【完結】Fate/stay night -錬鉄の絆-   作:炎の剣製

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更新します。


第015話 3日目・2月02日『弓兵の告白と剣兵の誓い』

 

――Interlude

 

 

 

アーチャーはセイバーとキャスターを連れてひそかに話し合う場所を検討していた。

志郎には絶対に耳に入れてはならない会話がなされることを予期しての事である。

そのためにカツ、カツ、と足音だけが聞こえていた。

そんな何も話さないアーチャーに対してセイバーが声をかけた。

 

「…アーチャー。あなたは何をしに私とキャスターを連れだしたのですか…?」

「なに、まだしr…いや、衛宮志郎には聞かれたくない内容なのでね。どこかいい場所はないかとな」

 

そう言ってアーチャーは再度黙った。

だがセイバーはともかくキャスターはアーチャーが話したい内容は大まかには予想できたのか笑みを浮かべながら、

 

「ふふ…アーチャー、あなたもなかなかに志郎様とは複雑なご関係なのね」

「ほう…? なぜ、そう思ったのだね?」

「いえ、なにね。先ほどまでのあなたの行動を見れば私には容易く理解できるわ」

 

キャスターは笑みを崩さずにそう言った。

 

「さすがは稀代の魔女だな。いや、裏切りの魔女“メディア”」

「あら? ふふふ…まだ宝具も使っていないのに私の真名を当てるなんて…一体どういったカラクリかしらね?」

 

真名を当てられたというのにキャスターはなお余裕を崩さない。

おそらく今、アーチャーとキャスターの間では火花が盛大に散らされていることだろう。

そんな妙な空気にセイバーだけが取り残されてしまい、

 

「のけ者はひどいですね二人とも。私にももう少しわかりやすく説明をお願いしたいものだ」

 

腰に手を当ててそう言い切るセイバーにアーチャーは苦笑気味に「話し合う場所に着いたら教えよう」と言い場所を探していて、ふとアーチャーは(やはり、あそこしかないか?)という考えを起こして、志郎の魔術の工房である土蔵の扉を開いた。

それにいち早く敏感に状況を察したセイバーがアーチャーの肩に手を置き、

 

「待ちなさいアーチャー。無断でシロの工房に入るとは何事ですか? 事と次第によっては………」

「いいんじゃないかしら。セイバー、あなたも興味があるんじゃないかしら? アーチャーの真名やら話したいことやらを」

 

キャスターのいきなりアーチャーに味方に付くようなセリフと、真名に関しての話をされて「むっ…」と言いながらも「致し方ありません…」と言ってアーチャーの肩に置く手を離した。

 

「すまんな。私にとってここの空間は落ち着くものなのでね」

「それはどういう意味ですか…?」

「後に分かる。それよりキャスター、できればこの場所だけに限定して結界を頼めるだろうか?」

「仕方ないわね。今回は貸しにしておきましょうか」

「すまない、恩に着る」

 

そしてキャスターは限定的な結界をこの土蔵に構築した。

本来ならこんなことをすれば志郎や凛に気づかれるようなものだが、そこはキャスターの方が場数も技量も上なので気づかれることなど絶対とはいかないがないだろう。

結界が構築されたのをしり目にアーチャーは壁に背を預けて腕を組み「さて…」という言葉を発し、

 

「では、少しばかり話し合おうか。なに、我らサーヴァントには睡眠と言う行為は無縁に等しいものだ。だからいくらでも話し合えることだろう」

「そうですね。………それでアーチャー。貴方は私達をこんな場所に連れて来て何を話すのですか?」

「セイバー、あなたもなかなかに鈍感のようね」

 

セイバーが話を促すように言ったが横やりのようにキャスターがそんな事を言ってきて、「いきなり何のことだ…?」という感想を持ったセイバーは悪くないだろう。

 

「アーチャーが話したいことなんて大体察することはできたわ。ついでにすでに私もアーチャーの真名は分かっちゃっているのよ」

「なっ…。それはまことですかキャスター…?」

「ええ。アーチャーの真名は―――…」

「待ってくれ、キャスター。そこは私から言わせてもらいないだろうか…? セイバーにも順を追って説明していきたい」

 

キャスターが言いかけたがそこでアーチャーが自ら告白すると言って、キャスターは「ふふ…わかったわ。この場では私はただのお邪魔虫さんですからね」と言って引き下がっていった。

