デット・ア・ファイズ   作:リベンジ

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夢の始まり・前編④

「で、そのまま持ち帰っていざ本番で使ってみようとしたら駄目だったと」

「………」

「…しょげるな」

折紙は語り終えた後、しばらくだんまりを決め込んでいたがやがて意を決したようにトランクをこちらにつき返してきた。

「…は?」

「…使えない物を持ってても宝の持ち腐れ。でも、貴方にも使わないでほしい。もう二度とあんな事になってはいけない」

折紙はそのまま振り返りもせず教室に戻っていった。

「‥‥‥理不尽が過ぎるだろ」

志道もトランクを持ったまま教室に戻った。

 

教室でつまらない授業を受け、欠伸をする。

こうして学校にいるだけで昨日の怒涛の出来事など夢のように志道は感じるのだが…

足元に置いてあるトランクが嫌でも夢ではないと証明してくる。

「おい、どーした元気ないぞ」

近くの席の殿町が小声で話しかけてくる。

「…いつもこんなもんだろ」

「いや、まるで女に無様にフラれた男の顔だぜ?」

殿町は笑いながらそう言って黒板に視線を戻す。

「…マジかよ」

志道は顔をつねりあげた。

こんな事ではいけない。とにかくこのトランクを処分しなければ。

が、現実は志道を容赦なく置き去りにしていくのである。

 

空間震のサイレンが響き渡った。

「またですかあ〜!?2日連続ってそんなのありですか!」

担任のタマちゃんが嘆きながら生徒を避難誘導させる。

その時、志道は折紙のことを思った。

(あいつはまた、行くんだろうな)

ASTなのだから、精霊を倒すために。

自らの復讐の為に。

(そう、だから俺はもう関わる意味はない)

志道がそう決めて立ち上がった時。

 

窓から手が伸びて、志道の腕を掴んで窓の外へ引き寄せた。

「は?」

そう言った時にはもう、志道は空へと全身が投げ出されていた。

思わず掴まれた腕の先を見上げ、志道は更に驚愕した。

『プリンセス』が志道の腕を掴んでいたからた。

「なっ、はっ?」

志道はあまりの驚きにまともな言語が出てこない。

「少し来い」

その冷徹な声と共に、志道は学校から姿を消した。

その直後に学校周辺に空間震がモロに直撃して、消えた志道のことは皆頭から消え去った。

 

街の外れにある高台に隣接する林に志道は移動させられていた。

腕がちぎれそうな風圧に耐え、そのまま投げ捨てられるように林に降りさせられた志道は草の中に倒れた。

「ゲ、ゲホッ……な、なんだよ…」

「なんだ、とはこちらのセリフだ」

着地した『プリンセス』が志道に向かって剣を突きつけながら問い詰める。

「貴様、なぜあの時『逃げろ』と言った」

「…あー」

あんなん聞いていたのかよ、と志道は思う。確かに言った。自分でも理由がさっぱりわからないまま。

「…お前に私は剣を向けた。お前も私を殺しに来たから殺すしかないと思った。だがお前は私に攻撃するどころか『逃げろ』と言った。…そんな事言われたのは初めてだった。だから、理由を聞きに来たのだ。早く教えろ」

淡々と無表情のまま『プリンセス』は志道に疑問をぶつけてくる。

(…こいつ、あの時キックかまそうとしたのが俺だとは気づいてないのか。声は覚えてたくせに)

志道は精霊のガバガバな記憶力に感謝しつつ、剣先にも怯まずに答え出した。

「…そのままの意味だよ。逃げればいいんだよ、あんなのからはな。死にたくないだろ」

「逃げるよりも殺した方が良いだろう。私は追われるのが嫌いだ」

「うわ物騒…」

志道がうわあな顔をして、一歩『プリンセス』から離れた。

「それにだ。私のことなどどうでも良いと言った。それは本当なのか」

『プリンセス』が眉をひそめながら更に質問を重ねてくる。志道は淡々と答え続ける。

「…そうだよ。俺はお前なんかどうでも良いよ。だから殺さない」

「嘘をつくな!!!」

突然の激昂に、志道は思わず肩を震わせた。

「何が狙いなのかはっきり言え!言わなければ斬る!」

激昂しながら剣を振りかぶる『プリンセス』に志道は…哀れみの目を向けた。

「…お前、怖がってんのか」

「…なっ」

その微かな動揺と共に剣が消える。

志道はそのまま語りを続けた。

「怖いんだな。自分を殺そうとしてくる奴らが。やらなきゃやられちゃうしな」

「なっ、なっ」

自分の心のモヤモヤを言葉にされたようで露骨に動揺する『プリンセス』に志道は更にこう言う。

「安心しろ。俺はお前に興味はない。だから殺さない。傷つけない。だから怖がるな、俺の方が怖くなる」

「…………」

『プリンセス』は下を向いて黙り込んでしまった。

志道はそんな彼女を見つめながら、あの時の言葉の意味を悟った。

(そうか、間違えてたわ)

 

(こいつも、心は人間と一緒だ。ただ、最悪の力を持ってるだけで)

だからあの時、自分は彼女に『逃げろ』と言ったのだ。

 

「…お前は、本当に私を傷つけないのか?」

「ああ、今のところはな」

「お前は、私を否定しない?」

「しねえよ」

「じゃあ、なんで」

 

「なんであいつらメカメカ団は、私を殺そうとするのだ?」

泣きそうな顔で『プリンセス』はそう志道に問いかけた。

 

(…いや、メカメカ団って)

思わず笑いそうになった所を懸命に堪えた。今笑うのは洒落にならない。

「そうだな。お前が…壊すからだな」

「壊、す?」

「ああ、お前がこっちに来るたびにそいつらの大事なもんが壊れる。それが嫌だからお前を殺そうとするんだろ」

「大事な、もの…」

今ひとつピンときてない表情を見て、志道はこう言った。

 

「その大事な物を、教えてやるよ」

 

「デート、ってやつでな」

志道は、『プリンセス』に手を差し出した。




この小説だとASTはあのエッチなパワードスーツでは大半はゼクトルーパーに似た特殊隊服に身を包んでいるため身バレとかはしません。
飛行ユニットは一部の優秀な隊員のみが使えます。
そしてこれにて前編は終了です。後編で『プリンセス』の話は…多分終わるかな?
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