一般人の2人目とかなり盛ってる3人目   作:もけ

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今話は会話文が主体なので、いつもの【○○の場合】というのはないです。
強いて言えば前半は博光で後半は一夏ですね。


生徒会室にて

「失礼しま~す。会長、お姉ちゃん、噂の男子三名お連れしました~」

「ご苦労様。それじゃあ本音はお茶受けの用意をお願い。私はお茶を入れるから」

「あ、お姉ちゃん。先輩からケーキの差し入れがあるんだよ~」

 

 本音が掲げて見せたのは学園の敷地内に食堂とは別にあるカフェテリアのケーキの箱。

 

 昨日の今日でまた面倒事を持ち込む事になった博光は、せめて手土産くらいはと本音に相談を持ちかけた結果がそれだ。

 

 後ろで借りてきた猫のようになっている男二人を紹介するのは後にして、博光は迎えてくれた本音の姉、虚とまずは挨拶を交わす。

 

「久しぶりと言うほど前でもないが、学園では初めましてだな、布仏」

「はい、博光さん。ご入学おめでとうございます」

「ありがとう」

「ここには妹もいますから、私の事は名前で、虚(うつほ)とお呼びください」

「いいのか?」

「はい。私も博光さんと下の名前で呼ばせていただいていますし」

「そうか。ではお言葉に甘えさせてもらおう。虚、これからよろしく頼む」

「はい、こちらこそよろしくお願いします」

 

 博光と虚は昨年からちょくちょく学園や更識家との話し合いの席で顔を合わせているため旧知の仲で、個人的に連絡を取り合う仲にもなっている。

 

「ケーキは女性優先で好きなのを取って行ってくれ。ちなみに君の妹の分だけ3個ある」

「あ、先輩言っちゃダメ~」

「本音っ、またあなたは」

「だ、だって~、どれにするか迷ってたら先輩がいいよって言ってくれたから~」

「お客様の前ですから今は抑えますが、後でお説教ですからね」

「うえ~ん、先輩、お姉ちゃんがイジメる~」

「こら、本音っ」

「まぁ彼女も来栖の件で色々と頑張っているんだ。このくらい多目に見てやってくれないか」

「博光さんがそう仰るなら…………。本音、今回は博光さんに免じて多目に見ますが、次からはちゃんとするんですよ」

「分かった~、次は2個までにしとく~」

「本音っ」

「冗談だよ~」

 

 そう言い残して、本音は隣りの給湯室へと逃げ込んでいった。

 

「もう、本当にあの子は。すいません、博光さん。妹がご迷惑をおかけして」

「いや、こんなプライベートな表情をしている虚が見られるならケーキの一つや二つ安いものさ」

「か、からかわないでください」

「今の照れている表情もそうだが、普段の隙のない『できる秘書』『できるメイド』といった雰囲気とのギャップは、ズルいくらいに魅力的だよ。できれば俺にもそんな表情を向けて欲しい所だが、それは贅沢に過ぎるかな」

「も、もう、知りませんっ」

 

 姉妹揃って逃げるように駆け込んだ給湯室からは「お姉ちゃん、顔真っ赤っ赤~」「気のせいよっ」と微笑ましい声が聞こえてくる。

 

「明智先輩、虚は私と違って生真面目なんですからあまりイジメないであげてくださいね」

「すまない。イジメているつもりはないんだが、どうも好みの女性が相手だと舌の滑りが良くなってしまうらしい」

「そういう事なら私も眼鏡、かけてみようかしら」

「三つ編みお下げの眼鏡美人という点も確かに彼女の魅力の一つだが、より魅力的なのはその内面だよ。主であり幼なじみの親友でもある君には言うまでもない事だろうが」

「えぇ、当然です」

「納得してもらった所で、二人を紹介させて欲しい。今更な感もあるが、織斑一夏と来栖淳だ」

「織斑一夏です。よろしくお願いします」

「来栖淳です。用があるのは一夏だけで俺はただの冷やかしですけど」

「ふふ、ようこそIS学園へ。織斑一夏君、来栖淳君。私が生徒会長の更識楯無よ。気軽に『たっちゃん』て呼んでね」

 

 胸の前で広げられた扇子には『歓迎』の文字。

 

