デット・ア・ファイズ   作:リベンジ

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3年以上も放置してしまい誠に申し訳ございません……。
パラダイス・リゲインドが予想を超えた面白さだった為、完結までの構想は出来ている&Vシネに合わせて一部プロットを変更したこちらの更新を再開いたします。

何年かかるかわかりませんが、お付き合い頂けたら幸いです。


呼び合う魂②

「ちょっと!アンタマジでやる気あるの!?十香を放置して素性もよく分からない痛い謎の精霊疑惑のある女と授業エスケープを!独断で!何の為にアタシが作った組織があると思ってるのよ!」

「……うるせー。耳キンキンすらぁ」

狂三と別れて帰宅直後に妹にいきなり怒鳴られた志道は拗ねながらそう返し、鞄を投げ捨てドサっとソファーに腰を下ろす。

「とにかく!次彼女と接触する時はしっかりこっちの指示を聞くこと!これは命令よ!!」

「おこちゃまじゃねえんだ。いちいちラジコンなんかやってられるかよ」

「アンタの一手一足に世界の命運がかかってるんだって言ってるでしょ!」

「‥‥寝る」

止まらない罵声の中、志道は拗ねて琴理の顔を見ることもないまま部屋へと戻った。

 

「何よ…私だって、好きでこんな………ん?」

琴理は曇った顔つきで零すように愚痴をつくと、ソファーの近くに投げ出したままの鞄が視界に入った。

その鞄は微妙にチャックが開いており、隙間から銀色のケースが見えてしまい琴理は目を見開いて動揺する。

「アタッシュケース?あいつ、なんでこんなの…まさか大金!?犯罪!?マイルドヤンキーとは思ってたけどそんな………」

何気にひどいことを口走りながら、恐る恐る琴理は鞄からアタッシュケースを取り出してしまう。

(どっかの銀行?いや、そんなのすぐに足がつく、おにい、志道のことだもの、同じようなチンピラ達から?)

だいぶ失礼な思考回路は止まらないまま、琴理はおそるおそるアタッシュケースを開けてしまった。

 

その中には。

勿論、フォンを除くファイズギア一式が詰め込まれていた。

 

「………何これ?ベルト?そんで今どきデジカメ?おもちゃ?…ははあ、十香へのプレゼントね?あいつも中々やるじゃない。女の子らしさはゼロだけど十香は妙にやんちゃな感じするからちょうどいいわね」

すごい勝手な解釈をした琴理は安心して、ケースの蓋を閉めてテーブルに置きニコりと笑いPCを広げた。リモート会議である。

 

そこから更に10数分後、十香がピンポンも押さずに突然五河家に押しかけてきた。

琴理はとりあえず彼女を家に上げ、志道を探しているというので彼の部屋の前まで案内した。

「シドー!私を置いてけぼりにするな!道が分からなくて帰宅まで大変だったんだぞ!」

数度部屋のドアをノックするが、中から返事はない。

「シドー?」

「…入るわよ」

志道の部屋に鍵などついていない。そのままドアノブに手をかけて中に入る。

…妹と言う目線を考慮しても寂しい部屋だった。大して使っていない勉強机と、部屋の隅にたたまれた布団一式、後はボロボロになった古い料理とバイクの本が床に投げ捨てられている。

琴理はその部屋で、二つ普段は「ある」ものを探して周りを2,3度見渡した。

「あ、メットと買い物袋がない。…買い物ね」

「カイモノ?ああ、でえとのときにやった奴か」

どうやら志道は部屋でじっとしていてもしょうがないのでリモート中にバイクで買い物に行ったらしい。

相変わらず一人で好き勝手動くのが好きな奴だ、と琴理はあきれ半分に苦笑いした。

 

リビングに戻ると、琴理が机の上におきっぱなしのアタッシュケースに気づき、十香に声をかけた。

「ああそうだ。これ、志道多分あんたにあげるオモチャじゃない?」

「シドーが!?」

十香は嬉しそうな顔をして、そのケースを受け取った。

「…?」

そして受け取った瞬間、どうやらこのケースが何なのか思い出したようで腑に落ちない顔をした。

 

「これはシドーのものだぞ、コトリ、間違えていないか?」

もう夕陽が沈みかける街の中、近所のスーパーとやらに買い物に行ったという志道に、十香はアタッシュケースを届けに行くことにした。家で待っていても良かったのだが、志道は琴理のこのベルトのことを何も言ってないので、外で聞いた方が良いのではないかと十香は野生の感で判断した。

