[鋼の錬金術師]エルリックの三男は「男主」   作:春川遥

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十一話「権利書とお祭り騒ぎ」

「.........あの....」

 

 

ほとんど禿げかかった頭にちょび髭。

 

ヨキという男を見て思ったのはなんかせせこましそうなひとだなあってことだった。

 

 

「炭鉱の経営権を丸ごと売って欲しいって言ってるんだけど」

 

 

エド兄が腕を組んでヨキに言う。

 

おれらの後ろには先程錬成した金の延べ棒が大量に積み上がっている。

 

ヨキの部下がそれをしげしげと眺めながら「すげ...」「全部本物...?」と声を漏らしていた。

 

 

「足りませんかねぇ?」

 

「めめめ滅相もない!!」

 

 

金に目が眩んだ様子のヨキがエド兄の言葉に瞬時に反応する。

 

手を組んでこれからの生活に心を踊らせたのかうひひ...と笑っている。

 

 

「それから...」

 

 

ちらり、とヨキがこちらを見る。

 

それに気づいたエド兄は

 

 

「ああ、中尉のことは上の方の知人にきちんと話を通しておいて上げましょう」

 

 

きらん、という効果音がつきそうないい笑顔でそういった。

 

 

「錬金術師殿!!」

 

 

だーっと涙を流しながらエド兄の手をガシッと握るヨキ。

 

はははと笑っているエド兄の隣からすっと書類をヨキに差し出す。

 

 

[金の錬成は違法なんで...バレないように「経営権は無償で穏便に譲渡した」って念書を書いていただきたいのですが...]

 

「おお!構いませんとも!では早速手続きを...

しかし、錬金術師殿もなかなかの悪ですのう」

 

 

おれから書類を受け取り小躍りしそうなヨキがほほほと笑う。

 

 

「いやいや中尉殿程では」

 

 

エド兄も何故か真似してふふふと笑っている。

 

後ろでアル兄がそれを見ながら

 

 

「たのしそうだネ...」

 

 

と小さく言っていたのをおれは聞き逃さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はーい皆さんシケた顔ならべてごきげんうるわしゅう♡」

 

 

開いた扉の先にはユースウェル炭鉱の人々。

 

中でもエド兄に組み付いていた子は声を聞いて物凄く顔を顰めていた。

 

 

「...何しに来たんだよ」

 

 

威嚇しながら言う少年に人差し指を頬にあて巫山戯るように答えるエド兄。

 

 

「あらら、ここの経営者に向かってその言い草はないんじゃない?」

 

「てめ、何言っ...」

 

 

少年の隣にいた大人が食いついてくる。

 

その面前におれはばっと書類を見せつける。

 

 

「...これは...」

 

[ここの採掘・運営・販売その他全商用ルートの権利書ですね]

 

「なんでおめーらがこんな物もって...」

 

 

書類を睨みながら不審気に男性は言う。

 

そしてとある文字を読んだ瞬間、目を大きくかっぴらいて「あーーー!!!」と叫んだ。

 

 

「名義がエドワード・エルリックって!?」

 

「なにぃ!!?」

 

 

大きな声で告げられた衝撃の内容に周りでみまもっていた男達も思わず声をあげた。

 

その成り行きを見ていたエド兄は大きく手を広げながら宣言する。

 

 

「そう!すなわち今現在!この炭鉱はオレの物って事だ!!」

 

「「うそーーーん!!!」」

 

 

建物内にいたおれたち以外の声が重なった。

 

 

「...とは言ったものの」

 

 

ひょい、と肩を竦めてエド兄が続ける。

 

 

「オレたちゃ旅から旅への根無し草」

 

 

人差し指を額に当てながらうーん、と悩むような仕草をしたアル兄がその後を継いだ。

 

 

「権利書(こんなもの)なんてジャマになるだけで...」

 

「...俺達に売りつけようってのか?いくらで?」

 

 

リーダーのような男性__少年の父親が問う。

 

エド兄がニヤリ、と笑った。

 

 

[いやーこれは相当お高いですよ?]

