デット・ア・ファイズ   作:リベンジ

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に、2か月も経過しちゃった……
デアラ完結までに終わるんかな……


完結してたわ(アニメ版完結まではロスタイムじゃ)


呼び合う魂

「わたくし、精霊でございますの」

 

その思春期的には衝撃的すぎる自己紹介の後。

天真爛漫、と判断された十香はクラスメイト達に囲まれ、とんでもない痛い人、と取られたの狂三の周りにはだれ一人して近づかなかった。

いや、彼女が放つ異様な雰囲気に本能が拒んだのかもしれない、と志道は窓の外を見ながらふと思った。

そして、また狂三の方をちらりと見ると。

…彼女がこちらの席に向かって歩いてきた。

「校舎を案内してください」

志道に狂三は爽やかに話しかけて来た。

…志道は無視。

「あら、嫌われましたわね」

「おい乙河、無視はいかんぞう無視は。人間が一番傷つくことは存在を認識されない事なんだぜ~~」

「そうか、ところで今の声は誰だ?」

「では、デートに行きませんか?」

「わーい世界で一番かなし~~」

駄目だ、退く気配無し。と志道は判断し席を立つ。授業もこんな奴がいれば集中できるものも出来ない、と彼は思っていた。まあ集中したことは彼は殆どないのだが。

が、その時。

ちらりと見えた彼女の手には飾られた拳銃が握られていた。

 

‥‥‥…これ以上拒めば問題を起こす、という事かよ。

「………はあ、いいぜ」

そう答え、教室から2人連れあって出た際にやかましい叫びが聞こえる。

「なっ!?!?」

「…なんだ」

志道は突然横からの十香の声に呆れてまた返事をした。

「様子を見てこいとトノマチとやらに言われてきたらなんだ!シドー、何故あやつと!」

「バリバリ元気だと報告してきてくれ」

「あの、先生も一緒に連れ戻しに来たんですけど~~~」

「シ、シドー!何故だ!何故こんな怪しい奴についていくのだ!」

「いいからお前はついてくんな。デートってのは2人じゃないと出来ないんだよ、授業受けてろ」

「あ、あの~二人も授業受けてほしいんですけど~」

志道は十香を適当に追い払い先生は無視して、狂三と共にその場を後にした。

 

人気のいない場所が良いと、二人は思った。

何故かと言うと、今から行う事はとても他人に聞かせられることではないし、見せられるものでもないからだ。

だから、志道の足は自然と屋上に向かっていた。

錆びついたドアを無理矢理開き、開け寂れた平地が広がっている。

「ここなら人はいないぜ、何故なら俺が来ると皆消えるからだ」

「まあ、それはそれは」

志道の発言は半分自虐だったのだが、狂三はさも驚いたように返事を返した。

「ところで、屋上に呼び出しとはなんだか告白などを連想してしまいますわね、閉鎖されているのにこうして堂々と侵入しているところまで含めて」

「まどろっこしいのは嫌いなんだよ、お前、何しに来た」

壁際に狂三を手を使って追い詰め、瞳の奥を睨みつけながら志道は問うた。

俗に言う『壁ドン』なのだが志道は真剣にやっているので指摘してはいけない。たまたまこんな姿勢になってるだけなのだから。

狂三はその問いに、口元をニタリと歪める。

志道はその対応に否応なく神経を逆なでさせられたように感じ質問を続けた。

「まさか俺に力を封印してもらいに来ました、って訳はねーだろ」

「あら、そうだと言いましたら?」

「顔に違いますって描いてあんだよ」

「そうですの?ならもっと、はっきりと。見てもらいましょう」

狂三はそう言うと、志道の頬を両手でそっと添えるように触れ顔を、鼻と鼻がくっつくほどに近づけた。

そして腰に両手を回し、美しい宝物を撫でるように指先で背中をなぞる。

瞳の色彩も、紅い唇も一寸先に迫るこの状況に志道は困惑する。

「…‥っ、離れろ」

志道は狂三を振り払いながら、地面に座り込んでため息を吐く。

空は変わらず青い事だけが、気持ちを落ち着かせてくれた。

そして狂三もまた、志道の隣に座り込んだ。

「お前、何だ」

「何だと言われましても精霊ですが?」

狂三はにこやかな笑顔を絶やさずそう言ってのける。

「…変な奴だ」

志道はそのまま床に寝転がった。

どうみても何かを狙ってるのは分かる、だが現時点では何もわからない。

精霊を救うプロジェクト、謎のベルト、それを狙うオルフェノク。この3つの出来事は、どうにも何かが繋がっているように思える。ただの感だが何故か志道はそう思った。

そうして考えに耽ろうとすると――――。

「にゃー、ふにゃ―」

気の抜けた声が屋上にこだました。

どっから入ってきたんだよ、ここ立ち入り禁止の屋上だぞ?と志道は思ったがそんなことはいい。誰か脳味噌お花畑がこっそり飼ってるとかそんなオチだろう。

それより猫にこの女、なんかしでかさないか……と横を向いたその時だった。

 

「にゃ~お」

「にゃー」

「ふにゃ~にゃ」

「にゃにゃんにゃ、にゃん」

「な~ご」

 

時貞狂三が、猫の目線に合わせてしゃがみこみ尻を突き出しながら満面の笑みの猫撫で声で猫と話していた。

 

「「ふな~ご」」

 

……………………。

精霊、猫とも喋れるのか………。

「にゃ~~~」

「あっ、待って猫ちゃ……あっ」

「あ?」

2人の目がガッツリ合った。

互いに、しばし無言で。狂三は凍り付いたような表情をして。志道はこう思った。

(ああ、これは…ただ猫が好きなだけな、アレか……。)

「……………猫、うん、いいよな。可愛い可愛い」

「当然でしょう。野良猫ちゃんほど可愛いモノがこの世に存在すると思いで?あの愛くるしい肉球、艶やかな毛並み、そして星のように輝く瞳……ああ、わたくしの語彙ごときでは語りきれませんわ………」

志道が生返事を返すと、狂三は立ち上がって歩き回りながら開き直ったかのように済ました顔で猫ちゃんの良さを説いた。

「………飼い猫はどうなんだ」

「人ごときに飼われてるという事実でマイナス1、この世の可愛いランキング2位ですわ」

「3位は?」

「わたくしですわよ?」

狂三はまたもやなんてことないような口ぶりでそう申した。

 

「ところで志道さんは猫ちゃんのどこがお好きでして?」

狂三は調子を取り戻して、志道に近づきながらそう聞いてきた。

「…しいて言うなら目」

「目ですか、理由をお聞きしても」

「……見てても、何か考えなくていいからな。人と違って」

志道のそれは本音だった。

人の目は見るたびに沢山の事を考えなければならない。しかし猫の目は見る時その純粋な美しさのことだけを考えられる。もっとも、志道にとってそれは猫に限った話ではなかったが。

すると、狂三はしゃがみこみながら志道の頬にまた両手を添えて、こう答えた。

 

「志道さんの目、わたくしは好きですわ。すがりつく事で正気を保ってるようなその浅ましい目が。人の目は『そういうもの』だから面白いのですよ」

それだけ言うと、狂三はそっと手を離した。

「…お前も似たような目をしてると思うがな」

志道はそう言うと上半身を起こして、こう続けた。

「だからお前に教えたくなったのかもしれない、この場所を」

「あら、それは口説き文句ですの?惚れましたか?」

「さあな」

狂三がまた腰に手を回し、わざとらしく頬を肩に乗せてきた。

志道は今度は振り払わなかった。




四糸乃編、どこ行った?

君のような感の良い読者は好きだよ♡

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