それにその場で違う、と琴理に説明してもよけいややこしくなりそうな気がしたのだ。第一、十香だってこのベルトについて何も知らない。

そして、志道のことも。

彼については、自分を助けてくれた優しい人という事しかわからない。

精霊のころはそれでよかった。別に誰かに対して何かを思うことはなかった。

だけど今は、もっと知りたいと思う。好かれてみたいと、思っている。

彼のことを考えると心が躍る、胸の奥から喜びが溢れ出す。

そんな想いを噛み締めて弾む足取りで歩いていたら、前方にある人影を見かけた。

気づいた十香は足を止め、腰を落としいつでも全力で動ける構えに入った。

その人影は、小さな少女だった。

薄汚れた緑色のパーカーを着込み、小さな手にはウサギ型のパペットがはめてある。年齢は小学校低学年ほどにしか見えない。

瞳はフードと長い前髪で隠れて見えず、口は動かない。

「お前…私と同じか?」

十香は気配で察した。

空間震こそ起こっていないが雰囲気だけで理解できる。

この少女は『精霊』だと。

 

互いの合間に、わずかな緊張が走る。

 

「そーだよ、わたしは精霊。『ハーミット』って怖い人達は呼んでるね」

「!」

少女は返答した。ウサギのパペットから。

「何が…目的だ?私と同じで、迷ってるだけなのか?」

「ううん、ちょっと用があってねー。怖い人たちにも…シドウ、って人にもー」

「!」

十香は確信した。違う、奴には「危害」を加えてもいい、という覚悟がある事を。

十香はすぐさま右手に持っていたアタッシュケースを開き、ベルトを取り出して腰に巻いた。

「?なにそれ?」

『standing dy』

「変身!」

志道の真似をして、十香は555に変身しようとコードをフォンに入力してベルトに装填した。

しかし。

『error』

と、機械音声が鳴り響くと同時に彼女の腰からベルトが軽い電撃を放ち後方へと吹っ飛ばした。

「ぐわっ!」

十香は衝撃で地面を転がり、フォンごとベルトは謎の少女の足元に転がる。

 

「わあ、なんだかラッキー!これ、なんなの?」

そう言って彼女がベルトを拾い上げたその時。

 

彼女の背後から、ぬるりと灰色の姿を見せたオルフェノクが現れた。

 

「…あちゃー。私の追手?」

返答もすることなく、オルフェノクの拳が少女に降り注いだ。

「!」

瞬間、彼女は自らの『精霊』の力を軽く発動し地面を凍らせて、滑って避けた。

空を切った拳は、凍った地面へと突き刺さり氷は砕け、下のコンクリートもひびが入る。

十香はそれを見て、ひゅっ、と息をのんだ。

今の自分はおそらく以前のようには戦えない。二人の『敵』を前に、死ぬのかもしれない。

精霊だった迄の理不尽、孤独とは異なる「死の危険」の恐怖に初めて直面した十香は、拳を氷から離して今度は真正面の自分を見据えたオルフェノクに怯えていた。

そして、オルフェノクが小斧を携えて一歩十香の方に踏み込んだその時。

 

『battle mode』

耳馴染みのある機械音声が響き、銃撃がオルフェノクの背中を打ち抜いた。

「が!?」

思わずひるんだオルフェノクは銃撃の方向、真後ろを振り向いた瞬間に今度は勢いのあるパンチを食らって地面に倒れた。

それは。

バイクのタイヤを盾にした、謎のロボット。

かつて二人を助けた、名をオートバジンといったロボットだった。

 

「こ、これは…シドーの!」

オートバジンは移動し、彼女を守る騎士のように大地に2本の足をつけて立っている。

かつて彼女を救うときに見せた特殊戦闘形態は、飛行だけではなく銃撃も可能であった。

 

そして少女は銃撃の爆風に身を取られバランスを崩して倒れていた。その時に拾い上げたファイズギアも落としている。

「!」

十香はその隙を逃さず、駆け寄って再びファイズギアを拾った。

「シドー!」

そして、オートバジンの後ろからバイクで走って駆けつけてきた志道に投げ渡した。

志道は無言で投げてきたベルトを片手で受け取り、その場でバイクを停車しヘルメットを脱ぐ。

そして志道がファイズギアを腰に巻くと、十香がフォンを開いて3回キーを押し、すぐ志道に手渡した。

『standing dy』

待機音が鳴る中、志道は無言で頷いて555に変身しようとする。

 

「変身!」

『complete』

 

赤い閃光と共に、少年は再び戦士になる。

 

 

 

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