一般人の2人目とかなり盛ってる3人目   作:もけ

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初日もやっと放課後に突入です。


IS学園初日③ニアミス

【明智博光の場合】

 

 放課後、明智博光と来栖淳が連れ立って1年1組の教室を訪れると、予想されていた反応ではあったが、場が一気に騒然となる。

 

「わっ、わっ、来栖君と明智さんだよ」

「話題の男子3人揃い踏みっ!?」

「なんでなんで」

「織斑君に会いに来たんじゃない?」

「織斑君もいいけど、他の2人もイケメンだよね~~」

「みんなタイプ違うよね」

「来栖君は遊んでそうなチャラ男タイプ?」

「分かる~~」

「ちょ、聞こえちゃうよ」

「しかも残念な方」

「あぁ、自己紹介で盛大にスベったって聞いた」

「女子の前で体重ネタとかないよね」

「あ、それはないね」

「手の平返すの早いな」

「最後までフォローしなさいよ」

「次、次、明智さんは真面目でクールな生徒会長タイプ。眼鏡だし」

「眼鏡ならば仕方ない」

「確かに」

「なんでよ」

「眼鏡は正義なんだよ」

「うんうん」

「え、そ、そうなの?」

「しかも自己紹介で眼鏡の似合う人が好きって言ってたらしいよ」

「マジ? 今度、私、伊達眼鏡買っちゃおうかな」

「どうせなら選んで欲しいよね」

「みんなで頼んでみたりとか?」

「アリね」

「ところで我がクラスの男子は、それでいくとどういう扱い?」

「お馬鹿なヘタレイケメン」

「「「「「あぁ~~」」」」」

「みんな酷くない?」

「IS動かしてまだ2ヶ月なのに子供の頃から勉強してる私らと同じレベル求めるのは酷ってもんでしょ」

「でも電話帳と間違えて参考書捨てるとかなくない?」

「ないない」

「少なくとも気付いた時点で再発行頼むよね」

「それに聞いた限りじゃ、明智さんは私らと同等かそれ以上、来栖君も分からないなりにちゃんと予習してたっぽいし、それと比べちゃうとねぇ」

「みんな落ち着いて。織斑君の一番のステータスは千冬様の弟って所だよっ!!」

「「「「「おぉっ!!」」」」」

「確かに」

「言われてみれば」

「だから酷いって」

「でも、そのお陰で担任が千冬様なわけでしょ?」

「やっぱり?」

「だよね」

「実の姉が担任とか普通に考えたら有り得ないけどね」

「何気に特別扱いだよね」

「ブリュンヒルデのネームバリュー、パない」

「つまり総合的に見たらウチのクラスが勝ち組って事で」

「「「「「異議なし」」」」」

 

 『女三人寄れば姦しい』ということわざがあるが、教室の中にはその10倍の約30人がいるわけで、その脅威は推して知るべしといった所だ。

 

 1日過ごしたくらいではさすがにまだ慣れないが、そこは連れがいる余裕か博光は来栖と揃って苦笑を浮かべ、遠巻きにこちらを見ている女子生徒の中から、織斑の側に立つ目つきの若干険しいポニーテールの生徒に視線を合わせ声をかける。

 

 救助を頼む時の基本だが、「誰か」と不特定多数に頼むのではなく、「あなた」と個人を特定して頼んだ方が受け入れてもらい易いのは常識だろう。

 

「すまない。良かったらそこで机に突っ伏している彼を呼んでもらえるかな」

「は、はい」

 

 同学年とは言え、本来なら高校一年生と大学一年生、成長期でもある学生時代の3歳差は非常に大きい。

 

 高身長な見た目に加え、纏う雰囲気も落ち着いていて年上然としている博光に対して、周囲の生徒は同級生としてではなく自然と部活の先輩に接する様に丁寧な口調になってしまうが、博光もその方が接しやすいとあえて訂正する事はしない。

 

 生物は己の属するコミュニティーに異分子が侵入して来た際に拒否反応を示す傾向にあるが、それは裏を返せば他のコミュニティーに入って行く事へのストレスの大きさを示している。

 

 つまり何が言いたいかと言うと、博光はただ異性という以上に異分子であり、自分のクラス以外の教室というものは入りにくいもので、入ったら入ったで気分を害する生徒がいるかもしれないため、博光は10歩もかからない距離の先で机にダウンしてる織斑をわざわざ呼び出してもらっているのだ。