キャスターが引いたのを合図にアーチャーは土蔵の中を見回しながら、

 

「まずは本題の前に私の事を話そう。しかし、この土蔵の中は懐かしいという感情を思い出すようだよ…」

「懐かしい、ですか…?」

「ああ、もうなにもかも過去に置き去りにしてきてしまったがこの場所だけは忘れたりしない。セイバー、君はそこの魔法陣で召喚されたのだろう…?」

 

そう言ってアーチャーはまだセイバーが召喚された魔力の嵐の余韻が残されている魔法陣を見やる。

 

「え、ええ…。確かにそうですが、なぜアーチャーがそのことを…」

「私もな。もうほとんどの記憶は摩耗してしまったがこの場所で起きた事だけは覚えている。

ランサーのサーヴァントに襲われて逃げ込んだこの土蔵の中で『こんなところで死ねない。こんな意味の分からないことで死んでたまるか』と思った次の瞬間に君が召喚されて私を助けてくれた…」

 

独り言のように語りだすアーチャー。

しかしセイバーは今混乱の渦の中にいた。

私にはそんな記憶はない。

これはアーチャーの世迷いごとなのだろうか、と。

 

「おそらく君は今『世迷いごとだ』とでも思っているのだろう…?」

「ッ…!」

 

見透かされている。

セイバーは口を慎むしかできないでいた。

と、同時に目の前の男に恐怖の感情を覚えていた。

自身のあずかり知らない記憶。

まるで自身を知っているかのように話す男。

これだけで不審に思うには十分の出来事だ。

 

「アーチャー…。遠回しな言い方をして私をいじめないでください…。

言いたいことがあるならはっきりと申して結構です。私は決してあなたを落胆させるようなことはさせません」

「そうか。ならば言おうか。私の正体、真名、その他の事を…」

 

そう言ってアーチャーは深くため息をついた後に、

 

「私の、いや俺の真名は『エミヤ』…」

「エミヤ、だと…!?」

「やはりね…」

 

アーチャーの告白にセイバーは驚愕して目を見開き、反対にキャスターは冷静に事実を受け止めていた。

 

「私もな。こことは違う平行世界で衛宮志郎と同じく衛宮切嗣に引き取られてのちに聖杯戦争に巻き込まれた出来損ないの魔術使い。

そして本当の名は『衛宮士郎』。志郎の証言が正しいのならば私は志郎の兄に当たるであろう存在だ」

 

 

 

 

──Interlude next

 

 

 

アーチャーの真名―――エミヤ、いや…衛宮士郎―――という名を聞いた瞬間、体に電流が走ったような衝撃を受けた。

それは、きっと恐ろしいことだ。

つまりはアーチャーの生きてきた世界でも私達が関わった第四次聖杯戦争での爪痕の結果が目の前の男…アーチャーなのだから。

 

「アーチャー…ではあなたも」

「ああ。凛にはもう話したがおおよそ衛宮志郎と同じ境遇の身の上だ」

「そ、それでは私は………」

 

それで私は口を再び閉じてしまう。

何を言えばいいのか…?

謝罪して許されるものなのだろうか…?

シロとアーチャー…この兄妹の仲を壊してしまったのは紛れもなく私達なのだ。

こんなことなら聖杯戦争になど参加しなければよかったのでは…?と、自身の願いをも否定しかねないことを考えてしまう。

これでは生前と一緒ではないか。

また悲劇を繰り返してしまっている。

己の存在を消して本当に正しい王の選定をやり直す…、そのためだけにめげずに、心折れずに頑張ってきた。

だが結果、さらに罪を上塗りしてしまっている。

無辜の民を犠牲にしてまで聖杯を求めたのではない。

だが、私はアーチャーの世界でも同じように聖杯戦争に呼び出された。

その事だけが私を苦しめる…。

ああ………私はいくつの平行世界で何人ものアーチャーという人物を作ってしまったのか…?

まるで迷宮のように考えがまとまらない…。

そんな時だった。

 

「セイバー…。私達のために苦しまないでくれ」

 

そう言うアーチャーの顔には悲哀の相がありありと浮かんでいた。

その表情だけでさらに追い詰められてしまう。

やめてくれ、そんな表情をしないでください。被害者の貴方がそんな顔をしてはいけない…ッ!

