【完結】Fate/stay night -錬鉄の絆-   作:炎の剣製

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更新します。


第004話 2日目・2月01日『聖杯戦争の真実』

セイバーは志郎に自身の名と前回の記憶があると知られていることについて少し悩んでいた。

だが別に隠す必要もないと判断し、

 

「…ええ。シロのいうとおりです。私の真名はアルトリア・ペンドラゴン…アーサー王で間違いはありません」

「びっくりしたわ。そんなドレスを着ているからどこの騎士様かと思ったら騎士王だったのね」

「はい。ですが、なぜシロはそのことをご存知なのですか?」

 

セイバーはやっぱりそのことに食いついてきた。

だから私もお互い傷を開くみたいで嫌だけど話はつけないといけない。

そして私はセイバーにとっての爆弾とも等しい人物の名を出した。

 

「衛宮切嗣って、覚えているよね…?」

「どうして、キリツグのことを知っているのですか?―――!…まさか。衛宮と聞いて偶然だと思っていたのですが」

「はい。私は衛宮切嗣の娘です。養子ですが…」

「…そうですか。では、あなたはキリツグが最後の最後で私を裏切り、聖杯の破壊を令呪で命令したことも聞き及んでいるのですか?」

「はい。ですがお父さんは決してあなたを裏切ったわけではないんです。むしろ裏切られたのはお父さんのほうです」

「どういう意味ですか!」

 

セイバーは激昂し叫んだがキャスターがすぐに魔術を執行しようとした。

だけど今は邪魔をされたくないの。

 

「キャスター、ごめんね。今だけは抑えて…」

「ですが志郎様…」

「お願い…」

「…わかりました」

「ありがとう…それと、セイバーも、落ち着いて、ね?」

「っ!…わかりました。取り乱してしまいすみません」

「ありがとう。それでなぜお父さんが裏切られたかという理由ですが、お父さんは『全てを救う正義の味方』を目指していたのは聞いていますか?」

「ええ。アイリから聞いています」

 

アイリ? あ、その名は聞いたことがある。

 

「お父さんの本当の奥さんのこと?」

「はい。本名は『アイリスフィール・フォン・アインツベルン』。彼女はキリツグの妻と同時に第四次聖杯戦争時の小聖杯でした」

「うん。それもお父さんから聞いたわ。

そしてお父さんはそれを目指しても、どこかで10のうちの1は必ず何度も零れ落ちてしまい、自分ひとりの手では限界を感じてしまい聖杯にまで願おうとしたことも聞いています。

だけど終盤でお父さんは聖杯の中身を浴びた時に穢れてしまっていることに気づいたんです」

「穢れていた? それは、どうして…?」

「それは第三次聖杯戦争まで遡るんだけど、その戦いでアインツベルンはイレギュラーなクラス『復讐者(アヴェンジャー)』を召喚してしまったのが発端。

だけどその真名は『この世全ての悪(アンリ・マユ)』で、ただ祭り上げられただけの能力的にはただの人間とさして変わらなかったから早々に退場した。

だけど『この世全ての悪(アンリ・マユ)』は聖杯にそのまま残ってしまって中身を汚してしまった。

そしてそのことに気づいたお父さんは絶望して、だけど聖杯を完全に呼び出したら『この世全ての悪(アンリ・マユ)』の呪いが世界を覆ってしまうことに気づいたから聖杯を破壊した。

だけど、それでも聖杯から零れてしまった泥は防ぐことが出来ずに起こったのが10年前の500人以上の死者を出した新都の大火災…」

「なっ!?」

「…………」

 

セイバーは驚き顔を青くしていて、キャスターは神妙な顔をしていた。

 

「それでは聞きますが志郎様? もしその穢れた聖杯に願いを言ったらそれは叶わないのですか?」

 

キャスターもさすがにそこには意見を述べてきた。

当然だ。

セイバーもそうだけどキャスターも願いのために聖杯戦争に参加したんだから。

 

「いえ。叶うことは叶うとお父さんは言っていました。

でもきっと逆の事象が発生して『全てを救う』が裏返って、例えば『全ての死による救済』と言った感じのなにかしらの歪んだ願いに変わってしまうとも聞きました」

「そ、そんな…では私は…」

「そしてお父さんは聖杯の泥により死の病に蝕まれて私を引き取った5年後に他界したんです」

「キリツグは、死んだのですか…?」

「はい。お父さんから、もしまたセイバーに会うことがあったなら代わりに伝えてほしいという伝言があるの。『すまなかった…』と」

 