「いえ、それはちょっと」

「んじゃ、俺は『たっちゃん先輩』て呼ばせてもらいます」

「あら」

「おい、淳。失礼だぞ」

「いやいやいや、本人が呼べって言ってるのに断る方が失礼だって」

「うっ、で、でもなぁ」

「明智さんもそう思いますよね」

「そういうノリの良い所は来栖の良い所だな」

「ほら見ろ」

「いや、答えになってねぇからな。じゃあ、明智さんは何て呼んでるんですか?」

「更識生徒会長」

「ほら見ろ」

「いやいやいや、よく考えてみろって。明智さんが年下だからって『ちゃん付け』してるとこなんて想像つくか」

「…………ないな。あっ、すいません」

「構わない。一夏は無難に『さん付け』でいいんじゃないか」

「そうですよね。じゃあ更し」

「楯無」

「え、」

「た・て・な・し」

「…………楯無さんで」

「よし。お姉さん、素直な子は好きよ」

 

 挨拶も一段落した所で「さ、いつまでも立ち話も何だし座りましょうか」と促されるままに腰を下ろす。

 

 応接用のソファーには楯無と男二人が向かい合って座り、博光は長テーブルの椅子を引く。

 

 そこにケーキとお茶を持った布仏姉妹が戻り、虚は博光の隣り、本音は対面に座って、場が仕切り直される。

 

「明智先輩から話は聞いているけど、一夏君本人の口からもう一度聞かせてもらえるかしら」

「はい…………千冬姉、織斑先生に言われました。俺はこれからの人生、ISと無関係ではいられないだろうって。でもその関わり方はこれから俺がこの学園での三年間で積み上げた結果次第でより良いものに変えて行けるって。だから俺はクラス代表になって淳や明智さんと同じ土俵で競い合って自分を磨いて行きたいんです。そのためにオルコットさん、イギリスの代表候補生の子なんですけど、その子との模擬戦で俺の決意が口先だけじゃないって事をみんなに示さなきゃいけない。でも今の力の差は、サッカーボールを買ってもらったばっかりの子供がJリーガーと対戦するようなものです。だから少しでも逆転の目を作るために、せめてまともにISを動かせるくらいにはなっておきたい。そのための訓練機の調達をお願いしたいんです」

 

 勢い良く頭を下げる一夏。

 

 皆が皆、やる気と向上心に溢れるIS学園においては、この程度は最低ラインと言ってもいいが、一夏の境遇を考えれば悪い評価ではない。

 

「生徒会長としては、やる気のある生徒の後押しをするのは吝かではないわ」

「本当ですかっ」

「えぇ、でもやる気のあるのは他の子も一緒なの。しかも操縦科の子にしてみれば一つ一つの大会に自分の将来がかかっていると言っても過言ではないわ。だからただお願いしますって言っても貴重な訓練機の貸し出しの権利を譲ってもらうのは難しい。その辺はどう考えているのかしら」

「えっと、明智さんからアドバイスしてもらったやつなんですけど、千冬姉のプライベート写真とか俺と、その、いわゆるデートってやつをするのでどうにかならないかと」

 

 さっきまでの威勢はどこへやら、一気に歯切れが悪くなる一夏。

 

 まぁ言ってる内容が内容だけに気持ちは分からなくもない。

 

「へぇ、一夏君は例えば一週間訓練するとして、7人の女の子とデートしちゃうんだ。意外とプレイボーイね」

「いや、えっと、その、やっぱりこういうのって良くありませんよね」

「あら、良いんじゃないかしら」

「良いんですかっ!?」

「別にデートしたからって絶対に付き合わなきゃいけないってわけじゃないし、本人同士が納得してるなら何の問題もないわ」

「は、はぁ、そういうもんですか」

「でもそうねぇ、今後の事を考えるとあんまり得策とは言えないわね。ねぇ、一夏君」

「は、はい」

「確か一夏君は織斑先生と小さい頃から二人暮らしで、でも織斑先生がドイツに行ったり、日本に戻って来てからも仕事の都合でほとんど家に帰って来れなかったりで実質一人暮らしの状態が普通だったのよね?」

