デット・ア・ファイズ   作:リベンジ

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夢の始まり・後編②

555は殴る。

怒りと衝動に任せて。

オクラオルフェノクを。

「あああああああああああ!!!」

右、左、右、左。

腹、顎、脇。

反撃の隙を与えずにラッシュを続ける。

「グオッ!」

しかしがら空きの右足を引っ掛けられ、555は体勢を崩す。

「オオッ!」

そのまま至近距離で光弾を受け、555は地面を転がった。

更に攻撃を至近距離で仕掛ける為、オクラオルフェノクは走り込んでくる。

だが黙ってはやられない。555は起き上がる時に、ミッションメモリーを抜きファイズショットに装填する。

「「ダァッ!!」」

右拳を同じく右拳のファイズショットで受け止める。

その時、ガラ空きのボディを膝蹴りして体が宙に浮いたところを素早くヘッドロックした。

ギリギリと、音が鳴りオクラオルフェノクが苦しみの悲鳴をあげる。

だがオクラオルフェノクは触手を本能的に伸ばし、555の顔面をひっぱたいた。

腕の絡みが緩んだ所を抜け、光弾を2.3発放つ。

「があっ!」

着弾の激痛で足元がふらつく中、555はミッションメモリーをショットからポインターになんとか移す。

そして煙の中、オクラオルフェノクに向かってポインターを向けてファイズフォンのエンターキーを押す。

『exceed charge』

その音声と共に、赤い三角錐の光でオクラオルフェノクの体が拘束される。

555は右足にポインターを装着し、一歩、二歩と助走の構えを取った。

「だあらああああああ!!!」

555は助走から大きく飛び上がり、空中で一回転からの『クリムゾンスマッシュ』を放つ!

555の体は赤い光の中に溶け、ドリルのように赤い光が突き刺さりオクラオルフェノクの全身の細胞を毒素で分解していく。

555の体が再びフォトンブラッドから元の体に再構築され、地面に着地する。

その瞬間、赤いΦマークの紋章と共に砂が地面に舞い散った。

 

「………」

555は無言で、砂を見つめる。

大丈夫だ、俺は化け物を退治したんだ。これは、良い事なんだ。

自分に言い聞かせるように心の中で反復し、深く深呼吸をする。

そう、今の555は混乱状態からリラックス状態に移る最中であり。

 

近づいてくる大量の銃撃に気がつかなかったのも無理はない。

「…ッ!?」

それは数十本のミサイル。ホーミング式のそれらは555の全身を狙い撃ちだった。

「うわあああ!!!!」

555は空高く吹き飛ばされ、目が回るほど宙を舞う。

そのまま商店街を抜けた先にある河原めがけて落ちていく。

空中での戸惑い、傷の痛みで受け身すら取れず。

川のど真ん中に、555は着水した。

その衝撃で変身は解け、志道は意識を刈り取られた。

 

ジェットスライガー。

スマートブレイン社がDMF社と共同開発した次世代型バイクの没案。

自立型AI搭載、運転は自転車より簡単と社内会議でも絶賛された。

だが会社内の大幅改革により商品化の企画はお流れになったのだが。

555はジェットスライガー試作機搭載のミサイルにより吹き飛ばされた。これは確固たる事実だ。

搭載者のエレン・ミラ・メイザースは目撃者が周囲に居ない事を確認しながらもこれ以上目立つ前に退散を決め、ジェットスライガーで迷彩ステルスモードを起動し空からその場を後にした。

あれで死んでないにしても手傷は追わせたはず。奪うなら、次だ。

 

「シドー!シドー!どこだ!」

トオカは必死に志道を探していた。

待ってろ、と言われていたが我慢できなかったのだ、あんな憔悴した顔の志道を見たら。

無我夢中で商店街を走り回り、志道の道乗りから散々遠回りしてようやく先程戦いがあった場所に辿り着く。

「な、何故ここにこんなに砂が…」

トオカは疑問に思ったがそれどころではないと再び走り出そうとする。が。

「!?これはシドーの!」

トオカは志道のカバンを掴み、志道に何かあった事を感じ取る。

トオカは更に走るスピードを上げ、突風を起こしながら去っていった。

砂は、もうほんの少ししか舞わないほどに消えていた。

亡骸の砂は、数十分で無に還る。

彼らはこの世にチリも残せないのだ。

 

志道はゆっくりと目を開けると、自分が川の中に居ない事に気がついた。

パッと飛び起き、腰にファイズギアが無い事に気がつき動揺する。

しかし横を見ると。ご丁寧にファイズギア一式が置いてあった。

(誰かが川から引っ張りあげてくれたのか?)

