上の宝刀が抜けたと言うのか…!」

 

「ッ、殺生丸!?」

 

 

 咄嗟に刀を構え向かい合う犬夜叉。まさかの招かれざる来客に少年は顔を大きく歪める。

 

「てめえ、一体どうやってここまで…っ」

 

「封印破りの"人頭杖"、我が母より譲り受けた妖杖の力だ。封印の在りかさえわかれば道を開くなど容易いことよ」

 

「ぐっ!?」

 

 恐るべき速度。青年の指先が描いた軌跡に沿い、繰り出される光の鞭が犬夜叉の体を叩き飛ばす。

 

「父上の加護か、あるいはその懐の下賤な石ころの力か。多少傷が癒えようと体を侵した毒は容易く抜けぬ」

 

「くっ…犬夜叉、一旦下がれ! 此奴はお前ひとりでは倒せぬ!」

 

「ゲホッ、ゴホッ……うるせえ桔梗、てめえは引っ込んでろ! これはおれの戦いだッ!」

 

 かごめの制止を振り切り、意固地な犬夜叉は我武者羅に挑む。刀身に血と妖力を纏わせ宙を一閃。即席で妖術を応用するなど、手にした得物を何としてでも使い熟して見せると並みならぬ決意を胸に抱きながら。

 

「桔梗から受け取ったこの刀で…おれは殺生丸を超えて見せるッ!! 喰らいやがれ───"飛刃血刀(ひじんけっとう)"!!」

 

「貴様の穢れた血で"鉄砕牙"を汚すでない。父上の宝刀はそのような児戯のために存在せぬわ!」

 

「ッぐあァッ!!」

 

 自慢の武技も通用せず、毒爪の暴風を前に犬夜叉は成すすべなく甚振られるばかり。瞬く間に血と溶解毒に塗れた襤褸雑巾となり、少年は無様に父王の腹内に倒れ伏す。

 

「犬夜叉! おのれよくも…っ!」

 

「殺生丸さまっ、女子はこの邪見にお任せを! 巫女め、この翁面の妖炎を受けるがいい!」

 

「ッ、邪魔をするな小妖怪!」

 

 無理やり加勢しようとかごめは殺生丸へ弓を引くが、従者邪見の"人頭杖"の炎玉がそれを阻む。雑魚に挑発され感情のままに破魔の矢を解き放てば、炸裂する余波のみで敵は「ヒョアアァッ!?」と逃げ惑う。鎧袖一触で小者を追い払ったかごめは今度こそと犬夜叉の戦いへ急行した。

 

 だが、愚弟に長きの悲願を掠め取られた兄の怒りは、尋常に非ず。

 

 

「────そら見たことか。貴様如き弱者に父上の妖力が受け継がれるはずもなかろう」

 

「ぐ……ぁ…」

 

 大妖怪殺生丸と半妖犬夜叉。そこには大狼と子狗ほどの隔絶した差があった。猛毒の濃霧が両者の周囲を覆うその中心でかごめが目にしたのは、少年のかつてない危機。力なく"鉄砕牙"を手から零し、皮膚が暗苔色に毒付いた瀕死の犬夜叉がそこにいた。

 

「────ッ」

 

 視界が真っ白に染まる。後も先もなく、少女は我も忘れ毒霧の中へ飛び込み、倒れる犬夜叉へ必死に手を伸ばした。

 

「犬夜叉……しっかりしろ犬夜叉っ!」

 

 覆い被さる犬夜叉に半ば押し倒されながら、かごめは力の限りで彼を抱き留め盾となる。微かな鼓動が少年の命を繋ぎ止めていた。

 

「き……桔梗…」

 

 弱々しい声が鼓膜を震わせる。遠い昔、封印の矢で彼を射抜いたときと同じか細い声。

 かつての悲劇が頭を掠める。彼を抱きしめるかごめの胸奥で、ザアッ…と何かが翻った。

 

 その瞬間。女は近付く二体の妖怪へ、背負った弓を薙刀のように振るっていた。 

 

 

「…!」

 

「ッまたアアアッ!?」

 

 

 爆発的な光が辺りを照らし、あれほど渦巻いていた毒気があっと言う間に浄化される。

 

 霊峰の如き澄んだ空気の中、驚き身構える妖怪たち。その視線に晒されながら、かごめは抱きしめる重症の犬夜叉を優しく下ろし、ふらりと幽鬼のように立ち上がった。

 