「何でそんなこと知ってるんですか」

「一夏君は自分がハリウッドスターよりも世界の注目を集めてるって事をもっと自覚するべきね」

「うっ、すいません」

「で、一人暮らしだったのよね?」

「はい」

「家事はどうしてたのかしら? 女の子を連れ込んで、とっかえひっかえお世話させてたのかしら」

「マジかよっ!? 一夏、テメーなんて羨まけしからん事を」

「そんなわけあるかっ!! ていうか、いきなり割り込んで来てそれかよっ」

「博光さん、お茶のおかわりはどうですか」

「ありがとう。それにしても虚の入れてくれるお茶は本当に美味いな」

「ふふ、ありがとうございます」

「お姉ちゃん、私もおかわり~」

「はいはい」

 

 楯無にからかわれ、淳のボケだが何だか分からないやっかみにツッコミを入れた一夏は、隣りのテーブルで和気あいあいと和んでいる博光たちにジト目を向け、ため息をつく。

 

「はぁ、楯無さんも俺が有名人だって言うならその辺も分かってて言ってますよね」

「あら、バレちゃった? うふふ、冗談よ」

「勘弁してください」

「一夏君は家事全般何でもできるけど、特に料理が得意なんだって?」

「必要にかられて覚えたものですけど、今では趣味みたいなもんですね」

「うんうん、料理ができる男の子って素敵よね。というわけで、今回はそれを利用しましょう」

「どういう事ですか?」

「お食事会よ」

「お食事会?」

「えぇ、訓練機の貸し出しの権利を譲ってくれた子たちを招待して一夏君お手製の料理を振る舞うの。これなら一夏君の負担も一日で済むわ。それに私たちにも振る舞ってくれるなら材料費はこっちで持つわよ」

「それは助かりますけど、そんなのでいいんですか」

「えぇ、かなりの勝算が見込めるわね」

「そういうもんですか」

「そういうものよ」

 

 『必勝』と書かれた扇子を広げる自信満々な楯無を見る限り、そういうものとして無理矢理自分を納得させる一夏。

 

「お食事会の内容は後で詰めるとして、まさか私たちをただ働きさせるつもりじゃないわよね? 一夏君」

「もちろんです」

「あら、良いお返事。じゃあ私たちにはどんな報酬を考えてくれているのかしら。お姉さん、期待しちゃうわ」

「生徒会が行事を盛り上げるのに広告塔でも何でも全面的に協力するっていうのはどうでしょう」

「う~ん、ちなみに全面的にっていうのは、一夏君を優勝商品にしてもいいって事よね?」

「法律や道徳に反しない範囲でお願いします。千冬姉に肉体言語で説教されちゃうんで」

「じゃあデート…………いえ、一日好きに出来る権利っていうのは」

「いや、アウトでしょう」

「過剰なスキンシップは一夏君が自分で拒めばいいじゃない」

「ぐっ、お、俺の拒否権をちゃんと守ってもらえるなら、まぁそれでもいいです」

 

 一夏の答えに、扇子で隠した楯無の口元は笑みを作る。

 

「(そこで譲ったらお嬢様の思う壺です。織斑君)」

「(おりむ~は交渉事に向いてないね~)」

「(さすがに更識は違うな)」

「(一夏、チョロいな)」

 

 周りが、淳ですら心の中でツッコミを入れているが、当の一夏は気付かない。

 

「いっそのこと、生徒会に入っちゃうっていうのはどう? 頼み事が今回で終わりって言うならさっきのでもいいと思うけど、私のカンでは一夏君はことある事に厄介事に巻き込まれると見たわ。そんな時、生徒会に入っていれば色々と融通も利くわよ?」

「嫌な予言しないでくださいよ」

「あら、割と本気で言ってるんだけど。それに今入れば特別に私が模擬戦まで稽古をつけてあげるわよ?」

「良い話じゃねぇか、一夏。入っちまえよ、生徒会」

「いや、俺は明智さんに頼もうと思ってたんだけど」

 

 皆の視線が集まる中、博光はスッと細められた楯無の視線の意味する所を察する。

 

 いわく「分かってますよね、明智先輩」と…………。

 

 博光と更識家の関係は、IS学園の警備を任されている更識家と厄介事の塊である男性操縦者というだけではない。

 

 博光に対して一方的に便宜を図るのではなく、博光も学園の自治に力を貸す。

 

 強制ではないし義務でもないが、そういう協力関係を敷いていて、今回の一夏を生徒会へ勧誘する事もその範疇に入る。

 