 

「一夏、一夏起きろ。お前に客が来てるぞ」

「うぅぅ、箒、俺はもう駄目だ。後の事は任せた」

「馬鹿な事を言っているな。お前が気にしていた、もう二人の男子がわざわざ来てくれているのだぞ」

「男子…………男…………男っ!?」

 

 よほど女子に囲まれた1日が堪えたのか、周りがこれほど騒いでいるにもかかわらず博光と来栖の来訪に全く気付いていなかった織斑であったが、認識した途端に文字通り椅子から飛び起き、箒と呼ばれた女子生徒にあわやぶつかりそうになるが、彼女の素晴らしい反射神経によって事なきを得る。

 

「い、いきなり飛び起きる奴があるかっ。危ないでは―――――」

「箒、見ろっ!! 男、男がいるぞっ!! それも二人だっ!! 俺は一人じゃなかったっ!!」

「ふ、不埒者っ!!」

「ぐふっ」

 

 瞬間的にテンションの針が振り切れた織斑が衝動の赴くままに彼女を抱き寄せるという暴挙に出るが、彼女は即座に見事な背負い投げで撃退してのける。

 

 しかも容赦のない事に、距離をあけるように投げ飛ばすのではなく、意識を刈る様に地面に叩きつけるタイプの投げを見舞っていた。

 

 その際、不可抗力でスカートの中の可愛らしいピンク色の布地が他二人の男性陣に見えてしまっていたが、博光は技のキレに感心し、来栖はいきなりの暴力に口元をひきつらせていたため、そういった目で見られる事はなかった ―――――――――― が、その扱いは女子高生的に良かったのか悪かったのかは微妙な所だろう。

 

「公衆の面前でいきなり抱き締めてくる奴があるかっ!!」

「…………」

「まったく、手元に刀があれば切り捨てている所だぞ」

「…………」

「六年振りに再会してみれば随分と軟派な男になりおって」

「…………」

「いくら大勢の異性に囲まれているとは言え、日本男児ならこれくらい笑い飛ばすくらいの度量を見せずに何とする」

「…………」

「だいたいお前という奴は―――――」

 

 目の前で延々と悪態を付く女子生徒 ―――――――――― 特徴的な名前と、博光の持つ重要人物の事前知識から篠ノ之束の妹の篠ノ之箒だと思われる ―――――――――― は興奮状態のため気付いていない様子だが、床に倒れている織斑は遠目に見る限り意識を失っているように見える。

 

 投げのモーションから打ったのは背中だと分かっているためそれほど心配する事もないが、いつまでも床に寝かしておくのも忍びないと博光は彼女の名前を呼び、意識をこちらに向けさせる。

 

「篠ノ之、話の腰を折って申し訳ないんだが」

「ぬ、私は今、一夏と…………あ、」

 

 博光を見た途端に今の状況を思い出した彼女は「やってしまった」と言わんばかりにバツの悪い表情に顔を歪め「そ、その、すみません」と折り目正しく頭を下げるが、それには取り合わず織斑の状態を指摘する。

 

「君が投げ飛ばした織斑一夏だが、気絶している様だぞ」

「は? …………い、一夏っ!?」

 

 慌てた彼女が彼の肩を掴んで前後に振り出し、首がガクンガクンしているのをやんわりと止め、自分が彼を保健室に運ぶ旨を告げて場所を変わる。

 

 本来なら6人から8人程で傷病者の左右に分かれ、体の下で腕を交互に掴む事で担架の様にして運ぶのがベターなのだが、来栖ならまだしも博光の背丈は女子と比べて高過ぎてバランスが悪く、かと言って女子に任せて自分だけ何もしないほど空気が読めないわけでもない。

 

 結果一人で運ぶ事にし、ファイヤーマンズキャリーの要領で肩に担ぎ上げる。

 

 相手が女子ならばお姫様だっこの一択だが、男子の扱いなどそんなもので十分だ。

 

 170の大台にわずかに届かない来栖より若干背が高く、体格もしっかりしている織斑は60㎏半ば近くあるが、軍隊並みのしごきを耐え抜いた博光には短時間なら問題にならない。

 

 しかも腕の力に頼ったお姫様だっこと違い、ファイヤーマンズキャリーは重心を上手くコントロールすれば負担を全身に分散させられるので効率的なのだ。

 

