デット・ア・ファイズ   作:リベンジ

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その日、私は泣いた。
枯れ果てるまで泣いた。
地は唸り、空は怒り、海は荒れた。
 
俺は、彼女を美しいと思った。
彼女の涙はどんな宝石よりも煌めきを放っていて、彼女の涙に移るミクロな世界こそが本物の世界だとすら錯覚した。
 
だから。
だから心配しないで。
 
俺は、君を。


夢の守り人
夢の始まり・前編


 

 

「奪わさした?奪われたのではないのですか?」

「そう、あれは釣り餌だよ。さしずえ神の生贄のね」

2018年12月26日、DME社の社長室で、ある2人の男女がそう会話を交わした。

「では追走部隊を引き上げさせますか?」

「ああ、日本までわざわざ行ってもらうことはない。現地の野良供でも殴ってレベル上げでもしてもらおう、おまけにASTという的までいるんだ、エレン、君一人で適当に監視しておいてくれ、育ったら摘め」

「了解しました」

エレンと呼ばれた女性が退出し、社長室には一人の男だけが取り残される。

彼が眺めていたデスクの上には、こんな企画書の文字が羅列してあった。

 

『riders gia orizin scenario』

 

この日、3つのベルトの内一つががDME社から盗まれ、日本に運ばれた。

これは使い方次第で、神にも悪神にもなれる鎧。

名を、『ファイズギア』と言った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

約3カ月後。

 

海が好きだ。

砂が好きだ。

 

ここには命があって、人はない。

 

―――掴んでいた筈のモノが、手から零れ落ちていく。

お前の手では掴み切れないと、指の隙間から際限なく溢れ出す。

海も砂も、そういう所が好きだ。

 

何も残らないから、美しい。

 

「ふぅい・・・・」

風と波の音だけが響く早朝の海に、一人の男が砂浜に寝そべっていた。

彼が来てもう一時間はたっただろうか。

砂浜に投げ出されてるバイクも俺もそろそろ飽き飽きしてきただろう。との発想で彼、乙河志道はバイクを起こし朝焼けの空を見ながらバイクを自宅に走らせていった。

 

「あ!おにーちゃんまた無免許運転してたでしょ!!やめてって言ってるのに‼」

「そのバイクに何回か乗せてもらった子に言われても説得力がありませーん」

「うぬぬぬぬ・・・・」

家に帰宅し、妹の琴理と言い合いをしながら自分で作ったで朝ごはんを食べる朝。

これが、二人暮らしの彼の幸福である。

両親も親戚もいなくなった今、彼の家族は妹の琴理一人である。

「ほんと危ないよおにーちゃん。最近空間震が増えてるのに怪我でもしたら無免許バレて捕まっちゃうかもだよ」

「怪我自体の心配はしないのかよ・・・」

「だって・・・いや何でもない」

「・・・・あっそ」

志道は疑問にこそ思ったがスルーした。いちいち思春期の秘密に首をつっこむほど愚かではない。

 

「ほら、乗ってくか?」

「いいもん別に。お兄ちゃんこそバイクで学校は不味いよ?」

「近くに止めて歩くからいーんだよ。さっさと行け」

「はいはーい、今日の昼は駅前のファミレスで奢りねー!」

「わかったわかった」

琴理はそのまま走って行ってしまった。

「・・・デカくなったなあ、あいつも」

志道はそう呟いて、バイクを高校に向かって走らせた。

 

琴理を下ろした後、学校について教師用の駐車場にバイクを止めた。

本来この学校はバイク通学は禁止だがそもそも免許もない志道にそんな正論は通用しなかった。

が、この学校にもそんな正論をめげずに投げかける勇敢な教師が居た。

「こらー!乙河君!バイク通学は禁止だって何度も言ったでしょ!」

その勇敢な教師とは、彼の担任であるタマちゃん(通称)25歳である。そのポワポワ声にうんざりしながら志道はこう返す。

「朝から低血圧ですかオバサン、そんなんだから彼氏の一人もいなんじゃないですか」

「ゲフゥ!!!」

一撃で正義の教師はノックアウトされた。

 