 

「────許さぬぞ、妖怪共」

 

 

 かちり、かちりと脳裏で何かが噛み合う音が聞こえる。己の中にあった無数のズレが整い始め、捨てたはずの生き様が蘇っていく。焦がれた"女"をかつてのように封じ込め、弓を構え敵を睥睨するかごめは、かくして前世の死兵の如き"巫女"を取り戻した。

 

「だめ…だ………桔、梗…っ!」

 

 沈痛な声色で惚れた女の変わりようを嘆く犬夜叉の声は届かない。守るべき者を背に、今世の身に宿った膨大な力を呼び覚ました四魂の護り手が、遂に、想い人を傷付けた下手人へ弓を引く。

 

「…なるほど、長らく四魂の玉を守り抜いてきただけのことはある」

 

「な、なんという夥しい霊力…! 殺生丸様っ、この女子は危険です! 直ちに殺さなくては後の大いなる災いとなりまするぞ!」

 

 巫女の威圧に後退る従者を無視し、殺生丸は澄ました顔を改める。取るに足らないはずの鼠がまさかの牙を持っていた。金色の目を細める些細な仕草は、そのような油断を感じさせる大妖怪らしい変化であった。

 

「…よかろう、貴様はこの殺生丸が直々に殺してやる」

 

 初めて妖怪が女へ殺意を向ける。その気迫や、巫女の決死の覚悟をも呑み込む大妖怪の証。妖気が男の背後で鬼面を象り、それを見たかごめは即座に纏う霊力の密度を倍増させる。巫女が妖怪に怖気づくなどあってはならない。

 

「舐めるな(もの)()っ。おまえ如きに犬夜叉を殺させるものか…!」

 

「人間風情が半妖を守る片手間にこの私と戦うなど、その愚かさを知るがいい!」

 

 目にも留まらぬ速さで大地を駆け、一気に距離を詰める殺生丸。周囲に一切の余波を撒き散らさない卓越した技量は芸術の域にまで至っており、その僅か一歩の動きで、男が如何に己の半生を武力の研鑽に捧げてきたかが見て取れる。

 だがこと妖退治において天下無双を誇った巫女の直感は、並の人間なら残像すら見えぬ神速の縮地すら凌駕する。殺気を捉えたかごめは迫る敵へギョロリと瞳を向け、再度膨大な霊力を纏わせた弓を横へ薙ぎ払った。

 

 破裂音、そして続く砂塵を巻き上げる爆風。巫女の首筋へ迫った殺生丸の五指の毒爪が清浄な光に焼け爛れ、堪らず男は勢いそのまま弾かれるように距離を取った。

 

「…厄介な力だ。触れるだけで傷付き、毒まで浄化されるとは…!」

 

「破魔の霊力の前にはおまえたち妖魔の全てが無力! その野望ごとここで朽ちなさい!」

 

「朽ちるは貴様だ、我が毒爪にて屍と化せ!」

 

 妖怪の優れた回復力で瞬く間に殺生丸の傷が癒える。直後男の手からどす黒い緑色の毒霧が吹き出し、足下の骸畳が氷のように溶け出した。血縁の犬夜叉すら微量で体の自由を奪う、戦国最悪との呼び声高い殺生丸の毒華爪(どっかそう)。滴る体液は大地を腐らせ、その地の命を千年も奪い続けると言う即死の劇物だ。

 無論そのような不浄を周りに散らさせるかごめではない。一瞬で術を練り上げた巫女は男の攻撃を転がるように躱し、取った背後で自慢の切り札を行使した。

 

「捕らえたぞ…!」

 

「結界か、小賢しい真似を」

 

 眉間を顰め、男は無造作に腕を振るい自分を覆う不可視の檻を斬り裂こうとする。だが村を覆っていたものとは比べ物にならない"巫女"の結界は容易くその爪をはじき返した。

 

「ッ、何っ!?」

 

 そして大妖怪の顔から、今度こそ全ての余裕が消え去った。

 

「犬夜叉の兄君だろうと慈悲はかけぬっ! これで終いだ、殺生丸!!」

 

「────!!」

 