 誰かに今の織斑の惨状について聞かれれば「いきなり女子に抱きつくという痴漢行為を働き、撃退されて気絶している」という酷く体裁の悪いものになり、気絶させたのが正当防衛か過剰防衛かはさておき彼女、篠ノ之箒は誰が見ても被害者側になると思うのだが、気絶させてしまった事に責任を感じている様子で保健室までの先導を買って出てくれた。

 

 「後でまた連絡する」と言って来栖とはその場で別れ、博光は織斑を運んでいる途中で入学前に面識を得ていた生徒会長、更識楯無にISを介した秘匿回線『プライベートチャンネル』を開き、現状説明と担任であり学園の警備責任者であり織斑一夏の保護者でもある織斑千冬への連絡に加えて、間違った変な噂が立たない様に情報操作を頼んでおく事にする。

 

 いくら生徒会長といえど一介の生徒に頼む事ではないと思うかもしれないが、彼女は齢(よわい)17歳にし自由国籍を取得してのロシア国家代表操縦者であると同時に、日本のテロ対策のトップ、対暗部用暗部として名高い更識家の現当主でもあり、学園の生徒会長という職分を越えて、裏の警備責任者という顔も持っているのだ。

 

「更識生徒会長、今いいか」

「あら、明智先輩。入学早々デートのお誘いですか」

「プライベートで君に声をかけるならこんな無粋な方法は取らないよ」

「それは残念」

「と言うか”先輩”は何とかならないか」

「なりません。年上は敬う様に躾けられていますので」

「それなら”さん”付けで」

「却下です」

「むぅ」

「フフ、それよりどうしました」

「そうだった。今、本当にしょうもない理由で気絶した織斑一夏を保健室に運んでいる」

「その言い方だとむしろ気になりますね」

「織斑と面通しするために来栖と1年1組に向かった所、数少ない仲間を見つけてテンションの上がった織斑が呼び出しを頼まれてくれた篠ノ之箒を抱き寄せるという暴挙を働き、見事な背負い投げの反撃をくらって気絶した」

「…………そういうのもラッキースケベって言うんでしょうか」

「知らん」

「ツレないですね」

「織斑先生に報告を頼みたいのだが、お願いできるか」

「了解です。連絡しておきます。高いですよ?」

「ありがとう。お手柔らかに頼むよ。ところで織斑一夏と篠ノ之箒は随分と感情の抑制が苦手の様だが、警護の方は織り込み済みだろうか」

「はい、過去の経歴を洗った際にその傾向はつぶさに出ていましたから。警護する側としては正直厄介なタイプですね」

「さすが更識。いや、素人が口を出す事じゃなかった。気を悪くしたのなら謝る」

「心配してくれたのでしょう? 気にしてませんよ。でも、それなら時間の空いた時にでも一度生徒会室の方に顔を出してもらえますか」

「分かった。あと、事実をねじ曲げる必要はないが、出来れば変な噂が立たない様に手を回してもらえると助かる」

「そうですね。入学早々男子の立場を悪くするのは得策とは言えないですから」

「よろしく頼む」

「はい、任されました」

 

 ISについて学ぶための学園であろうと、許可された場所以外では通信であろうと無断でISを起動させることは禁止されているのだが、重要人物に関する報告連絡相談は例外事項だろうと、通信を切ってから自己弁護を図る博光。

 

 ちなみに、やぶ蛇になっては堪らないので指摘されるまで確認を取る気はない。

 

 さらに言ってしまえば、博光の専用機である『梟(ふくろう)』は待機状態でもハイパーセンサーがスリープしない様に設定されているため、博光は意識できるかは別として常に360度の視覚を有していて、眼鏡のレンズ部分は各種情報を確認するためのディスプレイの役割も担っている。

 

 加えて、センサーに未確認のISやロックオンアラート、急激な環境の変化や事前に登録されているナイフや銃といった危険と判断されるものが観測された際には、緊急避難措置として自動でシールドバリアが展開される様に改造されているため、ISを使わないという事が出来ない仕様になっている。

 

 つまり博光は本人の意思の及ばない所で、ISの使用禁止エリアに関するルール無視の常習犯になってしまっているのだが、そうは言ってもこれには本人も自分の命がかかっていると納得しているため、確信犯と言ってしまってもいいかもしれない。

 

