デット・ア・ファイズ   作:リベンジ

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ぼちぼちと更新。




夢の始まり・後編④

志道は炎の海の中でもがいていた。

前に進んでいるのか、来た道を逆戻りしてるのかすらも判断はつかない。

だけど、彼は止まることは出来なかった。

(シドー)

あの声を。

あの音を。

掴むまでは。

 

足が焼ける。

手の感覚は消える。

目はかすみ、心臓は溶けていく。

だが関係ない。

まだ魂が前へと前へと叫んでいる。

 

志道は灰すら残らずとも、やるべき真実に向かって進むのだから。

炎の中で火の柱が上がる。

 

志道の全てが、この場所から旅立った合図であった。

 

「が……あ………」

志道は頭を押さえながら目を開けた。

そうだ、自分はトオカをーーー。

「トオ、カ…」

よし、声は出せる。脳神経は無事な様だ。

上半身を起き上がらせようと歯を食いしばって腹に力を入れ、ゆっくりと体を起こす。

そして頭からゆっくりと左手だけを離し、掌を見つめた。

焚火でもしたのかと言わんばかりの灰が掌にこびりついていた。

それを握り拳の中に閉じ込めると、右手も頭から離して膝に右手をかけて立ち上がる。

そして、轟音が鳴り響く空を見上げた。

 

『プリンセス』が泣いている。

子供の駄々をこねたように溢れる涙と共に、怒りの鉄槌をこの街全てに落とそうとしている。

何も言わなければ、全ては手遅れになる。

あれだけ恥ずかしいことを言っておいて、逃げるのはプライドって奴が黙っちゃいない。

クサイ希望と未練がましい後悔をあの女に植え付けた責任は取らなければ。

志道は『プリンセス』を見て。

 

覚悟を決めた。

 

カバンから555ギアを取り出し、ベルトを巻く。

555フォンを開き、変身コードを入力。

「俺には夢なんてない、けど…」

5.5.5。

『standing by』

思い出すのは、先程の彼女。

夢見る少女を羨んだ自分。

だからこそ、諦めたのに生きているならば。

「せめて、お前の夢ぐらいは守ってやる」

 

まだ諦めてない『人間』を守ってみせる。

「変身」

 

赤き閃光は、少年を変身させる。

555は空を見上げて、思いっきり息を吸って叫んだ。

「トオカーッ!俺は無事だ!」

だが、『プリンセス』からの反応はない。

「届かない、か…?」

555は考える。なんとかして空まで辿り着く方法を。ジャンプだけではせいぜい一瞬が関の山。飛行ユニットは555には搭載されていない。

(何か、何か…!)

それでも視界のモニターに映る説明書を必死に読むこむ。

何か、何かまだ見落としてるものがないか。

だが、検討虚しく説明書は最後のページまでスキャンされる。

飛行ユニットは、この555ギアには絶対にない。

(……!!!)

そう。

555ギア(・・・・・)には。

 

ああ、疲れた。

まどろんだ瞳に映る世界は、先ほどまであんなにも輝いて見えたのに。

滲んだ景色から赤い血の味がする。

何もかも壊しても、私のこの怒りはどうにもならない。

それでも、この衝動を放たなければ私はもう壊れてしまう。

いや、もう壊れてる。きっと。

 

シドーのせいだ。

あいつが私を殺さないと言ったから。

私に『トオカ』という名前を与えたから。

私にきな粉パンや他の食べ物を教えたから。

私に……

 

『夢』を持たせたから。

 

だから、終わらせよう。全てを。

『プリンセス』が剣を振り下ろそうとした時。

 

「トオカーッ!!!!!」

彼史上最高の声量で、555は再び精霊の『名前』を呼んだ。

 

「…ッ、シドー!?」

トオカは思わず驚きで剣の光はみるみる縮み、顔が困惑でいっぱいになっている。

555は、オートバジン(・・・・・・)の背にしがみ付いて『プリンセス』の元まで飛んだのだ。

そのままトオカの手を掴み、その場から全速力で離れる。

AST、更にベルトの追っ手と困った事に命を狙われる敵に事欠かないのだから。

 

