[鋼の錬金術師]エルリックの三男は「男主」   作:春川遥

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十話「縋るものとユースウェル炭鉱」

よっこらせ、とエド兄が立ち上がる。

 

 

「そんな...」

 

 

呆然、といった感じのロゼさんの声。

 

ロゼさんはぺたりと地面にへたりこんでいた。

 

 

「うそよ...だって...生き返るって言ったもの...」

 

 

絶望の色が伺える声に顔を顰める。

 

半身をロゼさんに向けてエド兄がいう。

 

 

「諦めなロゼ、元から_____」

 

「...なんてことしてくれたのよ...」

 

 

エド兄の言葉を遮るロゼさん。

 

ポロポロと頬を伝う涙。

 

下がり切った眉。

 

....笑っている口元。

 

 

「これからあたしは!何に縋って生きていけばいいのよ!!....教えてよ!!」

 

 

人間縋っていたものが無くなった時が一番脆い。

 

それが生きるための原動力となっていたロゼさんの喪失はさぞかし大きなものだろう。

 

だからこそ彼女はおれたちにそれを言うことで解決することはないとわかっていたとしても、おれたちを責めることしかできないのだろう。

 

おれはなにか、ロゼさんを励ます言葉がないかと模索していた。

 

そんな思考もエド兄の凛と張ったいつもの声がかき消した。

 

 

「そんな事、自分で考えろ」

 

 

こつ、こつ、とエド兄は歩いていく。

 

 

「立って歩け」

 

 

エド兄の左脚の機械鎧がロゼさんの横の土を踏みしめる。

 

 

「前へ進め」

 

 

ギシ、ザク、という音を立ててロゼさんの横を通りエド兄が歩いていく。

 

その後をアル兄と顔を見合わせ、お互い肩をすくませてから小走りでついて行く。

 

 

「あんたには立派な足がついてるじゃないか」

 

 

きっとおれとアル兄の考えは今一致していると思う。

 

 

(素直じゃないなあ兄さんは)

 

 

赤い、紅い夕日に照らされて、3人分の影が長く伸びていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"東の終わりの街"ユースウェル炭鉱。

 

そこへ向かうための電車に乗って、席について数秒で眠りについたおれは、目覚めたら...周りが火の海だった。

 

 

(ちょぉぉぉぉっと待ったァ!?何があった!?)

 

 

取り敢えず鎮火、と両手を合わせる。

 

火が発生するには何がいるか。

 

答えは簡単。燃えるものと酸素と温度だ。

 

このうちのひとつでも無くせば火は発生しない。

 

ということで今は酸素を無くそうと思う。

 

ここは炭鉱のはずだ。だから炭素はそこらじゅうにあるはず!

 

 

(あたりの炭素と、ここら辺の酸素を錬成して二酸化炭素を発生させる!)

 

 

そしてその空気が逃げないようにレト教の街でやったみたいに風シェルターを張る。

 

そうやって錬成し続けること数分。何とか鎮火したみたいなので錬成を止める。

 

辺りを見回すとおれがいた部屋の周りは無事な部分が多く見られるが、数部屋離れた部屋は燃えてしまったようだ。

 

そしてようやくおれはここが宿屋のようなところだったことに気づいた。

 

 

「ハル!!大丈夫!?」

 

 

ガシャリガシャリと鎧を鳴らしながらアル兄がこちらへ駆けてくる。

 

 

[なんとか大丈夫。何があったのこれ?]

 

 

アル兄がこれまでの経緯をざっくり説明してくれる。

 

炭鉱の人達の様子、国家錬金術師の嫌われ様、その理由はヨキという炭鉱経営者であること、そしてエド兄が今ヨキの元に居て、この宿屋兼酒場はヨキに焼かれたのだろうということ。

 

 

[よし、そいつも同じように焼いてしまおうか]

 

 

そう言いながらパチン、と指パッチンをするとセントラルの誰かさんが思い浮かぶ。

 

 

「そういうと思ったよ...」

 

 

呆れ半分、アル兄も俺の仕草で誰かさんを思い出したのか笑い半分で返される。

 

 

「てめえそれでも錬金術師か!!!」

 

 

燃えた家の反対側で子供の声がした。

 

焼け残った壁からひょっこりと顔を覗かせてみると見覚えのある赤のコート、結われた金髪、低身長の少年__エド兄が短髪のほっぺに湿布を貼った半袖の男の子につかみ掛かられているのが見えた。

 

エド兄が何かを言って少年の父親がそれに応じた。

 

エド兄は背中を向けて炭鉱の方へと歩いていった。

 

 

[アル兄、行こう]

 

「うん」

 

 

おれたちはエド兄を追いかけた。

 

 

「兄さん!待ってよ!」

 

[エド兄、あの人たちほっとくの?]

 

「アル、ハル」

 

 

ざく、と音を立ててエド兄が立ち止まる。

 

 

「このボタ山どれくらいあると思う?」

 

 

列車には大量の悪石。

 

おれは直ぐにエド兄の意図を察する。

 

 

「?1トンか...2トンくらいあるんじゃない?」

 

「よーし今からちょいと法に触れることするけどお前ら見て見ぬふりしろ」

 

 

そう言いながらよいしょーと列車によじ登るエド兄。

 

「へ!?」と素っ頓狂な声をあげるアル兄を横目におれも列車へよじ登る。

 

 

「え!?ちょ、ハル?」

 

[どうせ共犯者になるならおれも錬成したい]

 

「ダメか?アル」

 

 

はぁ...とくぐもった大きなため息が聞こえた。

 

 

「ダメって言ったってやるんでしょ?」

 

 

アル兄のその言葉におれとエド兄は顔を見合わせる。

 

エド兄がにいっと笑ってボタ山に手をついた。

 

 

「なぁに、バレなきゃいいんだよバレなきゃ」

 

[そうそう、どっかで聞いたよ?バレなきゃ犯罪じゃないんですよって]

 

 

2人で大量の金塊を生産していく。

 

その後ろでアル兄がため息混じりに

 

 

「やれやれ、悪い兄弟を持つと苦労する...」

 

 

と言った。

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