 ちなみに、この仕様の事は情報漏えいを防ぐために社内でも極限られた立場の人間しか知らされておらず、当然学園にも秘匿されている。

 

 これは受け身にならざるを得ない襲撃される側の唯一と言っていいアドバンテージを守るためであり、ISのスペックデータを開示しなければならないというルールに縛られたIS学園において、フルスペックではない待機状態に関してはルールの抜け穴となっている。

 

 さておき、放課後とはいえ、それなりの注目を集めながら何とか保健室までたどり着いた博光は、養護教諭(保健室の先生)の女性に織斑が意識を失った状況を説明し、簡単な診察を受けて湿布を張られた彼をベッドに寝かせる。

 

 少し様子を見ていくと言う篠ノ之に後の事を任せた博光は退室しようときびすを返すが、ちょうど入室してきたスーツ姿の女性と視線がぶつかり、動きを止めた。

 

 博光にはその女性に見覚えがあった。

 

 と言っても直接というわけではなく、博光のIS実技の師匠でもある射撃部門で現日本代表を務める姫咲葉月(ひめさきはづき)23歳から、かつては競い合ったライバルであり、今は引退してIS学園で教師をしている友人として写真を見せられていたからだ。

 

 彼女の名前は山田真耶、歳は葉月と同じ23歳、ヘアスタイルは丸いシルエットのショートボブで、教師というお堅い職業にしては遊び心を感じさせるホワイトカラーのプラスチックフレームでアンダーリム(要するに下半フレームの白い眼鏡)の小顔の彼女にはやや大きめな眼鏡をかけている。

 

 周りと比べてみれば身長がとりわけ低いわけではない事が分かるが、否が応にも視線を集めるたわわに実ったメロンのごときバストに反して細くなで肩な肩のライン、人当りの良さそうな柔らかい雰囲気に、オーラが弱い、露骨に言ってしまえば存在感が薄い事も相まって随分と小柄な印象を受ける。

 

 自己紹介でも言っていたが博光の女性の好みは「落ち着いた眼鏡の似合う女性」または「暗い気持ちも笑顔で吹き飛ばす様な元気な子」なのだが、葉月から聞く限り真耶の人物像はこのミックスに該当するため、ひそかに実際に会うのを楽しみにしていた博光だった。

 

 真耶のメロン、もといバストサイズは、本人は是が非でもメーターの大台に乗せたくないトップ99㎝に、ブラジャーのサイズが65㎝から始まる事でも十分に細いと分かるアンダー70㎝のHカップという魅惑のバスト、だと言うのにそれよりも先に眼鏡に目の行く博光に対して『フェチ』という単語がチラリと頭をかすめていくが、好みは人それぞれという事で深く言及はしないのが優しさというものだろう。

 

 ちなみに彼女の眼鏡姿は、博光的にかなり高印象であった事を付け加えておく。

 

「初めまして、明智博光です。葉月さんから山田真耶さんのお噂はかねがね。受け持ちから外れてしまったのは残念ですが、もしご迷惑でなかったらぜひISの操縦についてご指導のほどよろしくお願いします」

 

 共通の知人の名前を出しつつ、ソツない口上を並べて握手を求める世慣れした感のある博光に対して、なぜか博光を見てからずっと固まったままで反応のない真耶。

 

 不審に思い、声をかけるが、

 

「あの?」

「はっ!? ああああのそのええとですね、これは違くて、その、」

 

 気付いてはもらえたが、信号が切り替わるように顔が真っ赤になったかと思うと、真耶は激しく狼狽し始めてしまう。

 

 しかしてっぺん回って逆に少し落ち着いたのか、大きく二度三度と深呼吸をして立て直した眼差しには、決意にも似た力強さがこもっていた。

 

 一連の挙動不審な奇行を眺めつつ表情には出さずに「面白い人だな」と内心で博光がほっこりしていると、未だ差し出されたままになっていた博光の手を真耶は『ガシッ!!』というオノマトペが浮かびそうな勢いで両手で掴むと、無意識だろうが意気込むあまり、その豊満な胸に押し付けるように引き寄せてから一言。

 

「エッチなのはいけないと思います」

 

 間違っても初対面の相手に言う事ではない。

 




最後は山田先生の問題発言で締めましたが、実際問題、家族や親族が担任になることって許可されるんですかね? 個人的にはないと思うんですが……。
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