昼。高校にて。

志道が机で早起きした分寝ているとそっと人影が彼に近づいた。

「おい不良君。飯の時間だぞ起きろっての」

「・・・・誰が不良だ。頭に教科書乗せるのやめろ」

「バイク通学と時たま授業フケる、25歳担任をおばさん呼ばわりは立派な不良でしょ。タマちゃん泣いてたよ」

「・・・否定は出来んな、殿町」

殿町と呼ばれた彼は、本名殿町大翔。春からの志道の高校での唯一の友達、らしき人だ。

入学式、途中でフケた志道を追っかけたことからよく話すようになった。

「ほら、お前にお客さんだぞ」

「あ゛?」

志道が殿町が指さした教室のドアの方を見ると、そこにいる一人の少女が志道のことを見つめていた。

短い髪の、綺麗な少女だった。

志道の人生においてこれほど綺麗な女性に会ったのは、確か、二度目か。

 

「――――を―――――よ、―――が―――――」

 

「…っ!」

頭にノイズのような音が走った。声のような気もするがもう志道には判別はつかない。

「確か鳶一折紙さん、だったかな。この前転校してきた。・・・ん、どうした?」

「・・・・いや、少しボケっとしただけだ。で、そいつが俺に何の用だよ」

「さあ?とりあえず行きなよ」

殿町にせかされ、志道は折紙の前に立った。だが折紙はじっと志道の顔を見つめているだけだ。

「おい、一体何なんだよ・・・・」

「覚えてる?」

「は?」

「・・・・覚えてないなら、いい。必ず思い出させるから」

そう言って、折紙は踵を返して自分の教室に戻っていってしまった。

「・・・何だアイツ、不審者か?」

志道は呆然と立ち尽くし、そう言うしかなかった。

そして、その瞬間。

 

空間震が、この街を襲った。

空が歪む。地にヒビが入る。海は荒れる。

学校の校舎も大きく揺れ、生徒達の悲鳴が響いた。

 

「なっ、嘘だろ!?」

膝をつきそうになるが持ちこたえ、後方を確認する。殿町は無事らしい。

「と、とにかくシェルターに避難しよう!」

「おう、そうだな・・・」

とりあえず志道は殿町と一緒にシェルターへと駆け出した。

 

シェルターは大混雑しており酷いありさまだった。

人と人がごった返し、我先に助かろうと圧縮された欲望が渦巻いている。

志道は真っ先に空間震なんかよりここから逃げ出したくなった。

人ごみは好きではないし、何より人間の悪意が渦巻く空間はもっと好きじゃない。

殿町とも離れ、少し集団から距離を取っているとそこである出来事を垣間見た。

 

先ほど話しかけてきた鳶一折紙が、シェルターとは逆方向に走り出していたのだ。

 

「は!?」

思わず声が出た。

正気の人間の取る行動ではない。いや彼女が正気の人間かどうか定かではないが。

志道はあっけにとられ、手に持っていたスマホを落としてしまった。

スマートブレイン製のスマホが音を立てて転がる。

この会社の製品は例え戦場に持ち込んでもほぼ壊れないという異常な耐久度で有名で落としたぐらいでは傷一つつかない。

志道がそんなスマホを拾い上げると、ナビアプリが起動していた。

 

琴理の居場所を知らせるGPSが、未だシェルター内部を示しておらずファミレスで鎮座していた。

 

「あの馬鹿、どこまで走っていったんだよ!」

志道は折紙を追いかけて破壊された市街地を走っていたが、あっという間に見失ってしまっていた。こちらはバイクを使ってるというのに。

無理もない。まるで煙のように角に消えて、そのままいなくなってしまったのだから。

「ああもう、どうなってるんだよ!」

志道は叫ぶが、叫んだところで何も変わらない。

頭を掻きむしりながら悩んでいると。

 

気配を、感じた。

何か、自分に似た気配を。

 