 気付いた時、既に遅し。ゾッとする尋常ならざる密度の霊力を感じた殺生丸は咄嗟に振り向き、そこで見事な姿勢で矢を番えるかごめの姿を瞠目した。

 あんな馬鹿げたものを真面に喰らえば如何な大妖怪とて肉片一つ残さず消し飛ばされる。だが結界に囚われた男に逃げる場所など皆無。

 

 傲慢を捨て死に物狂いで霊力の薄膜を突き破り、巫女が放った必殺の破魔の矢が男の胴に襲い掛かったのは、全くの同時であった。

 

 

「せっ、殺生丸様アァァッ!!」

 

 

 従者の絶叫を掻き消す炸裂音が轟き、せめぎ合う妖力と霊力が二人の争う巨王の腹内を照らし出す。

 

 そして一同は荒れ狂う光に呑まれ、白の世界に吸い込まれた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「────ハァッ……ハァッ……ッ何だ、その刀の結界は…っ」

 

 

 声が聞こえる。誰よりも愛おしい女の声が。

 

 霞む視界の中、犬夜叉は僅かに残った意識で瞳を動かし辺りを探る。兄の猛攻に成すすべなく倒れ、人間はもちろん並の妖怪なら瞬く間に溶け消えるほどの溶解毒に侵される彼はまだ、小さな命の灯火で生きていた。

 

「ま、まさか……"天生牙"(てんせいが)の結界が殺生丸様をお守りに…?」

 

 耳元に新たな声が響く。少年は片目でその嗄れ声の主の小柄な姿を捉え、続いて例の従者の視線の先を追った。

 そこには濛々と立ち込める土煙と、その奥を睨みながら膝を突く傷だらけの美しい少女がいた。

 

 咄嗟に彼女の名を叫ばなかったのは争う強者同士の戦いに水を差すことを恐れたからではない。単純に、口が、喉が、自分の体の全てが鉛のように重く、指先一つ動かせなかったからだ。

 

『!!』

 

 突如発生した強い妖気が辺りの粉塵を吹き飛ばす。その中に、憎き長兄殺生丸が佇んでいた。常の毅然とした面持ちを僅かに歪め、自分の抉れた血だらけの腹部を押さえながら。

 

 

「────くだらん」

 

 しばしの時の空白を置き、大妖怪が忌々しげに呟く。

 だが次の瞬間。

 

「ッ、しまっ!?」

 

「"天生牙"め、この殺生丸がたかが人間の巫女風情に後れを取ったと言いたいのか」

 

 瞬く間に少女の下まで飛翔した殺生丸は、声を上げる時も与えず彼女の首を掴み上げた。生きていることが不思議なまでの大怪我を物ともしない大妖怪は、正しく末法世界の魑魅魍魎の類。

 

「如何に霊力に長けようと所詮は脆弱な人間。このまま蹂躙してくれる…!」

 

「く、放───ッかはっ!?」

 

 無体を働く大妖怪へかごめが破魔の霊力をぶつけようとするも、男は容赦なくか弱い人間の腹へ膝蹴りを放つ。少女の端正な桜色の唇が鮮やかな血の紅に染まり、一撃で戦意を削ぎ落された彼女の顔が激痛に歪んだ。

 

「…き……きょう…ッ!」

 

「ほう、まだ息があったか犬夜叉」

 

 兄の非行に視界が一瞬で憤怒と焦燥の赤に染まり、犬夜叉は咄嗟に声を絞り出す。

 だが真の怒りの矛先は無様な自分自身。惚れた女の危機を前に惨めに倒れ伏し、一体自分は何をやっているのか。何も出来ない犬夜叉は己の側に刺さった宝刀へ死力で腕を伸ばすも、奮闘実らず父の"牙"には届かない。

 

「丁度いい。貴様ら纏めて"鉄砕牙"の試し切りに使うてやるわ」

 

 首の手を放されたかごめの体が糸の切れた傀儡の如く地面に崩れ落ち、幾度も鮮血を吐いている。一刻も早く手当をしなければ命に係わる大怪我だ。

 

 だが。

 

 

「────"鉄砕牙"に……触れる、な…っ」

 

 

 骸の石畳に刺さる宝刀へ踵を返す殺生丸。その袴の裾を、かごめの力ない指先が掴んでいた。

 

「それ、は…犬夜叉の……ものだ…! 触れれ、ば…討つ!」

 