そのことを伝えて、とうとうセイバーは無言になって俯いてしまった。

だけどすぐに顔を上げて私を見て、

 

「で、では。シロ、あなたはキリツグが死ぬ5年前に引き取られたと言いましたね…もしや…!」

「たぶんセイバーの想像通りです。

私は10年前の大火災の数少ない生き残りの一人…お父さんが持っていたセイバーの鞘『全て遠き理想郷(アヴァロン)』を体に埋め込まれて生きながらえたんです。

だけど私は決してお父さんもセイバーの事も恨んでいません。

確かにその大火災で親、家族、友人…そして記憶、名前すらも失ってしまいましたけど、聖杯を破壊しなければそれ以上の被害が出たのは目に見えていますから。

だから、セイバー、キャスター…出来ることなら私の協力をしてほしいんです。私の願いはありませんが目的はあります」

「それは、もしかして聖杯の…?」

「はい。二度とこの地で聖杯戦争を起こさせないために大聖杯の完全破壊…10年前の悲劇はもう繰り返すわけにはいきませんから!」

「………はい。私は一向に構いません。此度の聖杯戦争は諦めることにいたします。

そして、それでシロや死んでいったもの達に償いが出来るとは思いませんがせめて元凶だけでも!」

 

セイバーは力強く答えてくれた。

 

「ありがとう、セイバー。それでキャスターはどうする? 私は強制はしないから貴女が決めていいよ」

「何を言うのですか志郎様。

私も元々聖杯に願うことなんてありません。

それに…願いなんてものはもう実現しているのですから…。

志郎様は私の過去のことを聞いたときに涙を流してくれましたね?

私が本当に心の底から欲しかったのは、呪いをかけられ裏切りの魔女メディアと呼ばれる以前の家族との平穏な日常……。

私は志郎様とのこの日常を護りたい。だから私は聖杯がこの日常を壊すものならいりませんわ!」

「嬉しい…ありがとう、キャスター」

 

私はキャスターの心からの言葉をもらって思わず涙を流してしまった。

…最近涙脆いのかもしれない。

それから少し時間を有したが泣き止んだ私は早速二人を交えてこれからについて話し合いをすることにした。

それで一つ分かったことは、

 

「…え? それじゃセイバーは霊体化できないの?」

「ええ。私はまだ正規の英霊ではありません。ですからシロから魔力をカットされても霊体化はまず不可能です」

「それは困りましたわね。私はまだこの家の強化をしなければいけませんから志郎様の後ろにはついていけそうにありませんし…」

「うん。でもいつも通りに学校にはいかなきゃ何日も休んでいちゃこの町のセカンドオーナーである遠坂さんには感づかれちゃうから…」

「シロ…その魔術師(メイガス)も聖杯戦争に参加するのですか?」

「うん。きっとしてくる。いや、もう私よりも早くサーヴァントを召喚して私達や他の未確認の魔術師の調査に乗り出していると思うわ」

 

お父さんが言っていたが遠坂家は聖杯を手に入れることが悲願らしいから必ず参加はしている。

 

「そうですか。では私はどうすればよいでしょうか?」

「…うん。もしあちらもサーヴァントが着いていたら、まず感知はされちゃうから当分は私が学校に行っている間は魔力をできるだけ消して私が感知できる範囲で隠れているのはどう?」

「確かにそれならば大丈夫ですが…もしシロの身が危険に晒された時は…」

「そこは大丈夫よ。

魔術は隠蔽するものだから一般人がいる学園まで攻めてくることはどうしようもない三流以外はまずない。

それに昼間から行動を起こす魔術師もそうはいないでしょ?……まぁ、アサシンのサーヴァントが襲ってきたら別として」

 

それでセイバーは渋々納得した。

そこでキャスターがなにかを閃いたのか「ポンッ!」と手を叩いた。

 