「な‥‥?」

思わず足を止め、ゆっくりとその気配を感じた方向を向く。

そして、振り向いた矢先。

閃光に街が包まれ、猛烈な風が吹き荒れた。バイクごと吹っ飛ばされ、地面を転がる。

「爆発⁉」

すぐ起き上がって爆発の方角を見ると、恐ろしい光景が広がっていた。

崩れた高層ビル。巨大なクレーター。水道管からは水が溢れ、電柱はドミノ状に倒れていた。

そして、クレーターの中央には。

災害が、立っていた。

 

時間が制止したような気がした。

 

美しい女の形をした災害は微動だにせず、ただこちらをじっと見つめていた。

志道は彼女から目を離すことが出来なかった。

 

「これが・・・精霊・・・」

志道は本能で理解していた。

あれは人ではない。人が持ちえない力しか感じない。麗しい外見すら恐怖を助長させるものでしかない。

 

精霊。

それは2003年、世界各国で同時に発生した空間震と共に現れる生命体らしきもの。目撃されたものは全て女性の形をしており、空間震が起こるたびに様々な形の精霊が目撃されていた。

そして、今空間震が起こっているこの地に精霊が降り立っているのは何も不自然ではない。

不自然なのは。

その、人知を超えた美しさだけだった。

 

その美しさにほんの一瞬だけ志道は。

ー不覚にも、見惚れてしまった。

だから。

彼女の剣が自分に振り下ろされていることに気がつくのが少し遅れた。

「うおっ、おおおおおおおおお⁉」

志道は全力で横に飛び、精霊の突撃を躱した。

 

「貴様も、私を殺しに来たのか」

「は⁉」

彼女の鋭い声に、志道は思わず怒鳴ってしまう。

 

「ざけんな、テメェなんてどうでもいいよ!俺は人を探してんだ!」

「嘘をつくな!」

こいつ、話が通じねえのか?と、志道が剣先からどうにか逃れようか逃れようとしたその時。

「精霊‼」

瓦礫の上から、朝聞いた声が響き声の方へ振り向いた。

そこにいたのは、探していた人物。

「鳶一・・・⁉」

間違いない。鳶一折紙だ。傷一つないその姿を見て志道は一瞬安堵した。

だが、一つ違和感がある。

それは、折紙の腰に巻かれたゴツい赤いベルトである。

中央部のバックルに穴が開いており、そこにはいかにも何かを嵌められそうな大きさだった。

「あなたは・・・・・ここで殺す‼」

折紙が朝の出来事から想像もつかない低い声で怒鳴りつけ、右手に持っていた携帯電話を勢い良く開けた。

(ガ、ガラケー⁉)

時は令和。まだガラケーを使用している人もいるだろうが、朝に折紙が電話に使っていたのはスマートフォンだった筈だ。

折紙は誰に電話を掛けるわけでもなく何か番号を打ち込むと携帯の蓋を閉じ、右手を高く上げた。

『standing by』

機械的な声で英語が読み上げられる。

 

「変身!」

掛け声と共に、折紙は携帯をベルトのバックルに差し込んだ。

 

『Error』

直後、機械的な音声が響いた。

同時にベルトから火花が散り、携帯がベルトから外れた。

「きゃああ!」

悲鳴と共に折紙は瓦礫の上から落下していった。

「なんだ・・・?」

精霊は不思議そうな顔でそう呟いた。

「今だ!集中砲火しろ‼」

謎の空中に居た部隊がその合図で銃弾を精霊に向かって乱射し、その隙に志道は折紙の元へ駆けだす。

倒れていた折紙を見つけると、焦って大声で呼びかけた。

だが、折紙の心は失意の中で志道の声は届かない。

「どうして・・・なんで・・・」

「おい、無事なのか!怪我はねえのか‼なんとか言え馬鹿!!!」

志道が折紙の肩を掴んだ時、折紙の眠れぬ獅子が覚醒した‼

「ペロ」

「ん⁉」

「ペロペロペロペロペロペロペロ」

「ギャアアアアアアアアアアアアアアア‼」

ペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロ‼

折紙は腹をすかせた子供がキャンディーを貪るように志道の左手を舐めつくした。

そこにエロスはない!ヤバイ女がいるだけだ!!