だがそんな事もお構いなくアーチャーは語った。

 

「セイバー。俺は君や切嗣を決して恨んではいない。むしろ頼もしかったんだ。

何もかも失ってただ息をしているだけの生きた死体だった私に新たな命と理想を吹き込んでくれた切嗣には感謝している。

そしてなにもわからず、しかしそんな俺に最後まで尽くしてくれたセイバーには…道を示してもらった。

だから俺は死ぬ最後まで正義の味方を頑張ることができた…」

 

そう語るアーチャー。

しかしそう語りながらもアーチャーの顔には先ほどとは違い苦悶の相が浮かんでいる。

まるで偽りのような、壊れそうなそんな表情…。

 

「しかし、私は………ッ!」

「いいんだセイバー。俺は決して憎んでいない。だが、それでも君がやりきれない思いに押しつぶされそうになっているのなら………君の事を許そう」

「えっ…?」

 

許す? 私を…?

こんな罪に汚れきってしまっている私を…?

許されていい物なのか?

こんな甘い誘惑に踊らされていい物なのか?

しかしアーチャーの顔には今度は嘘偽りは一切なかった。

本気で私の事を許そうとしている。

 

「よろしいのですか…? こんな私が許されても?」

「ああ。いいんだ」

 

それだけ言ってアーチャーは儚い笑みを浮かべた。

それで私とアーチャーの視線が重なり不思議な気持ちにさせられているところで、

 

「…―――おほん」

「「ッ!」」

 

キャスターのそんな咳払いで私とアーチャーは現実に呼び戻された。

 

「私の事は無視しても構わないわよ? だけど勝手にいちゃつくのだけは勘弁してくれないかしら。砂糖を吐きたくなるわ」

「いちゃっ!? き、キャスター! な、なにを!?」

「そ、そうだぞ。決していちゃつくなどと…ッ!」

 

それから数合言葉を交わしてなんとか気分も落ち着いてきた。

するとアーチャーが、

 

「しかし、不思議な縁だとは思わないかね?」

「縁、ですか?」

「ああ。セイバーは聖杯があれば必ず召喚されるようなものだが、私はただ巻き込まれただけだ。それなのにまずは第四次聖杯戦争で被災者となり、第五次聖杯戦争ではマスターとなり、さらには今こうして今度はサーヴァントとして聖杯戦争に関わっている」

「そうね。それだけでアーチャー、あなたは十分聖杯と縁があるのでしょうね。そして最後に志郎様とも運命的な再会を果たしている…。

アーチャー、志郎様にこのことは…」

「できれば黙っていてくれないか?」

「しかし、アーチャー…それはあまりにも」

 

そう、せっかく巡り会えたのに他人のように振る舞うなど。

そうも思ったがアーチャーはリンに説明したという会話を私達にも教えてくれた。

それを聞いた後は『確かに』と頷くことしかできなかった。

アーチャーの記録と記憶にシロの事は一切ないのだ。

だとしたらこんなに残酷なことはないだろう。

だから私とキャスターはアーチャーの気持ちを汲むことにした。

シロにはアーチャーとの間でいざこざを起こしてほしくない。

しかし、シロがもしアーチャーの正体に気づく事があるのなら喜んで応援しよう。

 

 

 

………そして最後に私は、この戦いを最後に聖杯探求の旅を終焉させようとも思った。

アーチャーの過去を聞いていきその世界での私がどんな想いを抱きながらあのカムランの丘に戻ったのかもあらかた想像できたのだ。

やり直しはしてはいけないのだ。

それでは過去私につき従ってついてきてくれた円卓の騎士達に対する冒涜になってしまうから…。

そんな、当たり前の事にやっと気づけたのだ。

一度起こしてしまった出来事には責任を持たなければいけない。

今更になってライダー…イスカンダルの言っていた事が自覚できるとは今まで私もそうとう切羽詰まっていたのでしょう。

だが、一度世界と約束してしまったからには覆すことは難しいかもしれない。

だが、遣り甲斐はある。

私もまた一歩新たに歩き出そう。

 

「さて、しんみりとした話をしてしまったが私の正体も話したことだ。本題に入るとしようか」

 

アーチャーが一つの話の終わりと新たな話の始まりの言葉を言った。

 

 

 

Interlude next out──

 

 

 




アーチャーは自分自身への憎しみだけはなんとか隠しました。
そしてセイバーはセイバールートに似た想いを感じています。

次はきっと桜の身の上の話をします!
そのためにはアーチャーの身の上話を先にしないとさすがに信じてもらえないでしょうから。
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