「でしたら今製作中の志郎様の対魔力用の礼装以外にセイバーが魔力を隠せるようにサーヴァントの気配と魔力殺しの礼装も考えてみますわ。

ちょうど志郎様という特殊な魔術回路の例もありますからそれを私なりに形にしてみます」

「それはいいね。魔術や魔力を出さない以上はセイバーも私と同じで一般人として溶け込めるから」

「なるほど。名案ですね、キャスター」

「うん、そうね。

でもまず目先は二人の衣装よね。

いつまでもその格好でいるわけにはいかないから。

セイバーは…うん、私と体長は同じくらいだからとりあえず私のを貸してあげるわ。

今日は学校を休むつもりだから午後になったら買い物に行きましょう」

「そうですね。セイバーは普段着でいけるでしょうから私は霊体化してついていきましょう」

 

話が決まったので私はまず最初に藤ねえに今日は学校を休むと連絡を入れた。

いきなり家の中に場違いな服装をした人がいたら困るものね。

それで電話はしてみたんだけど…、

 

『志郎、大丈夫!? あんた今まで風邪なんて一度も引いたことなかったじゃない!? これは一大事だわ!』

「大丈夫、大丈夫だから。それに今はお客さんも来ているからこちらも準備できていないから明日になったら紹介するね」

『…お客さん? どんな奴らよ…?』

「お父さんの知り合いらしいの。詳しい話はまた明日話すから今日学校は休むって伝えておいてほしいな」

『うーーー…どんな人か気になるけど、明日になったら紹介してよね!? それと今日はしっかりと休むのよ! 桜ちゃんにも伝えておくから』

「ありがと藤ねえ。それじゃまた」

 

私は受話器を置いて一息ついていた。

藤ねえの言葉の音量は受話器越しでも響いてくるから頭が少し痛かった。

 

「タイガという人物は相当シロのことを心配しているのですね」

「少し…いやかなり態度がでかいから相手をするのは苦労するけど…いい人だから二人もきっと気に入ると思うよ」

「楽しみですわね」

「はい」

「それじゃ今日はゆっくりできるから三人分の食事を作るね」

 

私は二人を居間に残して昨日の残りを加えながら料理を作ることにした。

キャスターは楽しそうな顔をしていたが、なぜかセイバーは食事という単語が出た瞬間、なんだろう? 一瞬苦い表情をした。

そこで気づいたことだけど昨日はキャスターもその話題になったら同じような顔になったことを思い出して、それじゃ少し気合いを出して作ろうと台所で少しだるい体に活を入れた。

 

 

そして食事が出来上がり三人で食べることにしたけど、そこで部屋が微笑ましい空間に変わった。

 

「(パクパクパク…)」

「………」

「………」

「(モグモグモグ…)」

「………」

「………」

「(ゴックン…)シロ、この料理はとても美味しいですね。

…どうしたのですか二人とも? 私の顔になにかついていますか? 食事もせず私の方を見ていますが…」

 

セイバーは一つ一つの料理を口に運ぶたびに何度も味を確かめるようにコクコクと頷きながら時折小さな笑みを浮かべてまた食事を繰り返す。

そのようなやり取りを私とキャスターはずっと見ていたため食事に意識がいっていなかった。

だってとってもセイバーが可愛いんだもの。

 

「…いや、うん。とてもセイバーが幸せそうに食事をとっているんで見ていて飽きないなと思って…」

「同感ですわ志郎様。セイバー、あなたももしかして昔のような料理が出てくるとでも思ったの?」

「はい。ですがとてもではないですが比べるのも烏滸がましいほどにシロの料理は美味しかったもので…」

「ありがとうセイバー。それじゃちょっと聞きたいんだけど、昔の料理はセイバーにとってどうだったの?」

「………………………雑でした」

 

そこで私とキャスターの顔が引き攣った。

セイバーはなにか思い出したのかとても暗い顔になったが食事を食べるペースは落ちていないので、昔と今じゃ計り知れなかったんだろうと私は思った。

朝食を済ませた後、いつまでもセイバーをドレスのままでいさせるのもどうかと思った私はキャスターと一緒に早速私が使っている服を着させることにした。

セイバーは清楚なイメージがあるからやっぱり白かな?

そんなことを考えながら私とキャスターは少しというか一時間くらいはセイバーを着せ替え人形にした。

そして結局試行錯誤の末に白のブラウスと紺色のスカートに落ち着いた。セイバー自身もこれがしっくりくるというのでこれで決まったので新都まで足を伸ばした。

 

それから新都に着いたはいいけどバスに乗っている時や歩いている時はよく周りの人から好奇な目で見られていたけどなんでだろう…?