「ふう・・・・・・この味・・・志道⁉何故あなたがここに!」

「シェルターに行かずにてめえが外に出てったから追っかけてきたんだよ・・・!今凄く後悔してるけどな!つーか名前で呼ぶな!」

志道が怒鳴るが折紙は驚きで上の空だ。

とにかくここから離れようと志道が折紙の手を取ったその時、

後ろの瓦礫が、崩れた。

 

「バ、バカヤロッ・・・鳶一・・・!」

志道に怪我はなかった。折紙が志道を突き飛ばし自分だけが瓦礫に直撃したからだ。

折紙は瓦礫の下に埋もれ頭から出血していた。このままでは命が危ない。

だが志道にはこの瓦礫をどかすことに迷いがあった。だって人前で―――――

「・・・・・!」

覚悟を決めたその時、志道の視界に吹き飛ばされたベルトがあった。

もしかしたら。その可能性にかけて。

志道はベルトの元に走り拾い上げると、すかさず腰に装着し携帯も拾い上げて開く。

「・・・志道‼」

薄れゆく意識の中で、折紙は驚愕する。

「・・・なあ、鳶一。こいつはどの番号を何回押せばいいんだ?」

「やめ、て。それを使ったらあなた、はこの先ずっ、と」

「いらん心配はすんな。なんでお前が使えなかったかは知らんが、このまま俺だけ逃げても多分死ぬだろ。だったらかけるさ」

その穏やかな顔と声に、折紙は―――――――――思い出していた。

まぶしい、あの顔を。

「・・・・555」

「っ、もっとデカイ声‼」

「5を3回押してから、Enterを押す!そしたら閉じて、ベルトに装着する‼」

「おう!」

志道は神に願いながら一連の動作を行う。そして折紙のように携帯を持った右手を天高くつき上げた。

『standing by』

その機械音声に続き、志道は叫んだ。

 

「変身!」

勢いよく、携帯をベルトのバックルにに差し込んだ。

 

『complete』

先程とは違う音声が鳴り、バックルの両端から志道の全身に赤いラインが走っていく。

やがて一瞬彼の全身が眩しく輝くと、彼の姿は『変身』していた。

赤、黒、灰色の体、血管のような赤きライン、黄色く大きい顔。

それが、ファイズドライバー・ギア5によって起動するシステムアーマー『555』であった。

志道は自身の身体を確認し、思わず声を上げた。

「・・・・ッやった!」

「う、嘘・・・・」

志道はすぐに折紙の上の瓦礫をどかして助け出したが、折紙は何故自分が変身できず、志道が変身できたのか、と言う事実で頭がいっぱいだった。

「隠れてろ。後は俺がどうにかする」

そういって折紙を隅に追いやり、志道は、いや555は思考する。

自慢げに言うことではないが戦って勝つ自信は全くない。勝機があるとすれば・・・それは不意打ち、しかも一発で倒す以外に存在しない。

「やるか・・・」

さりげなく拾って読んでいた説明書を放り投げ、555は説明書に記してあったある技を使うことにした。

トランクの中からライトを模したポインターを取り出し、ベルトに嵌めた携帯電話、ファイズフォンからミッションメモリーを抜いて、ポインターに装着する。そして右足の脹脛のホルスターに装着してファイズフォンの蓋を開きエンターのボタンを押した。

「Exceed Charge」

その音声と同時にフォトンブラッドが右足に集まっていき、準備が整う。

555は精霊の元に物音を立てず近づくと、射程圏内に入った瞬間全力で走り出す。

「うらぁ‼」

右足を高く振り上げて回し蹴りをしながら精霊にポインターを向け、彼女目がけて赤きフォトンストリームが光り輝き突き刺さる。

「⁉」

「おりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

突然の発光に思わず目がくらんだ精霊に向かって、555は一気に空中に飛び上がり、必殺のキック『クリムゾンスマッシュ』を放った‼

 




乙河志道、と名前が違うのは仕様です。
乾巧は彼の性格と似てますが別人です。
彼の設定は原作と根本的に違うので名前も変えました。
そもそもこの小説でデアラの原型をとどめてるキャラ、半分くらいしか出る予定はございません。
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