 臓腑が潰れているのだろう。笛の音のような痛々しい呼吸音が紛れる彼女の細声は、無情にも大妖怪の慈悲を得ることはない。容易く蹴り飛ばされ、犬夜叉の片目に自分の側まで転がされるかごめの姿が映る。彼女の受けた仕打ちも、傷も、全てはこの自分の不甲斐なさが招いた結果であった。

 

 止めろ、もう十分だ、頼むから逃げてくれ。そう叫ぶ犬夜叉の声は意味なき擦れた吐息となり、猛毒に侵された喉から零れ出るだけ。何も出来ず、ただ愛した女が嬲られる様を見続ける少年に最早当初の威勢はなく、無力な彼にはただただ頭を垂れ、顔も知らない父へ慈悲を懇願することしか出来ない。

 兄を倒す、力が欲しいと。

 

 

「…理解出来んな。何故奴と殺し合った巫女の貴様が、そうまでしてその半妖のために私へ弓を引く」

 

 少年の想いも空しく、血涙浮かぶ眼で殺生丸へ抗うかごめ。犬夜叉と"鉄砕牙"を守ろうと体を投げ出す彼女の手には圧し折れた弓が。そんな瀕死の巫女の心中がわからない大妖怪が冷めた声で問いかける。

 奇しくもそれは犬夜叉自身が抱いていたもので、同時に問うことを恐れ続けていた疑問であった。何で戦おうとする。おまえは何でおれなんかのためにそこまでしてくれる。

 

 ───前世でおれを騙し殺そうとしたおまえは、何で今世もおれのそばに居ようとする。

 

 少年は今、身に過ぎた光景を見ていた。言葉の答えにすら臆していたと言うのに、彼の前には惚れた女が地べたに這い蹲りながらも男を守ろうと身を挺する姿が。言葉以上に強い意思を必要とする、行動による答えが、犬夜叉の前で示されていた。

 

「フッ、ククク…」

 

 そして。

 そんな彼女の意思は、人ならざる化物たる殺生丸ですら認識出来るほどに、純粋なものであった。

 

 

「そうか貴様ら。巫女と半妖の身で───恋を育んだか」

 

「…ッ!」

 

 

 かごめの息を呑む、痛ましい悲鳴のような音が聞こえた。秘めた想いを憎き物の怪に悟られた屈辱、失笑に対する怒りか、あるいはこの場にいる相手の少年へ心の内を知られてしまった動揺故か。倒れ伏す犬夜叉と桔梗、交差した二人の瞳は彼女の一瞥で別れ、悔い入るように沈痛なその麗容が俯き隠れる。

 まるで、許されない罪を暴かれた絶望に打ちひしがれるかのように。

 

「全く。父上も卦体(けたい)な嗜好をしておられたが、そこな畜生はそれに輪をかけて救いようがない。相容れぬ人間の中でも最たる仇敵に懸想するとは……反吐が出るほどに似合いではないか。のう、薄汚れた石ころの下婢(かひ)よ」

 

「…ッ、おまえに…っ、犬夜叉の何がわかる…!」

 

 血と泥に塗れながらも、屈するものかと大妖怪を睨み付ける少女。だがその険しい表情は悲愴の陰に覆われ、見せる反抗も弱々しい。そんなかごめの真意は、残された僅かな意地で声を荒げる哀れな彼女の姿が十分に語っている。

 

「わからんとも。穢れた血の雑種の考えることなど、何一つとしてわかりたくもない。そしてそんな貴様らの成す恋そのものが、我ら全ての妖怪に……いや、人妖全ての生きし者にとっての禁忌───」

 

 そして、止めとばかりに。冷酷非情な大妖怪は、二人を繋ぐ心の糸を両断した。

 

 

 

「────この世にあってはならない、唾棄すべき大罪だ」

 

 

 

 その言霊が両者の間を通り抜けた瞬間。犬夜叉を背に震えるかごめの身体が、凍った。

 

 彼がくれる優しさに泣きそうな思いで甘えながら、それを夢の泡沫のような危うい日常だと理解し、されどそのシャボン玉が弾け消えてしまうことを恐れるあまり、自ら一歩を踏み出せない。かごめは、そんな薄氷を履むが如き日々を命を挺して守ろうとする、気高い女の子だった。

 