街の路地裏まで飛んできたオートバジンから2人は降り、オートバジンは一礼すると同時にガチャガチャと音を立ててバイクの姿に変形した。

555は変身を解き志道に戻ると、トオカと一緒に地べたに座りこんで大きく息を吐いた。

トオカといえばあまりの予想外な展開に頭が追いつかなかった。

「な、何なのだこれは?」

「…俺もよくわからん。コイツで呼んだら、どこからともなく、来た」

志道が右手に握りしめていたファイズフォンと、横で立ちんぼしているオートバジンを交互に見ながらそれだけ言う。

実際、本当に空を飛べる謎のロボまで呼べるとは、このベルトはつくづく意味不明なハイテクロノジーな代物かもしれない。

これを持っていた折紙のことを考えると、わすわす訳が分からない。

「シドーにもわからない事があるのだな」

「当たり前だろ…」

志道がけだるげにそう返すと、トオカの声がみるみる震え出す。

「ほんとに、ほんとにシドーなのだな?」

「…ああ」

「そのベルトは、私を助けてくれたあのメカメカ君の者だな?アイツはシドーだったのか?」

「メカメカ君…まあ合ってる」

志道は鼻で幼稚園児レベルのネーミングセンス笑いながら受け答える。

「な、何故頭を撃たれたのに生きているのだ?」

「そういう知識はあんのか。……んなもん俺にもわかんねーよ」

「え?」

「俺は生きてる。お前も生きてる。それでいいじゃねえか」

「…うむ!そうだな!」

 

「でもお前、俺が倒れたからって街に剣向けるのはないだろ」

「……………」

「反省してるか?」

「ハンセイ、とはなんだ?食べ物か?」

「お前の知識の基準が一番よく分からんな…」

志道は無言で、地面に座り込むトオカに手を差し伸べた。

トオカも何も言わずに笑顔でその手を取った。

「…ちょっと待ってろ」

「うむ」

志道はカバンからスマホの方を取り出してある場所に電話をかける。

『あ、おにーちゃん?どこにいるの?』

「精霊の『プリンセス』の目の前」

「へえなるハア!?!?!?」

琴理の信じられない声量の驚き声が電話から鳴った。

「待って待って待って!ラタトスクと連絡を繋ぐから!?と言うか訳!訳を説明して!おにーちゃんの悪い癖だよ説明をすっ飛ばすの!?」

「後にしてくれ。今精霊の力を封印するから報告だ」

「は!?待って待って今そんなレベルにまで好感度上がってるの!?検査するから待ってなさい!!!」

「面倒くせえ……」

結局、20分近く2人は近くのベンチに座り込んで待たされた。

 

