君が謳うこの世界で   作:白黒熊猫の作家

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民兵の1人が肩のあたりから鮮血が吹き出し倒れる。

もう1人の民兵は大声で何かを叫んでいる。

彼は私を見つめていた。憎らしそうに。

チャリンと小銭が落ちるやうに薬莢が落下する。

この一瞬は地球上の空間とはおそらく別のものかと思うほど時が遅く感じられた。

 

 

 

「この野郎!やりやがったな!」

民兵が猟銃を構える。

車から飛び出した勢いでそのまま民家の石の塀へと身を隠す。

同時に猟銃の重い発射音が響く。

石の塀の欠けらが勢いよく飛び散る。

突発的な銃撃戦が起きたためか、周辺の住宅から住民がなんだなんだと顔を覗かせる。

「危ないから家から出ないでください!」

普段は大声を出さない私も声を荒げる。

石の塀の陰から顔を出そうとすると、先程前の列へ走っていった民兵がこちらへ戻ってくるのが見えた。

(正面突破は無理だな……)

周囲を見渡すと民家の庭先に裏口があるのが見えた。

そこで私は一計を案じた。

道路から民兵がジリジリと距離を詰めてきていた。

迷わずに裏口へと走り、わ ざ と 勢いよく音を立てながら戸を開ける。

そして軽やかな身のこなしで開けた戸の裏側へと隠れた。

民兵達は私が逃げたと思い、周囲を見渡さないまま、裏口から飛び出していった。

「ふぅ、助かった…」

一息ついてそっと戸を閉めた。

そして車へ戻ろうと民家の庭から出て行こうとした。

幸い民家の中は留守だったのか誰も出てこなかった。

庭を抜け、道路へ身を乗り出したその時だった。

 

「動くな」

右から冷たい銃口が私の頭を捉えた。

さっき、肩に穴を開けてやった民兵が猟銃を構え、睨みつけている。

「銃を捨てろ」

「まぁ、落ち着いて話し合おうじゃ…」

「うるさい!早くしろ!」

言われるがまま、手に持っていた拳銃を地面は捨てる。

それと同時に猟銃の台尻が振り下ろされる。

「うぐっ!」

顔を殴られた衝撃があまりにも強く、そのまま道路へ倒れこむ。

顔の一部が切れたのか、抑えていた手には血が付いていた。

「死ねぇ!軍国主義者め!」

銃口が避けることすらできない近距離で私を捉える。

死を覚悟した。

 

 

 

パァン!

 

 

 

猟銃とは違う軽い発砲音が響く。

体のどこにも痛みは無い。私は恐る恐る目を開けた。

民兵の手から血が吹き出し、「ぎゃあ!」と声を上げると民兵はそのまま猟銃を地面へ落とした。

銃声のした方を見ると、海軍の軍服を着た少女が私と同じ将校用の拳銃を構えて立っていた。

銃口からは白い煙が立っていた。

少女はこちらへ走ってくると、心配そうに私を覗き込んだ。

「大丈夫ですか!ひどい…。顔から血が出てる!」

彼女はポケットからハンカチを取り出し私の顔に当てる。

後ろでは民兵が猟銃は手を伸ばそうとしていたが、すぐに気づかれ、両手に手錠をかけられる。

「き、君は…」

「話は後です!とにかく今は逃げることが優先です!車は無いんですか!」

勢いに押され、先程まで乗っていた車を指差す。

彼女は車を確認すると、戻ってきて私の肩へ腕を絡ませ、立ち上がらせる。

落ちていた拳銃も拾い上げ、車の側まで行く。

運転手は我先にと逃げ出したようで、中には誰もいなかった。

私はそのまま助手席へと転がり込む。彼女は運転席へと座ると、慣れた手つきでエンジンをかけ、ハンドルを握る。

車は勢いよく発進し、簡素なバリケードを吹き飛ばした。

後ろを見ると、騒ぎ気づいた民兵が戻っているのが見えた。

民兵2人は近くに停めてあったバイクに乗り込み、追ってくる。

「ねぇ、彼ら追ってきてるよ」

「そんなこと言われなくてもわかります!君は銃は撃てるよね!」

「動くマトを狙ったことはないし、そもそも射撃する機会なんてほとんどなかったよ」

「なっ…!君はそれでも軍人なの?!」

「悪かったね。だけど、どうやら私が撃つしかないみたいだ」

「弾も少ないから頼むよ!」

彼女は腰から拳銃を取り出し私に預ける。

私も腰から自分の拳銃を取り出し、マガジンを抜く。

後部座席へと転がり込み、拳銃の台尻で後部の窓を割って、バイクへと狙いを定める。

 

パァン!パァン!

 

2発撃つが…。両方とも明後日の方向へと飛んで行った。

「本当に下手なんですね!初心者でもあんな風には撃ちませんよ!」

「うるさい、運転に集中しろ」

急かす彼女を後ろにもう一度狙いを定める。

蛇行するバイクの先を読み、ここぞというタイミングで撃った。

弾丸は銃口からは飛び出ると、まっすぐならバイクのタイヤめがけて飛んで行った。

バイクは制御を失い、乗っていた2人はバイクと一緒に道路の脇へ吹っ飛んで行った。

「ふぅ!やるじゃん!射撃下手なんて本当は嘘でしょ」

「先を読んでそこで相手が来るのを待ってただけ。できて当然だよ」

「へぇ。結構言うじゃん」

彼女の拳銃を返し、私は後部座席で姿勢を崩す。

「とりあえず、このまま基地へと連れて行くから。その後はまたその時に考えてね」

「あぁ、分かった……」

もう何も考えられなかった。あまりに突然のことが重なったため、彼女の名前を聞くこと。基地とはどこなのか。すら聞くことができずに私はそのまま眠りについてしまった。

 

 

 

「ところでさ、君が今度来る教育官の人なの?」

「……」

「ねぇ!聞いてるの?」

「…Zzz」

「寝ちゃってるし…。まぁ、しょうがないよね」

2人を乗せた車は太陽が落ち行く中、森の街道を抜け、田園が広がる道へと走っていった。

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