 だが想い人の危機を前に、彼との日常を守るために戦わないといけない自分は満身創痍。そんな状況で、他ならぬ()()()()()()()()()()から左様な断罪を受けた彼女に、巫女の強固な仮面を維持する力はどこにもなかった。晒け出された女の心は、前世より根付く悲劇の恐怖にいとも容易く呑まれてしまう。

 

 全てを失い、生まれ変わった新たな人生で巡り合えた奇跡の再会。まるで夢のような日々を過ごすかごめは、次第に二つの想いを抱くようになっていた。

 このまま変わらぬ平穏に甘えるか、新たな一歩を踏み出すか。そんな何の変哲もない、ちゃちな恋歌の一節に出てくるような言葉で語れる想いではない。一度夢破れ、二度目の命に己の全てを懸けて彼と共に生きる日常を守ろうとするかごめにとって、それは死に至る傷よりも痛く、辛い苦悩であった。

 

 犬夜叉の願いは自己承認。誰からも愛されず、認められず、蔑まれるばかりの哀れな半妖は、故に完全な妖怪へと我が身を生まれ変わらせる欲望の宝珠、四魂の玉を欲し、そして手に入れた。かつては人間となって共に生きて欲しいと願った前世の自分"桔梗"も、彼の根深い孤独の闇を晴らすには至らず、裏切られた桔梗は憎しみと共にこの世を去った。だからこそ"かごめ"となった今世では、前世のように自分の願いを押し付けるのではなく、犬夜叉の妖怪になりたいという思いを理解し、それを尊重したかった。

 巫女を辞めたかごめは、力こそ是とする妖怪としての犬夜叉の生き方を、それもまた彼の一面だと、愛そうとしていた。

 

 だが。 

 

 

 ────わかってしまう。

 

 

 殺生丸は、未来の犬夜叉だ。

 

 本当の妖怪でありたいと願う彼の、願いの叶った姿こそがあの兄君に相違ない。妖怪を良く知る"桔梗"にとって、それは自然と生まれる発想であった。

 ならば、今の自分の想いを悟られ、それを歯牙にもかけずに両断する殺生丸を見て、どうして犬夜叉は違っていてくれると思えるのか。妖怪になっても彼だけは私を見て、かつてのように愛してくれると思えるのだろうか。

 

 "桔梗"は知っている。

 あの最期の日に見た、想いを交わした女を迷いなく斬り捨てる、彼の────妖怪らしい残虐性を。

 

 

「犬…夜叉…」

 

 

 少年の視界に、かごめの空虚な瞳が映り込む。火鼠の衣を握る震えた手も、固く結ばれ白んだ唇も、少年を呼ぶ声も、懸命に何かを堪えようとする彼女が纏った鎧の一つなのだろうか。そこに込められた思いを、犬夜叉は毒で動かぬ唇で否定する。

 

 違う。罪なんかじゃない。

 

 巫女を辞め、ただの女となった自分の想い人。己の弱さを隠さなくなった彼女の本性に触れる度に、犬夜叉は彼女をどこまでも好きになる。

 

 凛々しさの裏に隠れた、風に散る花のような儚さが。強くあれと生き続け、故に一人の女となった今も誰かに甘えることを躊躇ってしまう謙虚な不器用さが。少しずつ心を開き見せてくれる、澄ました仮面の奥に秘められた年相応の少女の素顔が。

 そんな桔梗の全てが、堪らなく愛おしい。

 

 ───お姉さまがお主を裏切るはずがない。

 

 先ほどの楓の言葉が頭を過る。だが犬夜叉はもう、理由など、真実など、五十年前の出来事などどうでもよかった。

 たとえ二人の絆が全て同床異夢の夢幻であっても、自分はいつだって桔梗を背にして敵と戦い、どんな相手からも守り抜き──そしていつか、その夢を真実に変えてやる。

 

 

「…ッ!?」

 

 

 そう胸の奥で叫んだ瞬間、ゾクッと得体の知れない妖気が体を走り抜けた。

 

 少年は思わずその元を見る。流れる力の先は古びた刀。変わらぬ惨めな鈍、"鉄砕牙"だ。

 だがその刀身から感じる気配は桁外れ。まるで虫籠の中に獅子が囚われているかのような、歪で異様な存在感を放つ宝刀がそこにあった。

 

 ドクン、ドクン。刀を握る犬夜叉の胸を強大な力が脈打つ。何かを少年に呼びかけるかのように。

 