「頼まれれば教えるのはもちろん構わないが、目の前の幸運を逃す手はないぞ」

「なんですか、それ」

「更識生徒会長は現役のロシア国家代表。そんな人から直接教えてもらえる機会なんてそうあるもんじゃないって事だ。色々と多忙な様だからな。それに言うまでもないが基礎は何より大事だ。ちょっとの違いが後々まで響いてくる。だからこそなるべく実力のある人に見てもらった方がお前のためになる」

「なら千冬姉に」

「教師がそんなに暇なわけがないだろう。それに迷惑をかけたくなかったんじゃないのか」

「うっ」

「それにだ。織斑の話を聞いていると、織斑先生にこそ自分の決意を示したい様に聞こえるんだが、それなら訓練風景、過程は見られない方が効果的というものだぞ」

「確かに…………って、いや、別に千冬姉に格好良いとこ見せたいとか思ってないですからね、俺」

「落ち着け。それじゃあ深読みしろと言ってる様なものだ」

「ツンデレかよ。このシスコンめ」

「う、うるせぇ」

 

 女性陣にも生温かい視線で微笑まれ、非常に居心地の悪い一夏。

 

「真面目な話、来栖はスタートラインが同じだが、一年のアドバンテージのある俺と張り合う気が本当にあるなら、この機会は逃すべきじゃないんじゃないか、織斑」

「それは…………」

「生徒会に入る事に抵抗がある様だが、ここにいれば今後も更識生徒会長から稽古をつけてもらえる機会があるかもしれない。それに更識生徒会長も虚も学科の違いはあるが二人とも学年主席だ。織斑は勉強の方も遅れているんだろう? 特にやりたい部活がないなら入ってみたらどうだ」

「そこまで言うなら明智さんも」

「いや、悪いが俺は入部する部活はもう決めてあるんだ。野次馬を増やさないために他の生徒が粗方入り終わってから入部するつもりなだけでな」

「へぇ、どこ入るんすか」

「それを言ったら意味がないだろう」

「あ、そうっすね」

「じゃあ、淳。一緒に生徒会入ろうぜ。ルームメイトののほほんさんも入ってるんだし」

「いや、俺も入りたい部活あるんだよね~」

「なっ!? どこだよ、それ」

「テニス部」

「テニスぅ?」

「そっ、元々高校入ったら入るつもりだったんだよ」

「くっ、なら仕方ないか。テニス好きなんだな。やってたのか?」

「いんや、こう青春って感じだろ?」

「は?」

「分っかんねぇかなぁ。あのピタッとしててミニスカートのテニスウェアの良さが。飛び散る汗、健康的に引き締まったボディライン、カモシカの様にスラッと伸びた脚線美にチラチラと覗くアンダースコート。最高だろ?」

「いや、だろって言われても」

「じゅんじゅんのスケベ~」

「思春期男子がスケベで何が悪いっ!!」

「一回転してその開き直りはちょっと男らしいわね。でもそういうイヤラシい理由なら生徒会権限で入部は却下します」

「そんな横暴なっ!?」

「いや、当たり前だろ」

「一夏、裏切るのかっ」

「別に裏切ってねぇし」

「くっ、ならば明智さんっ」

「虚、もう一杯もらえるか。できれば次は違う茶葉も飲んでみたいんだが、虚のオススメはあるか」

「そうですね。ハーブティーはいかがですか、博光さん」

「いただこう」

「ちくしょうっ! リア充は敵だっ」

 

 淳が関わると場がコントの様になる不思議。

 

「じゃあこうしましょう。一夏君と淳君は仮の生徒会員って事で。そうねぇ、とりあえず前期中やってみて、不満があったら要相談という感じでどうかしら」

「テニス部が駄目なら水泳部でも」

「ないわよ?」

「神は死んだっ」

「まぁ、淳が一緒なら」

 

 渋々といった感じだが、何とか話もまとまり、一夏は箒を待たせている剣道場へと向かった。

 




虚さんはヘアバンドやカチューシャでデコを出し、三つ編みは後ろでゆるく一本で、眼鏡をかけています。
メタリックなワインレッドの細身なフルフレームですかね。
フォーマルっぽくありながら、オシャレ感も忘れない。
そんな感じです。
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