「待たせたわね、検査完了したわ!…規定値は余裕で突破、OKよ!でも後でバッチリ話は聞かせてもらうからね!」

「分かった、じゃあな」

「あ、ま」

琴理の返答を待たずに電話を切った。ついでに電源も落とす。

「終わったのか?」

「……ああ、頼みがある」

「な、なんだ、なんでもするぞ」

「…ちょっと口に指入れていいか」

「…何故だ?」

「いいから俺を信じろ」

これが志道の妥協案だった。愛だの恋だのキスとかふざけるな。心を弄ぶ事は嫌いだ。

だから……体液さえ摂取すれば良いのだろう。と考えた。

「むむむ…よし!あ〜!」

トオカも覚悟を決めたようにあーんと大きく口を開ける。

「いや、そんな開けなくていい」

「そ、そうか」

今度はおちょぼ口で構える。極端、と志道は感じた。

志道も意を決したように右手の指先を口に近づけていく。

吸い込まれるように、誘い込まれるように。

指先はトオカの口にすっぽりと収まる。

生暖かく、ぬるりとした感触が戸惑いを起こす。

舌に触れると敏感に反応しトオカの体も震える。

下手なキスよりもよっぽどやましいと志道は思った。

そして、その指を。

口に含んだ。

唾くさい匂いと、ほんのり香るトオカの匂いが志道の中に浸食していく感覚が走る。

ある種のセックス・セクシャリティ。

どんな食事よりも、この唾液が至高だと本能が殴りかかってくる刺激があった。

志道の理性が危険を察し指をすぐに引き抜く。

糸が垂れる指先は、どんな宝石よりも輝いていた。

いや、実際。

その直後に右手全体が輝きだしたのだ。

トオカの身体と共鳴するかのように。

 

光が収まり、ゆっくりと志道は目を開けた。

その時、とても信じがたい物を見た。

トオカの身体から、何かの塊が志道の右手の指先に向かって引き寄せられているのだ。

やがてスルリと塊はトオカから抜け、志道の右手の中に収まる。

それと同時にトオカの制服も光となって消え、全裸になったが志道は気にも留めない。右手の謎のデバイスに目を奪われていたからだ。

「な、なんだこりゃ…」

封印、というからには何かしら互いの身体に影響が出る事を覚悟したのだが。

実際は彼女の身体からよく分からないデバイスが飛び出してきた。

その紫色と金色のデバイスには、上に変なマーク、下には『0010』の数字が刻まれている。

「…ん、ここ回せるのか?」

ベゼルの仕組みに気づき、志道はウォッチの金色のベゼルを回してみる。すると絵柄が変わった。

「プリンセス、ってカタカナで彫ってある…」

つまり、これは…プリンセスの力そのもの?

志道がウォッチを手にジロジロと見回してみると、天面にボタンがあるのを発見した。

「………」

押すのは、不味い。ていうか怖い。

「シドー!」

「うわっ!」

 

『プリンセス!』

 

トオカが突然抱きついてきて志道は尻餅をつく。

その際にプリンセスライドウォッチのレリースボタンを押してしまい音声が鳴り響いた。

その瞬間、ウォッチは志道の身体の中に吸い込まれ消えていった。

「…あーあ」

「何故私は裸なのだ!?どうなっているのだ!?教えてくれシドー!出ないと私は恥ずかしくてシドーから離れられん!」

「離れろ。熱い。邪魔」

「…む?下半身のあたりから何か飛び出てるような」

「やめろ」

この後、志道が琴理を電話で呼び出しラタトスクが駆けつけるまで志道とトオカはこのままだった。

そして騒ぎ中に、オートバジンはいつの間にかまた姿を消していた。

 

同時刻。

エレン・メイガースは電話で必死に謝罪していた。気持ちが先走り、尊敬すべき上司の命令に背いてしまった、しかも結果は失敗。命を奪われても文句は言えないと考えていた。

「はあ…君は何をお考えで?人がいなかったのが幸いと言え、ジェットスライガーを、街中で使用するなど」

「……申し訳ございません!つい、躍起になり…今すぐ本国に帰還します….」

「いや、継続しなさい」

エレンは気がつかない。

「彼はウォッチを手に入れてしまった。ならば話は別です」

電話先で、彼の目は明らかに変わっていた。

「フェアリークローバーを派遣します。貴方の指示通り動くように命じておきますので」

「!?彼らを使うんですか!?」

「ええ、ウォッチはライダーズギア以上に我々の計画に重要な物です。それに彼らには『彼女』を討伐する任務もあるし一石二鳥ですよ。彼女もどうせ555の彼を狙うでしょうから」

それだけ言い残し電話先の彼は受話器を置いた。

 

社長は微笑む。未だ自分の想定通りの世界を思いながら。

 

「ナイトメア。君がいくら足掻こうが我々には勝てませんよ?」

 

「世界は、我々の手に握られている」

 

 





≪追記≫【追記】オートバジン関連を加筆。
志道が元々乗っていたバイクとオートバジンは別な事を書き洩らしてたので修正しました。
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