 

「まあ、何かを得ようとするならそれなりの代価を払って貰わないとね?」

 

[なんてったって高級羊皮紙に金の箔押し。保管箱は翡翠を細かく砕いたものでさりげなく、かつ豪華にデザインされてる。これはかなりの職人技だねぇ...それに鍵は純金製ときたもんだ]

 

「ま、素人目の見積もりだけどこれ全部ひっくるめて...」

 

 

ごくり、と誰かの喉がなる。

 

ぴん、と人差し指を立ててエド兄が口を開いた。

 

 

「親方んトコで1泊2食3人分の料金___ってのが妥当かな?」

 

「あ...等価交換...」

 

 

少年がぽつ、とつぶやく。

 

それを聞いて少年の父親は笑った。

 

 

「はは....ははは確かに高ぇな!!!

 

よっしゃ!!買った!!」

 

「売った!!」

 

 

ばん!!

 

樽に炭鉱で鍛えられた男の腕と高級そうな羊皮紙が叩きつけられた。

 

同時にドアの開くバンという音も重なる。

 

そこには顔面蒼白の何かを持ったヨキの姿があった。

 

 

「錬金術師殿これはいったいどういう事か!!」

 

「これはこれは中尉殿。ちょうど今権利書をここの親方に売ったところで」

 

「なんですとー!!!」

 

 

コントのようにテンポのいい会話を繰り広げるヨキとエド兄。

 

 

「いやそれよりも!!」

 

 

そう言いながらヨキは手を広げる。

 

その手には石が大量に乗っていた。

 

 

「あなたがたに頂いた金塊が全部石くれになっておりましたぞ!どういう事か説明してください!」

 

 

必死の形相でエド兄に詰め寄るヨキ。

 

 

「...いつ元に戻したの」

 

「さっき出がけにハルに頼んだ」

 

 

ちら、とこちらを見てくるアル兄にピースサインを返す。

 

やれやれ、といった調子でアル兄が首を振る。

 

 

「金塊なんて知りませーん♪」

 

「とぼけないで頂きたい!金の山と権利書を引き換えたではありませんか!これはサギだ!!」

 

[いやいや...権利書は無償で譲り受けましたよ?ほら念書もありますし]

 

「はうっ!!?」

 

 

作戦にまんまとハマったヨキに対してバカだろこいつ...と内心思う。

 

 

「ぬぐぐ...この取引は無効だ!お前達、権利書をとりかえ...せ!?」

 

 

ぬう、という感じで炭鉱の方々がヨキの前に立つ。

 

あ、これはヨキ終わったなーと思いながら遠い目でおれはその光景を眺めていた。

 

そこへ

 

 

「あ、そうだ中尉。中尉の無能っぷりは上の方にきちんと話を通しときますんで。そこんとこよろしく♡」

 

 

と、エド兄が追い打ちをかける。

 

完全に意気消沈と言った様子のヨキに改めて合掌。

 

 

「よっしゃあああああ!!!酒もってこい酒!!!」

 

 

たちまち炭鉱はお祭り騒ぎの雰囲気で溢れた。

 

エド兄を中心に笑顔が広がっていく。

 

きっとユースウェル炭鉱はこれからも続いていくだろう。

 

明るい未来を見据えながら。

 

 

「親父...エドは魂まで売っちゃいなかったよ」

 

「ああ、そうだな」

 

 

おれはそんな会話を聞きながらそこら辺にあったコップの中身をぐい、と飲みほした。

 

___その後のことは覚えていない。

 

起きた時にエド兄とアル兄からもう酒は飲むなと懇願された。

 

おれは何をやらかしたんだろうか....




ようやく一巻の終わりが見えてきた!!
次話くらいから二巻突入できるかな~
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