[鋼の錬金術師]エルリックの三男は「男主」   作:春川遥

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十五話「ニーナちゃんと無表情」

ばう!!

 

アレキサンダーの声が間近でして、おれははっと顔をあげる。

 

覆いかぶさってくるアレキサンダーを撫でながら時計を見るともう随分と時間がたってしまっていた様だった。

 

集中すると周りが見えなくなるくせをどうにかしなきゃ行けないな...と思いながらエド兄とアル兄の姿を探す。

 

しかしその姿は見つからない。

 

 

(あれ...?どこいったんだ兄さん達)

 

 

ぽりぽりと頭をかくとアレキサンダーが後ろから小突いてきた。

 

 

[おまえ、兄さん達がどこへ行ったか知ってるかい?]

 

ばう!!

 

 

ひと鳴きして駆け出すアレキサンダー。

 

ずっと資料を読んでいて体が凝っているしちょうどいい、アレキサンダーと遊ぼうと思いそのあとを追いかけた。

 

アレキサンダーは中庭へと走っていってる様だった。途中でおれがついてきてるかを確認するように立ち止まり、ついてきてることが分かるとばう!と吠えてまた駆け出す。

 

賢いこのわんちゃんとのかけっこが楽しくなってきたところで目的地に到着したようだ。

 

中庭ではタッカーさんの娘さん___ニーナちゃんとアル兄、エド兄がきょろきょろと何かを探している様子だった。

 

 

「あー!!」

 

 

大きな声をあげ、こちらを指さすニーナちゃん。

 

その顔には満面の笑みが称えられていた。

 

 

「アレキサンダーみーつけた!!」

 

 

どうやら3人と一匹はかくれんぼをしていたようだ。ニーナちゃんはこちらへかけてきてアレキサンダーへ抱きついた。

 

 

「お兄ちゃんも一緒に遊ぶ?」

 

 

キラキラとしたかわいい笑顔を向けられたら断る訳には行かない。指でOKサインを出すとニーナちゃんはおれの手を引っ張ってエド兄とアル兄の元へ引っ張っていく。

 

 

「お兄ちゃんも一緒に遊ぶって!」

 

[エド兄もアル兄も研究資料はいいの?]

 

 

ニーナちゃんの言葉に続けて言うと二人ともスっと目を逸らし口笛を吹き始める。...全くこのふたりは...

 

ばう!!

 

そんなおれにアレキサンダーがのしかかってくる。わしゃわしゃと撫でてやるともっと撫でろとばかりに頭を擦り付けてきた。

 

しばらく撫でてやると満足したのかぱっと駆け出した。どこへ行くのかと見守っていると地を蹴り跳躍。そのままエド兄へと覆いかぶさった。

 

 

「あはははは!!」

 

 

アレキサンダー下でぺちゃんこになったエド兄を見てニーナちゃんは楽しそうに笑う。

 

 

「こんの犬畜生めーー!!!」

 

 

キレたエド兄がアレキサンダーを追いかける。

 

呆れながらそれを見ているとくい、と袖を引っ張られた。ニッコリと笑うニーナちゃん。

 

 

「お兄ちゃんも一緒に追いかけよ!」

 

 

そう言っておれの手を引く。抵抗する気も起きないのでそのまま引っ張られていくとエド兄とアル兄がアレキサンダーに翻弄されていた。

 

思いっきり笑ってやりたかったけど片手を掴まれてるのでできない。残念。

 

 

「ねえ、お兄ちゃんはなんで笑わないの?」

 

 

きょとん、とした顔のニーナちゃんが視界いっぱいに広がる。顔の近さに後ずさるとすかさず距離を詰めてくる。ぎゅ、といっそう強く袖口を握りしめてくるものだから声を発せれないし、エド兄とアル兄はアレキサンダーと遊んでいる。

 

...どうしよう

 

 

「お兄ちゃん楽しくない?」

 

 

その問いにブンブンと頭を横に振る。ふわ、と安心したように笑うニーナちゃん。

 

その間に近くにあった木の棒を手繰り寄せて、おれは地面に文字を書く。

 

ニーナちゃんはそれをじー...と見つめている。

 

 

[ニーナちゃんはおれたちと遊ぶのたのしい?]

 

「うん!最近アレキサンダーとばかり遊んでたからお兄ちゃんたちが一緒に遊んでくれるの新しくて楽しい!」

 

[おれが笑わないの気になった?]

 

「うん...楽しくないのかと思っちゃった...」

 

[おれはね、ニーナちゃん]

 

 

そこまで書いてふと手を止める。心配そうに覗き込んできたニーナちゃんにこれをこの子に言ってもしょうがないな、と思い地面を均す。

 

 

[おれは表情に出すのが苦手なんだ。それに声が出ないから間違われやすいけど、ニーナちゃんと居れてすごく楽しいよ]

 

「...そうなの...ねえ、お兄ちゃんたちってまだお家くる?」

 

[多分今日中には終わんないだろうから明日も来ると思うよ]

 

「そしたら...またあそんでくれる?」

 

不安げにこちらを見るニーナちゃん。その頭を撫で、

 

 

[もちろん]

 

 

と書く。ニーナちゃんはぱあ、と華が咲いたような笑顔を見せてくれた。

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