それしか思いつかないが、周囲に人影などない。

疑問に思いつつも、ファイズギア一式を拾い上げその場を後にしようとする。

その時に、聞き覚えのある声がした。

「シドー!シドー!」

トオカが追ってきたらしい、と志道は顔も上げずに確信した。

一方橋の上を走っていたトオカも豆粒のような志道を見つけると猛スピードで志道の元へと駆けて行った。

「…次のデート先は服屋だな」

まだびしょ濡れの服の事を思いながら志道は濡れた髪をかきあげた。

 

その後も、2人はなんだかんだとデートを楽しんだ。

ショッピングモールの服屋でびしょ濡れの志道の新しい服を見て回ったり(トオカはオーラで服を作れるので不思議がっていた)

ゲームセンターに行ってパンチングマシンを壊したり。

ただ何となく街を歩いて、トオカが知らない物を解説したりもした。

 

着信主は『イモウト』。

「へいもしもし」

「ふざけないで!お兄ちゃん今どこ?学校をラタトスクの衛星で確認してもいないし!GPSも何故か家だし!家にいないし!」

「あー、スマホ最近持ち歩いてねえからな」

はっきり言って今、ファイズフォンで事足りるのである。このガラケー、IPがスマホ以上に発達しているしどんなアプリケーションにも完全対応している。誰が使用代を払ってるのか知らんがありがたく使わせてもらっている。

「とにかく!今どこにいんのよ!船で迎えに行くから!」

「結構だ。まあ、後でお土産持ってそっちに行くかもしんねえから」

「お土産って何よ」

「精霊」

「は?ちょっ」

電話を素早く切った。更に電源も落とす。

今琴理に介入されたら厄介になる。ここからが『琴理の作戦よりも良い結果』を持たらす鍵になる。

「どうした?」

「んにゃ、何でも。それよりそろそろ最後の場所だ」.

 

街の大堤防と呼ばれる広場。高台の上にあり町全体を見渡せる地域の観光スポットとして人気の場所が志道が最後に選んだデート場所だった。

「楽しかったか?」

「ああ、デートというのはこんなにも心がキュッと熱くなるものだったんだな!」

「どういう感想だよ、夕日か?」

「そうか、これは…夕日というのか」

「…でも、この街を今まで私は…壊してたんだな」

声のトーンが変わる。先ほどまで楽しいことだけを考えていた顔つきが、憂を帯びたものに変わった。

彼女は自覚したのだ。自分がどういう罪を背負ったのか。

 

「そうだ。お前が壊した」

志道は事実を告げる。励ましのウソに意味はないから。だから、続けた。

 

「沢山の建物は壊れたし、死んだ人だっていたかもな。お前があの人達の仲間の幸せを、夢を奪ったかもしれない」

これはどうしようもなく事実だ、理解しなければならない、目を背けてはいけない真実。

 

「…やはり、私はいない方がいいな」

トオカは笑いながら、それでも悲しみがあふれ出す顔をしてそんな言葉を吐き出した。

その顔を見るたびに締め付けられるような感情が脳裏を走る。

それでも、志道は顔色を変えず自分の考えを告げる。

「そうかも知んねえな」

 

「でも、それは逃げだ」

志道は、強く十香にそう言った。

「逃げる事は悪い事じゃない。けど、ずるい事だ。自分がやったツケは死んだ所で宙ぶらりんになるだけなんだよ。…俺は、死のうとした時そう教えられた」

志道はトオカの肩を掴み、静かな声で語り続ける。

「お前はこの世界を良いものって思えたんだろ?なら壊した分、次は守ってやれよ。お前の他にも精霊は沢山いるんだ。そいつらが街を壊すんならお前1人居なくなったって何も変わらない。だからお前がそいつら止めるんだよ、それが…お前の罪を償える方法だって俺は思う」

「私の、罪…」

トオカは再び街を見つめた。

 

「お前の罪を…数えきれない罪を…背負って生きろ、トオカ」

志道は肩から手を離すと、今度はトオカの両手を掴んだ。

「重くてへこたれた時は、手ぐらい貸してやる」

握り込んだ手に力がこもった。

「まあ、最後にどうするか決めるのはお前だ、俺の言うことが正しいかどうかなんてわからない」

これが志道が精霊と接触してから決めていた作戦。

恋愛で封印なんて冗談じゃないし、自分に依存されてもそんなのは困るだけだ。他人の依存から始まる関係など歪にしかならないし、志道にはこれっぽっちも他人の人生を背負える余裕などない。

彼女が、自分からこの世界を守る方向に導く事。それが今日の志道の行動方針であった。

志があれば、人は変わろうとする事が出来る。

それは人間でも精霊でもきっと変わらない。という希望的主観に満ちた身勝手な想像だ。

黙り込んでいた、トオカが口を開くまで長いような短いような時が流れた。

そして、ゆっくりと語り始める。

「私は…もう壊したくない」

涙が地面に溢れる。

「この街を、守りたい…!何があっても、絶対に!」

最後に涙目で、志道の瞳を真っ直ぐに捉えトオカは叫んだ。

「………夢、みたいだな」

「へ?」

「今のお前のセリフだよ」

昔の誰かさんの安っぽい理想の夢を思い出した、とは言えない。

本人の夢が無駄かどうかを決めるのは本人しかいないのだから。

「そうか、これが『夢』なのだな…!皆にはこれがあるからこんなにも素晴らしい街が出来るのだ…!」

トオカが再び夕焼けに染まる街を眺めながら感嘆のセリフで騒いでいる。

その様子を見て、志道にもほんの少し笑顔がーーー。

 

その直後に。

「どけ!」

志道はトオカを全力で突き飛ばした。

 

その時。

志道は、高速で飛んできた凶弾に脳髄をぶちまけられた。

 

 




またまた遅くなりました。
デアラはなんとかアニメ化範囲以降も履修して(アンコールしか買えてない)いきたいですね。
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