それをセイバーに聞いてみたら、

 

「きっとシロのことが可愛らしいから見ているのではないですか?」

「そうかな? それをいうならセイバーだってとっても綺麗よ?」

「綺麗などと…これでも私は騎士ですから可愛いなどと……」

 

二人であれこれ見られている件について論争をしていたが霊体化しているキャスターに念話で、

 

《周りのものはお二人ともに注目しているのですよ?》

 

と、言われて私もセイバーも気恥ずかしくなってそこで論争は終了した。

とりあえず、キャスターの服を買い揃えるためにショッピングモールに入っていって色々とキャスターにどんな服が好みか聞いてみたが、ちょっと見るだけでいいと言っていた。

キャスターはあまり目立ちたくないというので黒や紫系といった地味目の服装を選択した。

でもキャスターのことだからそれだけでも十分綺麗だと思うけどな。

それから普段着用の服装を二人分何着か購入してお店を後にした。

だけど、キャスターが嬉々として見たがっていたゴシック系の服が置いてあるエリアは見ていただけだけど、なにか楽しかったのかな?

キャスターが着るわけでもないんだろうけど。

実際、一着も購入をしていなかったし。

深く考えるのはよそう…。

そして帰りにちょうど食材も切らしていたので購入して帰宅後、明日の打ち合わせも兼ねて話し合いをしていた。

 

「それでこれからどうしますか、志郎様?」

「うん。それなんだけど、まずはマスター登録をしに言峰教会にいこうと思っているの」

「コトミネ…その名には覚えがあります」

「セイバーはやっぱり知っているんだね。

そう、言峰教会にいる神父は前回の数少ないマスターの生き残りでお父さんが確かに心臓を打ち抜いて殺したといっていた言峰綺礼が居座っている場所なの」

「心臓を打ち抜かれて、ですか志郎様? それではたとえ生き残っていても…」

「キャスターの言いたいことはわかっているわ。だから用心はしておいて損はないと思う…」

「そうですね。もしかしたら裏でなにかしら画策をしているかもしれませんから、シロの言うとおりですね」

「うん。それで一応顔合わせはしておいた方が損はないと思うからキャスターはまだ製作中の神殿の作成を私とセイバーが行っている間によろしくできるかな?」

 

キャスターは一瞬心配そうな表情をしたが了解したようで頷いた。

だけどセイバーの方へと向いて、

 

「セイバー。志郎様に万が一がないようお願いいたしますよ?」

「言われるまでもありません。マスターは我が剣にかけてお守りいたします」

 

そして二人はニヤリと笑みを浮かべた。

私はもう信頼関係ができているんだなと嬉しく思っていた。

そして私は電話で事前に連絡を入れておくことにした。

 

『…こちらは言峰教会だがなにようかな?』

「突然ですが、あなたは言峰神父で間違いはありませんか?」

『然り、私は言峰教会を預かる言峰綺礼で間違いはない』

「そうですか。では、聖杯戦争のマスター登録を行いに一度顔を見せたいのですが今晩そちらにお伺いしてよろしいでしょうか?」

『ほう……では君で最後のマスターということになるのかな? 名を聞こう』

「衛宮志郎……衛宮と聞けばお分かりでしょうか?」

『!…………』

 

しばらく受話器の先からは沈黙が続いたが、

 

『…よかろう。衛宮の名を継ぐものよ。今宵は時間を空けておくのでいつでも来られるがいい』

「わかりました。それではこれで失礼します」

『ふふふ…来訪を楽しみにしていよう』

 

ガチャ…と最後に歓喜のような喋りをしながら受話器はもう切られていた。

そこにセイバーがやってきて、

 

「シロ、大丈夫でしたか?」

「うん。なんとか…でももうサーヴァントは全部揃っちゃっているみたい。言峰神父が言うには私が最後のマスターだと言っていたの」

「では聖杯戦争は開始されるということですね?」

「そういうこと…だから気を引き締めていこうね、セイバー」

「はい。私はシロの剣です。絶対にこのような歪んだ戦争は沈めてみせましょう。我が剣に誓って…」

 

セイバーは風王結界によってその姿を隠された聖剣エクスカリバーを掲げながら私に誓いを立ててくれた。

 

 

 

 




セイバーにはもっと葛藤が必要かなと思いましたが、無辜の民の犠牲の上に成り立つ聖杯の会得は望まないと思いましたので。

それではご感想をお待ちしています。
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