「…何?」

 

 その鼓動は場にいる者全てを呑み込む、強大な妖力の津波。事態に気付いた殺生丸が常の鉄面皮を崩し目を見開いていた。

 

「これは……"鉄砕牙"が目覚めようとしているのか…?」

 

「せっ、殺生丸さま! 犬夜叉です! 犬夜叉めが"鉄砕牙"に触れておりまする!」

 

「…バカな、あり得ぬ」

 

 宝刀を握る半妖の少年へ目掛け、従者の言葉に眉間の皺を深めた主が神速の速さで強襲する。

 

 その先には不運にも、茫然自失と地べたに座るかごめの姿が。

 

「邪魔だ人間…!」

 

「ぁ…」

 

 呆け顔を上げる少女の目前に、無慈悲にも大妖怪の即死の毒爪が迫っていた。

 

 

「────ッッ!!」

 

 

 燃え上がるような激情が死毒に朽ちたはずの肉体を洪水のように巡っていく。

 己の弱さを認める、己の不甲斐なさも認める。だが、それでも、何も出来ない己でも、守りたいものがあるのだ。脈打つ父の宝刀に必死に噛み付き、犬夜叉は地より引き抜かんとなけなしの力を注ぐ。

 

 力が欲しい。最強の妖怪になるためでも、半妖と馬鹿にした連中を見返すためでもない。

 桔梗を、愛した女を守れるだけの、愛した女を泣かせないための、あいつのためだけの力が欲しい。

 

 

 それは少年が初めて望んだ類の力であった。

 殺生丸が持ち、かつての犬夜叉が欲した己の覇を成すための暴力ではない。孤高な道を歩む少年には必要ない、されどその孤独を癒せる唯一の、己を支えてくれる誰かを守るための、男という生き物に許されたもう一つ力。

 愛する者を守るために振るうその"牙"は、奇しくも少年の体の中に眠る、偉大なる父の妖力そのものであった。

 

 

 

「───好き勝手言ってくれやがったなァッ、殺生丸ッッ!!」

 

 

 

 渦巻く封印と少年の妖力が巨王の納骨堂に共鳴する。そして光の散った父の骸の中、得物を構えた犬夜叉は───

 

 

「貴様、まさかそれは…!」

 

 

 ───その巨大な"牙"で少女を背に立ち上がった。

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「…犬……夜叉…?」

 

 擦れるような女の声が鼓膜を震わせる。少年は背中越しに振り返り、丸い大きな黒曜石を見た。幻のような美しい少女。しかしそれは紛れもなく本物の、桔梗であり、かごめであった。

 

 守れた。やっとこいつを守ることが出来た。犬夜叉の胸に一際熱いものが沸き上がる。かつてない全能感に血が滾り、猛毒に蝕まれた身体が復活する。いつもの勝気な笑みを取り戻した少年は、ぼんやりとこちらを見上げるかごめへ笑い掛けた。

 

「随分長いことおまえを不安にさせちまったな……だがもう心配いらねえっ!」

 

「ぁ…」

 

 身の丈に迫る巨大な刀身を担ぎ、頭上に構える。時代を超えて巡り合えた大切な女の、不安を恐怖を仇なす全てをぶった切る、一世一代の大袈裟切り。

 

「目ん玉かっぽじってよぉく見とけよ、桔梗ッ! こいつはおまえが抜き、おまえが託してくれた、おまえを守るためだけにある、おれの───」

 

 そして驚愕に固まる隙だらけの大妖怪殺生丸へ目掛け、半妖犬夜叉が渾身の一太刀を振り下ろした。

 

 

「───妖刀"鉄砕牙"だァァッ!!」

 

 

 紫電の三日月が照らす巨王の腹内。耳を劈く轟音が大気を震わせ、巨大な斬撃が放った爆風のような剣圧に正面全てが呑み込まれる。鮮血が舞う妖力の大渦の中、痛恨の表情を浮かべた殺生丸が光玉に変化し流星の如く空へと飛び去るのを犬夜叉は見送った。

 

 

「…感謝するぜ、親父」

 

 

 残された半妖の少年は、得物の大剣を大地に突き刺し、取り戻した日常の陽だまりの中でどこまでも遠い青空を見上げ続けていた。

 

 その背に守りきった想い人の抱擁を受け止めながら。

 

 

 

 


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